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第6節 地下タンク貯蔵所の共通基準
第6節 1 地下タンク貯蔵所の基準 地下貯蔵タンクの設置場所 (1) 地下貯蔵タンクの設置場所は、次によること。 ア 地下貯蔵タンクの設置場所は、原則として屋外の火災予防上安 全な場所とし、構内通路部分等には埋設しないこと。 イ 埋立地等で特に地盤が軟弱なため、タンクの沈下又は配管の損 傷が予想される地域は、沈下等を防止するための基礎の補強及び その他の有効な措置を講ずること。 ウ 地下貯蔵タンクの設置場所には、その範囲を地盤上に目地、塗 料などにより明示すること。 エ 地下貯蔵タンクを建築物内の場所に設置する場合は、タンク上 部に、検知管の長さ等を考慮した点検管理に必要な空問を確保す ること。 オ 地下貯蔵タンクの埋設位置は、タンクの外側から敷地境界線ま で水平距離でおおむね1メートル以上の距離を保つこと。 2 ふたの構造(危険物令第13条第2項第2号イ) 危険物令第13条第2項第2号イに規定する「鉄筋コンクリートのふ た」の鉄筋は、直径9ミリメートル以上でその間隔は縦、横0.3メー トル以下又はこれと同等以上のものとすること。 3 ふたにかかる重量がタンクにかからない構造 (危険物令第13条第2項第2号ロ) 危険物令第13条第2項第2号ロに規定する「直接当該二重殻タンク にかからない構造」とは、次に掲げるものであること。ただし、地下 貯蔵タンクを埋設する周囲の地盤が堅固であって、ふたにかかる重量 が当該地盤によって安全に支えられ支柱を設ける必要がないと認めら れる場合は、この限りでないこと。この場合のふたは、当該タンクか らその水平投影の縦、横が各々片側ずつ0.3メートル以上の大きさと すること。 (1) 地下水位の高いところ(おおむね1メートル以内)及び軟弱地盤 (枠を組まないと掘れないようなところをいう。)の場所に設ける場 合には、支柱を設けることとし、その支柱の構造は、次によること。 ア 支柱は、鉄筋コンクリート造又はヒューム管とすること。 イ 支柱の数は、タンク1基につき4本以上とすること。ただし、 タンク郡にあっては、図3-6-4例2によることができるもの であること。 例1 例2 図3-6-1 ウ 支柱の例 支柱の太さは、支柱にかかる重量に応じ、角柱にあっては一辺 の長さを20センチメートル以上、円柱にあっては直径20センチメ ートル以上であること。 エ 鉄筋は、各柱ごとに直径9ミリメートルを4本以上又はこれと 同等以上のものとし、基礎及びふたの鉄筋と連結させること。 図3-6-2 鉄筋コンクリート造の支柱によりふたを支える方法の例 (2) 地盤によりふたを支える場合は、次の事項により検討し、地盤に より安全に支えられることが確認された場合に限り認められるもの であること。 ア ふたにかかる荷重は、予想最大荷重として容量が30,000リット ルの移動タンク貯蔵所の積載状態(道路運送車両の保安基準(運 輸省令)第1条第1項第4号)における総重量とする。 イ 荷重を支える地盤は、タンクを埋設するために掘る穴(タンク の周囲20センチメートル)の外周部分とする。 ウ 地耐力は、砂又は粘土層にあっては、1平方メートルあたり10 トンとする。 エ 鉄筋コンクリートの比重は、2.4とする。 