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ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ)
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低電圧低電流におけるシリコントランジスタの特性とフ
リップーフロップ回路の微小電力動作の研究
本田, 誠一/ 池田, 一二
茨城大学工学部研究集報(10): 67-75
1963-03
http://hdl.handle.net/10109/7707
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お問合せ先
茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係
http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html
67
低電圧低電流におけるシリコントランジスタの特性と
フリップーフロップ回路の微小電力動作の研究
多
誠
’
本
池
田
Reseac:h⑪鞭癒e Weak C聰rre醜Ch、a駕。重er量s重蓋。 of S翌蓋co灘
Tr蹴si醜or蹴《豊M:曝露霊e Power Opera重io翻of
翻ip圃FXo昼》Circ腿蓋重
Seiichi HONDA Katsuji IKEDA
Abstract: ln such a circuit as that of the quartz crystal watch,
the hip一一flop circuits are used in meRy stages. lf the dry・一cell is used
for the power source it is desirable to limi,t the power consumption as
small as possible. The silicon transistor operates by the weak current
such as a few ,etA, becat}se its le, is very small compared with the
germanium transistor. So, we measured the constants of silicon transistors
in the weak curreRt and studied theoretically and exprimentaly the silicon
transistor flip一一flop circuit which operates at che smaH pewer comsumption.
1.緒 言
水晶電気時計等においては,:Flip−FlOP回路が相当の段数使用される。もしも電源に電
池を用いる場合は,その消費電力をなるべく少くすることが望ましい。ゲルマニユーム1・
ランジスタでは,Ic。の影響でコレクタ電流をあまり小さくすることは困難であるが,シ
リコントランジスタでは心血の微小電流でも充分動作させることができる。しかしかよ
うな低電圧微小電流では,}ランジスタの諸定数が通常の値と甚しく異る。
筆者はシリコントランジスタの低電圧低電流における諸定数を実測し,それを基として
Flip・一・Flop回路について理論的および実験的に検討を行った。
2. シリコントランジスタのエミッタ接地型回路の低電圧低電流における特性
一般に入力回路と出力回路に対してコレクタ電圧Vc,ベース電流ら,の関数関係は次
式で示される。
V,=:f(ib, v,) ・・・・・・・・・・・…t・・・・・・・・・…一.・・.・…....,.,........... (1)
ic :f(ib) Vc) ’’’’”‘’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’”i’’’’’’’’’’’’’’’’’’” (2)
(1)および(2)式は更に次のように表わせる。
68
茨城大学工学部研究集報
△・,一
(第10巻)
i{致D砺 △研(avbDvc)ib△・・
Ai, :r一(LDO”’/Zli””’)v,
△i,+し絵),、△Vc
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、4 ぱ
一→1塔rの
(b)
〆1
7
055 0.6 0.65 0.7 0.ワ5
(b) ㎜→砺‘の
図 2
69
低電圧低電流におけるシリコントランジスタの特性と
プリツプーフmツプ圓路の微小電力動作の研究
本田ラ池ll{ll:
(3)(4)式中 @ (一3一・Z・3)び。一んレ・ ぐ書諌)ib一山蛇・・)
(一a,一1・s;),,:r−hLa.e (一aDiili一)i,
認一一一…⑤
としてエミッタ接地型のh定数として定義される。
供試用Fランジスタとして2SC38(電流増巾定数標準規格値は45)を用い,低電圧低電
流における静特牲の実測結果は図la.b.(コレクタ電圧対コレクタ電流特性)および図2
a・b(一く 一ス電圧対ベース電流特性)のようになった。
この結果よりエミッタ接地回路のh定数を求めると図3のようになる・
〃.β.(κ駐)
盆ガ.ε.
綾。3097
器.を.c紀の
ワ0
泥ノ2.e.
●
60
爾5
o
ん2.e.
んe.
