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終了報告|草の根型プログラム|科学コミュニケーション連携推進事業
ドレミファの音を空まで届かせよう♪ 基礎情報 申請者氏名 佐藤 元 企画の概要 背景:私は「気象予報士」のみで構成される「気象実験クラブ」と言う団体を主宰しています。地域 の人々や子供達を対象として、自然現象の不思議と科学することの楽しさを伝えたいと思い、 「気象予報士のお天気実験」と題して実験や講義を行い、実験の研究も行っています。今回は、 「ドレミファの音を空まで届かせよう♪」と題して、音で楽しむお天気実験を行います。 狙い:実験や講義で扱う素材は、空気と水であるが、これら素材と、実験器材との適切な組み合わせによって、音 ができる、雲ができる、という目標へ到達する過程で、工夫しながら、そして様々に試行錯誤してもらいつつ、科 学への親しみと、良い印象を持ってもらいたい。 内容:このため、簡単な工作・工夫、及び簡明な講義を伴う以下の実験①②を行う。 講師は、実験に際しては、工作・工夫のポイントを問いかけ、また答えを誘導し、現象の基礎となる自然の原理を 「ミニ講義」で説明する。(ミニ講義→様式1-3) 実験① ワイングラスで音を作り、曲を演奏する実験 : 空気が様々な外力によって、「波動と振動」を起こすことを 紹介する。即ち、(偏西風)波動と(北極)振動がお天気変化の大きな要因の一つになることを紹介する。実験で は、振動現象の一つとして「音」を取り上げる。参加者は、ワイングラスを使って、試行錯誤しつつ適切な「楽 音」を作り出し、その音で曲を演奏して楽しむ実験である。(様式1-3参照) 実験② 雲を作る実験 : 実験①におけるの「波動と振動」がお天気変化の大きな要因になっていることを下敷きとし て、大気の温度がお天気(雲や雨)を作ることに大きな影響があることを紹介する。実験では、ペットボトルで、 どうすれば最も良い、ハッキリとした雲ができるか、工夫とチャレンジの実験を行う。(様式1-3参照) 時間:実験(ミニ講義を含む)とQ&A等の所要時間は約1時間を予定する。 成果:普段意識しない空気の存在と力を認識してもらう。そして、家庭に帰ったら家族の中で、 或いは学校の友達に、実験で得た事や、楽しかった事について話し合ってもらいたい。 ミニ講義: 実験に際しては、「ミニ講義」を実施した。(実験室において)、実験ごとに一つのテーブル(実験台)或いは 正面の教壇において、講師役の気象予報士がパウチ等にした説明板(現象などをイラスト化して描いてある)や ホワイトボードを活用して、実験と現象の結びつき、及び現象の原理の解説を行った。このとき、参加者を小人数 に分けて講義するので、子供たちの集中力も良好であり、質問も出やすく、親近感も増す。 この「実験+ミニ講義」方式は、平成21年度、神奈川県内(横浜市、川崎市、厚木市)の小学校やその他 公民館等で実施した実績があるものである。 なお、PCプロジェクターに投影して現象を見せ、説明する方法もあるが、どうしても講師のペースで話が 進みがちで、参加者は「置き去りにされる」ケースが多いようである。この弊害を除くため、あえてPC プロジェクターで投影せずに、説明する方法をとっている。 ご採択して頂いた実験は、参加者の人数に応じて、代替的な実験に切り替え、その都度ご承認を戴きながら進めま した。 すなわち、ワイングラスを使った実験は全5回予定しましたが、参加人数が大変多く、ガラス破損による危険性を 避けるため、安全性を考慮し、5回の内3回は、竜巻を作る実験及び台風による海水面上昇効果実験を代替的な実 験として実施しました。 これら代替的な実験においても、実験を楽しみ、また、さまざまに工夫して実験するという、実験の意義は同等の ものと考えられます。(アンケート結果からもうかがい知ることが出来ます。) その内容は以下のものでした。 ■内容: 実験③ 台風の海水面吸い上げ実験 台風に、海水を持ち上げる作用がある。これは、気圧が低くなることにより、海水が吸い上げられることによる。 この原理を、太いパイプをストロー代わりにして、バケツの水を吸い上げてもらった。 子供たちにとって、水を吸い上げるのがなかなか大変です。この大変さ加減を体感してもらい、 台風の力の大きさに思い至ってもらいます。 ●器材=塩ビパイプ、ビニールチューブ、ストロー、バケツ、水 ●操作=参加者は、太いパイプをストロー代わりにして、バケツ内の水を吸い上げる。 ●楽しみ=子供たち個々人にとっては、吸い上げる高さが異なる、そこに若干ですが、競技性が生じる。 