図3-6-3 ふた及びふたにかかる荷重を周囲の地盤で支える方法 図3-6-3による計算例 Sc=(縦)×(横)=2.41×6.05=14.58 Sc:鉄筋コンクリートのふたの面積(㎡) V =(厚さ)×(面積)=0.3×14.58=4.37 V :鉄筋コンクリートのふたの体積(m 3) Wc=(比重)×(体積)=2.4×4.37=10.48 Wc:鉄筋コンクリートのふたの重量(t) Wl=30 Wl:30,000リットル移動タンク貯蔵所の総重量(t) Wt=Wc+Wç=10.48+30=40.48 Wt:地盤にかかる総重量(t) Sa=(縦)×(横)=1.81×5.45=9.86 Sa:耐荷重外地盤面積(㎡) Ss=Sc-Sa=14.58-9.86=4.72 Ss:耐荷重地盤面積(㎡) F =10 F :地盤の地耐力(t/㎡) Ff=F×Ss=10×4.72=47.2 Ff:総地耐力(t) ゆえに、この場合地盤により安全に支えられていると認められる。 また、Ff≦Wtとなった場合は、耐荷重地盤面積をFf>Wtとなる ように拡張しなければならない。 4 タンクの基礎(危険物令第13条第2項第2号ハ) (1) 鉄筋コンクリート造とし、当該鉄筋にタンクを固定するためのア ンカーボルトを連結すること。 (2) タンクの枕部分にコンクリートを用いる場合は、鉄筋を入れるも のとし、当該鉄筋を前記(1)に掲げる鉄筋と連結すること。 (3) 前記(2)の場合は、タンク基礎とタンク本体との間隔は、10セン チメートル以上とすること。 (4) タンク基礎の枕部分には、漏れた油が検知管で有効に検知できる ための開口部(内径約100ミリメートル程度)を設けること。 (5) 砕石基礎を用いる場合にあっては、(1)~(4)にかかわらず、平成 12年3月30日付消防危第38号「地下貯蔵タンクの砕石基礎による施 工方法について」の一部改正(平成17年10月27日付け消防危第246 号 5 一部改正)によること。(第4章第31の3を参照。) タンクの固定方法(危険物令第13条第2項第2号ハ) (1) 防錆塗装した締付バンド、ボルト等により間接的に固定すること。 (2)アンカーボルトは、下部を屈曲させたものとし、タンクの基礎ベ ースの厚みの中心まで達すること。 (3) バンドを基礎に固定するためのアンカーボルトは、(4)イに掲げ るタンクが受ける浮力によって切断されないだけの断面積を有しな ければならない。 (4) 地下水によって浮き上がらない構造とすることとし、次による検 討を行うこと。 ア タンクが浮き上がらないためには、埋土及び基礎重量がタンク の受ける浮力より大でなければならない。 Ws+Wc>F……………………………① Ws:埋土重量の浮力に対する有効値 Wc:基礎重量の浮力に対する有効値 F:タンクの受ける浮カ F=Vtd1-Wt Vt=πr2(l+(l1+l2)/3) Wt=(2πrlt1+2πr2t2+nπr2t3)d2 Vt:タンクの体積 t2:鏡板厚 Wt:タンクの自重 t3:仕切板厚 π :円周率(3.14) r :タンクの半径 l :タンクの胴長 d1 :水の比重(1.0) l1、l2:タンクの鏡板の張出 d2 :鉄の比重(7.8) t1 :胴板厚 n :仕切板数 Ws=Vs(ds-d1) Vs=L 1L 2H 1-(Vt十0.7n1L 2h1T) Vs:埋土の体積 ds:埋土の比重(2.0) 0.7:基礎台の切込部分を概算するための係数 L 1、L 2、H 1、h1、T:図3-6-7による。 n1 :基礎台の数 Wc=Vc(dc-d1) Vc=L 1L 2h2-0.7n1L 2h1T Vc:基礎の体積 dc :コンクリートの比重(2.4) h2 :図3-6-4例2による。 ( た だ し 、 こ の 計 算 は 、 α を 90 度 と し た 場 合 に よ る も の で あ る。) 計算の結果、Ws+Wc≦Fとなった場合は、①の式を満足する ように基礎を拡大しなければならない。また、モルタルで保護さ れたタンクの場合は、モルタル重量の有効値も加算すること。 イ タンクを基礎に固定するためのバンドは、タンクが受ける浮力 によって切断されないだけの断面積を有しなければならない。 