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小脳血管芽腫(Lindau病)の 1例
圃 小脳血管芽腫(Lindau病)の 1例 三宅 一 松 崎 和仁 小松 島赤十字病院脳神経外科 要旨 小脳血管芽腫 は組織学的には良性腫療で・成人の小脳半球に好発し、全頭蓋内腫蕩の 2%前後を占める比較的まれな 腫露である 。今回、腎謹胞を伴った多発性小脳血管芽腫の 1例を経験したので報告する。 症例は 51 歳の女性で 、 8年前に 小脳血管芽腫の摘出術を施行されている 。今回、初診の約 2週間前より 頭痛を訴えて いた 。初診時、神経学的には頭痛以外異常は認められなかった。 CTで、右小脳半球 に謹胞を伴っ た大きな腫蕩が、また 左小脳半球に小さな腫療が認められた 。右小脳半球の腫療に対し摘出術を施行した 。組織診断は血管芽腫であ った。左 小脳半球の 1重躍 は深部に位置 しているためガンマナイフ治療で経過をみている 。本症例は 腎謹胞、卵巣謹腫を合制 して いたが、眼底には異常なく リンド 一病と診断した 。 キーワード・血管芽腫、リンド一 病 管 とする血流豊富な腫蕩が認められ、 左小脳背面の腫 はじめに 蕩も確認さ れた ( Fi g 2) 。 腹 部 CTでは左 腎 に腎嚢 胞が見られたが、その他の臓器には異常を認めなかっ 血管当ニ!毘は成人の小脳半球に発生する良性腫壊であ た ( F i g 3) 。 るが、多発することもあり、発生部位によっては根治 手 術 :入院後症状は急速に進行 し 、 頭痛、 1 I [ ! T h 吐が高 困難な こと もある 。今回、初回手術より 8年後 に再発 度となっ たため を見た小脳血管芽腫の 1例を経験したので報告する 。 側臥位で右側をやや広めに開けた T字切開を後頭蓋 7月 1 9日開頭術を施行した。手術は左 富に行っ た。硬膜を切開すると 真 っ赤な腫療が出現し 症 例 栄 養血 管 である 後 下小 脳 動 脈 の 枝 も 確 認 さ れ た ( F i g 4) 。腫傷 と小脳組織の境を模索しつつ 腫虜 の摘 患 者 :5 1 歳女性 出に取り掛か ったが、 腫療にわずかに触れただけで出 主 血し摘出には時間を要 した。腫壊を摘出すると深部に 訴:頭痛、幅吐 家族歴 :特記すべきことなし 。 cyst壁が出現した 。取り残した腫壌のないことを確 既往歴 :昭和 4 4年 に右卵巣 護 腫で手 術、また、昭和 認 し硬膜、頭皮を閉じ手術を終了した。組織診断は血 6 3 年に小脳血管芽腫で関頭術を施行された。 管芽腫であった。 現病歴 :平成 8年 7月初旬 より頭痛が発生、次第 に増 術後経過:術後 、 頭痛 、 II~ 吐は 完全 に消 失 した 。 また 強したため、 7月 1 6日来院した。 新 た な 神 経 脱 落 症 状 も 出 現 し な か っ た。 入 院 中、 神経学的所見:強度の頭痛 と1I~吐を訴えたが、 意識は MRIで全脊髄の検索を行ったが脊髄に血管芽腫 は認 清明 、眼球運動、眼底所見には 異常なく 、 四肢 にも められなかった 。術後の経過は良好で一 ヶ月後退院し 小脳症状は認められなかった。 た。 血液生化学的検査 :特に異 常 は認められなか った。 一方、左小脳半球の血管芽腫に対 してはその後経過 画像診断:CTでは右小脳半球に cystをともなった を観察 していたが1 重傷の増大を抑制する目的で、平成 楕円形の腫壌が認められ、また水頭 症 を来 していた 9年 3月ガンマナイフによる治療を行った。現在経過 ( F i g -l )。 さらに、左小脳半球背面にも小腫蕩が確認 観察中であるが、やや増大 しつつあるように 思 える された。血管造影では右後下小脳動脈を主要な栄養血 ( F i g 5) 。 VOL. 3 NO . 1 MARCH 1 9 9 8 小脳血管芽腫 ( Lindau病)の 1例 63 Fig-1:CE-CT scan revealed two tumors and hydrocephalus. Fig-2・ Vertebral angiogram. Large tumor i n r i ght cerebellum, showing marked staining, wasf e d by the right PICA and small tumor i n l e f t cerebellum wasf e dby the l e f tSCA. Fig4 : Thetumori nrightcerebellar hemisphere and feeding artery. Fig-3:Abdom川 a l CT scan with CE(lower) and without CE(upper) showed the cyst i n the l e f t kidney. . The tumor i n right Fig5:Postoperative MRI cerebellarhemispherewasremoved. 6 4 小脳血管芽腫 (Lindau病)の 1例 Komatushima Red Cross HospitalMed icalJournal 考 察 まとめ 小脳血管芽腫 に肝、 腎、騨等 に嚢胞または腫虜の 合併 した場合、 Li ndau病、さ らに網膜血管芽腫の合 onHippe l -Lindau病 と呼ば れ る。 併 した 場合を v :1)、全脳腫 壌の約 2%をしめる 。好発部位は小脳半球であるが、 小脳虫部や脳幹、脊髄にも発生す る。