どれだけ高く吸い上げるか、みんなで競うことになる。 ●期待する効果=一人で吸い上げる水の量はごく僅かですが、台風が吸い上げる水の量は、 地球上の全ての人達が全員で吸い上げても、とても追いつかないほどあります。 台風は強大な力を持っていることを実感してもらえるでしょう。 実験④ 竜巻を作る実験 台風が来たり、積乱雲が発達したりすると、風が強くなり、竜巻も発生しやすくなります。 竜巻の作り方にはいろいろあって、見せ方もいろいろあります。 今回の実験は大変簡単なもので、ペットボトルの中に水を入れて、ボトルを少し回転し、 水を流下させると、竜巻の様な渦が出来た。 この実験は、ペットボトルで、どうすれば最も良い、ハッキリとした竜巻ができるか、工夫とチャレンジを 参加者自ら行ってもらった。自分が与えた条件がいかなる結果となるかを実感できたであろう。 ●器材=ペットボトル、水 ●手順=ペットボトルの底に小穴をあけ、キャップにも小穴をあける。 ●竜巻の作り方=ペットボトルの中にの中に水を入れ、ボトルをさかさまにして、回転させる。 水が流下するにつれ、渦巻きが発達してきて、竜巻の様な渦となる。 ●工夫=キャップの穴が小さい場合、ボトルの断面形状が四角い場合、竜巻が出来るか、 どんな形状のボトルが竜巻が出来やすいか、いろいろ試行錯誤してみた。 ●楽しみ=上記の工夫したり、条件を変えると、どんな現象に変わるかを予測し、期待することを楽しむ。 ●期待する効果=ボトルの中で竜巻は簡単に出来ます。 家に帰ってから、お風呂場などでも簡単に自分で工作して、竜巻を楽しんでもらえます。 更に、家庭内の小さな竜巻も空の大きな竜巻に似ていることの不思議さに気付くでしょう。 以上の実験は、家庭にあるペットボトルなどを使って簡単に工作できるので、 子供たちが自分の家に帰ってからでも容易に工作し、実験を楽しむことができます。 (関連実験掲載HP→http://www.ny.airnet.ne.jp/satoh/) 参加者の属性と内訳 未就学児 7人 小学校低学年 72 人 小学校高学年 58 人 中・高校生 0人 大学生等 0人 大人の参加者 4人 子どもの保護者 33 人 合計 174 人 全活動リスト 項番 活動日 活動名 実施場所 参加人数 1 2010年07月19日 ドレミファの音を空 川崎市高津市民館(神奈川県川崎 5 2 2010年07月28日 ドレミファの音を空 横須賀西コミュニティーセンター 50 3 2010年08月14日 ドレミファの音を空 川崎市高津市民館(神奈川県川崎 まで届かせよう♪ まで届かせよう♪ まで届かせよう♪ 市高津区溝口1丁目4−1) (須賀市長坂1-2-2) 市高津区溝口1丁目4−1) 13 4 2010年08月19日 ドレミファの音を空 能見台センター(横浜市金沢区能 83 5 2010年08月22日 ドレミファの音を空 横浜市旭区南希望が丘72-3、横 まで届かせよう♪ まで届かせよう♪ 見台東2-1) 浜市南希望が丘地域ケアプラザ 23 活動終了の所見 申請時立てた「企画終了時の目標」の達成度 目標は、 ・実験では、普段意識しない空気の存在と力を認識してもらう。そして、家庭に帰ったら家族の中で、 或いは学校の友達に、実験で得た事、楽しかった事などについて話し合ってもらいたい。 ・受講生個々人を受講後、個別的にフォロー出来れば申し分ないが、不可能である。このため、限られた講義と実 験の時間の中で、少しでも「自然と言う存在の不思議さ」に「近付くことができ」、「気づき」と「驚き」の心を 持ってもらえたら、と願う。 ・Q&Aやアンケート結果を得て、次回開催への改善と新規実験への研究・開発の礎(いしづえ)としたい。 でした。 実験を終了した時点で、振り返ってみると、 ・企画時立てた実験項目2種の内、ワイングラスの実験については、人数が多かった時は割愛し、他の気象実験で 代替しました。代替的実験でも、子供たちにとって、十分、満足してもらえたと思います。自己採点=75%位だ と思います。 ・自分が行なった実験がはたして、本当に如何に役立っているのか、アンケート結果を見ただけでは分かりませ ん。フォローアップが必要だとは思いますが、How to? です。 ・アンケートには時々「雨、雪、雷の実験」をしたい、との希望が散見されました。これらの実験は、出来ないこ とは有りませんが、費用的、時間的に難しいものです。技術的に可能であっても、安全性や、実験完了に至るには 時間がかかったりします。難しい問題です。 企画全体を振り返り、今後の課題や取組み ・なんと言っても、参加者の募集が一番の問題でした。