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ミュレーションとアクティブ・ フィルタ
回路素子 シ ミュレー シ ョンとア クテ ィブ・ フイ ル タ 設計 に対 す る一 考察 田 石 雅 *・ 戎 谷 圭 介 * (1983年 6月 17日 受理 ) A Consideration for Circuit Component― Silnulation and Active Filter Design by fasaru lsHDA*and Keisuke EBIsuTANI* (Received June 17,1983) In this paper,a method is proposed that realzes general circuit component― sirnulation with only one resistor and with a minirnu■ l number of operational ampliners Various dependent types of circuit component― slnulation,such as an inductance,a frequency― negative■ resistance,a frequency― dependent negative― inductance, are systematically dorived by the suitable choice of the amplifer transfer function The described lnethod is based upon a single― pole ronoff mOde1 0f an Operational amplifier From the theoletical analysis,Mre show that the proposed structure works、 ven in the higher frequency range 1 ま え が き °また,フ ローティング・インダクタンスを接地型 F る」∼ DNR(Frequency dependent negative resistance)で 近年,集 積回路の進歩 と普及 によって電子回路の構成 法は変化 し,電 子機器の小形化 も急速 に進んでいる。 こ 置 き換 えるイ ンピーダンス・ スケー リング (Impedance のような傾向の中で,小 形化困難 であるインダクタンス scaling)法 がある♂ を除外する回路構成法 として,回 路素子 シミュレーショ ∼5)最 ン及びアクティブ ・フィルタなどが研究 されてきたぎ 近,LC回 路 は理論的に確立 されているばか りでな く,通 過域で素子感度が低 い点を生かす方向で,回 路合成 に LC しか し,上 記のような回路構成 は,演 算増幅器,抵 抗 とコンデンサが必要 となるばか りでな く,演 算増幅器 の 開ループ利得 A(s)を 無限大 と仮定 して いるので,使 用で きる周波数範囲も数 KHZ以 下 と狭 い上 ,ト リミングが容 シミュレーション回路 を積極的に取 り入れるようになっ 易でない欠点がある。 ている。イングクタンスを直接 シミュレー トする方法 と して,受 動 LC回 路のインダクタンス部分 を演算増幅器 と 本論文では,演 算増幅器 の開ループ利得 A(s)に 対 し 1次 近似 モデルを適用す ることによ り,高 い周波数 まで 抵抗 とコンデ ンサを用いてシミュレー トするイ ンダクタ ンス・シミュレーション (InduCtance simulation)が あ 動作可能 であ り,ま た,構 成素子 として演算増幅器 とた だ 1個 の抵抗のみを使用 し,回 路構成 が簡単な回路素子 ネ 電気工学科 Departmellt of Electrical Engineα ing , 石 田 雅・ 戎谷圭介 :回 路素子 シ ミュレー シ ョン とア クティブ・ フイル タ設計 に対する一考察 シ ミュレー シ ョンを提案す る。本構成法によ り,汎 用の 演算増幅器 を用 いて も,約 l MH2ま で動作周波数 の拡大 が可能 とな る。 さらに, これ ら回路素子 シミュレーシ ョ たは複数個の演算増幅器 より成 る回路の伝達関数 T(S)を 表わ している。 また,電 流 iは 帰還抵抗 ンをアクティブーRフ ィル タ回路 に応用する実現例 につ 回 路 素 子 シ ミュ レー シ ョ ンの 基 礎 理 論 =T(S)・ Vi VI=R。 ,i+V。 偲 ) (4) 式 13光 は)よ り駆 動 点 イ ン ピー ダ ンス Zl.(S)は ここでは, まず,回 路素子 シ ミュレー ションの基 礎 を Zm(S)=Vi/i なす演算増幅器の 1次 近似 モデル を考察 し,つ ぎに,駆 =R。 /[1-T(S)] 動点インピーダンス Zin(S)と 伝達関数 T(S)と の関係につ となる。 この とき伝達関数 T(S)を いて述 べ る。 2.1 を通 して出力 V。 いて も示 して い る。 2 R。 ,次 式 が成 り立 つ。 V。 