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第3回海外実証試験調査

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第3回海外実証試験調査
平成 18 年度第 3 回海外実証試験調査-1
1.2006 Alternative Transport Energies
Conference
2.LG Chem
3.GM Daewoo
4.韓国 MOCIE
平成19年3月
財団法人 日本自動車研究所
.
訪問先一覧
日付
訪問調査対象
9 月 11 日(月)
∼
9 月 13 日(水)
2006 Alternative Transport
9 月 14 日(木)
9 月 15 日(金)
訪問地
訪問者
パース(オーストラリア)
丹下
LG Chem
大田(韓国)
丹下
GM Daewoo
仁川市(韓国)
丹下
MOCIE
果川市(韓国)
丹下
Energies Conference
調査担当者
氏 名
丹下昭二
会社・団体名
日本自動車研究所
所属/役職
FC・EV センター技術参与
−165−
.
−166−
1.2006 Alternative Transport Energies Conference
– Another STEP towards a sustainable future
Perth, Western Australia
訪問先
訪問日時
主な調査項目
2006 年 9 月 11 日(月)∼13 日(水)
STEP Conference における実証試験の動向調査
1−1 概要
2006 年 9 月,オーストラリアのパースにて,代替燃料輸送に関するカンファレンスが
開かれた。3 日間に渡って,3 つのテーマ
Action
National and International Policy and
Industry Strategic Direction and Action
Project Trial Result and
Research に関する講演およびディスカッションが行われた。同時並行的に開催された
Concurrent Session においては,水素燃料電池の運転試験やデモンストレーション,水
素と代替燃料技術や輸送用燃料のアセスメントなどをテーマとして発表やディスカッ
ションが行われた。また,Poster Presentation も行われた。
プログラムを表 1-1∼表 1-3 に示す。
−167−
表 1-1 プログラム:1 日目
−168−
表 1-2 プログラム:2 日目
−169−
表 1-3 プログラム:3 日目
1−2 発表内容
ここでは,Grand Ballroom1 で開催された 3 つのテーマ National and International
Policy and Action
and Research
Industry Strategic Direction and Action
Project Trial Result
における主な講演について整理する。同時並行的に開催された
Concurrent Session および Poster Presentation については割愛する。
1−2−1 National and International Policy and Action
(1) California’s experience in addressing environmental and energy changes:
Lessons from alternative fuels, advanced technologies, air pollution and climate change
発表者:Alan Lloyd, International Council on Clean Transportation
カリフォルニアでは,この 40∼50 年間,環境保護と公衆衛生に係わる挑戦を続けて
きた。そこで取り組んだ戦略は,後に続く人たちの政策を推進する上で豊かなデータベー
スを提供する。また,人口の増加と交通量の増加にもかかわらず,カリフォルニアの大
気環境は十分に改善した。
−170−
カリフォルニアにおける強力な環境保護施策は,一貫した公共の圧力,法律の制定,
管理組織および環境保護グループにより維持されている。
移動発生源と固定発生源に対しての,強力な技術強制条例は,直接的に排ガスを減ら
すのに効果があった。また,古い車両を道路から取り除くための報奨制度が成功を収め
た。
ガソリンや軽油といった従来から使われている燃料をよりきれいにすること,および
代替燃料の使用促進は,重要なシステムアプローチだった。
代替燃料はあまり普及しなかったが,それらはニッチ市場で利用され,従来燃料のク
リーンアップに拍車をかける一因となった。また,燃料の多様性は,エネルギーセキュ
リティーとエネルギーの多様化のためにますます重要となってきている。
BEV,HEV,FCV といった電動車両は将来の輸送における主要な役割を担うことが
可能である。カリフォルニアでは,主に ZEV 規制によって電動車両の導入を推進して
きた。図 1-1 には,ZEV 規制による PZEV ならびに AT PZEV(HEV)の普及台数の推
移を示している。2005 年までに 42 万 5 千台の PZEV と,7 万台の AT PZEV(HEV)
が販売された。また,100 台の FCV が実証走行を行っている。
図 1-1 カリフォルニア ZEV 規制の経緯
運輸分野におけるエネルギーの多様化やエネルギーセキュリティの確保,大気汚染防
止や地球温暖化への対応の包括的な戦略として,カリフォルニアは,以下に取組んでゆ
く。
◆ 短期的:エネルギー効率の向上,ディーゼル車,天然ガス車への転換促進
◆ 中期的:バイオエタノール燃料の導入,ハイブリッドや plug-in ハイブリッド車(?)
の普及促進
−171−
◆ 長期的:水素燃料化(FCV と内燃機関),バッテリ EV(?)の導入促進
カリフォルニアでは,CaFCP や ZEB(Zero Emission Bus) 規制,カリフォルニア
水素ハイウェイネットワークプロジェクトを通じで,水素に関するの取り組みのリーダ
シップを取っている。具体的には以下のとおりである。
◆ 21 箇所の水素供給ステーションの設置
◆ 100 台以上の FCV の実証走行(CaFCP)
◆ 7 台の FC バスが実証走行
◆ CaFCP の実施
◆ カリフォルニア定置用燃料電池共同体の設立
◆ カリフォルニア水素ビジネス協議会の設立
ZEB 規制における Zero Emission Bus とは,水素燃料電池バス,トロリーバス,バッ
テリ電気バス,およびこれらのハイブリッド駆動バスと定義される。ZEB 規制によって,
200 台以上のバスを保有する(2001 年 1 月 31 日現在)「ディーゼルパス」を選択した
バス事業者は,ZEB の実証走行プロジェクトの実施が義務付けられる。さらに,
「ディー
ゼルパス」「代替燃料パス」を選択した事業者とも,早ければ 2008 年から,新規バス
車両の購入に対して一定の割合の ZEB の購入が義務付けられることとなる。
カリフォルニア水素ハイウェイネットワークプロジェクトは,シュワルツネッガー知
事のトップダウン型リーダシップによって開始されたプロジェクトであり,輸送用燃料
として水素の利用を政策的にサポートすることがその政策の柱となっている。プロジェ
クトは 3 つのフェーズから成り,その目標値を表 1-4 に示す。
表 1-4 フェーズ別数値目標
数値目標
水素ステーション
Light-Duty
FCV&ICEV
Heavy-Duty
FCV&ICEV
定置用および
オフロード車
フェーズ1
フェーズ 2
フェーズ 3
50−100 箇所
10,000 箇所
20,000 箇所
2000 台
10,000 台
20,000 台
10 台
100 台
300 台
5台
60 台
400 台
また,知事のリーダシップの下,カリフォルニアでは,地球温暖化に対しての行動を
開始した。カリフォルニアにおける GHG 排出削減目標を表 1-5 に示す。
−172−
表 1-5 カリフォルニアにおける GHG 排出削減目標
2010 年までに,2000 年の排出レベルまで削減
2020 年までに,1990 年の排出レベルまで削減
2050 年までに,80%以上を削減し,1990 年以下のレベルまで削減
気候変動に対する懸念の増加が,温室効果ガスの減少とカリフォルニアにおける積極
的な削減目標の割り当てを定めるきっかけとなった。燃料効率を改善するための,強力
な国内政策は重要である。また,車両効率の向上,再生可能燃料や低カーボン含有燃料,
再生可能エネルギーの使用を進めていくことが必要である。
(2) The fuel cell bus trials CUTE, ECTOS and STEP – Results and Learning
発表者:Walter Rau, DaimlerChrysler
2000 年に,アムステルダム,バルセロナ,ハンブルグ,ロンドン,ルクセンブルグ,
マドリード,ポルト,ストックホルム,シュツットガルトの交通局は,燃料電池バスと
水素フリートテストに参加することを決定した。BP,Norsk Hydro,シェル,Vattenfall
といったインフラをリードする会社や,DaimlerChrysler とそのバス子会社である
Evobus も参加した。その数ヶ月前には,レイキャビックにおける 3 台の燃料電池バス
プロジェクト,ECTOS プロジェクトが決定していた。2003 年には,オーストラリアで
の STEP プロジェクトがこの燃料電池バスフリートプロジェクトに加わった。
これらのプロジェクトは 2006 年 8 月までに全て終了し,すばらしい成果が得られた。
CUTE,ECTOS,STEP は大成功であった。FC バスと数種類の水素インフラは驚くほ
どに高いレベルの有効性を発揮した。また,プロジェクトは水素を利用した輸送システ
ムの現実性を実証した。
500 万人以上がこの燃料電池バスを体験した。また,CUTE プロジェクトにおける走
行距離と運転時間は,他のどのプロジェクトと比べても非常に大きいものである。この
プロジェクトにより,燃料電池や電動駆動方式,水素生産プラント,水素ステーション
に関する改良点が確認された。表 1-6 にシターロバスに関して実証によって明らかに
なったことを整理する。
−173−
表 1-6 FC シターロバスの実証走行運転により明らかになった技術的な成果・課題
バラード製重量車用
FC スタックモジュール
電気駆動システム
高電圧機器
インバータ
・初の小規模大量生産品
・期待以上の寿命であった
・高性能で信頼性が高いことを実証
・依然として高価である
・良好な重量性能比
・CVM Board は改善された
・高い信頼性
・ディーゼル機関に近い稼動パターン
・エネルギー効率は改善された
・快適性に関する側面は改善の余地あり
・依然として電動車両における主要リスクのひとつ
・自動車への適用可能性を実証
・高価である
・冷却材のアップグレード前は平均で 500 時間ごとに故障
・アップグレード後は平均で 2000 時間ごとに改善
・故障は,インバータが高温時に発生
燃料電池バスに関する次世代プロジェクトとして,HyFLEET:CUTE がある。このプ
ロジェクトで DaimlerChrysler の水素 FC バス 33 台が,欧州 7 都市,パースおよびパー
ス近郊部,北京で運行される。CUTE/ECTOS の水素ステーションを引き続き使用して,
最適化や信頼性の向上,エネルギー効率の改善を図る。そして,次世代の水素燃料ハイ
ブリッド FC バスを設計して,製造し,テストを行う予定である。
1−2−2 Industry Strategic Direction and Action
(1) Alternative fuels programme in India
発表者:Pamela Tikku, National Automotive Testing and R&D Infrastructure project
石油や石炭といった再生可能ではない輸送用エネルギー源の問題は我々の存在そのも
のを脅かしている。燃料供給は,経済的な進歩を維持し保証するために非常に重要であ
る。一方で,石油の輸入による赤字予算の発生や環境の悪化といった問題も生じている。
それでも,石油は燃料として,また多数の化学製品の原料として,将来も必要である。
今世紀に入ったときから,輸送用代替燃料の本格的な研究,開発,実証試験はエネル
ギー戦略上の重要な要素である。インドにおいては,1990 年代,自動車が急激に増大し
た。輸送燃料の消費は,年率 5%で成長し続けている。これは急速に地下鉄の整備が進
められている中で,支払バランスに多大な圧力を与え,大気汚染問題も発生させている。
こういった全ての問題を克服するために,国に代替燃料技術を取り入れる必要がある。
省エネルギーとエネルギーセキュリティは 1970 年代のエネルギー危機のときから重
要な問題であった。エンジンからの排ガス規制は,都市部の大気汚染改善のため,ます
ます厳しくなっている。そのため,アルコール(メタノールやエタノール),バイオディー
−174−
ゼル,ガス燃料(CNG,LPG,水素)といった代替燃料に対する広範な研究が行われて
いる。
現在多くの国で使われている主要な代替燃料は天然ガスおよび天然ガスから作られる
メタノールである。輸送部門で可能性のあるその他の代替燃料は,アルコール類,LPG,
バイオディーゼル,水素である。将来の厳しい排ガス規制を考えると,ハイブリッドと
燃料電池技術が優位になってくる可能性が高い。
インド政府は,インドで利用できる燃料供給源に関して開発を行っている。さらにイ
ンド政府は,輸送用アプリケーションおよび発電の両方について,バイオ燃料と水素エ
ネルギー導入のロードマップを策定した。
利用可能な代替燃料を賢明に混合して用いることは,エネルギーセキュリティ問題の
解決になる。それぞれの国が,その地域で利用可能な供給源を見いだして,それらの天
然資源を最適化して使用する必要がある。インドでは,非食用油から作ったバイオディー
ゼルを用いることとした。カランジャ,ヤトロファ(Karanja,Jatropha:半乾燥状態
でも植えられる油糧植物)の種が原料となる。多くの政府関係者が協働して,こうした
バイオディーゼルのインフラの開発を進めている。また,政府はバイオディーゼル購入
促進のための政策を整備してきた。
現在にインドにおいて,バイオディーゼルは,鉄道および多くの州での公共バスによっ
て試験的に使用されている。DaimlerChrysler はインドの大学とドイツの大学と共同で,
バイオディーゼル自動車の試験走行を実施中である。
インド国家水素エネルギー委員会は輸送用水素について,次のような道筋を明らかに
している。
9
短期(2006 年):CNG に 10%∼30%の水素を混合させる
9
中期(2008 年):水素内燃機関自動車の開発
9
長期(2015 年):燃料電池自動車の開発
代替燃料の導入のための鍵となるのは,インフラの整備,経済的な実現可能性,安全
な使用,導入しやすさ,車両の存在,標準化の推進,使用へのインセンティブ,国民意
識の向上といったものである。
(2) Biofuels and hydrogen – diversifying transportation energy sources
発表者:Richard Zalesky, Chevron Technology Ventures
2025 年には,世界全体において,現在より 40%以上多くのエネルギー消費が見込ま
れている。世界の石油需要は毎年 1.4%増加し,天然ガスの需要は毎年 2%以上増加する
と予想されている。そのため,我々は全てのエネルギー形態について,さらに効率的な
利用を推進しなくてはならない。
−175−