淫2Ae
40
〃5i∫0
o
20
魚2忍
.ク〃ろ!o
●
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0
︸
ゆ
o
④
2
g45
図 3
10
20 50ito 50
一一一
刀C t6(xzA)
70
茨城大学工学部研究集報 (第10巻)
コレクタ飽和電圧についてはコレクタバイアス電圧を0.9V一定として,コレクタ抵
抗を50k9∼500k9の範囲変化し測定した結果は図4のようであった。図4よりコレクタ
飽和抵抗を求め図示すると図5のようになる。
汐
1・・0504α5
挑(η
rc (Ka)
多器
伽=097
Rc犀50k危
Rご350繊
3e
3般
’oθ
Q00般織
20㈲
/σ身㎏
le
0.2
50σ織
5η0短
ソ1
e
1
3 4 5
2
一 tb (AA)
O
o
2
1
図 5
召 4 5
一.一一一sF t b cdtA)
図 4
なおここでz’,,・=・0.9Vとしたのは,定格1.5Vの乾電池1個を使用してその経年劣下
を見.込んで0.9Vまで動作させるためである。
3. Flip−FXop回路の安定条件
一般に二安定回路は図6のような二端子能動回路で表わされ,それぞれのトランジスタ
定数が一定であるものとすれば,端子からみた駆動点特1生曲1線(v一ii曲線)は図7のよ
うな電圧制御型負性抵抗折線特性で近似できる。すなわち第一安定域ではトランジスig T・
が飽和状態で乃が遮断状態にあり第二安定域では両トランジスタの状態は反対となる。
遷移域では共に能動状態である。
鳥ゐ
ユ
r6
万尾
右一
i6t 幽
恥き工んT励
尺
山 R
衣泥
で、 ご62
図 6
図 7
本田,池田:低電圧低電流におけるシリコントランジスタの特性と 71
ブリツプーーフロツプ1下路の微小電力動作の研究
図7の各領域の特性はコレクタ飽和抵抗を㌔入力抵抗を7δとすれば次のように近似
できる。
第一安定j或 Vl==Vo十rc ii … 。・一一・・・・・・・・・・・… 一・・・・・・・… 。・… 。・。・。・・・・・・… 。… 。 (6)
第二安定域 η1=委(R+rb)…………・…・・一……・………・……………(7)
遷移:域では次式が成立する。
Ii,L’tTt−IEII’ll/’,Zli,,,, i;一ilyi−1.i/i,i’s“:’z,7’.’i,,,,..,,, /’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’”(s)
(8)式より
ド諸年写+一.臨一(1一響町〉……………一・……(9)
を得る。ただしβ=(∂i,/∂ib)V。は一定とする。
(9)式より負性抵抗Rnは
Rn =:’:’ (R−1一”b)/( 一’lz2/,nvff’nyL’RR+” ,, 一1) ’’’” ’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’’”(10)
となる。したがって安定条件として次の関係が必要となる。
R 十y,
’ 罵梼〉( BL’ Rc −lRc一トR十%)…’……’●…●t…”……”(ll).
(ll) 式においてR,>rcとすれば
β〉恋すγグ……一・……一…………………一…(12)
となる。
なお折点Pおよび(之動作点m,7Zの電圧電流値は次のようになる。
’ ・ Bvcc
Vp==v・+Zp 「c , tp=つ∼i要∼+窃・
vcc(R ml−2’c) .・一一L.........wwV.c. g
殉=一.β(瓦ギ〆。ゲ㍉ り=一説;η∼ギ7ムー
.”..,..”.・… (13)
乙’Wt ::一丁 V・+z・・洗 ・ z・・= 旧瓦+痴一.’v
. . Ucc
Vcc(R十7”b) ・. Vcc
び・=拍差回π年万’, z・・ =1∼、刀∼+プわ・
(13)式からもRc>rc, Vn>VQ,,翫〉昂,の各条件を用いて解くと(12)式が得られる。
またコレクタ飽和抵抗および入力抵抗は次のように近似できる。
1[ tl’ ((V,:ww一!:,i)//iCi,i ! ........................,..............・一一・.・・.・・…一・(14)
ただし V,; コレクタ飽和電圧
Vo;コレクタ電流ic=:Oのコレクタ電圧
Vb;ベース電圧
伽;ベース電流窃驚0のベース電圧
72 茨城大学工学部研究集報 (第10巻)
4。回 路 設 計
図8のような回路構成とし,トランジスタに2SC38同一特牲のものを用いる。
飛ゴ蔑
欝
嘱黒欝
C∼
c c
乎1%o
縺@ G
齢 畿裁
飛 ;職
ρ
胃. 7謹.
図 8
まつベーースバイアス電流については,2節において求めた特性を基として決定する。
コレクタ抵抗Rcとコレクタ飽和抵抗rcとの関係をR,:≧IOrcと定めRF50∼500kS?
の範囲で万足するベーース電流値は図4および図5より
ら≧3μ護
となる。いま窃=3μ護とすれば図3より
rb ki 15k.C2,
v, i=i O.6V
となる。ただし VbO≒0.55V
つぎに図8の回路が動作可能なる静的条件として次式が成立する。
eVc。こ(Rc十R)ib 十 Vb
帰かん抵抗RがR>0となるためには
Vcc> Rc ib 十 Vb
となることが必要である。いま凡=50kρ,とすれは
vec::一=O.75V
10%の増加とすれば
・’ v,,E?O.83V
したがって,最大帰かん抵抗値は
R?na.n“ teF 30k一(?
