Comments
Description
Transcript
がん医療における内視鏡治療の役割 ー大腸がんを中心にー
大腸がん 診断・内視鏡治療・抗癌剤治療 神奈川県立がんセンター消化器内科 高木精一 2012.1.14 大腸がんの診断 大腸がんの部位 大腸がんの症状 ・肛門に近い癌(直腸、S状・下行結腸) 血便、便通異常(下痢、便秘、 便柱狭小、残便感) ・肛門から遠い癌(横行・上行結腸、盲腸) 腫瘤触知、貧血 ・すべての部位 腹痛、腹部膨満、(便潜血陽性) 大腸癌がんが疑われたら ・大腸内視鏡検査 直接、大腸内を観察できる。 組織検査をして、癌の確定診断 ができる 大腸がんと診断されたら ・注腸検査(大腸のバリウム検査) 部位、大きさ、狭窄の程度 ・大腸内視鏡検査 腫瘍の性状、狭窄の程度、組織診断 ・胸腹部CT検査 周囲臓器浸潤、リンパ節転移、 遠隔転移(肝、肺など) 大腸がんの病期分類 ・がんの深達度 ・リンパ節転移 ・遠隔転移 大腸がんの病期分類 Stage 0 Stage Ⅰ Stage Ⅱ Stage Ⅲ Stage Ⅳ 粘膜内に限局 大腸壁に限局 大腸壁を超える リンパ節転移がある 遠隔転移がある 大腸がん治療ガイドライ ンに基づく治療 Stage 0 Stage Ⅰ Stage Ⅱ Stage Ⅲ Stage Ⅳ 内視鏡治療 手術 化学療法 大腸がんの内視鏡治療 大腸がんの内視鏡治療 ・ポリペクトミー ・内視鏡的粘膜切除術(EMR) 一括切除 分割切除(EPMR) ・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) ポリペクトミー 粘膜切除術(EMR) 内視鏡治療の適応 ・粘膜内のがん、粘膜の下への浸潤が 少量であると判断したがんのうち、内 視鏡にて切除が可能な病変は、まず、 内視鏡にて切除を行う。 ・粘膜の下への浸潤が高度であると判 断した病変、内視鏡にて切除すること が無理と判断した病変は、外科的手 術を行う。 内視鏡治療後 内視鏡にて切除した病変は、病理診断を 行い、その後の治療方針を決定する。 ・粘膜内に限局したがんは、経過観察。 ・粘膜の下に浸潤したがんは、浸潤の程 度と状態によって、治療方針を決め る。 病理診断の結果、がんが粘膜の下まで 浸潤していた場合の治療方針 ・追加腸切除 垂直断端陽性(がんが十分取りきれていない) ・追加腸切除を考慮 組織型が分化型がんでない 粘膜の下に1㎜以上浸潤している リンパ管や静脈への浸潤が認められる 簇出高度(バラバラと浸潤している) ・経過観察 上記すべて認めない 追加切除を考慮 ・局所のがんは取りきれている。 ・リンパ節転移の可能性がある。 10%ぐらい ・追加切除により、周囲のリンパ節の郭 清を行う。 ・個々の症例の身体的・社会的背景、患 者自身の意思などを十分考慮する。 内視鏡治療の合併症 • 出血(0.5-4%) • 内視鏡にて止血を行う。 必要があれば輸血を行う。 どうしても止まらなければ、緊急手術。 穿孔(0-0.3%) 内視鏡にて縫縮する(クリップ等にて)。 腹膜炎の可能性があれば、緊急手術。 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) • 2cm以上の腫瘍は分割切除になる可能 • • • 性が高い 分割切除では、局所再発率が高い ESDは胃がんの治療法として普及して きた 大きな病変に対しても一括切除ができ、 深達度診断や脈管侵襲などの正確な組織 診断が可能である ESDの問題点 • 大腸は壁が薄く、穿孔のリスクが高く、 • • 術者に高度な技術が要求される 合併症の頻度は、穿孔が数%‐30%、出 血が1‐3%程度である 現在、大腸ESDは高度先進医療として行 われている。 