シェブロンの子会社である Chevron Technology Ventures (CVT)では,一連の実
証プロジェクトに参画し,水素やバイオ燃料といった効率的で経済的に実現可能なエネ
ルギー源をどのよううに製造するかという研究を行っている。
バイオ燃料に関しては,現在,セルロースを含む広い範囲の原材料を用いた次世代の
燃料生産プロセスの開発,ならびに小規模供給用の生産方法の改良に注力している。世
界の地域別の取り組み状況を表 1-7 に示す。
表 1-7
欧州
北米
豪州
ブラジル
タイ
世界におけるバイオ燃料に関する取組状況
・オランダにおいて,バイオディーゼル燃料の試験利用を実施中
・油圧システム用オイル BIOSTER®のマーケティング中
・ガソリン販売網の 30%で,エタノール混合ガソリンを販売
・カリフォルニア州で,E85 の実証プロジェクトに参画
・北米における最初のバイオディーゼル製造工場である Galveston Bay
Biodiesel に出資
・Caltex Australia によって,クイーンズランドの約 40 のステーションに
おいてエタノール混合ガソリンを供給中
・Caltex Australia は,バイオ燃料農場の Dalby Bio-refinery の立ち上げ同
意書に調印した。
・バイオディーゼルを農場用機器燃料として利用する実験を実施中
・Caltex Thailand によって,エタノール混合ガソリンが販売中
米国における水素供給インフラの実証試験プロジェクトは,公共と民間企業のパート
ナーシップによって実施されている。すなわち,複数年にわたって,連邦政府と州政府,
他の民間企業パートナーと資金をシェアしながらプロジェクトを推進している。シェブ
ロンが提供する水素ステーションは,水素 FCV とその他定置用発電アプリケーション
のための水素供給を考慮して設計されており,現在,カリフォルニアとフロリダ,ミシ
ガン州と戦略的なパートナーシップを結び,展開している。現状では,利用が制限され
ている状況にあり,公共的な利用には供されてはいない。
オークランドにおける AC Transit とシェブロンの水素ステーションは,公共と私企
業の画期的なパートナーシップによって,最新技術によって建設されたものである。ス
テーションでは,3 台の水素バスと少なくとも 10 台の Light-duty 車両に燃料を供給し
ている。水素は,オンサイトで天然ガスの水蒸気改質によって製造されている。この実
証試験は,水素に対する地域社会の受容性を推し測る良い機会となっている。
水素燃料へ移行するための課題として,以下のようなものが挙げられる。
9
水素の生産コストは比較的高く,ガソリンより非常に高価となる。そのため,
低コスト化のためのブレークスルーが必要である。
9
水素の短期的な生産方法においては,効率とエミッションの性能向上が必要で
ある。
−176−
9
水素供給ステーションは新しく,試験が完了していないので,学習曲線はまだ
急勾配であり,高コストで,経験は限定的である。
9
水素燃料自動車は限定的で,さらに水素の製造コストの価格を押し上げている。
9
車載可能な水素量を増大させる必要がある。
9
水素燃料電池は高価であり,信頼性と耐久性,性能の改善が必要である
9
水素の安全性に関する教育が必要である。
(3) Safety and security leranings and recommendations for hydrogen refueling stations
発表者:Anne Marit Hansen, Norsk Hydro
CUTE と HyFLEET:CUTE プロジェクトは,バスにおける水素と燃料電池の世界を
リードする実証プロジェクトである。品質と安全性に関する新しい知識がもたらされ,
シ ス テ ム と ハ ン ド リ ン グ が 改 善 さ れ た 。 FC バ ス は 試 験 中 に 改 善 さ れ , 供 給 元 の
DaimlerChrysler の予想よりも高い性能を発揮した。
水素ステーションの技術は,予想通り不十分であった。水素供給システムにおいては
コストを下げ,必要面積を減らし,ユーザインターフェースをもっと良くするように改
善する必要がある。
CUTE プロジェクトでは,共通のアクシデント報告システムが導入され,試験期間中,
全てのサイトで担当者が安全性に関連するアクシデントの入力を積極的に行った。こう
した報告において,コンポーネントとステーションの取り扱いに関する共通の課題を明
らかにすることができた。こういった報告や,会合,電話会議による相互連絡は,これ
らの課題を一緒に解決しようというチームの姿勢と決意をもたらした。そして,ノズル
やホース,オペレーション手順などの改良がなされていった。
図 1-2 から図 1-5 に CUTE 等の実証プロジェクトから得られたトラブルなどの結果を
示す。
−177−
図 1-2 CUTE(2003-2006)において報告されたトラブル状況
図 1-3 CUTE,ECTOS,STEP における安全性に係わるトラブルの状況
−178−
図 1-4 CUTE における水素ステーションの稼動率(トラブルによる停止を除く)
安全性にかかわるトラブルが 22 件報告された。
ディスペンサーのホースに係わるトラブルが多く,
現在のものをより小径のものに置き換えている。
図 1-5 HyFLEET:CUTE におけるトラブル状況(2006 年 1 月−9 月)
安全性に係わる仕事は,実際の経験に基づいており,また,BP,Total,Shell,Air Liquid,
Vattenfall Europe といったインフラパートナーからの影響も受けている。リスクに基
づく安全管理,すなわち危険を認識してそれを減らすという方針がよい結果をもたらし
た。
これまでのプロジェクトで学習したことは,品質と安全性に対して絶え間なく注意を
向けていくということである。新しい燃料を市場に投入する際には,安全性を一番のプ
ライオリティに置き続けなくてはならない。
−179−
(4) UTC Power overview and outlook for the future
発表者:Michael Tosca, UTC Fuel Cells
燃料電池は様々なエネルギーに対する関心事(石油の海外依存度の減少,確実な高品
質の信頼できる電力をもたらすこと,有害な大気と温室効果ガス排出の減少,エネルギー
効率の向上)に対する改善の機会を提供する。
市民への啓発,水素に対する受容性を形成し,現実的な水素供給基盤を確立し,継続
的な投資を促進するためには,短期間における FC の成功が必要とされる。また,国に
よる持続的な資金供給が約束されていることも,成功のためには重要である。
UTC Power は,40 年以上にわたって燃料電池技術の発展と導入をリードしてきてお
り,以下のような実績がある。
9
アメリカの有人宇宙飛行に使われた,全ての燃料電池を提供している
9
19 カ国の顧客に対して,200kW 級の定置用燃料電池 275 台を販売ており,総
運転時間は 1.3 億 kWh(2006.6 現在)となっている。
9
現代,日産,BMW を含め,多くの自動車メーカのために燃料電池を開発してい
る。
9
カリフォルニアで運行されている 4 台の燃料電池バスは,UTC Power の 120kW
の燃料電池が搭載されている(表-1-8)。
表 1-8 PureMotionTM120 燃料電池システム
120kW
コンプレッサーを必要としない設計
モジュール化,コンテナ化
簡易なインタフェース
メンテナンスが容易
高耐久性
UTC Power は定置用および輸送用 FC 市場のため,その技術解決の開発について国防
省,エネルギー省,運輸省と一緒に取り組んできた。様々なマーケットに対して長期に
わたって関与したことによって,UTC Power は,FC の現在の状況や技術を論じる上で,
独自の視点を提供している。
FC バスは上述の関心事のために,戦略的に重要であり,短期的なポテンシャルを有
している。2002 年には,路線バスは 1 日に 4 万 3 千バレル相当の原油を消費していた。
カリフォルニアにおける燃料電池ハイブリッドバスにおける路線運行の実証走行で,同
等のディーゼルバスよりも燃費が 2 倍良い(表 1-9)。FC 路線バスおよびその他 FCV
−180−
は,大気汚染の改善と温室効果ガス排出の削減と同様,近い将来原油輸入量を減らす機
会を提供する。
表 1-9 路線バスの比較
PARANETER
Acceleration(sec to 48km/h)
Acceleration(sec to 80km/h)
Weight(kg)
Interior noise(dB stooped)
Interior noise(dB@80km/h)
Fuel consumption(kg/100km)
VanHool A330
Fuel cell bus
15
36
16,300
56
69
8.2
Diesel bus
20
31
13,140
72
78
16.9
バスに必要な耐久性として想定されるのは,システム寿命 4 万時間で 1 日に 12∼16
時間の運行であるが,これには頻繁な起動停止も含まれている。 当社ではカリフォルニ
アにて現在運行中の AC Transit と Sun Line Transit の計 4 台の FC バスに対して,4
千時間の保証をしているが,2015 年までにこれらの寿命を 2 万 5 千から 4 万時間に増
やす技術計画を立てている(図 1-6)。
図 1-6 FCB の技術ロードマップ
−181−
FC バスは集中して燃料補給やメンテナンスが可能なため,そのコスト目標は普通の
自動車やインフラが要求するものよりも寛容である。我々はバスの注文を集めて,量産
体制を可能にして短期での商業化へとつなげるために,活発に世界的なチャンスを追い
かけている。
(5) An overview of alternative fuels in the USA
発表者:Lisa Callaghan, Breakthrough Technologies Institute
Breakthrough Technologies Institute(ブレークスルー技術研究所)は,1993 年に設
立された非営利団体である。政策審議において,環境技術(水素および燃料電池,バス
高速交通機関,特に輸送分野に関する大気環境/気候変動)に関する意見を提供している。
アメリカではガソリン価格の上昇によって,メディアおよび政府当局から,代替燃料
および新しい車両技術が注目を浴びている。しかし,実際のマーケットや研究開発上で
は何が起きているのか,そしてよりきれいな輸送技術を進めるという政府の施策はどん
な効果をもたらすのかということについて発表したい。
個人ユースの自動車市場においては,ガソリン価格の急上昇にもかかわらず,新しい
燃料や技術に対する消費者需要はまだ比較的低い。一方では「ハイテク」であるハイブ
リッドや燃料電池に関する関心は高い。現在の運転習慣を変えることのない,痛みのな
い解決方法だと考えられるからである。また,バイオ燃料,特にエタノールに対する関
心は最近急上昇している。米国における代替燃料車(AFV)に関する動向を表 1-10 に
示す。
−182−
表 1-10 米国における代替燃料車に関する動向
AFV の市場のトレンド
AFV 導入促進のための
政府の活動
◆米国人はハイテクが好きである。その理由は;
・それが痛みを伴わないように見える
・運転習慣を変えたくない
◆ 今日でも,AFV に対する真の需要はわずかしかない
◆ その理由は以下のとおり;
・ガソリン価格が依然として国際水準に比べて低い
・そもそも高効率 ICEV に対しての需要がそれほど高くない
・AFV は割高である
◆ 規制:
・排出ガス規制の強化。とくに 2007 年に大型ディーゼル車に
対する規制が強化される
・大気質に関する新たな基準
・ガソリン課税以上に,燃費向上に対する政治的な欲求は少な
い
・GHG に対する規制はない
・連邦政府が行わない分野で,州政府が行動を取り始めている
◆ 非規制分野:
・政治家も技術的解決を好む
⇒ 研究開発や実証への資金援助,車両,インフラへの税金に
よるインセンティブ
・しかし,連邦予算は一貫性に欠け非現実的である
・「ムチ」無しで「アメ」だけでうまくいくのだろうか?
乗用車タイプの AFV の普及動向を表 1-11 に整理する。
表 1-11 乗用車タイプの AFV の普及動向(その 1)
乗 用 車 の AFV ◆
普及状況
◆
◆
◆
CNG 車
代替燃料の流れは,HEV 技術に向かっている
新たにエタノールに対する注目が高まっている
CNG 車は,衰退状態にある
2005 年における AFV の導入台数;
・エタノール車(フレックス燃料車):735,693 台
・ガソリンハイブリッド車:139,489 台
・CNG 車:1,922 台
◆ かつては主要なクリーン燃料車であった
◆ 2005 年現在,全米で 13 万台の light duty 車
◆ 主に商用車として利用;タクシー,公用車,警察用車両,商用車
◆ 政府の政策によって導入が図られた;
・公共車としての購入
・車両導入とインフラ整備のための税金によるインセンティブ
◆ 今後の見通し;
・2006 年には,個人ユースの販売は無い
・問題点は,以下の組み合わせである;
−コストとインフラ
−他のクリーン燃料車の存在
◆ 天然ガスは,FCV にとって重要な存在になるだろう。FCV 用の水素
は,初期においては天然ガスから作られる可能性が高い
−183−
表 1-11 乗用車 AFV の普及動向(その 2)
ハイブリッド車
◆ 2000 年において,7,200 台が登録された
◆ 2005 年までに,200,000 台の HEV が登録されている
・2004 年から 139%の増加
・11 モデルが発売されている
・それでも全米の販売台数の 1.3%に過ぎない
◆ 何故,HEV なのか?
・新しい装置が人をひきつける
・(割高を除けば)痛みの無い解決手段のように思われる
・容易な燃料補給
・米国では,ディーゼル乗用車には制約がある
◆ 問題点は;
・割高なこと
・石油燃料消費のスピードを遅くするだけであること
◆ もし FCV が解決手段となっても,HEV 技術はそれを助ける
◆ HEV に対する政府の導入施策;
・2006 年 1 月から連邦による税のクレジットが導入された:
−燃費に応じる
−年間,メーカ当たり 5 万台の販売を超えた時点から段階的に廃止
・HOV レーンの走行がカリフォルニア,フロリダ,バージニアで認め
られている。これらの州の HEV の販売数は上位 1,2,5 位である。
バイオ燃料
◆ バイオディーゼルは,乗用車市場の選択肢ではない
◆ エタノール:AFV のトップシェアを占める
◆ フレックス燃料車;
・多くはエタノール 100%では走行不可
・エタノールは主に中西部で販売されている
◆ 政府は,メーカにガソリンをより大量に消費する車の販売を認めつつ,
ガソリン−E85 のフレックス燃料車にはより良い燃費クレジットを与
えている。
◆ エタノールの問題点として,2006 年 8 月に消費者レポートが E85 の
燃費がよくないことを明らかにしたことが挙げられる。引き続き検討
を続けていくことが必要
◆ ガソリン価格の高騰や,石油供給不安がエタノールへの関心を増大さ
せている。
◆ 農業関連のロビーイストからの強力な支援が存在する。
◆ より持続可能なエタノール生産のための政府予算が成立するかもしれ
ない。
AFV の短期見通 ◆ 2012 年までに,JD Power は,HEV は年間 780,000 台販売されると
し
予想した。これでも,新車市場の 4.2%に過ぎない。
◆ CNG,LPG,バイオディーゼルは,ニッチ市場に留まるかもしれない。
◆ エタノール関連は,政府からのより多くの予算を獲得する。
◆ plug-in HEV は?