となり,}ランジスタの所要電流増巾定数は
B>2
となる。また 偽,V7z,窃,振,の値は
vQ::7一一〇.14tXvi, v.=O.69V,
ガp=39μA, らF15μA,
となり,共に条件を満足する。
73
本田,池田:低電圧低電流におけるシリコントランジスタの特性と
ブリツプーフロツプ回路の微小電力動作の研究
この場合の消費電力は全電流ち=高札∫b算18μAであり
P::ioVcckF15/XW
となる。
コレクタ抵抗の各値についての数値語を第1表に示した。
表 1
璽)IR(・Ω)騰,(V)kl ・.2(μλl rpヒ・w1(諏+の/糊
300
500
O. 83
18. O
1. 00
13. 0
1. 30
9. 4
1. 7e
8. 6
2. 30
zs 1
(※ 10%増加値)
5. 結 果
5
31∩
51触
1 ∠
1 1
1
200
0
0
0
30
jO
30
3ρ0
0
50
100
2. O
l. 5
玉.2
1. 15
1. 1
第1表に基づき帰かん抵抗を変化して実測した結果第2表を得た。これより消費電力を
求め図示すると図9のようになる。なお図中破線は入力電圧と出力電圧の比E。/属であ
る。
表 2
Rc (1〈O.)
IOO
L
500
rt
9ん一 b∂9ぬ一
300
0050005
005
200
0
∩VO59
0
臼
0∩V5
0σ9ん玉
Qσりあ一
9緬−
50
R(1〈S})
i恥V)匿(mV)
z;ec(V)
io (fkA)
O. 90
至2.5
50
120
0. 87
11. 5
50
100
0, 86
11. b
50
100
0. 85
H.2
1 20
30. 0
1. es
10. 5
30 1 120
O 98
9. 0
0. 93
7. 5
20 1 80
20 1 50
1. 00
7. 5
Jr e
75
150
200
70 1 IOO
1oe
40
D mm
S’ 奄?”
”1一
1. 30
8. 5
30
75
1. 20
7. e
30
40
玉.50
IO. O
140
刀fTo
9. 0
30
140
120
1. 7e
8. 0
4e
80
l. 60
7. 0
50
2. 00
10. 5
80
50
120
rww
D ’
V0’
U0”
’1’ ’
2. 40
7. 5
30
60
2. 20
7. O
50
50
3. 30
12. 0
120
190
11 70’
9. 5
’”
f 1、実験は次のような定数で行った。 f・・ lkc, D:SD14 R♪Rc, Ci ・L・ oepF,(]・・ C。==O。 OII.F,
2.表中e・ccの値は動作可能最少コレクタ電圧である。
74 茨城大学工学部研究集報 (第10巻)
32
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28
24
20
16
12
8 4皇
1
00一一1ha一一一一一一h一“一ke’一”一”“”一’nv””in一”一pt−o o 200 goG 400 saa
’一一一一pt Rc(Knt
図 9
6. 結 言
図8より明らかなように消費電力が最小となるコレクタ抵抗値および帰かん抵抗値は
R, = 100k.(?
R = IOkP.
であり出力も大きい。
第2表においてコレクa抵抗の御蛋について,ベース電流の奉聯二値はR=lokρの場合
本多,池田ご低電圧低電流におけるシリコントランジスタの特性と 75
ケリツプーフロツプ同路の微小電二JJ動作の研究
が最も少く3μAとなり設計値と一致する。
コレクタバイアス電圧の設計値と結果との差は=レクタ抵抗R。が高くなる程大きくな
るが,これは1・ランジスタ定数の変化による遷移域の変動為。の影響およびT,,T・,,の特
性の相違等が考えられる。
以上の結果をまとめると次のようになる。
1 トランジスニタ定数については
a トランジスタ入力抵抗(hii.e)はべ一・ス電流が小さくなるほど大きくなり,その変
化茎も大きい。
b帰かん定数(hi2・e)は一一定であり,その値は1に比べて非常に小さい。(約0.005)
c電流増巾定数(h2,.e)はコレクタ電圧によっても変るが,べ・一“ス電流が大きくなる
ほど大きい。
d出力アドミソタンス(煽.のはべ一・ス電流が大きくなる程大きく,その変化は甚し
い。
2 :Flip−Flop回路に用いる1・ランジスタは,その電流増巾定数によって動作可能なる最
小消費電力が左右され,大きいものほどよく,動作点に対するβの最小値は
B・・i?t≒5(弊+位
であることが必要である。
最後に本研究に対して資料を提供され,種々助言を賜った東洋通信機KKの各位,特に
瀬谷昌弘氏に対して深謝する。
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