応募者が大変少なかったり、逆に多すぎたりしました。 ・講座開催の会場確保も大変でした。公共施設は、すべてが、数ヶ月前に公開抽選が行なわれます。このため、希 望する月日、開催教室番号を希望しても、たいていの場合外れます。このため、空き教室を調べて、開催日時や設 備等の条件が良くないと思っても、とにかく会場を確保しなければなりません。参加者の人数にも影響があったか も知れません。これは、今後とも残る問題で、解決困難な気がします。 ・参加人数が多すぎたケースもありました。一番の問題は、目が届きにくくなり、安全性の面での心配が生じてき ました。このため、気象予報士のスタッフを若干増加したり、あるいは、実験器材としてガラス製品を使うことを 避けたりしました。このため、当初予定した実験を代替的なものへ変えて実験をせざるを得なかったです。企画立 案時、実験メニューをそろえることに、もっとも気を配りますが、人数に応じた実験を適切に考えておく必要性も あると思いました。 ・アンケートには時々「雨、雪、雷の実験」をしたい、との希望が散見されました。これらの実験は、出来ないこ とは有りませんが、費用的、時間的に難しいものです。技術的に可能であっても、安全性や、実験完了に至るには 時間がかかったりします。難しい問題です。 ・実験そのものは、これまで各地で行なってきたものであり、安全かつ、効果的に実施出来、子供たちにも喜んで もらえました。 しかし、自分が行なっている実験がはたして、本当に如何に役立っているのか、アンケート結果を見ただけでは分 かりません。フォローアップが必要かも知れません。しかし、不特定多数の子供たちの氏名・住所等の個人情報 は、所持していないので、How to? です。 ・実験に参加することが出来なかった子供たちが多数います。限られた期間、開催場所、費用等の制約がある中、 いかにすれば、救うことができるでしょうか。私は、その方法として、自分のホームページを開設して、実験を紹 介したり、(商品名で恐縮ですが)”Skype”を利用して、リアルタイムでインターネット経由、無料で実験を見 ることが出来る工夫をしています。この様な方面の個人的活動に対しても、ご支援戴けると大変ありがたい、と思 います。 ・さらには、実験を成功させるには、さまざまな試行錯誤的実験が先行して必要です。今回のJSTにご採択戴い た実験でも、ワイングラスの実験はまさにその通りで、何回も試行錯誤を繰り返して、子供たちに楽しんでもらえ るまでに仕上げました。費用、時間、試行錯誤のための実験場所、、、。 結構、先行投資が必要でした。これらを 効果的に社会に還元できれば、と思っています。 ★さまざまな貴重なアドバイスを戴きありがとうございました。 全活動を終えての所感 ・なんと言っても、JSTによりご採択戴いたこと、そして、財源がそれなりの金額があることは大いに助かりま す。個人の資力では 長続きは出来ませんが、ご支援戴けることは、大変ありがたいと思っています。 ・繰り返しになりますが、参加者の募集が一番の問題でした。応募者が大変少なかったり、逆に多すぎたりしまし た。 実験そのものは、これまで各地で行なってきたものであり、安全かつ、効果的に実施出来、子供たちにも喜んでも らえました。 自分が行なっている実験がはたして、本当に如何に役立っているのか、アンケート結果を見ただけでは分かりませ ん。フォローアップが必要かも知れません。How to? です。 ・アンケートには時々「雨、雪、雷の実験」をしたい、との希望が散見されました。これらの実験は、出来ないこ とは有りませんが、費用的、時間的に難しいものです。技術的に可能であっても、安全性や、実験完了に至るには 時間がかかったりします。難しい問題です。 ・今後の実験項目として、ありきたりの実験でなく、科学としていささか精密な物理量を計測したいと思うことが よくあります。 たとえば、精密に重量を計測したい、精密に気体の濃度を測定したい、低温装置を使って氷などの性質を調べた い、、、。いずれも高価な装置が必要であり、手が出ません。子供たち向けの実験ならともかく、高校生や、大人 向けには、数値で物理量を示し、状態の変化などを納得してもらいたいと思っているのです。何とか支援戴けると ありがたいと思っています。 ・そして、子供たちは、実験が大好きなのです。「理科離れ」という言葉を聞くことがありますが、信じられない ほどです。「大人が理科離れしている」のではないか、子供に理科や科学に興味を持つ心を持たせるには如何にす べきか、王道があれば、知りたいものです。