・電力会社や環境保護団体などによってプローモション活動が行われ
る。
・自動車会社がこれに追従するかは不明
・必要な技術は,予想以上にハードルが高い
−184−
表 1-11 乗用車 AFV の普及動向(その3)
水素燃料
◆ 連邦政府は,長期的な解決策として捉えている
◆ DOE は,コスト,耐久性,水素製造と貯蔵を主要な開発目標として設
定した。そのため,R&D と実証のための予算を付けている。
◆ カリフォルニア州は,FCV と水素インフラに関してリーダシップを取
り続けている。
◆ 一方,46 の他の州においても FCV や水素の取り組みを行っている。
また公共交通機関においては,過去数年間に渡ってハイブリッド車両への代替が主要
なストーリーであった。しかし,圧縮天然ガスもディーゼル自動車代替への主要な要素
であり続けるだろう(表 1-12)。
表 1-12 公共バス部門における代替燃料
CNG バス
ハイブリッドバス
◆ 2006 年時点における CNG バスのシェアは約 13%であり,AF バス
の中では卓越したシェアを有している。
◆ しかし,ハイブリッドバスとクリーンディーゼルバスが市場に参入
し,新たな CNG バスの販売台数は少なくなりつつある。
◆ CNG バスを保有している事業者は,現在も購入を続けている。
◆ 2000 年に,60 台未満のハイブリッドバスが導入された。多くが評
価用であった。
◆ 今日,800 台を超えるハイブリッドバスが営業運転している。
◆ 41 以上のバス事業者がハイブリッドバスを導入している。
◆ 2006 年,2007 年末までに 400 台以上の注文が来ている。
◆ ハイブリッドバスのメリット:
・低排出ガス:CNG,クリーンディーゼルバスと同等それ以上に良
好
・低燃費:10∼50%の燃費の改善を示す
・低騒音:騒音は地域社会において課題の一つになりつつある
・課題:高価格,バッテリ寿命
短期見通し
◆ ハイブリッドバスは,CNG バスから引き続きシェアを奪っていく。
◆ 新たなディーゼル車の排出規制がディーゼルバスを非常にクリーン
にしていく。
・しかし,性能上の問題が懸念される
・代替燃料バスは,いくつかのメリットを失うだろう
◆ バイオディーゼルの使用は増加し続けるだろう
◆ FC バスの耐久性,コスト低減に関する実証が行われるだろう
FC バスプログラム
◆ DOT は 2006 年から 2009 年に 49 百万ドルを FC バスの開発と実証
試験のために予算化する。
◆ これは 3 つ以上の地域が対象となる。
こういった代替燃料の技術はすぐに出来るものではなく,すべてのオプションが「長
期的」に考慮されなくてはならない。そして,代替燃料技術が他の革新的な輸送コンセ
−185−
プトと結びついていくことが重要となると考えられる。
燃料電池は,以下の理由により,究極的な解決策となると期待している。
◆ 無排出
◆ 高効率
◆ 燃料起源の多様性
◆ 低騒音,メンテナンスの必要性が限定的
1−2−3 Project Trial Results and Research
(1) The Global Hydrogen Bus Platform – Translating technology into policy
発表者:Simon Whitehouse, PE-Europe GmbH
HyFLEET:CUTE は,世界で最も大規模な多様な水素バスの研究開発プロジェクトで
ある。33 台の水素燃料電池バス(Mercedes-Benz Citaro)を欧州 7 都市,西オースト
ラリア,中国の北京で運転する。また,14 台の水素内燃機関エンジンバス(MAN)を
ベルリンで運転する。さらに,次世代の水素燃料電池バスおよび水素内燃機関エンジン
バスを設計・製造し,テストするものである。
この実証プロジェクトの展開は,技術進歩および人々(一般的なコミュニティーにお
ける意思決定者)に依存する。代替輸送エネルギーは,今は技術的な問題というよりも
むしろ人々がどうするのかという問題である。
GHBP(世界的水素バスプラットフォーム)は,世界に対して将来のクリーンな輸送
オプションについての情報を,とくに水素を燃料とする公共共通に関するものを提供す
ることを目的としている。GHBP では,電子,紙,口頭といった媒体を用いて世界中に
情報を発信している。なぜなら,世界の輸送用エネルギーのうち 95%以上は化石エネル
ギーを使用しており,化石エネルギーはますます不足してきて高価になることに加え,
化石エネルギーの燃焼は人体の健康および環境に損害を与えるとともに輸送エネルギー
の確保が国家セキュリティ問題であるからである。
代替輸送エネルギーの「信者」と「クラブメンバー」は,自分たちの間で議論し,合
意に至っている。しかし,信者は「改宗していない人々」にも手を差し伸べて,神話を
暴いて理解を得るための対話をしていくべきである。
−186−
(2) Hydrogen Fuel Cell Buses in British Columbia
– Path to purchase: Moving fuel cell bus fleets
発表者:Ron Harmer, BC Transit
BC Transit は,ブリティッシュコロンビア州,バンクーバーの郊外地域において,交
通サービスを提供する州営の交通事業者である。ブリティッシュコロンビア州および
BC Trtansit により,2010 年の冬季オリンピックおよびパラリンピックの期間中に,
Victoria と Whisler での路線バス用に,20 台の FC バスを運行するという計画が立てら
れている。
概要としては,2009 年までに 20 台のハイブリッド FC バスを通常の路線バス業務に
導入する。1 日に必要な水素量は 600kg∼1t として,2 日分のバックアップを用意する。
バスは 20 年間使用される予定で,予算は 8,900 万カナダドルである。毎日のルーチン
走行に 1∼3 台のハイブリッド FC バスを配置。持続可能で,長期運営が可能で,メンテ
ナンスや燃料供給活動をするのに十分な資源を確保し,ハイブリッド FC バスフリート
の評価を行う予定である。
予算は,BC Transit が 3,200 万カナダドル(5 年間の運営資金,および 20 台の FC
バスの購入資金),政府筋からの逐次的な資金が 5,700 万カナダドルである。バスと燃
料設備については,民間から入札によって購入する。
FC バスのスペックとしては,座席数は 37∼39 で,最大乗車人員は 60 人未満にはな
らないようにする。低床式で,1充填航続距離は最低 500km,その他全ての仕様がディー
ゼルバスの標準を超えるようにする予定である。
また,水素ステーションについては,水素の生産量が 1 日 500∼600kg(バス 1 台が 1
日 25∼30kg の水素を搭載すると想定),1 台あたり 8∼10 分で充填を行い,2 日分の
水素のバックアップをとれるようなものにする予定である。
−187−
1−2−4 パースにおける STEP Project の結果報告
Concurrent Session 1A – Hydrogen Fuel Cell Trial and Demonstration Projects に
おいてパースにおける STEP Project の報告「Operational results from Perth’s fuel cell
bus trial」(発表者:Colin Cockroft, Murdoch University)が行われた。以下にその概
要を整理する
2004 年 9 月から,西部オーストラリアにおいて,DaimlerChrysler の 3 台の FC バス
Citaro による実証試験運行が行われている。試験は 2 年間であり,2005 年 3 月 21 日か
らは,一般の路線バスサービスとして運行した。
ルート図を図 1-7 に示す。ルートは City Link Route,City CAT Route,Circle Route
の 3 つである。 City Link Route の海抜図を図 1-8 に示すが,これらのルートは比較的
平坦である。
図 1-7 バスの運行ルート
図 1-8 City Link Route の海抜図
導入から 2006 年 6 月の終わりまでに,3 台のバスの走行距離(合計)は 162,713km
であり,28.37 トンの水素を消費した。
図 1-9 にバスの累積走行距離を示す。2005 年の 4 月,5 月,6 月においてグラフが平
−188−
らな期間があるが,これは水素ステーションが故障したため,FC バスの運転が制限さ
れたためである。2005 年 9 月以降は,重大なアクシデントもなく水素ステーションは順
調稼働した。
図 1-9 累積走行距離
表 1-13 は,各ルートにおける燃費および燃料コストをとりまとめたものである。ルー
トによって燃費がずいぶん違っていることが読み取れる。また,ここでの水素コスト
(A$21/kg)は実証テスト期間中に実際に支払われた額であり,他の燃料と競合するよ
うになった場合の予想価格ではないことに注意が必要である。また,利用した FC バス
は効率よりも耐久性を最大にするように設計されており,それゆえこれらの燃費は将来
的な FC バスの燃費とみなすべきではない。
表 1-13 燃費と燃料コスト
※ Fuel costs
H2
A$21/kg
Diesel
A$1.43/liter
CNG
A$21.9/GJ
($175/GJ)
($37/GJ)
走行試験期間中のメンテナンスは,471 回,合計 925 時間行われており,バス運営時
間の 13%に相当した。図-10 にメンテナンスの内容を示す。修理が半分以上を占めてい
−189−
ることがわかる。修理には 156 カ所,504 時間を要しており,バス営業時間の 7%に相
当している。修理の内容を図 1-11 に示す。
図 1-10 メンテナンスの内容
図 1-11 修理(Repair)の内容
なお,図 1-12 にあるように,バスは道路上から 63 回のコールアウトしている(10 万
km 走行に対して 39 件の割合)。そのうち 24 回は路上で修理された。30 回は修理のた
めに自走してステーションに戻り,9 回は牽引が必要であった。現在までにこの件数は
かなり少なくなってきている(10 万 km 走行に対して 4∼5 件の割合)。
図 1-12
コールアウトの月別件数
−190−
2.LG Chem
LG Chem(Daejon)
訪問先
2006 年 9 月 14 日(木)
訪問日時
Jiheon Lee ,Assistant Manager,R&D Planning Part Mobile Energy
Research & Development
Chngkwon Han, Manager,Mobile Energy Research & Development
Dal Mo Kang, Manager,Mobile Energy Research & Development
Jongmoon Yoon,Senior Researcher(Project leader),HEV Battery
Pack Team Mobile Energy Research Institute
応対者
主な調査項目
リチウムイオン電池および PEFC 用 MEA の開発・販売状況
2−1 LG Chem の会社概要
2−1−1 LG グループ概要
LG グループは,1947 年に設立され,LG Chem を含む会社数 31 社,海外子会社約
130 社,従業員数は約 16 万人のグループ企業である。ビジネス分野はエレクトロニクス,
化学,電気通信&サービスで, 2005 年の総売上高は 84 兆ウォン(約 10.7 兆円)であ
る。2006 年の販売,投資計画を表 2-1 に示す。
表 2-1 2006 年の販売・投資計画
売り上げ
輸出
投資総額
R&D
設備
2006 年計画
92 兆ウォン
464 億ドル
10.5 兆ウォン
3.2 兆ウォン
7.3 兆ウォン
2005 年実績(概算)
84 兆ウォン
400 億ドル
10.4 兆ウォン
2.7 兆ウォン
7.7 兆ウォン
2−1−2 LG Chem
LG Chem は規模,業績ともに韓国をリードしている化学会社であり,LG グループの
母体となる企業である。主な事業の柱は,ケミカル&ポリマー,産業用素材,情報&電
子材料の 3 つであり,全世界の従業員数は 1 万人,年間売上高は 5.4 兆ウォン(約 686
億円注))である。
LG Chem は,1947 年に韓国で最初の化学会社として設立され(設立当時は Lucky
Chemical Industrial),韓国初の化粧クリームを開発した。その後,プラスチックの製
造など化学分野でビジネスを展開し,また,産業用素材などにも事業を広げ,子会社を
設立した。1990 年代にはリチウムイオン電池の大量生産を始め,1995 年に LG Chemical
に社名変更,2001 年 4 月 1 日に LG Chemical は LG Chem Investment,LG Chem,
注)
1 ウォン=0.127 円で換算。(2007 年 1 月 9 日の相場)
−191−
LG Household & Healthcare にスピンオフした。
燃料電池車に関連する製品としては,リチウムポリマー電池および MEA がある。
2−2 製品開発
2−2−1 二次電池
LG Chem は,1999 年,韓国で最初にリチウムイオン電池の大量生産に成功し,現在
では,小型のリチウムイオン電池(円筒状,角形),小型リチウムポリマー電池,中・
大型リチウムイオン電池を生産している。
図 2-1 LG Chem の電池製品の例
二次電池の売り上げは飛躍的に伸びており,2004 年には前年比 86%の増加を記録し
ている。世界的なモバイル市場の拡大がその成功の要因であるという。
また,2003 年 8 月,USABC(United States Advanced Battery Consortium:米国
ビッグスリーによる組織)から中・大型リチウムポリマー電池の技術開発費として 460
万ドルを受け取っている。LG Chem は,このことは米国の自動車市場への販売におい
て,有利なポジションについたことを意味すると考えている。
LG Chem におけるリチウムポリマー電池の設計コンセプトを図 2-2 に,開発ロード
マップを図 2-3 に示す。HEV および FCV に関してはハイパワー密度型,EV について
はミディアムパワー密度型として開発を行っており,LG Chem 製のリチウムポリマー
電池(144V,6Ah)は現代の Tuscon FCV に搭載されている。なお,車載用大型リチウ
ム二次電池は,安全性を考えてポリマー電池に絞っているとのことであった。
図 2-2 リチウムポリマー電池の設計コンセプト
−192−
W/kg))
Peak Power Density //((W/kg
4000
Discharge Power
Regen Power
HEV
HEV 5.0Ah
5.0Ah
((2003)
2003)
2003)
3500
3000
2500 Optimized Cell Design
Optimized Cell Design
New
New Chemistry
Chemistry
2000
HEV
HEV 7.5Ah
7.5Ah
((2002)
2002)
2002)
WB
WB 10.0Ah
10.0Ah
((2003)
2003)
2003)
1500
1000
High
High Power
Power Cell
Cell Design
Design
500
High
High Energy
Energy Cell
Cell Design
Design
Small
Small LiPB
LiPB
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
Energy Density /(Wh/kg)
図 2-3 リチウムポリマー電池のロードマップ
ハイブリッド用のリチウムポリマー電池と電池パックの諸元を表 2-3,表 2-4 に示す。
表 2-2 ハイブリッド用リチウムポリマー電池の諸元
仕様
Model HEV 5.0Ah
1C での定格容量
5.0Ah
公称電圧
3.7V
出力密度(10S,SOC50)
3200W/kg
エネルギー密度
66Wh/kg
重量(typical)
280g
体積
0.19L
表 2-3 ハイブリッド用リチウムポリマー電池パックの諸元
仕様
Model HEV 5.0Ah
1C での定格容量
5.0Ah
公称電圧
148V
パックパワー
Discharge
28kW
(10s,SOC50)
Regen
17kW
重量(typical)
体積
28kg(ファン,J/B,
BMS を含む)
28L
−193−
2−2−2 MEA
21 世紀の代替エネルギーは,クリーンでかつ供給が無限に可能なものに違いなく,水
素は増え続ける世界的なエネルギー需要に応えるのに理想的な候補であるという。水素
燃料電池は安全で,クリーンで,効率的なパワーをもたらす。燃料電池アプリケーショ
ンとしては,ポータブル電源,発電機,自動車,潜水艦,飛行機などが考えられ,LG Chem
は,燃料電池のコア部品である MEA の世界的なサプライヤーとなるべく,将来に向け
た準備を行っているという。
−194−
3.GM Daewoo
訪問先
訪問日時
応対者
主な調査項目
GM Daewoo 本社(仁川)
2006 年 9 月 15 日(金)
Sung-Sang Lee, Managing Director Public Policy GM Daewoo Auto
&Technology Co.
