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を用いた騒音低減音響ヘッドフォンの実験的研究

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を用いた騒音低減音響ヘッドフォンの実験的研究
鹿児島工業高等専門学校
研究報告 44(2009)
13∼16
D
S
Pを用いた騒音低減音響ヘッドフォンの実験的研究
原田治行?
赤座孝憲什
Experiment
a
1researchonadaptiveactivenoisecontrolheadphoneusingDSP
H
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四 e
1
.緒 言
同振幅,逆位相の音(擬似騒音)をスビーカーから放
射し,元の音との干渉によって消音する能動騒音制御
(
A
c
t
i
v
eNoiseControl;ANC)は,遮音や吸音などの受
動騒音制御 1),
2
)では低減が困難な低周波領域の騒音を
低減できる特徴を持っている.この技術は,変電所の
変圧器からの騒音やダクトの吹き出し口からの騒音の
低減に応用されている 3,)4)
本論文の目的は,この技術を工場建屋内等の騒音の
高い環境下における作業者の安全性確保並びに効率的
生産管理に適用することである 物理的に消音する受
動的な消音技術を用いているイヤーマフ(耳覆い)や,
市販されているアナログ方式の騒音低減ヘッドフォン
では,いずれも騒音とともに,作業者同士の会話音声
や警報音などの必要な音も低減してしまうという欠点
があるが,この技術を用いれば,騒音のみを選択的に
低減することができる.
騒音のみを選択的に低減するために,騒音源近くに
設置するマイクロフォンと作業者の頭部に装着するマ
イクロフォン付きのヘッドフォンを組み合わせて騒音
低減普響へッドホンシステムを構築し,実験によって
騒音の低減を確認した.
能動騒音制御の適応アルゴリズムとして広く使用さ
れている Filtered-X-LMS(LeastMe皿 s
q
u
a
r
e
) アルゴ
リズム1)を用いた.適応アルゴリズムを実時間処理す
るために, Texas Instruments社製のTMS320C6711DSP
S
K
)と
, A/DConverterを搭載した同
StarterKit(以下 D
社製多入力用ドーターボードTHS1206Evaluation
Speech
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.1A
Moduleを使用した.これらの組み合わせを,以下, DSP
Controllerという.
2
.能動騒音制御システム
2
.
1 システム構成
図 1に実験システムの構成図を示す.
騒音下で人が話している時に,参照用マイクロフォ
ン (Referencemicrophone)で騒普(入力信号)を検出
し,騒音源(一次音源)からの騒音が人の耳に届いた
場合に,この騒音を打ち消すような同振幅,逆位相と
なる音(嗣以騒音)をANCControllerで作り,ヘッド
フォン内の消音用スビーカー (Secondary
loudspeaker 二次普源)から放射し,干渉させる.
?鹿児島工業高等専門学校電子制御工学科
t
t機械・電子システム工学専攻(現籍 (株)目立情報システムズ)
― 13 ―
原田 治行 赤座 孝憲
)
1
(
)
白
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のり
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J
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一
一
り
, 1, Jはフィルタの次数である.
(
2
)
F
i
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血Erro
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咽honc
誤差検出用マイクロフォン(Er
r
o
r皿 c
r
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刷o
n
e
)では,
干渉桂の音(誤封言号)を検出し,その音のエネルギ
ーを最小にするように D
S
PC
o
n
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r
o
l
l
e
r
で擬似騒音を制
御する.この時,人が話す音声 (
S
p
e
e
c
h
)は低減せずに
残される
騒音源として,信号発生器の出力をスビーカーから
出力した スビーカーの宜前に,審照周マイクロフォ
ンとして,小型のコンデンサマイクロホンを設置した
図2に示すように,市販されている音響へッドフォンの
耳覆いの中に,誤差検出用マイクロフォンとして小型
のコンデンサマイクロホンをセットした
参照周マイクロフォンと誤差検出用マイクロフォン
はドーターボードの A
I
D
入力端子に接続され,消音用ス
ビーカーは, D
S
K
の7 イク出力端子に接続されている.
演算方式は. 3
2
b
it
浮動小数点方式とした
2
,
2システムブロッウ園
x
(
n
)=ピ (
n
)
+LF;y(n-k)
(
3
)
H
誤差検出用マイクロフォンで検出される音 e
(
n
)は
,
騒音源から誤差検出用マイクロフォンに到達した音を
p
(
n
)とすれば, p
(
n
)と消音用スビーカーからの音
z
(
n
)との和で表され,次式となる.