へ 流れ るもの と仮定 すれば T(s)=N(s)/D(s) 漂 算増幅器の 1次 近似 モデル ー般 に使用 されている演算増幅器 の開ループ利 得 A(d) は無限大 として仮定 されているが,実 際 にはこの仮定 は と置 くことにより,求 める駆動点 インピーダンス Zm(S)│よ 次式の ようになる。 満足 されていな い場合 がある。 そ こで,演 算増幅器 の開 Zm(s)=R。 ・ D(s)/[D(s)一 N(s)] ループ利得 A(d)は 実際の開 ループ特性 よ り,次 の ような =R。・ f(s) 1次 近次式 を用 いて表わす もの とする。 (7) 以上 か ら明 らか な ように,Fig,1に おいて適 当な伝達関 A(d)=Aoω P/(Stt ωP)=GB/(Stt ωP) (1) 数 T(S)を 選 ぶ ことによって,種 々の駆動点 イ ンピー ダ ン ここで A。 は開 ループ直流利得 ,ω pは 3 dB帯 域幅 ,GBは ス をシ ミュレー トで きることが分か る。 利得帯域幅積 を表わす。使用す る周波数 dは 充分高 く , ISI≫ ωPと お けば,式 (Dは 次 の ようになる。 A(s)=GB/s (2) 以後,式 121が 成 り立 つ もの として解析 を行 うことにす る。 2. 3 新 しい回路素子の生成 式(71に よって シ ミュレー トされる駆動点 イ ンピー ダン ス Zin(S)は ,適 当な伝達関数 T(S)を 仮定 する場合 ,通 常 の電気 回路では現われな いイ ンピー ダ ンス素子 を実現 で きる可能性 があ る。その主 な ものは,イ ンダ クタンス Lを 2. 2 Fig。 駆動点 イ ンピー ダ ンスの シ ミュレー シ ョン 1に 駆動点イ ンピー ダ ンスのシ ミュレー ション回 路 を考察する為 の基 本構成 を示す。ここで T(s)は 1個 ま 複素角周波数 Sで イ ンピー ダンス・スケー リング5)す るこ と│こ よ りど とじる s2M (Frequency― dependent negative― resistance : FDNR), s9N (Frequency― dependent negat e― inductancei FDNL), また, コンデンサ Cを (1/S)で インピーダンス・ ムケー リングす る ことによ りと 生じる 1/ (s2D) (Frequency― dependent negative― conductance : FDNC), 1/(S3E)(Frequency― dependent negative― capacitance:FDNCA)で あ る。 さらに,S40と か 1/(S・ F)と かぃ ぅ周波数依存正抵抗 (Frequency― dependent positive― resistance i FDPR) なる素子 も生成可能 と思われる。 この ような新 しい素子 は,後 で述 べ るようにアクテ ィブ・ フィル タを構成 す る 場合 に役立 つ。 Zin ― ) Table l(a),(b)は ,代 表的な回路素子 をシ ミュレー トす る増 合 の,数 個 の演 算場幅器で実現で きる伝達関数 T(S) Fig.l Basic circuit を示 している。 鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 14巻 Table l Transfer function of operational ampliner block (a) Transfer function T(5) rransfer function T(s) Type P‐ (b) 1-1 S‐ 1‐ S‐ 1‐ 2 ) ρ‐2‐ l ) A12(1+A12)/(1+A12+A(2' Al・ A2'A12 1 S‐ 2‐ P‐ 2‐ 2 l AlA2A3 S‐ 2‐ 2 Table 2 1mpedance configurations (a) sR s+(R/と ) AI A2′ (1キ Al A2) AlA2A3/( 1+AlA2A3 ) 石田 3 雅 。戎谷圭介 :回 路素子 シ ミュ レー シ ョン とア クテ ィブ・ フィル タ設計 に対する一考察 よ リーAIA2で あることがわかっているので,式 15)へ 代入 回 路 素 子 シ ミュ レー シ ョ ンの 実 現 構 成 例 すると , 本節 は,演 算増幅器 2∼ 3個 で構成 され る代表的な国 Zm(s)=R。 /(1+AlA2) 路素子 シ ミュレーシ ョンの実現例 を,並 列接続 タイプ と 直列接続 タイプ とに分 けて述 べ る。 3. 1 とな り,式 (8)へ 式(2)を 代入す る と次式 を得 る。 Zln(0=Roo s2/(s2+GBIGB2) 並列 接続 タイプの シ ミュレー シ ョン 伝達関数 T(S)と して Tれ le l(a)を (8) (9) よって式(9)よ り,P21の 回路 が抵抗素子 Rと 満足する 2素 子およ FDNR(記 び, 3素 子の並列接続 回路 の実現例 を Table 2(a)に 示 し 号 Mで 表わす)と の 2素 子並列接続回路 となることが明 ている。 