Yong-Jin Kim, Manager Public Policy Team,GM Daewoo Auto
&Technology Co.
Yu-Jong Lyea, Manager Advanced technology Team Technical
Center,GM Daewoo Auto &Technology Co.
Tai-Hean Chol, Advanced technology Team Technical Center,GM
Daewoo Auto &Technology Co.
George P.Hansen, Director,GM Asia Pacific(JAPAN)
◆ GM Daewoo の生産・販売状況
◆ 韓国政府による FCV・水素に関する施策の実施状況について
◆ 韓国の自動車事情
3−1 GM Daewoo
(1) 企業概要
GM が韓国の大宇自動車の大部分を買収し,2002 年 10 月に発足させた GM 傘下の自
動車メーカである。韓国国内に 5 箇所の製造工場を持ち,ベトナムにもアッセンブリ工
場がある。また,中国,タイ,インド,コロンビア,ベネズエラの GM の工場でも車両
が製造されている。従業員数は約 15,500 人,年間の乗用車の生産能力は約 90 万台であ
る。
(2) 生産・販売状況
GM Daewoo Auto & Technology(GM Daewoo)は,2005 年,合計 1,157,857 台の
車を国内販売(107,664 台)および輸出(1,050,193 台)した。これは GM Daewoo に
とっても,その前身の Daewoo モーターにとっても記録的な数字であった。世界中から
の需要に支えられ,仁川にある自動車工場の生産量は,2004 年から 2005 年にかけて前
年比 28.6%上昇し,国内販売と輸出量は 900,084 台となった。GM Daewoo で生産され
た車両は,現在世界 150 ヶ国以上においてビュイック,シボレー,ホールデン,ポンティ
アック,スズキといった GM グループで販売されており,輸出量は前年比 32%増加し
た。
また,GM Daewoo では,増加する需要を満たすために,設備の拡大を行っている。
2006 年の第一四半期には,群山の新しいディーゼルエンジンプラントにおいて,ユーロ
IV に対応した 2.0L のコモンレールディーゼルエンジンの通常生産を開始する予定であ
る。
−195−
仁川では,テストコースの建設を始めており,2007 年半ばに稼働開始予定である。さ
らに,前身である大宇自動車により 2001 年 2 月に解雇された従業員 1,725 人のうち,
1,000 人を再雇用し,2006 年前半には更に数百人を再雇用する予定であるという。
なお,燃料電池については,将来を見すえ,水素駆動の次世代の自動車として,多面
的に燃料電池車の研究開発を行っていく旨の発表を 2005 年 11 月に行っている(図 3-1)。
図 3-1 2005 年 11 月のデモンストレーションの様子
3−2 韓国政府の施策について
(1) 関連法令
韓国には「環境に優しい車両(EFV)の開発と普及に努める(2005 年 3 月 23 日施行)」
法律がある。この法律の目的は,EFV の開発と普及を容易にする包括的な政策を実施し,
自動車産業の開発と人々の生活環境の改善を促進することである。主な内容としては,
EFV 技術開発支援や EFV の所有者や購入者に対する支援,燃料電池の供給施設に対す
る支援である。
なお, EFV(Environment friendly vehicle)の定義は以下のとおり。
・ BEV,ソーラーカー,FCV,HEV。
・ MOCIE(通商産業エネルギー省)のエネルギー消費効率の基準を満たす車両。
・ MOE(環境省)の低排出ガスの基準を満たす車両。
−196−
(2) 技術開発の支援施策
FCV の開発ロードマップを表 3-1 に示す。また,技術開発目標を表 3-2 に示す。なお,
EFV 開発のための 2006 年の政府予算は,HEV に対して 173 億ウォン,FCV に対して
159 億ウォン,一般技術に対して 42 億ウォンの合計 374 億ウォンとなっている。
表 3-1 FCV 開発のロードマップ
開発状況と計画
1st Step(∼’06)
先進的な独自技術の開発とデモンスト
レーション
設計と生産技術の開発
少量生産スタート
2nd Step(’07∼’09)
3rd Step(’10∼)
表 3-2 技術開発目標
FCV 技術目標
基本目標
燃料効率
排出ガス
耐久性
価格
性能
商業化のための車両開発
従来車両と同等もしくはそれ以上
ゼロエミッション
従来車両と同等もしくはそれ以上
従来車両の 200%以下
従来車両と同等もしくはそれ以上
EFV 普及に対する援助施策として,以下のことを行っている。また表 3-3 に FCV 普
及のロードマップを示す。
¾
EFV 所有者と購入者に対する資金援助
・ 政府や公的な組織における HEV の購入費用の一部補助(2005∼2008)
・ R&D や実証試験ののちの FCV 購入者に対する政府支援の検討
・ EFV 所有者と購入者に対する税制優遇
・ EFV 証明ステッカーの交付
¾
政府や一般組織に対する EFV 購入の義務(新車購入の 20%を EFV にしなくて
はならない)
表 3-3 FCV 普及ロードマップ
1st step
実証走行試験
期間
FCV
FC ステーション
普及地域
2nd step
典型的用途への試験導入
3rd step
少量生産
2006∼2010
2011∼2014
2015∼
初期段階でのデモンス
実証走行試験と市場の状態を検討した後に計画
トレーション(∼2008)
FCV の普及計画に応じて計画
R&D 研究所と公的機関
大都市圏
大規模,中規模の都市
−197−
(3) 水素インフラに対するロードマップ
図 3-1 に,韓国の水素インフラロードマップ示す。
図 3-2 水素インフラロードマップ
水素ステーションの技術開発目標を以下に示す。
¾
建設コストの削減。現状 30Nm3/h(建設費:30 億ウォン)から,250Nm3/h(建
設費:30 億ウォン)へ。
¾
自国の建設技術と部品開発技術を獲得する
¾
電気分解タイプの水素ステーションの建設
デモンストレーションのために建設された,もしくは建設予定の水素ステーションは
表 3-4 に示す 3 カ所である。
表 3-4 韓国のデモンストレーション用水素ステーション
ステーション
タイプ
LNG
水素ステーション
Naphtha
水素ステーション
LPG
水素ステーション
規模
時期
場所
主要協力者
2006 年末
仁川(Inchen)
韓国ガス株式会社
30Nm3/h
2007 年末
延世大學(ソウル)
GS Caltex Oil Corporation
2008 年初頭
大田(Daejeon)
SK Oil Corporation
※2007 年 2 月現在
−198−
3−3 韓国の自動車事情
韓国における自動車生産台数および販売台数を図 3-2 に,メーカ別の生産台数を図 3-3
に,メーカ別の販売台数を図 3-4 に示す。
[万台]
500
生産
販売
内乗用車
400
年間台数
300
295万台
(100%)
200
318
(100%)
315
(100%)
162
(52%)
145万台
(49%)
370
(100%)
347
(100%)
132
(41%)
109
(32%)
114
(31%)
生産 販売
2004年
生産 販売
2005年
100
0
生産 販売
2001年
生産 販売
2002年
生産 販売
2003年
図 3-3 生産台数・国内販売台数
300
[万台]
現代
KIA
GM 大宇
250
200
年間生産台数
150
100
50
0
170
(54%)
151万台
(51%)
85万台
(29%)
39万台
(13%)
19万台
(7%)
167
(48%)
165
(52%)
87
(28%)
40
(13%) 28
(9%)
29 28
(9%) (9%)
168
(46%)
111
(30%)
102
(29%)
85
(27%)
その他*
内乗用車
56
(16%)
65
(17%)
26
(7%)
22
(6%)
現代 KIA GMその他 現代 KIA GMその他 現代 KIA GMその他 現代 KIA GMその他 現代 KIA GMその他
大宇
2001年
大宇
2002年
大宇
2003年
大宇
2004年
大宇
2005年
その他*:SSANGYONG、Renaut Samsung、JINDO
図 3-4 メーカ別生産台数
−199−
100
80
[万台]
現代
KIA
GM 大宇
77
(47%)
71万台
(49%)
63
(48%)
年間販売台数
40
20
0
39万台
(27%)
18万台
(13%)
17万台
(12%)
57
(50%)
55
(50%)
60
その他*
内乗用車
43
(26%)
27
(16%)
16
(10%)
31
(24%)
25
(19%)
13
(10%)
25
(23%)
19
(17%)
10
(10%)
27
(23%)
20
(17%)
11
(9%)
現代 KIA GMその他 現代 KIA GMその他 現代 KIA GMその他 現代 KIA GMその他 現代 KIA GMその他
大宇
2001年
大宇
2002年
大宇
2003年
大宇
2004年
大宇
2005年
その他*:SSANGYONG、Renaut Samsung、JINDO
図 3-5 メーカ別国内販売台数
−200−
4.韓国 MOCIE(Ministry of Commerce,Industry and Energy)
訪問先
訪問日時
応対者
主な調査項目
韓国 MOCIE(Ministry of Commerce,Industry and Energy)
2006 年 9 月 15 日(金)
Lee,Sang-Jun, Automobile & Shipbuilding Industry Division,
Ministry of Commerce,Industry & Energy(MOCIE)
Kim,Beom-Su, Deputy Director,New & Renewable Energy
Division, MOCIE
Yong-Jin Kim, Manager, Public Policy Team, GM Daewoo Auto
&Technology Co.
George P.Hansen, Director, GM Asia Pacific(JAPAN)
韓国の FCV 実証走行試験について
4−1 調査概要
韓国における FCV 実証走行試験について MOCIE から説明を受けた。計画では,参
加車両は FCV が 30 台,FC バスが 4 台で,水素ステーションは現在 3 箇所完成してお
り,今後さらに 4 箇所の水素ステーションの建設が予定されているとのことであった。
また,基本的には自国技術の熟成のための実証試験であり資金の投入であるため,海外
メーカについては今後の議論次第との見解であった。
全体的に,こちらの質問に対して「検討中である」と答えを濁す回答が多く,情報を
表に出したくないという雰囲気が感じられた。
4−2 韓国における FCV 実証走行試験の概要
現在,水素ステーションは,仁川,大田,ソウル(延世大學校)に 3 基完成しており,
2007 年 2 基,2008 年はさらに 2 基建設され合計 7 基となる予定である。参加予定車両
は水素 FCV が 30 台,FC バスが 4 台である。チーム制とする予定であり,3 チームの
計画であるが,参加自動車メーカは現在のところ Hyundai のみであるという。この車両
は参加チームが買い取って所有する形とし,費用は参加チームと政府が折半する。実証
走行地域は,大田(精油所のある地域),ソウル(LNG 利用),済州島(風力利用)の
3 カ所である。
海外自動車メーカの実証走行試験への参加の可能性については,国としては,自国の
技術の発展のための実証走行試験であり資金の投入であるので,海外メーカの参加に関
しては議論が必要であるとのことであった。Hyundai 以外の国内自動車メーカについて
も,何らかの形で海外メーカが関与しているため,参加には検討が必要となるとのこと
であった。つまりこれはオープンな実証走行テストではないということであると思われ
る。
−201−
4−3 ディスカッション
完成した水素ステーションはプロジェクトに参加していれば誰でも使えるのかという
質問に対しては,決めていないとの回答であったが,あまり使わせたくないという様子
であった。また,テストデータの取得項目と,データの公開予定に関して質問したとこ
ろ,現在議論中であり,海外での実証走行試験も参考にして決めたいとの回答であった。
テストデータの公開についても,現在は 1 社のみの参加であるため未定とのことであっ
た。
水素ステーションの建設や FCV 走行のためには,関連の法律や規制等の変更が必要と
なるだろうが,その改正の予定はどうなっているのかという質問については,今は水素
に関わる法律がなく,アメリカや日本などの改正された法規制を勉強し検討することに
なるだろうとのことであった。しかし,今計画中の実証走行に間に合うのかどうか,ま
た今完成している水素ステーションがどういう法律に基づいて作られたのかも疑問に思
われた。
−202−
平成 18 年度第 3 回海外実証試験調査-2
1.ZEV Technology Symposium
2.Ca FCP
3.AC Transit
平成19年3月
財団法人 日本自動車研究所
.
訪問先一覧
日付
訪問調査対象
訪問地
9 月 25 日(月)
∼
9 月 27 日(水)
ZEV Technology Symposium
サクラメント
丹下
9 月 28 日(木)
CaFCP
サクラメント
丹下
9 月 29 日(金)
AC Transit
サンフランシスコ
丹下
調査担当者
氏 名
丹下昭二
会社・団体名
日本自動車研究所
所属/役職
FC・EV センター技術参与
−203−
訪問者
.