J-I
e
(
n
)=p
(
n
)+L W
,
D
.(n-j
)
(
4
)
1
0
ただし,
図3にT阻 沼 田6711に実装した訓Eシステムのプロッ
ク図を示す ここで, w
は適応フィルタ, c
は消音用ス
ビーカー(三次音源)から誤差検出用マイクロフォン
までの伝達経路, c
'はそれを同定した伝達経路である
また, Fは消音用スビーカーと参照周マイクロフォ
ンとの音響結合による二次経路 F' はそれを同定し
た伝連経路である.
2
,
3Filte聞 dー
X-LMS
アルゴリズム
消音用スピーカーへ出口りされる音 y
(
n
)1:,消音用
スビーカーから誤差検出用マイクロフォンに到達する
音 z
(
n
)は,ディジタルフィルタを用いて次式のよう
に表される.ただし. w
'
Iはフィルタの係数であ
j' C
a
+
ω
+
<
r
.
l
また,騒音源から参照用マイクロフォンに到達する
音を x
'
(
n
)とすると,参照用マイクロフォンで検出さ
れる音 x
(
n
)は, F~ をフィルタの係数,及び k をフィ
ルタの次数とすれば,騒音源からの音と消音用スピー
カーからの音との和で表され,1)(式となる.
<-1
.
.
D
y
(
n
)=LF;y(n め
'
1
D
.
(
n
)=LC;{x'(n-1
)+Dy(n-i)}
(
5
)
'
0
0
e
(
n
)の平喝自乗誤差 &=
E
{
e
'
(
n
)
}を最小とするた
めに,院を逐次修正する F
i
lt
e
r
e
d
X
I
皿アルゴリズ
ム 1は次式となる
Hう
(n+り=W/n)-2
p"
(n)LC'
,
x(n-i-j
)
ア
'
=O,
I
,
.
.
.
, J-1 ω
ただし, μは,更新のためのステップサイズである
また,実際にディジタルフィルタ F
'.
C
' を求める
には,その係数を I
必Sアルゴリズムを用いて同定する
c
' をもとめる場合で考えると,図 4に示すように,白
色ノイズを消音用スビーカーから出力し,誤差検出用
マイクロフォンに入力された値 z
(
n
)と , 訓C
C
o
n
t
r
o
l
l
e
r内で白色ノイズをディジタルフィルタ c
'
に通した値 y
(
n
)との差 e
(
n
)の平均自乗誤差が最小と
なるように, L
l
I
Sアルゴリズムを用いてその係数 c
'を
適応的に修正して同定を行った
F
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g
.
3
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c
,
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― 14 ―
DSPを用いた騒音低減音響ヘッドフォンの実験的研究
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ω
=
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ω
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O
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すことはないと考えられる
よって本研究においては,三次経路 Fは考慮に入れ
ず F
' =0 とし,伝達特性 cのみを考慮に入れた
F
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r
吋 X
L
l
I
5アルゴリズムを適用した
に.D
5
Pを用いたH
e
a
d
p
h
o
田の実験結果を示す.図
図7
7
(
.
)の上段と下段に,それぞれ.300Hzの正弦波にー10dB
の白色雑音を加えた入力騒音の波形と周披数成分を示
す.図 7(b)は,実験結果の波形と周波数成分を示す
騒音に相当する 300
Hzの音が,約 35dB低減され. I~ぽ消
音されているが 白色雑音はほとんど低減されなかっ
た. D
5
P
を用いたH
e
a
d
p
h
o
n
eと比較するために,市販さ
れているアナログ方式の騒音低減:
H
e
a
d
仲間 e
を用いた
実験結果を図 7(
c
)に示すアナログ方式は,へッドフ
ォン内にあるマイクロフォンで音を拾い,アナログ電
気回路で同振幅・逆位相の音を作成し打ち消すオープ
ン制御方式のため,騒音の低減が不十分で,必要な音
声は騒音や白色雑音と同程度の約 1
5
晶減衰しているこ
とが分かる
四期咽
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S
3
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0
C
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凶田畑
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四ゆ
実験システムを図 5に示す.入力騒音として 3
0
0
1
訟の
正弦波に 10dBの白色雑音を加えたものとした.騒音源
のスピーカーと音響ヘッドフォンの距離は約 2m
離し
度の角度で,音響ヘッド
た.また,騒音源方向とは90
フォンから約 50cmのところに,人が話す音声を出力
するためのスビーカーを置いた音声としては.500Hz
のE弦波を用いた.