ここで実現例 は Table lの タイプに従 って分類 らかであ る。 この ときシ ミュ レー トされた各素子値 は次 した。 式 となる。 1つ の例 として,P-2-1の 回路 を取 りあげて説明する。 P-2-1の 回路 を満足 す る伝達 開数 T(S)│ま ,Table l(a) R=R。 l10 M=R。 /GBIGB2 110 Table 2(Continued) (b) Zin=R+(1/sC)+(1/s20) Zin=RI(1/sC) S‐ 2-2 _E 二 _ T Zin=R+(1/s20) Zin=R+(1/s3E) 鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 14巻 他の並列接続 タイプの回路構成 も上述 と同様な方法で導 な等価 回路 に示 されるように,P21の 等価 回路 にイング 出される。 クタンス Lが 付加 され ることを示 して い る。一般的に シ P-1り P21よ り分 かるように,単 に演算増幅器を 1 個ずつ付加することで,先 に述べた FDNR(M),FDNL ミュレー トされ る各素子値 は,抵 抗素子 RIが 接続 され る 以前の各値 か ら変化 する。すなわち抵抗値 Rは ,RIの 接 (記 号 Nで 示す)を 含 んだ並列接続回路が シミュレー ト されていることが分かる。 : 3. 2 直列接続 タイプのシミュレーション 3.1の 並列接続 タイプの場合 と同様 に,入 力 を反転 入力端子を用いる方法を試みたが,数 多 くの受動,能 動 素子を必要 とすることが分かった。 しか し,非 反転入力 端子を用い ることにより,簡 単な回路構成で シミュレー ト可能 となった構成例が Table 2(b)に 示 されている。 を 1個 ずつ付加することによ り, 2素 子, 3素 子直列接 続回路がシミュレー トされることが分かる。 この内,S 卜1° の回路 は RCフ ィルタヘ適用可能 となる。またこれま で低域通過,帯 域通過等,ア クティブ RCフ ィルタの例 は 数多 く発表 されているが,S21の 回路を用いれば簡単な 構成回路で帯域除去 フィル タも実現することができる。 4 二甘 Table 2(b)に おいても,先 の 3.1と 同様 に演算増幅器 Ⅷ謂 叱 シ ミュ レー シ ョ ン素 子 の 生 成 と消 滅 前節 に示 した Table 2(a),(b)の 回路素子 シミュレーシ (b) ョンにおいて,帰 還抵抗 をさらに付加すれば,新 たな素 R 子が生成され,逆 に取 り除けば,シ ミュレー トされてい た素子が消滅 した りすることがある。 また,あ る接続端 子を変更すれば,新 たなシミュレーシ ョン回路が生成 さ れる結果 となる。 例 として P-2と 1の 回路 について説明する。Hg.2は , P21の 回路において端子 1,1′ に新たな抵抗素子 Rlを 接続 した場合を示 している。この結果は Fig。 2(b)の よう Fig.3 R― C― D configurations 上r Fig.2 R― nl and R― L― M configurations 石 田 雅・ 戎谷圭介 :回 路素子 シ ミュレー ションとアクテ ィブ・ フイルタ設計 に対 す る一考察 続 される以前は R。 であるが,接 続後 は RIの 成分が入 り 囲 まれた RC回 路 を(b)の 点線 の RCシ ミュレーション回路 R=RO//RI(こ こで R。 //RI=RoR1/(RO+RI))と なる。 で置換 する ことによ り,RCフ ィル タを構成 しようとする FDNRの TLE ものである。 , Mは , 接続前,後 ともM=R。 /GBl・ GB2と 一方 RIの 接続 により生 じたインダクタンス値 Lは なる。 L=R1/GBlで ある。 このようなことは,他 の並列接続 タ 5. 2 4次 帯域通過 フ ィル タヘ の適用 Fig.5(a)は 4次 帯域通過 フ ィル タの基本 回路 を示 して イプに対 しても成立 つことが分かっている。 い る。(b)は (a)の 回路 を複素角周波数 Sに よ り,イ ンピー つぎに,直 列接続タイプの場合 について述べ る。Sl― 2の 回路について考察する為,Fig。 3に 再 び S12の 回 ダ ンス・ スケー リング を行 なって得 られた回路 である。 路 を示す。直列接続 タイプの場合は解析の結果,先 の並 尚,こ の ときインピーダ ンス・ スケー リングを行 うこと 列接続タイプの場合 と異な り,新 たな抵抗 を付加するこ によ り,フ ィル タ特性 は保存 され る とい う性質 を利用 し とによっては新たな素子の生成,消 滅 は起 こらないこと ている。 また(b)に 対 す る実現 回路が(C)に 示 してい る。結 が分かった。しかし,筆 者 らは ng.3(ム )に 示す帰還抵抗 R。 の一方の端 子 1を ある端子 へ接続する ことによ り,新 果 として本 フ ィルタ回路 を,S21の たなシミュレーション回路 を生成することを見出した。 よ り,ア クティブーRで 実現 で きる ことがわか る。 