−204−
1.ZEV Technology Symposium
訪問先
訪問日時
主な調査項目
Cal EPA Headquarters Sacramento, CA
2006 年 9 月 25 日(月)∼27 日(水)
ZEV に係わる技術動向調査
1−1 調査概要
カリフォルニア州の ZEV 法は何年間もの紆余曲折の末, 2004 年 3 月に施行され,
2005MY-2008MY が実施されている。そしていよいよ 2009MY-2011MY に向けて,ZEV
法の見直し,特にインセンティブの見直しをするかどうかが水面下での焦点となってい
る。今のまま施行された場合は,たとえば,ZEV(ゴールド)を現在の FCV 250 台か
ら 10 倍の 2,500 台出さなければならなくなり,BEV,HEV,FCV のインセンティブも
各々縮小される。また少しでも EV 走行の長いプラグインハイブリッド車(plug-in HEV)
の見直しや plug-in HEV の積極的な導入があっても良いのではないかという動きもあ
り,インセンティブだけでなく,カテゴリーの見直しの声もある。
このような中で,CARB は,ZEV 技術に関する技術シンポジウムを開催し,ZEV 関
連メーカや団体,機関にプレゼンの機会を与えた。このシンポジウムの直前には,カリ
フォルニア州の司法省がカーメーカの Big 6 を地球温暖化の被害を同州にもたらしたと
して訴えたばかりであり,8 月末に議会を通過し,9 月 27 日に知事のサインを得たばか
りの温室効果ガス削減法案(パブリー法)もあり,カリフォルニア州は排気や温暖化に
対する規制の厳しさを増している現状にある。
この度 ZEV 技術シンポジウムに出席したので,概要を報告する。技術シンポジウムと
はいえ,各々メーカの戦略がプレゼンには含まれており,注意深く見極める必要がある。
1−2 ZEV Technology Symposium
1−2−1 概要
Linda Adamis CaEPA 長官,Robert Sawyer CARB 議長,5 人の Expert Review Panel
の出席のもとで 3 日間行われた本シンポジウムは,2007 年の 2∼3 月に行われるであろ
う「ZEV 法見直しの公聴会」に向け,「法の見直し」については一切含まないで,ZEV
に関わる技術の現状をレビューしようとするものである。CARB はこれまでの経緯と実
態を踏まえ,このまま継続することが有効との論調であり,カーメーカはいかに ZEV
導入に向けて努力をしてきたか,BEV はお客がいないことから中止に至ったこと,HEV
については各社とも努力の結果,それなりの台数が出てきたこと,plug-in HEV につい
−205−
てはまだまだ不透明であり,試験法や認証そのものも不明であり,また電池開発の必要
性が訴えられた。そして水素 FCV の開発も鋭意進められているが,コスト,耐久性,
インフラなど課題が多く,時間を要する見込みであることが述べられた。
自動車メーカの発言は,カリフォルニア州の司法省が Big6 を地球温暖化の被害を同
州にもたらしたとして訴えた直後でもあり,慎重な発言が続いた。これらに対し,水素
関連メーカや電池メーカは,FCV,HEV,plug-in HEV,BEV を積極的に進めるよう
に訴えた。さらに,BEV 愛好者は,次々と自分達の改造した BEV や plug-in HEV がい
かに優れているかを訴え,中にはなぜ CARB や DOE は,水素 FCV にそんなに力を入
れ,投資をするのかという意見もあった。しかし,自動車メーカでも Ford,日産のプレ
ゼンテーションはなく,プレゼンテーションをした自動車メーカ(GM,DC,トヨタ,
ホンダ)も,今開発中のものには,ほとんど触れないで従来の主張をしたに過ぎなかっ
た(表 1-1)。明らかに「引いているという」印象であった。
表 1-1 自動車メーカの発表の要旨
自動車メーカ
GM
フォード
DC
トヨタ
ホンダ
日産
発表の要旨
BEV,PHEV には一切触れず,ZEV は外部発表したばかりの FCV
(Equinox)しかないことを強調。
プレゼンなし。
BEV,HEV,FCV,PHEV などオールラウンドな取り組みを紹介。
特に最近の GM,DC,BMW との共同 HEV 開発を強調。
BEV の販売,PR の努力を強調。それでも BEV 市場はなかった。プ
リウス HEV は受け入れられつつある。肝心の FCV,plug-in HEV
については,少しだけの通り一遍のプレゼン。
BEV は売れず,EV プラスの製造は中止。FCX は開発努力中で,補
助電源をキャパシタからリチウムイオンに変更。plug-in HEV は技
術的に SOC が深く,BEV に類似しており,電池開発が先決。plug-in
HEV には否定的な見解を示した。試験法がないことにも触れた。
シンポジウム直前に予定していたプレゼンを取りやめ,GM にプレ
ゼンを譲った格好。
これらの議論を通じ感じられたこととしては,FCV 導入には,当初の見込みより時間
を要するので,何らかの新技術を必要としていること,特に HEV および BEV 走行のベー
ス技術である二次電池の開発が急がれるということである。ZEV 法において,HEV は
大きな市民権を得,ZEV 法の救世主的役割を演じつつあり,今後は,より長く EV 走行
する(ZEV の基本)車の開発が求められつつあると思われる。二次電池として,この世
界で最も普及しているニッケル水素電池については,EV 走行延長のため,エネルギー
密度,パワー密度とも優れたリチウムイオン電池に移行しつつある大きな流れを感じた。
plug-in HEV は,BEV に出来る限り近づけたコンセプトであるが,その実現のために
は,深い放電深度に耐えられ,よりエネルギー密度の高い,かつパワー密度も高い電池
開発に向かう必要がある。これはエンジンで言えば,永遠のテーマである高圧縮化に相
−206−
当し,これまで,BEV が長年追求してきた電池への要求であり,エンジン同様永遠のテー
マである。さらに plug-in HEV を導入するためには,試験法や認証に関する課題が残さ
れており,このためには少なくとも 2∼3 年は要するのものと思われ,Expert Panel が,
plug-in HEV をどのように位置づけるのかも今回の見直しの大きなポイントになるであ
ろう。来年 2 月∼3 月の公聴会に向けて Expert Panel がこれらをまとめ,CARB Board
Member に Status Report として報告し,そして提言をまとめることになる。
1−2−2 アジェンダ
表 1-1∼表 1-3 にアジェンダを示す。
表 1-2 アジェンダ(1 日目)
MONDAY, SEPTEMBER 25
Session I: Introduction
1:00PM
Welcome
1:10PM
Opening Remarks
Linda Adams, Cal/EPA Secretary and Dr. Robert Sawyer, Chair of the Air Resources Board
1:35PM
ZEV Expert Panel Update
Michael P. Walsh, Chair, Expert Panel
2:00PM
Innovative Clean Air Technologies (ICAT) Briefing
ARB Staff
Session II: Hydrogen Technology / Chair: Gerhard Achtelik
2:10 PM
Andy Abele, Quantum
Quantum Hydrogen Storage Products
2:35 PM
Ben Ovshinsky, Ovonics
ECD – Ovonic’s Hydrogen Economy Enabling Technologies – Storage, Infrastructure, and Vehicles
3:00 PM
Tobias Brunner, BMW
Liquid Hydrogen Vehicle Storage
3:40 PM
Chris Guzy, Ballard Power Systems
Fuel Cells for Transportation Applications
4:10 PM
Margaret Steinbugler, UTC Fuel Cells
PEM Fuel Cell Technology Readiness for Light Duty Vehicles
4:40 PM
Keith Wipke, NREL
Fuel Cell Vehicle/ Infrastructure Results from Learning Demo
5:10 PM
Ravi Gopal, Hydrogenics
PEM Fuel Cell Power Modules, Systems, and Applications
5:35 PM
Joan Ogden, U.C. Davis, ITS
Strategies for Building a Hydrogen Infrastructure
−207−
表 1-3 アジェンダ(2 日目)
TUESDAY, SEPTEMBER 26
Session II: Hydrogen Technology(continued) / Chair: Craig Duehring
8:30 AM
Andy Abele, Quantum
Quantum Hydrogen Prius
8:55 AM
Chris White, Sandia
Technical Review of Hydrogen-fueled Internal Combustion Engines
9:20 AM
Edgar Berger, BMW
BMW H2 NZEV Development
Session III: Car Company Updates / Chair: Analisa Bevan
10:00 AM
Fred Maloney, Daimler
Daimler Chrysler Activities
10:25 AM
Ben Knight, Honda
Honda Activities
10:50 AM
Bob Cassidy, Nissan
Nissan Activities
11:15 AM
→GM に変更
Dave Hermance, Toyota
Toyota Activities
Session IV: Battery Technology / Chair: Craig Childers
12:40 PM
Larry Oswald, GEM
The Impact of Neighborhood Electric Vehicle Use on Improving Air Quality in CA
1:05 PM
David Hirsch, Miles Automotive Group
Miles Automotive Activities
1:20 PM
Tom Gage, AC Propulsion
Recent Electric Vehicle Developments
1:45 PM
Alec Brooks, AeroVironment
AeroVironment Activities
2:15 PM
Ian Wright, WrightSpeed
WrightSpeed Activities
2:35 PM
Martin Eberhard, Tesla Motors
Tesla Motors Activities
3:15 PM
Stuart Evans, Delta-Q
Charger Products
3:30 PM
Sven Thesen, PG & E
Residential Customer Off-Peak Electrical TOU Options & BEV/PHEV Impacts
3:55 PM
Jasna Tomic, WestStart – CALSTART
ZEVs in V2G Applications
4:20 PM
Willett Kempton, University of Delaware
Modeling V2G for a Utility with a High Wind Generation Portfolio
4:45 PM
Eugene Nishinaga, BART
Use of ZEV with V2G to Support BART Electrical Demand
−208−
表 1-4 アジェンダ(3 日目)
WEDNESDAY, SEPTEMBER 27
Session V: Battery Technology (continued) / Chair: Mark Duvall
8:30 AM
Mark Duvall, EPRI
Welcome and Introduction to Plug-in Hybrids
8:40 AM
Tony Markel, NREL
PHEV Performance and Efficiency
9:10 AM
Danilo Santini, Argonne National Laboratory
Energy and Petroleum Consumption Attributes of PHEVs
9:40 AM
Mark Duvall, EPRI
PHEV System Technology Update
10:10 AM
Matt Miyasato, SCAQMD
Plug-In Hybrid Sprinter Program
10:40 AM
Max Kapadia, ASG renaissance
PHEV Vehicle and Lifecycle Costs
11:10 AM
Eladio Knipping, EPRI
Environmental Impact of PHEVs
11:30 AM
Charlie Clark, Charles Clark Group
Electricity and Infrastructure
11:50 AM
Mark Duvall, EPRI
Conclusions and Wrap-Up
Session VI: Energy Storage Batteries / Chair: Andrew Burke
1:00 PM
Andrew Burke, U.C. Davis, ITS
Welcome and Introduction
1:05 PM
Tien Duong, U.S. Dept. of Energy
Review of the DOE/US ABC Battery Program as it Relates to EVs and PHEVs
1:25 PM
Michael Andrew, Johnson Controls
Status and Prospects for Conventional Lithium-ion Batteries for EVs and PHEVs
1:45 PM
Andrew Burke, U.C. Davis, ITS
Status and Prospects for Zebra and Nickel Metal Hydride Batteries for EVs and PHEVs
2:05 PM
Mark Duvall, EPRI
Battery Considerations and Test Results for Lithium-ion Batteries in the Sprinter PHEV
2:25 PM
Andrew Chu, A123 Battery Co.
