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飲料容器のごみはなぜ増えている? 飲料容器のごみはなぜ増えている?
飲料容器のごみはなぜ増えている? −消費者も無関心ではいられない− 循環型社会・廃棄物研究センター 1.はじめに この1年は容器包装リサイクル法の見直しの議論が大変盛んでした。その議論においては、リサイクルするにあたっての様々な問題点が指摘さ れる一方で、大量リサイクルではいけない、リサイクルより優先すべき対策としてリデュース(廃棄物の発生抑制)を進めるべきといった指摘も ありました。しかし、容器包装廃棄物のリデュースの取組がどの程度有効に進んでいるかの定量的なデータは示されていません。 そこで、容器包装廃棄物のなかで割合が大きいものの一つである飲料容器を対象として、飲料容器のごみが増えているのか、減っているのか、 またその要因は何かを定量的に明らかにする研究を行いました。 2.飲料容器の廃棄物発生要因の解析方法 "Decomposition Analysis" と呼ばれる要因分解分析手法(右記) によって、飲料容器の廃棄物が発生する要因を解析しました。この解 析により、廃棄物発生量の増減を、①人口変化、②飲料消費量変化、 ③容器素材選択の変化、④容器重量変化の 4 つの要因で示すことがで きます。同様にして、リターナブル容器の場合には、⑤リユースの要 因についても解析することができます。①と②は全ての容器素材に共 通して影響し、③④⑤は容器素材の種類ごとに影響の程度が異なりま す。このうち、③容器素材選択の変化とは、対象飲料の消費量のうち、 ある容器素材向け消費量が占める割合が変化したことによる影響を表 し、また、④容器重量変化とは、容器 1 本(個)あたりの平均容器 重量ではなく、容器の内容量 1 リットルあたりの平均容器重量の変 化による影響を表します。 3.解析結果 清涼飲料、飲用牛乳、ビール・発泡酒を対象 にした解析結果を図に示します。これは、容器 包装リサイクル法が施行される前年である 1996 年と 2002 年を比較した結果です。廃棄 物の量が減っているものは、清涼飲料用のアル ミ缶、スチール缶、ガラスびん、ビール用のガ ラスびんであることが分かりました。ただ、こ れらの削減効果は、他の容器素材へ消費がシフ トしたことによるものであって、廃棄物のリデ ュースによる効果ではないことも分かりました。 一方、廃棄物の量が増えているものは、清涼飲 料用のPETボトルと紙容器であることが分か りました。これらの容器素材の消費が高まった こと、これら容器を用いる飲料の消費が高まっ たことが増加の主要因でした。 ところで、飲料容器メーカーの努力によって 飲料1本あたりの単位容器重量が減少してきて いる効果はどれだけ表れているのでしょうか。 ガラスびんについては軽量化の効果が認められ ますが、その他の容器素材については、小型化 等の影響によってその効果が相殺されているこ とが分かりました。また、牛乳用とビール用の ガラスびんについてはリユース離れによって軽 量化の効果が相殺されていることが示されまし た。 4.おわりに 以上のように、飲料容器メーカーによるリデ ュース効果は多くの品目で相殺されていること が分かりました。いずれも私たち消費者が便利 な生活を追求した結果ということができます。 もはや消費者も無関心ではいられないのです。 図 飲料容器廃棄物の発生要因の解析結果 オレンジの棒が 1996 年から 2002 年までの廃棄物の増減比を示し、青色の棒がその増減に対する各要因の影響 度を示します(影響度が 1 より大きければ廃棄物の増加要因、1 より小さければ廃棄物の減少要因です。また、① ∼⑤の要因の影響度を乗した値が廃棄物の増減比になります)。 〔 田崎 智宏、森口 祐一 〕