多発症例 も1 2% に認めら れる。今回の症例では、眼底 には異常が認め られず、腎嚢胞 と以前に卵巣嚢腫で手術を受けていた ことより 、 Lindau病 と診断した。 また、 今回手術部 位の臆療 は、初回手術より 8年を経過してい ることよ り、新たに発生 したと 考えたが、前回手術部位 とき わ めて近い部位に発生 していることよ り前回手術の取り 残 しと 考え られないこともない。何れにして も本腫壊 には良性腫壊であり ながら完治さ せ ること の困難 さを 痛感させられた。 好発年齢 は 3 5~45歳 で 男性 に 多く ( 2 方、本腫療 に対す る放射線療法の効果 は明かでは ない。多発性の場合小脳全域に照射をす ることが多 い もよう であるが、単発例では今回行っ たよ うにガ ンマ ナイフ の適応と 考え られるように なっ た。但 し今のと ころ症例数が少 な く f ol l o w up期間 も短 いた め どの 程度の効果があ るのか不明である 。 治療上の留意点を緒家の報告 と今回の症例の経験を ふまえてまと めてみ ると、 # 1 多数回手術にそ なえ皮切は正中 また は T字状 切開と する 。 #2 大 きな護胞 は一気に穿刺す ると立体関係を見失 いやすい ので注意を要する 。 # 1 8年後に再発 した小脳血管芽腫の l例を報告 し f こ。 #2 ガン マナイフ 治療を行 い経過観察中である 。 # 3 手術は多数回手術を予測 した計画を立てる必要 がある 。 最後 にガ ンマナイフ治療 に御協力いただきました 大阪市立総合医療センタ ー脳神経外科岩井謙育先生に 深謝し1たしま す。 文 献 1) 石田 陽一 :He mangiobl a st oma. 脳腫痕 臨 │床 病理 カラ ーア トラス、 pp1 0 01 0 2,医学書 院 、 東京、1 9 8 8 2)岡 一成、北村勝俊 :血管芽腫の 臨 床 脳 神経外 l ' i -1 0:9 1 1 9 2 1,1 9 8 2 3)Re ngachar ySS:He mangiobl astoma. I n:Neurosurgery ( edbyWil k i n sR H,Ren7 2-7 8 2, McGraw-Hil l, gachar y SS), pp7 NewYork, 1 9 8 5 b in s t e i n LJ Pathol ogy o f 4) Russ e l l DS, Ru d Tumors o ft heNervousSystem,E.Arnol ,5 t hed,p 6 3 9 6 5 7London,1 9 8 9 Publ 5)鷲 山和夫、田中隆一 :脳腫壌の組織診断 ア トラ ス ( 11 )Hemangioblastoma. 脳 神 経 外 科 1 8:3 23 32 8.1 9 9 0 #3 摘 出は nidusぎりぎりで行 うが、 取り残 しの ないよう 注意を要す る。 #4 摘出困難な腫壊には少数個なら ガ ンマナイフ、 多数個な ら全小脳照射をおこなう 。 # 5 大 きな腫壊には塞栓術の併用 も有効。 #6 多数回手術で小脳実質の絶対量が減少しても小 脳症状は軽度のこと が多 い。 以上の ようであるが、発生部位によ っては治療困難 と なる ことも稀ではないよ うである。 VOL. 3 NO .1 MARCH 1 9 9 8 小脳血管芽腫 ( Lindau病 )の 1例 65 A Caseo fCerebellarHemangioblastoma (Lindau' sdisease) HajimuMIYA KE, KazuhitoMATSUZAKI D i v i s i o no fNeurosurgery,KomatsushimaRedCrossHospital Hemangioblastomas are h i s t o l o g i c a l l y benign tumors occuring e x c l u s i v e l yw i t h i nt h e neuraxis, most o r1 .5t o2 ,5 p e r c e n to fa l li n t r a c r a n i a ltumors, commonlyi nt h ep o s t e r i o rf o s s a, Theyaccountf This5 1 y e a ro l dwomans u f f e r e dfromheadachef o rtwoweeksbuthadnootherc l i n i c a lmanifestations, CT scan r e v e a l e d two tumors i nt h ec e r e b e l l a r hemisphere, and c y s ti nt h e kidney, Resection o ft h e tumorwasobtainedandt h eh i s t o l o g i c a ld i a g n o s i swashemangioblastoma , Keywords: hemangioblastoma,Lindau's d i s e a s e 3-6 6,1 9 9 8 KomatushimaRedCrossHospitalMedicalJournal 3:6 6 6 小脳血管芽腫 (Lindau病)の 1{~IJ Komatushima Red C r o s sH o s p i t a lM e d i c a lJ o u r n a l