Design Considerations and the Status and Future Plans for Lithium-ion Batteries using Iron
Phosphate in the Cathode
2:45 PM
Evan House, Altairnano
Status of Lithium-ion Batteries using Lithium Titanate in the Anode (Safety, Fast Charging, and Long
Cycle Life)
Session VII: Demonstrations & Impacts / Chair: Tony Andreoni
3:15 PM
Paul Scott/Chelsea Sexton, Plug In America
Historical Summary and Current Status Report
3:45 PM
Ron Freund/Tim Hastrup, Electric Auto Association
EV Usage Survey / Energy Use Data; Plugging In: One Family’s Experiences
4:15 PM
Greg Hanssen/ Dwight MacCurdy, E drive / EnergyCS / SMUD
Collective Performance Summary and Data
4:45 PM
Stefan Unnash, Tiax
Assessment of Full Fuel Cycle Emissions
−209−
1−2−3 発表内容
以下に,各セッションの主な発表の概要を整理する。
(1) Session I: Introduction
1) Opening remarks
発表者:Linda Adams, Cal./EPA Secretary and
Dr. Robert Sawyer, Chair of the Air Resources Board
今までのところ,ZEV プログラムは,カリフォルニアにおいて,よりクリーンな輸送
機関の導入を促進していると言える。その理由は,50 万台以上の部分的ゼロエミッショ
ン車両(PZEV)の普及が拡大していること,8 万台の HEV が走行していること,新技
術への投資が行われていることにある。
2007 年の早い段階で,Expert Review Panel からの報告書が提出される予定であり,
その中で,ZEV 技術(FC,周辺機器,水素車載技術,二次電池,電気駆動コンポーネ
ント)の現状と将来についての情報が示されることになっている。ゴールはいつでもき
れいな空気を呼吸するということであり,将来のゼロエミッション技術に向かって,研
究を続けていく。
2) ZEV Expert Panel Update
発表者:Michael P. Walsh, Chair, Expert Panel
Expert Panel の目的は,現在開発中や近い将来実現可能な ZEV や ZEV に近い車両
(BEV,FCV,HEV,plug-in HEV,水素 ICE)に関して,技術と費用の現状,および
主要な技術の見込といった情報を提供することである。Expert Panel は情報を収集し,
査定し,CARB に対してプレゼンテーションを行い,報告書をとりまとめることが仕事
である。また,その情報源は,北米や日本,欧州,韓国における主要な自動車メーカ,
ZEV 技術のリードデベロッパー,ZEV 技術研究開発をリードする組織(DOE,国立研
究所など)である。
各メンバーの担当分野を図 1-1 に示す。
−210−
図 1-1 Expert Panel メンバーの担当分野
(2) Session II: Hydrogen Technology
1) Fuel Cells for Transportation Applications
発表者:Chris Guzy, Ballard Power Systems
Ballard Power Systems 社は,世界をリードする PEFC の設計,開発,生産,販売を
行う企業である。取得した特許は,出願中のものも含め 975 件に達する。従業者約 600
人,2005 年の売上げ額 5,370 万ドルである。
表 1-5 にバラードの自動車用燃料電池の技術ロードマップを示す。コストと耐久性が
最も大きな課題であり,コスト削減のために,触媒への白金担持量を 2010 年には
0.3mg/cm2 を目標とする(図 1-2)。また,触媒層の厚さを 25μm から 1.5μm まで薄
くすることを目標とする。氷点下起動は,FC にとってもはや課題ではなく,2005 年の
実績では 50%出力まで 90 秒の起動を達成している。
表 1-5 技術ロードマップ
−211−
図 1-2 コスト削減に向けた触媒技術の進歩
また,現在 Ballard 製 FC スタックは,世界の 24 都市において,130 台以上の車両に
搭載されており,これらの車両に 500 万人の乗客が乗り,延べ 200 万マイルの走行が記
録されている状況にあるが,今後も多くの課題の解決を行っていく必要がある(図 1-3)。
図中の次世代の自動車用燃料電池である MK1100 の開発は軌道に乗っている。
図 1-3 FCV 商業化への道筋
Ballard では,ZEV 規制は,技術開発と市場導入を推進するための重要な動力源であ
ると考えている。
−212−
2) PEM Fuel cell Technology Readiness for Light Duty Vehicle
発表者:Margaret Steinbugler, UTC Fuel Cells
UTC Power の自動車用 FC は,日産の X-TRAIL FCV
(2004)や現代の Santa Fe(2001),
Tuson(2005)に採用されたことがあり,また,ジョージダウン大学やカリフォルニア
交通公社,EMT マドリード,ATM トリノ,AC Transit や Sunline Transit の FC バス
に採用されている。
UTC における水管理のアプローチは,セパレータに,水管理のための湿潤したシール
と,ポーラス状で親水性を有するプレートを用いることである。セルの性能と耐久性向
上の鍵は水管理にあり,カソード触媒への酸素の供給促進と,アノードでの燃料欠乏防
止のため,生成された水を効率よく移動させる必要がある。
自動車用 FC に要求されるものは,耐久性(運転時間 5 千∼6 千時間,起動停止 17,000
回,負荷変動 106 回程度)や FC スタックあるいはシステムとしての高出力密度,低温
での運転(マイナス 20℃での起動,マイナス 40℃での運転),コストなどがある。こ
うしたの課題に対して,UTC Power の Light Duty Vehicle 用の FC 技術としては,耐
久性,スタックおよびシステム出力密度,低温運転能力ともに,フィージビリティース
タディとしてはその可能性が確認されており,現在実際に搭載しての実証試験が進行し
ている最中である。
3) Strategies for Building a Hydrogen Infrastructure
発表者:Joan Ogden, U.C. Davis, ITS
H2 Pathways Program は,水素の輸送インフラに関する多年度に渡る学術的な研究
プログラムである。2003 年に開始され,将来,水素のインフラはどのようなもので,い
つどのように移行可能なのかを知るために,以下のような研究を行っている。
¾ どれだけ多くの水素ステーションがあったら,ユーザが使いやすいか(GIS 分析)
⇒
ステーションとしては,既存のガソリンスタンドうち,比較的少ない割合を
水素ステーション併設型にすれば大丈夫である。例えば,サクラメント郡で
のケーススタディでは,ガソリンスタンドの 10%,32 箇所の水素ステーショ
ンを建設することで,平均 3 分で最寄の水素ステーションまでアクセスでき
るようになる。
¾ 水素はオンサイト水素生産型なのか,集中生産配送型のどちらがより良いのか。ま
た,配送手段はトラックかパイプラインか。最も安価に水素を提供するためには,
どういったインフラタイプが適しているのか
⇒
ガス化した石炭から集中して水素を生産するタイプが最も安価であり,配送
方法については密集都市ならパイプラインが,それほど密集していないなら
−213−
液体水素トラックが安価である。
¾ 再生可能エネルギー(廃棄農産物起源)からの水素生産方法の検討
⇒
稲藁では,およそ 25 万台の FCV をサポートすることが可能で,中期的に競
争可能な再生可能エネルギー起源の水素である。そして,水素のコストは
$3.4/kg となると試算される。
¾ 水素自動車の普及率と水素インフラの整備シナリオの検討
⇒
FCV 普及率で区分した 4 つの期間について,以下のような結果が得られた。
Period1
普及率
新規インフラ設置件数(全米)
投資額
平均使用率
水素コスト(パイプライン)
(LH2 トラック)
Period2
Period3
Period4
56.7~74.9%
2.1~9.6%
11.5~29.4%
31.8~54.3%
年間 1~6 件
年間 11~19 件
年間 29 件
ナシ
$26.6 億
$107.5 億
$156 億
$156 億
73%
68%
80%
88%
$4.29/kg
$3.70/kg
$3.02/kg
$2.70/kg
$3.33/kg
$3.25/kg
$2.83/kg
$2.64/kg
$3.00/kg
(オンサイト)
(3) Session III: Hydrogen Technology(continued)
1) DaimlerChrysler Activities
発表者:Fled Maloney, DaimlerChrysler
DaimlerChrysler は,次世代技術プログラムとして先進的駆動方式(エンジン,CVT),
BEV(GEM),HEV,PHEV(plug-in HEV),FCV を掲げている。HEV については,
2005 年 9 月より,BMW グループおよび GM と共同で開発を行っている。PHEV に関
しては,プロトタイプ車である Sprinter PHEV を用いて,北米 4 台,ドイツは 2 台で
試験を行い,コンセプトの検証を行っている。エンジンはガソリンとディーゼルがあり,
いずれの車両も,EV 走行距離は 20 マイルである。
一方,FCV の開発は,1994 年発表の NeCar1 以降継続して進めて,現在では,世界
中で 60 台の F-Cell,36 台の FC バス(Citaro),3 台の Sprinter FCV が走行している。
FC 技術ロードマップを図 1-4 に示す。将来的には,従来車並のコストにまで持って行
くことが可能だと考えている。
−214−
図 1-4 DaimlerChrysler の燃料電池技術ロードマップ
2) Honda Activities
発表者:Ben Knight, Honda
ホンダは,CARB と米国環境保護庁(EPA),Chevron と共同で,SELEV(Study of
Extremely Low Emission Vehicles)センターをカリフォルニア州立大学に設立した。
このセンターの目的は,独立的立場のもとで,大気質に対する ELEV の効果を計測,評
価することである。この SELEV プロジェクトによって判明したことは,ELEV は,道
路上の様々なコンディションのもとで,極めて低い大気汚染物質排出レベルを達成して
いること,この ELEV の相当台数が従来車と置き換えられ,LDV クラスにおける大気
汚染物資の排出寄与度は非常に小さくなると予想されることである。今日における環境
問題としては,大気汚染問題から地球温暖化問題に相対的な重点がシフトしていると考
えられる。
ホンダでは,過去,ZEV 規制への対応として,BEV である EV-Plus を開発したが,
その航続距離と充電時間という問題から一般への受け入れが進まなかった。現在では,
ほとんど排ガスが出ない ICEV(ガソリンおよび天然ガス)や HEV,FCV の研究開発,
導入を進めている。
2005 年 6 月に発表したホンダ製 FC スタックは,金属製セパレータ,アロマティック
膜を使用し,締めつけボルトやセパレータシールを用いておらず,従来のものに対して
−215−
サイズを半減させ,高温耐久性の向上,氷点下始動性を改善している。また,2006 年版
の FCX の航続距離は 210 マイルであり,さらに現在開発中の次世代 FCX においては,
タンクのサイズや圧力(35Mpa)を増やさずに 270 マイル程度にする予定である。次世
代 FCV である FCX コンセプトは,V-flow という新しいレイアウトを採用し,ガス,水
の流れを重力方向とすることで,高効率,コンパクトで高い起動性を達成している(図
1-5)。エネルギーバッファとしては,リチウムイオン電池を搭載する。
図 1-5 FCX コンセプトの V-flow 構造
図 1-6 にホンダのカリフォルニア ZEV 規制への技術対応年表を示す。
図 1-6 ホンダの ZEV プログラムへの対応
3) GM Activities
発表者:Julie Beamer, General Motors
現在 GM では,世界各地の燃料電池プログラムに参加しており,700 人の従業者が FC
技術のために働いている。また,次世代燃料電池車として,SEQUEL と Equinox Fuel
Cell(図 1-7)を開発している。とくに Equinox Fuel Cell は,FMVSS(米国連邦自動
−216−
車安全基準)および ZEV の条件を満たしており,また,凍結にも強く,航続距離は
200mile を達成した。2007 年初頭から,合衆国内の 3 地域(カリフォルニア,ニューヨー
クの都市部,ワシントン DC)に合計 100 台を配車する予定である。また,米国陸軍と
も協力しており,戦略的外の輸送業務用車として,2006 年 9 月には最初の 1 台(プロ
トタイプ)を納車している。
図 1-7 Equinox Fuel Cell
GM のカリフォルニア州における取り組みは,Torrance に先進技術センターを設置し,
100 人以上のエンジニアを配置して電動駆動やエレクトロニクスの開発を行っている。
また,カリフォルニア州で Equinox FC のデモ走行プロジェクトを展開しており,CARB
の水素自動車デモプロジェクトや Hydrogen3 を用いたデモプログラム,カリフォルニ
アの軍事基地への Equinox FC の展開,カリフォルニアの住民との建設的な対話などを
実施している。
4) Toyota Activities
発表者:Dave Hermance, Toyota
FCV は最も効率のよい駆動方式であり,走行時における排ガスもなく,長期的には水
素は多様なエネルギー源から作ことができるなど,多くのメリットがある。トヨタの FC
デモンストレーション車両は,カリフォルニアに 21 台,全世界では 60 台ある。現在は
FC 技術開発の第 3 世代目であり,低温始動性や走行レンジ,耐久性向上の点で大きな
改善が図られてきた。しかしまだまだ多くの課題(航続距離や耐久性,コストなど)が
残されている。なお,トヨタでは,開発目的のためには全世界で 30 台の実証車で十分
であり,それ以上の車両を走らすことは,人材と資金の無駄であると考えている。
BEV は,高コスト,短い走行レンジ,長い充電時間,インフラ制約といった車の特性
から,そのマーケットが限られる。1998 年から 2003 年にかけて,RAV4 EV をカリフォ
ルニア州で 1,200 台以上販売してきたが,現在残っているのは 800 台強である。トヨタ
では BEV を普及させるために様々な取り組みを行ったが,結局の需要が伸びず,2003
−217−
年には生産を中止している。また,都市型 BEV である e-Com も需要がなく,生産を中
止している。
HEV は将来のための核心技術と位置づけている。ハイブリッド化することによって,
全ての駆動方式での効率向上を図ることができる。アメリカでもプリウスなどハイブ
リッド車が受け入れられつつある。トヨタでは,2007 年に全世界で 100 万台の普及を
目標とし,さらに次の 10 年の早い段階において,追加的な 50%のコスト削減および年
間販売台数 100 万台を目指す。
プラグインハイブリッド車は,長期のビジョンとしては,魅力的な技術であるが,現
時点では実用化可能な技術ではないと認識し,実用化にはバッテリ開発がキーとなる。
2006 年 5 月に DOE によって plug-in HEV のワークショップが行われ,plug-in HEV
がエネルギー消費の削減とエネルギーの多様性に効果があること,バッテリ技術がキー
となることなどの結論が得られた。トヨタは,これらの結論に同意している。
(4) Session V: Battery Technology (continued)
1) PHEV Performance and Efficiency
発表者:Tony Markel, NREL
PHEV はその燃料の多様性から石油消費の削減を可能にさせる技術である。PHEV の
設計方法は様々であり,それは目的に依存する。その普及の目的は,電力会社や自動車
会社は製品を売りたい,CARB は大気汚染を軽減したい,合衆国政府や DOE は石油使
用量を減らしたい,そしてユーザは購入可能で運転が楽しく機能的であることを望んで
いるなど様々であると思われる。こういった目的を踏まえた設計を行わなくてはならな
い。
現実の運転行動を分析することによって,EV 走行レンジをどれくらいに設定したら