大腸がん治療ガイドライ ンに基づく治療 Stage 0 Stage Ⅰ Stage Ⅱ Stage Ⅲ Stage Ⅳ 内視鏡治療 手術 化学療法 大腸がんの化学療法 Stage Ⅳ大腸がん Stage Ⅳの大腸がんの治療方針 ・転移部位 切除可能 原発部位 切除可能 原発部位 切除不能 ・転移部位 切除不能 原発部位 切除可能 原発部位 切除不能 手術 化学療法 原発巣による症状あり 手術+化学療法 原発巣による症状なし 化学療法 化学療法 大腸がんの化学療法 抗がん剤 ± 分子標的薬剤 大腸がんで使われる主な抗癌剤 ・5-FU (+レボホリナート) ・カペシタビン (経口薬) ・オキサリプラチン ・イリノテカン 大腸がんの化学療法 ・FOLFOX 5-FU+レボホリナート +オキサリプラチン ・FOLFIRI 5-FU+レボホリナート+イリノテカン ・CapeOX カペシタビン+オキサリプラチン FOLFOX療法 5-FU 急速静注 ロイコボリン2時間 5-FU 46時間持続 オキサリプラチン2時間 1回の治療に3日間 2週間毎に繰り返す FOLFIRI療法 5-FU 急速静注 ロイコボリン2時間 5-FU 46時間持続 イリノテカン2時間 1回の治療に3日間 2週間毎に繰り返す CapeOX療法 オキサリプラチン2時間 カペシタビン 14日間経口 1週間休薬 3週間毎に繰り返す 抗がん剤の副作用 ・骨髄抑制 白血球減少、貧血、血小板減少 ・消化器症状 口内炎、悪心、嘔吐、食欲不振、 下痢 ・主要臓器障害 肝、腎、心、肺 ・脱毛、皮膚症状、末梢神経障害(しびれ) ・アレルギ― オキサリプラチンの抹消 神経障害(しびれ) ・低温との接触、冷水の摂取により誘発 あるいは悪化する。 ・ほとんどが数日で改善するが、投与量 の増加とともに持続期間が延長する。 ・字が書けない、紙がめくれない、ボタ ンがかけられない、などの症状が出現 し、重篤化すると、歩行や車の運転が 困難になる。 カペシタビンの 手足症候群 ・手や足の、しびれ・痛みなどの感覚 の異常 ・手や足の皮膚の、赤み・むくみ・色 素沈着・角化(皮膚表面が硬く、 厚くる)・ひびわれ・水ぶくれ ・爪の変形・色素沈着 分子標的薬剤 ・抗VEGF抗体 ベバシズマブ ・抗EGFR抗体 セツキシマブ パニツムマブ ベバシズマブ • 血管内皮増殖因子(vascular endothelial • • growth factor ; VEGF)に対する遺伝子組 み換え型IgG1ヒト化モノクローナル抗体 血中のVEGFと特異的に結合し、血管内 皮細胞のVEGF受容体への結合を阻害す ることにより血管新生を抑制する。 腫瘍の血管を正常化し、間質圧を減少さ せることにより抗悪性腫瘍剤の透過性を 改善する。 ベバシズマブの副作用 ・高血圧 ・創傷治癒遅延 ・出血 ・たんぱく尿 ・消化管穿孔 ・血栓症(肺塞栓、心筋梗塞、脳梗塞) ・可逆性後白質脳症症候群 抗EGFR抗体 ・EGFRは多くの固形癌に発現している EGFに対する受容体で、正常上皮細胞 の増殖因子の受容体であり、また上皮 系癌細胞の増殖因子の受容体でもある。 ・EGFR(epidermal growth factor receptor) に対する抗体製剤 ・EGFR機能を阻害することにより、細胞 増殖、細胞の生存、血管新生、転移拡散 を抑制する。 抗EGFR抗体 KRAS 遺伝子変異の検査が必須 ・変異なし(約60%) 効果あり 使用可能 ・変異あり(約40%) 効果なし 使用不可 抗EGFR抗体の副作用 • 皮膚障害、特ににきび様皮疹。 • 皮疹の発現と奏効には相関が認めら れる。 皮膚障害をうまくコントロールし、 なるべく長く投与できるようにする。 大腸がんの化学療法 ・効果が期待される抗がん剤、分子標的 薬剤がある。 ・切除不能が切除可能になることがある ・副作用が強ければ、減量や、薬剤の変 更を行う。 ・がんとうまく共存し、延命を図る。 ご清聴ありがとうございました