T
祖5
32配 6
7
1
1DSP
のサンプリング周波数は,固定で
8k
H
z
である .WとCのフィノレタ長は,共に 1
0
0とした.ま
た,更新のためのステップサイズは,試行錯誤により
0.005とした.
図6に消音周スビーカーから白色ノイズを発生させ
た時の,消音用スビーカーと誤差検出用マイクロフォ
ンとの聞の伝達特性を適応ディジタルフィルタで同定
したフィルタ係数c(インパルス応答).消音用スピー
カーと書照用 7 イクロフォンとの聞の二次経路を同様
に適応ディジタルフィルタで同定したフィルタ係数F
(インパルス応答)を示す
(
h
)における三次経路 Fのインパルス応容は,図
図6
6
(
.
)における伝童特性 Cのインパルス応答と比較して
非常に小さく,したがって消音用スピーカーからの疑
似騒音が書照用マイクロフォンへの入カに影響を及ぼ
ム
_
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α
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,
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原田 治行 赤座 孝憲
:
:
凶
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L
J
L
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量
F
i
g
.
8E司lCnnu
盟国間凶.to
f
c
(
n
)
4
. むすび
ANC の手法~
ッドホンシステムを試作し,実験を行った.入力騒音
として. 3
0
0
l
l
iの正弦波に-10
dBの白色雑音を加えた
ものとし,騒音源方向とは 9
0度の角度で,人が轄す
音声を出力するためのスビーカーを置いた音声とし
5
0
0
l
l
iの正弦渡を用いた入力騒音のうち .
3
0
0
l
l
i
ては .
正弦渡については約 3
5dB低減され. I~ ぽ消音されて
いるのに対L-.白色ノイズについては,ほとんど低減
効果が得られなかった.アナログ方式の騒音低減
H
e
a
d
p
h
o
n
eでは, 3
0
0
H
zの正弦波のみを選択的に減衰
することができなかったが,白色雑音も含めて,全体
5
dB減衰していることが分かる.
的に約 1
実際の工作報械から発生する周期的な低周波音は,
本研究で用いた正弦波のような完全な周期音ではない
N
Cシステ
ため,白色ノイズの場合と同様に現段階でのA
S
K
ムでは制御前困難だと考えられる.原因としては. D
ボードとドーターボードとの同期がとれていない可能
性があるため,今後四課題として他のドーターボード
を用いて実験を行うことが挙げられる 詳しい原因に
ついてはさらに深く考察し,実際の騒音に対しても制
御可能なA
N
Cシステムを再構築する必要がある.
百
「
J
I
四]
・
2
•
叶民
略
.
"
・
M
I
岨]
制
自
'
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D
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Pを用いて,騒音を低減する音響ヘ
日禍
参考文献
(
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冒 叫t
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地岨E
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7 E司即u
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由1
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阻
I
t
so
fc
(
n
)
また,図 8に制御の状況を示す制御世開始すると
00
Hzの正弦波が除去されているが,
約 1秒ほどで, 3
白色雑音は,ほとんど除去されていないのが分かる
0
0
0
:
zの正弦波を加えても減
その桂,音声に相当する 5
衰せfに,制御を終了させると 30m
訟の正弦渡部現れ
るのが分かる
1
)S
i
m
o
nH
a
y
k
i
n (鈴木博ほか訳) : r
適応フィルタ
理論」科学技術出版 2
0
0
1 (デジタル移動通信
シリーズ) 原著名 A血p
勘 琶 町 田 百 回q
2
) Co
l
i
且 H Ha血血
U
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包n
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:
酎 . N凶関
C祖 国a
回n.Lo
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ndNcwYork.SPONP
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2
0
0
1
3
)原田治行,赤座孝憲:"
D
S
Pを用いた騒音低減音響
ヘッドフォンの試作"計測自動制御学会九州支
部第四国学術講演会予稿集 (
2
0
0
4
)2
6
1
2
6
2
4
)西村正治・ “
A N Cによるダクト消音制御 n 精密
工学会誌 64[
5
](
1
9
9
8
)6
品 6
73
― 16 ―
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