よいか,実際の運転による排ガスへ影響はどのくらいになるか等についてのヒントを得
ることができる。PHEV による利益は,実世界での使用における距離と加速の仕方に依
存する。つまり,時速 60mph 以下で加速もそれほどかけない走行では,燃料削減効果
が大きく,ハイウエー走行のような時速 60mph 以上で加速も積極的に行うような走行
では,燃料削減効果が小さいというシミュレーション結果が得られている。
2) Energy and Petroleum Consumption Attributes of PHEVs
発表者:Danilo Santini, Argonne National Laboratory
国立研究所において,PHEV 導入による石油使用や電力発電構成,GHG 排出量など
に関する短期長期的な影響分析が行われている。電力構成については,現在最も安いの
が石炭であり,天然ガスはクリーンだが高いため,石炭発電の割合が高くなっている。
−218−
長期的には効率的でクリーンな進化形プラントへ加速するものと考えられ,風力発電も
PHEV と調和していくと思われる。その結果,石油使用は確かに低下し,GHG 排出量
は短期的にも低下し,おそらく長期的には際だって低下するであろうと考えられる。
PHEV の EV レンジとその市場嗜好について,EPRI が研究している。アメリカにお
ける 1 日の平均走行距離は,30 マイル以上であるが,一般的に複数の短トリップによっ
て構成されている。EPRI の分析では,都市部の短距離通勤者(20 マイル以下)は価格
にかかわらず PHEV20(EV レンジ 20 マイルの PHEV)を好んだという結果を得てい
る。しかし,バッテリの研究開発が成功すれば,長距離通勤者では,PHEV20 と同じく
らい PHEV60 が好まれるであろうことを示している。
3) PHEV System Technology Update
発表者:Mark Duvall, EPRI
プラグインハイブリッド自動車の技術としては,先進的な二次電池の開発が主要な課
題である。リチウムイオン技術は,そのエネルギー密度や出力密度,サイクル寿命コス
トと大きさの関係などから, PHEV 実用化のために有望な技術である。
エネルギーマネージメントとしては,高レベルでの制御を行うことにより,自動車の
オペレーション(自動車の性能や効率,バッテリ効率や耐久性を最大にする)を最適化
する必要がある。開発は,ドライバーの要求項目,自動車使用のパターン,バッテリと
運転技術の状態などにより影響を受けるだろう。
PHEV の UDDS(市街地走行モード)におけるゼロエミッション VMT(走行距離)
の定義をどうするのかという問題がある。また,AER(All Electric Range)や Blend
走行などをどう定義するかによって,二次電池への要求項目も異なってくる。さらに,
PHEV の認可に関して,テスト方法や,燃料消費の測定などについて,意見をとりまと
めていく必要もある。充電インフラについても,色々なオプションが考えられる。ただ
し,充電インフラについては,交流 120V での充電がコストや使いやすさの面から最も
望ましいと考えられる。
4) Plug-in Hybrid Sprinter Program
発表者:Matt Miyasato, SCAQMD
DC,EPRI と共同で Plug-in Sprinter Van Program を実施している。フェーズ 1 の
目的は,PHEV の開発を促進することである。北米全体で 4 台のプロトタイプ車両を導
入し,AQMD ではそのうち 2 台(Varta NiMH 電池と Saft Li-ion 電池をそれぞれ搭載)
でフリート走行を行っている。フェーズ 2 では,主要技術に焦点をあてた次世代技術の
開発を目的としている。また,フリートプログラムを拡大し,北米および欧州において
−219−
合計 30 台(北米に 18 台)の車両を導入する予定である。フェーズ 2 の車両には,6 シ
リンダーガソリンエンジンと 14kWh の Li-ion 電池(Saft 製)を搭載する予定である。
AQMD は,生産ラインの効率化やモジュール化から,OEM の関与は重要であると考
えている。さらに,AER 等の運転モードを最適化することが必要であり,環境性能に特
徴づけを明確とすることが重要であると考えている。
PHEV は,他の低公害車と同様,大気環境や GHG 削減やエネルギー多様化のための
解決の可能性をもつ手段のひとつである。こういった技術の実現のため,共に行動して
いくことが重要である。
(5) Session VI: Energy Storage Batteries
1) Review of the DOE/US ABC Battery Program as it Relates to EVs and PHEVs
発表者:Tien Duong, U.S. Dept. of Energy
HEV 用,BEV 用電池の現状,エネルギー貯蔵関連の予算とプログラムなどについて
発表が行われた。
HEV 用補助電源としてのリチウムイオン電池は,商業化の準備段階まできていると思
われるが,コスト削減という問題点が残っている。また,耐久性や低温性能といった問
題もあるが,この課題に対しては,Li4Ti5O12,LiFePO4 といったナノ構造素材が発見さ
れている。
EV 用二次電池については,最新技術をもってしても一充電航続距離は 300 マイル以
下にとどまっている現状にあり,一充電当り航続距離とコストが重要課題であるが,そ
の他にも DOD80%での出力が次第に低下するなどの技術的な問題も残されている。
リチウムイオン電池のための予算は,2006 年が 2,444.2 万ドル,2007 年の要求額が
3,113.9 万ドルであり,基礎研究や応用バッテリ研究,USABC(United States Advanced
Battery Consortium)の FreedomCAR エネルギー貯蔵装置開発プログラム(年間総予
算は 4 千万ドル)に当てられる。
PHEV 用電池については,リチウムイオン電池は技術的には利用可能性があるが,現
状では,まだ適用可能なものはない。二次電池は,PHEV,BEV,HEV 用など相互作
用によって開発されていき,コストはもっと下がる可能性がある。USABC のコスト目
標では,短期目標を$300/kWh,長期目標を$200/kWh である。PHEV 用二次電池への
要求項目については,現在策定中である。
−220−
2) Status and Prospects for Conventional Lithium-ion Batteries for EVs and PHEVs
発表者:Michael Andrew, Johnson Controls
世界規模での HEV,PHEV,EV 用の NiMH 電池と Li-ion 電池の開発,生産,販売
を行うため,2006 年 1 月,SAFT と Johnson Controls Power Solutions は合弁会社
Johnson Controls-SAFT Advanced Power Solutions LCC.(JCS)を設立した。
Li-ion 電池は他タイプの電池よりセル電圧が高く,セル数が少なく,エネルギー密度
も高い。また,リチウムイオン電池はその適用幅が広く,設計に柔軟性がある。
JCS には多くのリチウムイオン EV の経験がある。1996 年に始まったリチウムイオン
システムのデモンストレーションプログラムでは,様々な車両に採用され,30 万マイル
のフィールド走行を行っている。
PHEV 用としては,現在 ANL によって JCS のリチウムイオン電池が PHEV 用途と
しての評価を受けているところである。今後も,PHEV に関して,様々な観点からコス
トや便益に関する分析を行う予定であり,深い SOC で使用する電池の設計や実証を行
う考えである。PHEV はアメリカのエネルギーと環境を改善する可能性があると信じて
おり,その実現可能性について,力を入れて研究されるべきであると考えている。当社
はブッシュ大統領により提案された Advanced Energy Initiative を支持しており,DOE
や EPRI,AQMD,CARB,OEM のような組織でコストや便益に関する研究がされると
いうことが重要であると考えている。これは,合衆国が環境と技術の両面からリーダー
シップを発揮する素晴らしいチャンスである。
3) Battery Considerations and Test Results for Lithium-ion Batteries in the Sprinter PHEV
発表者:Mark Duvall, EPRI
Plug-in HEV Sprinter Van のバッテリに関する考察とテスト結果について発表が行
われた。
このプロジェクトでは,PHEV でのバッテリのサイクル寿命耐久性に対する知識を得
るという目的で,ラボテストや3年間の自動車のフィールドテストが行われる。SCE
(Southern California Edison),EPRI,NREL,DaimlerChrysler,バッテリメーカ
(JCI,SAFT)が参画している。なお,使用された電池は VARTA の NiMH 電池およ
び SAFT の Li-ion 電池である。
VARTA NiMH 電池(DNP2)は,現在 1,950 サイクル(18.5 ヶ月間)の試験が行わ
れているが,重大な容量の劣化は起こっておらず,パワー劣化は 6%以下である。SAFT
の Li-ion 電池については,1,450 サイクル(15.5 ヶ月間)の試験が行われており,容量
劣化は 5%以下,パワー劣化は 4%以下である。引き続き,3,000 サイクルまでのテスト
を行う予定であり,VARTA 電池は 2007 年 8 月に,SAFT 電池は 2008 年 2 月に,目標
−221−
サイクルに到達する予定である。
今後は,サブパックでのテスト結果を実証するために,フルバッテリパックのテスト
を導入する予定である。また,3 年間の PHEV Sprinter に用いたバッテリシステムの
フィールドテストの評価も行う予定である。
4) Status of lithium-ion batteries using lithium titanate in the anode (safety, fast charging,
and long cycle life)
発表者:Evan House, Altairnano
Altairnano 社は NASDAQ 上場企業であり,セラミックナノ材料(二酸化チタンやそ
の他金属酸化物など)の革新技術を有する企業であり,EV や HEV の分野で大変革をも
たらそうとしている。会社はリノ(ネバダ州),アンダーソン(インディアナ州)にあ
り,広さは 10 万平方フィートで,従業員数は 77 人である。
現状のリチウムイオン電池は,充放電効率,サイクル寿命やカレンダー寿命など性能
はまだ不十分であり,リチウムイオン電池に使われている物質は不安全な組み合わせで
もあり,安全性も完全とは言えない。
これに対し,Altairnano 社は,負極において黒鉛(グラファイト)に代わる新たなナ
ノ構造電極を用いることによる解決方法を提案している。ナノ構造電極の採用により,
粒子を小さくし,電極表面積が増大する。また,安定した 3 次元ホスト材料を利用する。
この代替電極材を用いることにより,ほとんどの危険因子を回避することができる。性
能に関しても劇的に改善され,本質的に安全なリチウムイオン電池が可能となる。
具体的に当社のナノチタン酸リチウム n-LTO(Li4Ti5O12)を用いた負極は,以下のよ
うな特性を持つ。
z
n-LTO は安定した 3 次元結晶構造(spinel)である
z
どんな角度からでもリチウムイオンが入り込むことができ,低温においてもその
活性を維持できる
z
安定した結晶形態を持つことから,充放電により,ほとんど変形しない
z
700℃でも安定している
z
160mAh/g という高容量である
z
リチウム金属が形成されない
z
SEI(Solid Electrolyte Interface:電解液と電極表面の安定界面)が形成されない
z
電流の集電極にアルミニウムを用いることができる
z
電解質での副次反応を減少させる
ナノチタン酸リチウム電極を用いたバッテリは,以下のように非常に優れた特性を有
する。
−222−
z
数分での充電が可能で,高低温での充放電特性に優れる
z
多数のアプリケーションの出力に対応できる(図 1-8)
z
寿命は 4 倍にもなる(12 年と評価される)
z
本質的に安全なバッテリ構造である
z
環境に優しいバッテリ構造である
図 1-8 パワー密度とエネルギー密度
なお,図 1-9 に示す SUV による BEV の実証走行も実施しており 150 マイル以上の航
続距離を確認している。
図 1-9 Altainano のリチウムイオン電池を採用した BEV
−223−
5) Design Considerations and the Status and Future Plans for Lithium-ion Batteries using
Iron Phosphate in the Cathode
発表者:Andrew Chu, A123 Battery Co.
A123 Systems 社は 2001 年に設立され,マサチューセッツ州 Watertown に本部が,
ミシガン州の Ann Arbor に材料 R&D センターがある。その他中国,韓国,台湾にも施
設がある。従業員は,世界中で 200 人程度である。
A123 Systems 社のコア技術(図 1-10)は,ナノスケールのリン酸塩を正極にドープ
するというものである。従来技術である酸化物ベースの電極粒子より粒径を小さくする
ことができ,リチウムイオンの拡散速度が向上し,また,ドープ剤により導電性が数桁
のオーダで向上する。
図 1-10 A123Systems のコア技術
現状のリチウムイオン二次電池の課題としては,コスト,寿命,安全性,充電時間が
長いことなどの問題があるが,A123 Systems 社のバッテリ技術はこれらの課題を克服
している。コストに関しては,既存の大量生産ラインを活用し,さらに安全性が高いゆ
えに安全制御機器が少なくて済むことからもコスト面で有利である。また,高温でさえ
も深放電サイクル寿命が非常に良く,熱暴走がないため安全性が高い。フルチャージに
かかる時間も 15 分以内である。
2015 年の電動工具用の二次電池の生産量は,HEV 用およびその他のハイパワーアプ
リケーション用に比べて 2 倍になると予想している。A123 Systems 社は,電動工具市
場においてもっともシェアが大きく,電動工具市場の拡大は,HEV およびハイパワーア
プリケーション市場の拡大にとって有益であると考えている。
−224−
従来のリチウムイオン二次電池の安全性の低さの一つの要因は,正極に用いられる
LiCoO2(コバルト酸リチウム)からリチウムイオンが放出されたとき,正極において
Co3+から不安定な Co4+に変化することである。これに対して,リン酸塩をドープした
LiFePO4(オリビン鉄)では,Fe2+は安定的な Fe3+に変化する。結果として原理的に安
全性の高い二次電池を構築することができる(図 1-11)。
図 1-11 リチウムイオン電池の正極材料
図 1-12 は,従来バッテリとの比較であるが,リン酸塩 Cell では,熱暴走が生じず,
非常に安全性が高い。
図 1-12 従来バッテリとの比較
−225−
現在の製品である M1 はエネルギー密度とパワー密度のバランスの取れた製品である。
電動工具にとっても,バスやトラックの HEV,その他の電動アプリケーションにとって
も適合性の高い二次電池である。パワーアシスト HEV のために最適化されたハイパワー
二次電池技術も開発しており,もし,自動車メーカが plug-in HEV(PHEV)を開発す
るのであれば,A123 Systems 社は非常によい位置にいると考えられる。A123 の技術は
PHEV アプリケーションにも適しており,すでにパートナーを通じてこの領域に取り組
んでいる。
(6) Session VII: Demonstrations & Impacts
Session VII: Demonstrations & Impacts において,Taix の Stefan Unash 氏から,
PHEV,BEV,FCV,ガソリン ICEV の Well-to-Wheel(WtW)分析に関する報告
「Assessment of Full Fuel Cycle Emissions」が行われた以下にその概要を整理する。
結果は図 1-13 に示すとおりである。ZEV 技術は,WtW サイクルベースでの排気の減
少をもたらすが,この結果は多くのパラメータに依存することに注意が必要である。
図 1-13 WtW 分析結果
−226−
2.CaFCP 訪問
訪問先
訪問日時
応対者
主な調査項目
California Fuel Cell Partnership(CaFCP)本部
2006 年 9 月 28 日(木)
Mrs. Chris White
CaFCP のパワフルで積極的な広報の背景を知ること
2−1 概要
今回訪問した主な目的は,CaFCP のパワフルで積極的な広報の背景を知ることにあっ
た。その強みは,下記によるのではないかと思われた。
¾
CARB,CEC,DOE,DOT など地方自治体や連邦政府が積極的に関わってい
ること。
¾
広報担当ディレクターの過去の経験(元 IBM での広報担当)が強く関わってい
ること。
¾
CaFCP としては,走行データを取得して公表するなどすることがないため,活