ン回路 と P21の RMシ RDシ ミュレーショ ミュ レー ション回路 との結合 に その様子は Fig.3(b),(C)に 示 されてい る。端子 1-1後 続 によ リシミュレー トされた各素子値 R,C,Dは それぞ れ R。 , 1/R。 ・GBI, 1/RoGBIGB2と なる。 また,端 子 1,rの 代 りに端子 1-2接 続 の場合の各素子値 は,端 子 5. 3 2次 帯域除去 フ ィル タヘ の適用 ng.6(a)は 2次 帯域除去 フ ィル タの基本 回路 を示 した もので,(blは 5。 2の 場合 と同様 に,(a)に 複素角周波数 1-1接 続の場合 と同 じ値 を示すが,キ ャパシタンス Cと FDNC(D)1ょ 並列になることが分かる。 5 ア ク テ ィ プ 。フ ィ ル タ ヘ の 適 用例 ここでは各種 の回路素子 シミュレーションをアクテ ィ ブ・ フィルタに適用 した場合,特 にフィルタ構成 に有効 と思われる回路例を 3例 示すことにする。 5. l RCフ ィル タヘの適用 一般的な 3段 RCフ ィルタ Fig。 4(a)に おいて,点 線 で , い 「 (b) ‐ R 〇 一 巳 一 i9 ︲士・ v 上 RC filter ― ‐ ― ―【 ― ― ― ― ― ― -1「 ― ― ‐ ∴ (c) (b) Fig,4 G=1/R Fig.5 4th― order bandpass filter 1 鳥 取 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 14巻 6 む 本論文 は,演 算増幅器 を 1次 近似 モデルで取扱 い,素 子 シ ミュレー ションの新 しい回路 を提案 し,こ れ らシ ミ ュレー ション回路 の フィル タヘ の適 用 についての 1手 法 について述 べ た。特 に, 2∼ 3個 の演算増幅器 を用 い た 場合 の 2素 子および 3素 子直列 ,並 列接続 シ ミュレー シ c ョン回路 についで述 べ,付 加抵抗 に よる各 シ ミュレー シ 一 一 ョン素子の生成 ,消 滅 について も簡単 な例 で示 した。 ま ︺ 町 た,こ れ らの回路の フ ィル タヘ の適用例 として,ア クテ ィブーRフ ィル タについて述 べ た。 また, 4次 帯域通過 V 。 ︻ 出 一 V 1+RDs2 , i 噌 2次 帯域除去 フ ィル タヘ の適用例 を示 し, これ まで例 の 卜 (D/C)s+ROs2 少な い回路構成領域 へ の拡張性 を明 らかに した。 おわ りに,本 研究 を行 うにあた って種 々御討論頂 い た (b) 本学工 学部電気工学科福井裕教授 に対 して深 く感謝 いた します。 また,回 路解析 に御協力 いただ いた田中洋一君 に御礼 申 し上 げます。 引 i二〓 v 参 文 考 献 :` 演算増幅器 を用 い た LCシ ミュレー シ ョ ン回路 の実現 について″,電 子通信学会論文誌 A,J61 1)今 井 他 -A, No. 5, pp. 456-463, 1978. ` 他 : 1個 の差動型演 算増幅器 を用 い た イ ンダ クタシ ミュレー ション″,電 子通信学会技術研 2)野 口誠一 究報告 ,CAS (c) Fig.6 79 86,pp.1-6 3)R. H Riordan :(tSimulated inductors using differential amplifiers", ElectrOnics Lett, vol. 3, 2nd― order bandstop filter の逆 数 (1/s)で イ ンピー ダンス・スケー リングを行 って 得 られた回路 を示 してお り,そ の実現回路 は(C)に 示 され ている。本 フ ィル タ回路 は S21の 回路 を用 い てお り No 2, pp 50-51, 1967. 領 4)W, Saraga et al : A design Philosophy for microelectronic active― RC fileter'',Proc IEEE, ィル タヘ の適用が可能であ り,代 表的な 3例 を簡単 に述 vo1 67,pp. 24-33,No. 1, 1979 5)野 口誠 一 : `イ ンピーダンス・ スケー リング とシ ミ ュレー ションについて″,電 子通信学会技術研究報告 CAS 8ユ ー42,pp.39-46. べ た。 これ らの中で, 4次 帯域通過 フ ィル タおよび 2次 6)P V.Ananda Mohan:(Novel active Filters using , 回路構成 も容易であるので有用 な もの と思われ る。 以上 ,新 しいシミュレー ション回路 はアクテ ィブ・ フ , 帯域除去 フ ィル タについては,こ れ までの所 あ ま り報告 operational amphfier pOle", Electron. Lett., vol 例 が な く,電 子 回路構成 の新 しい手法 になると考 え られ 16,pp.378-380, 1980. る。ただ,こ れ らはすべ ての電子 回路 へ適用 され る もの ではな く,回 路構成 への新 しい 1つ の手法 となると思わ れ る。