動の中心が広報となり,CaFCP-HQ に参加自動車メーカ各社の常駐者もいるな
ど協力が得やすく,WG が活発に行われていること。
¾
この広報活動の資金は,政府機関および CaFCP 参加者により賄われているこ
と。
¾
CaFCP-HQ と CARB の距離が車で 15 分程であり,極めて地理的に近いために
CARB 関係者が参加しやすいこと。CaFCP トップの Ms. Catherine Dunwoody
は CARB からの出向者であること。
¾
周囲に UC-Davis 校など強力な協力を得られる大学が存在していること。
−227−
2−2 2006 年の CaFCP コミュニケーションプログラム計画
2−2−1 CaFCP コミュニケーションプログラムの概要
CaFCP は FCV コミュニティにおいて,CaFCP 自身をリーダとして確立させるため
の重要な活動に取り組んでいる。
2006 年には,産業界を超えてさらに多くの人々を巻き込むような,イベント,ワーク
ショップ,個々の接触,大規模なマーケティング活動などを通じて,CaFCP は以下のこ
とに取り組む。
¾
教育や情報提供の対象とすべき,州や市,郡,あるいは議員や公務員を目標に
定める。
¾
情報の提供や,注目・関心度の向上,そして各活動のメンバーをサポートする
ために今後も実証試験を実施している地域のコミュニティでの活動を継続する。
¾
種々のイベントを数多く開催させることで,参加者が技術に直接触れられる機
会を多く提供する。
¾
わかりやすい図や,新しい Web ページ,白書,プレスの取材を含めた新たな方
法で情報を提供する。
2−2−2 CaFCP の 2006 年の活動内容
(1) 車両,水素ステーションの配置に対するサポート
車両,ステーション配置のサポートに関連する活動内容を表に 2-1 に整理する。
表 2−1 車両,ステーション配置のサポートに関する CaFCP の 2006 年の活動内容
広報活動の実施とコーディ
ネート
¾
¾
¾
¾
¾
第一応答者に対するトレーニ
ング
¾
州内の5つの実証地域コミュニティにおいてワーク
ショップを主催
メンバーの広報活動のサポートおよび要請に応じて
イベントを開催する。
実証試験のためのブランド品の提供(例えばステー
ション用の CaFCP メンバーステッカーなど)
「CaFCP Member」ロゴとキャッチフレーズの提供
公表や活動の計画を立てる際に活用できるマスター
カレンダーの管理
州内の実証地域コミュニティにおけるトレーニング
プログラムの開催(4 半期毎に 1 回から 2 回程度)
−228−
(2) FCV 関連技術に関する主要な情報源としての役割の遂行
情報提供に関する 2006 年の活動内容は表 2-2 のとおりである。
表 2−2 情報提供に関する 2006 年の活動内容
FC と 水 素 分 野 産業の会議やイベントにおける
におけるリーダ 露出機会の増大
シップ
CaFCP がブース未所有であるイ
ベントにおける講演機会の設定
情報や図の交換による他組織と
の協調
カリフォルニア水素ハイウェー
に関するコミュニティ活動への
参加
FC や 水 素 技 術 北・南カリフォルニア施設への
に直接接触する 訪問者を増加
機会の提供
4つのイベントにおいて,サー
ビスの代わりに「乗車と運転」
を推進
ステークホルダー,消防当局,
あるいはオピニオン・リーダー
や影響力のある人々を対象とし
た新たなイベントへの参加
わかりやすい情 情報を探しやすくさせるための
報の提供
Web サイトの改善
¾
¾
¾
公的イベントツアーの平均参加
者を 2005 年より 5%増加させ
る
¾
¾
Q&A の設置(2006 年 1 月)
トップページと目次の更新
(2006 年 1 月)
情報ページの訂正(2006 年 2
月)
月単位の情報発信と更新
書籍「How Does It Work」の制
作(2006 年 1 月)
アニメ「How Does It Work」の
制作(2006 年 2 月)
ギャラリーデザインの完成
(2006 年 3 月)
5 つのキーメディア間とのリ
レーションシップを確立
ジャーナリストグループへの加
入,および会議への出席
メディアへの周知活動としての
「カリフォルニアの進歩」メッ
セージに着目する。
¾
理解しやすいパンフレットの制
作
¾
¾
¾
ブース,ギャラリーに対話型コ
ンポーネント設置
メディアへの周知活動の拡大
¾
¾
¾
¾
州や全国の政策
策定者である政
府を対象とした
カリフォルニア
活動への認知度
向上のための活
動
実証地域コミュニティにおける
州や連邦政府代表者に対する状
況説明会を開催
他が主催するカリフォルニア州
議員向け状況説明会への参加
他が主催する連邦議員向け状況
説明会への参加
−229−
より大きく,かつ目立つブース
の設置
スポンサー提携機会の増大
2−3 CaFCP の水素供給ステーション
CaFCP における水素の充填方法について問合せたところ,水素充填の最大流量は
2kg/min と決めているが,表 2-3 に示す圧力上昇率一定の充填方法で採用しているとい
う。なお,リッチモンドの水素ステーションでは,流量一定(0.24kg/min)の方法のみで
あり,オークランドについては不明である。
表 2−3 CaFCP-HQ における充填方法
外気温
圧力上昇率
30℃超
5MPa/min
15℃∼30℃
7.5 MPa/min
15℃未満
10MPa/min
−230−
3.AC Transit (Alameda-Contra Costa Transit District)訪問
訪問先
訪問日時
AC Transit(Alameda-Contra Costa Transit District)
2006 年 9 月 29 日(金)
組織の概要
サンフランシスコ湾東岸の 13 都市,350 万平方マイルでバスの運行を
行う会社。CaFCP の FC バスプログラムに参画し,FC バスの実証試
験を実施。本社はオークランド。
応対者
Jaimie Levin, Director of Marketing&Communications, AC Transit
主な調査項目
FC バス実証試験への取組状況の調査
3−1 訪問調査の概要
2005 年の 11 月に新設され,2006 年 3 月に本格稼動した Chevron Technology
Ventures 製 2 基の天然ガス改質形水素ステーションと水素改質装置,水素 FC バス用整
備室を見学した。
ステーションがあるバス駐車場には,FC バスが 3 台(図 3-1),現代/起亜の Tuscon
FCV が 4 台(図 3-2)あった。FC バスに試乗したが,Ballard 製 FC スタックを搭載し
た VTA の FC バスより静かであった。これは,FC スタックへの入り口圧力がほぼ大気
圧に近い UTC-FC 製の FC スタック搭載によるブロア音の低減,シーメンス製の AC 誘
導モーター搭載のためと考えられる。図 3-3 に搭載された ZEBRA 電池を,図 3-4 に整
備用ガレージを示す。
AC Transit の今一番の悩みは,270℃という高温に維持しなければならない ZEBRA
電池である。この電池では信頼性に乏しく,何度もセルトラブルを経験したということ
で,今後 Ni-MH 電池と Li イオン電池のどちらに変更すれば良いのか,その電池はどの
メーカーに依頼するのが一番良いのかという質問があった。
AC Transit の FC バスがベルギーの Van Hool 製である理由を質問したところ,現行
のディーゼル車全て(650 台)が,もともと Van Hool のものだからということであっ
た。
なお,AC Transit は,カリフォルニア州において最も熱心に FC バスの実証に取り組
んでいる運行会社であり,AC Transit の FC バスは,CUTE のバスよりも性能的に優れ
ている。2006 年 5 月にはハンブルグで,9 月にはシュツットガルトで AC Transit にお
ける FC バスの実証試験状況を発表しているが,現地における説明を聞いていても AC
Transit とチームを組んでいる UTC-FC,ISE Research と極めてうまくいっているよう
である。しかし,ISE Research は,トヨタや日野,Evobus のように技術面が強いとは
思えず,これからハイブリッド化された FC バスの性能向上がどこまで可能かは不安が
残ると考えられる。
−231−
図 3−1
図 3−3
FC バスと水素ステーション
図 3−2
FC バス搭載の ZEBRA 電池
−232−
Hyundai/Kia の FC・EV
図 3−4
FC バス整備室
3−2 AC Transit のサービス
AC Transit のサービスの概要を図 3-5 に示す。
¾
13 都市で 150 万人の顧客を対象
¾
年間乗客数 6,900 万人
¾
保有バス 650 台
¾
従業者数 2,302 名
¾
予算 20,300 万ユーロ
¾
105 路線(27 のトランスベイ路線)
電解による水素製造(Richmond)
(水素製造能力 24kg/日)
太陽光電解による水素製造(Rosemead)
(水素製造能力 10kg/日)
改質による水素製造(Oakland)
(水素製造能力 150kg/日)
小型メンテナンスセンター(Oakland)
図 3−5 AC Transit のサービスの概要
3−3 AC Transit の取り組み
(1) 水素・FC バス導入への取り組み
AC Transit の取り組みについて以下に整理する(表 3-1∼表 3-3)。
表 3−1 AC Transit の関心と水素のポテンシャル
¾
危険に曝されている都市中心部の人々の健康を守る
¾
より静粛なバス導入によって生活水準の向上
¾
ライフサイクルコストの低減
¾
水素のポテンシャル
・ 燃料の多様化,再生可能エネルギー使用による持続可能性向上
・ エネルギーの独立(国民の安全)
・ 地球温暖化問題の解決
−233−
表 3−2 水素・FC バスの商用化に向けた取り組み内容
・ 限界試験
・ 充填施設やメンテナンス施設の集中化
・ 専門的で,かつ十分な教育を受けているスタッフの配置
・ 一般公開
・ 商用化の先導
・ 水素の輸送エネルギー利用による便益の産出
表 3−3 FC バスに対するこれまでの主な取り組み
1999 年 11 月
ZEbus の運行テスト実施
CaFCP へ参画
NeBus の運行テスト実施
ISE と UTC との共同制作 FC ハイブリッドバス「Thor Bus」
の走行テストを実施
2000 年
2003∼2004 年
(2) 実証試験に導入している FC バス・水素ステーション
1) AC Transit の FC バス
現在,全長 12m の FC ハイブリッドバス 3 台(図 3-6)と,SunLine Transit 向け
のバス 1 台を加えた計 4 台をテスト走行させている。これらの実績は表 3-4 のとおり
である。全長 12m のバスは,図 3-7 のような ISE 製のハイブリッドシステムを搭載
している。燃料効率が高く,静粛性の高いバスであるという。主な問題点としては,
バッテリ,空調,運転手のミスなどが挙げられている。
なお,AC Transit としては,2009 年 1 月までに,12 台の FC バスを試験運行させ
る計画である。
・
・
・
・
・
高出力,高速度,スムーズ
高い静粛性
高い燃料効率
シャープな外観
コスト(車体価格)の目標:
230 万ユーロ/150 万ユーロ/78 万ユーロ
・ 登板能力 18%
・ 最高速度 110km/h
図 3−6 全長 12m の FC ハイブリッドバスの性能
−234−
表 3−4 FC バスに関する AC Transit の実績
指
値
(2006 年 9 月時点)
標
総走行距離
76,000km
総走行時間
燃費
約 4,000 時間
9kg-H2/100km
航続距離
522km
平均速度
16.8km/hr
(Line 57 の実績)
稼動信頼性
90%
問題点
二次電池
空調
運転手のミス
コメント
サービス開始の 2005 年 12 月から 2006 年
3 月までの実績
バス 4 台の合計
平地走行時
350 気圧圧縮による 50kg 搭載で,48kg
の燃料を使用可能
Line50 では 25km/h,SunLine Route で
は 25km/h
Sunline Transit のバスについては AC
Transit 側の問題により 69%
セル
モータ
FC の起動時
図 3−7 ISE 製 FC ハイブリッドシステム
2) リッチモンド水素ステーション(図 3-5 中の地点 D3)
2002 年 10 月にオープンしたステーションである(図 3-8)。
・ 水素製造装置:オンサイト水電解
・ 水素製造能力:24kg/日
・ 水素貯蔵能力:47kg
・ 消費電力:85∼90kWh/kg
・ 電力コスト:9.75 セント/kWh≒約 8.6 ユー
ロ/ kg-水素
図 3−8 リッチモンド水素ステーションの概要
−235−
3) オークランドエネルギーステーション(図 3-5 中の地点 D-4)
2005 年 11 月に設置されたオークランドエネルギーステーションの概要を図 3-9,
図 3-10 に示す。なお,メンテナンスショップも同時に新設されている。
・ 水素製造装置:オンサイト天然ガス改質
(Chevron Technology Ventures 製を 2 基)
・ 水素製造能力:150kg/日
・ 水素貯蔵能力:366kg
・ 水素充填流量:2kg/min
・ 単位水素充填量:約 19kg/回(226 回で 4,293kg)
・ 水素コスト:4.6∼6.15 ユーロ/kg
・ 軽油価格:55 セント/リットル
(2.07 ユーロ/ガロン)
・ 398 回,4,657kg を充填(2006/09/19 現在)
・ ターンダウン比 40%,放出水素なし
図 3−9 オークランドエネルギーステーションの概要
Solar Panels
in
m
Se
y
ar
en
Av
ue
B
AR
T
30 m Service Bay
Dispensers
Storage
Reformer
図 3−10 オークランドエネルギーステーションの外観
−236−
4) 再生可能エネルギーによる水素ステーション(図 3-5 中の地点 D-2)
太陽光発電による水素ステーションは 2007 年から稼動が開始される。概要は図 3-11
のとおりである。
・ 水素製造装置:太陽光発電,高圧水電
解
・ 水素製造能力:10kg/日
・ 水素貯蔵能力:20kg
・ 補助金:57 万 5 千ユーロ(DOE)
<高圧水電解水素製造装置>
図 3−11 太陽光電解による水素充填方法
5) DOE 実証走行試験用水素ステーション(図 3-5 中の地点 CMF)
DOE の小型車両実証試験用に建設されたステーションである。同実証試験では現代
/起亜の Tuscon FCV が,現在 7 台保有されており,2007 年 1 月までには 12 台が使
用され,AC Transit の道路管理者が 1 日 160km 運転する(図 3-12)。なお,これら
の FCV はメールの配送とバスの道路運行管理に利用される。
図 3−12 DOE 実証走行試験用水素ステーションと配置車両 Tuscon FCV
−237−
(3) 実証走行試験の評価
実証走行試験の評価は,NREL,DOE と協力して行っている。評価においては図 3-13
に示すようなアプリケーションを使用している。
図 3−13 実証走行試験の評価で使用されるアプリケーション
(4) 教育
教育活動の概要は以下のとおりである。
・ DOE の補助による HyTEC(Hydrogen Technology & Energy Curriculum)を実施
・ 1,500 名の従業員,100 名のドライバー,176 名のメカニックへの教育実施
・ 初期レスポンストレーニング(300 名対象)
・ 会議/学習センターの設置
・ ステーション開所の一週間前に集中訓練を実施
AC Transit,Chevron のスタッフが講師
Schatz Energy Research Center の専門家による実地訓練も実施
−238−
(5) 今後の活動
今後の活動計画として,表 3-5 の 3 つのフェーズによるプロジェクトが挙げられる。
なお,CARB への FCB 実証試験の結果報告は,2007 年 7 月以降となる見込みである。
表 3−5 今後の活動について
Phase 1.実証試験の加速(17 時間/日,2006 年∼2007 年)
Phase 2.車両のアップグレード(10,000 時間以上の運転,2007 年)
Phase 3.拡大(12 台の FCV)
¾
ベイエリア ZEB コンソーシウム
の立ち上げ(2,500 台超の車両,
予算 11,700 万ユーロ,右図)
【メンバー】
・ AC Transit
・ Golden Gate
・ Samtrans
・ San Francisco MUNI
・ VTA
・ Metropolitan Transportation
Commission
¾
9 台の新規バスの導入(1 台当り
156 万ユーロ未満)
¾
運転時間:15,000∼20,000 時間
¾
2009 年から 2011 年まで実施
3−4 商業化への課題
水素・FC バスの商業化に向けての課題は以下のとおりである。
¾
パフォーマンス(信頼性,耐久性)
¾
コスト(設備投資,ライフサイクル)
¾
パッケージング(重量;3 トンの軽量化,サイズ)
¾
燃料(純度,コスト,充填速度,貯蔵能力)
−239−
−240−
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