S>n(F-Wb)/2fN…………………② S :バンドの所要断面積 F :タンクの受ける浮カ Wb:図3-6-4例2のB部分の埋土重量の浮力に対する有 効値 f :バンドの引張強度(JISのSS41に該当するものは41㎏/ ㎜ 2とする) n :安全率(4.0) N :バンドの数 Wb=(2rH 2(l+l1+l2)-πr2(l+(l1+l2)/3)× 0.5)×(ds-dl) π :円周率(3.14) r:タンクの半径 d1 :水の比重(1.0) l :タンクの胴長 ds:埋土の比重(2.0) l1、l2:タンクの鏡板の張出 H 2:図3-6-4例2による。 計算の結果、S≦n(F-Wb)/2fNの場合は、②の式を満 足するようより大きなバンドを用いなければならない。 例1 図3-6-4 例2 地下水によって浮き上がらない構造の例 6 乾燥砂(危険物令第13条第1項第2号) 乾燥砂と同等以上の効果を有するものとしては、建設省の認可を受 けている人工軽量骨材がある。 人工軽量骨材の例 人工軽量砂は、良質の膨脹性頁岩を砂利から砂まで各サイズに粉 砕して高温で焼成し、これを冷却して人工的に砂にしたもので主な 品名として次のものがある。 宇部軽骨、ライオライト、ビルトン、セイライト、アサノライト、 メサライト、テチライト 7 タンク頂部(危険物令第13条第1項第3号) 危険物令第13条第1項第3号に規定する「地下貯蔵タンクの頂部」に は、マンホール部分は含まれないものとしタンク本体の頂部とすること。 8 タンクの構造等(危険物令第13条第1項第6号) (1) 危険物令第13条第1項第6号に規定する鋼板と同等以上の機械的 性質を有する材料にする場合は、指導課と協議すること。 (2) タンクを間仕切りする場合は、次によること。 ア 貯蔵できる危険物は、同一の類の危険物であること。 イ 間仕切板は、タンクと胴板と同等以上の材質及び板厚とすること。 ウ 貯蔵するのに必要な設備は、間仕切された部分ごとに設けること。 エ 圧力タンクにあっては、タンクを間仕切ることはできないもの とする。 9 タンク外面の保護(危険物令第13条第1項第7号、危険物規則第23 条の2) タンク外面の保護については、第4章(地下貯蔵タンク及び地下配 管の防食措置の基準)によること。 10 通気管(危険物令第13条第1項第8号、危険物規則第20条第3項) 通気管については、危険物規則第20条第3項によるほか、次によること。 (1) 風圧等により損傷を受けるおそれのないように設けること。 (2) 可燃性の蒸気を回収する設備は、危険物規則第20条第3項第3号 によるほか、第4章(炭化水素系物質の蒸発防止設備設置基準)に より設けること。 11 計量装置(危険物令第13条第1項第8号の2) 危険物令第13条第1項第8号の2に規定する「危険物の量を自動的 に表示する装置」は、タンクに浸水しない構造のものとすること。 12 注入口(危険物令第13条第1項第9号) 注入口は、第3章第4節(屋外タンク貯蔵所の基準)13(2)から(8) までの例によること。 なお、遠方注入口にあっては、漏れた油が地盤に浸透しない構造の ふたのあるコンクリート造等のボックス内に設けること。 13 ポンプ設備(危険物令第13条第1項第9号の2) ポンプ設備は、第3章第4節(屋外タンク貯蔵所の基準)14(3)か ら(5)までの例によること。この場合において、(5)中「指定数量の10 倍以下の第4類の危険物の屋外貯蔵タンク」とあるのは「第4類の危 険物」と読み替えるものとする。 14 配管(危険物令第13条第1項第10号) (1) 静電気による災害が発生するおそれのある液体危険物を貯蔵する タンクの注入管は、タンク底部付近まで下げること。 (自消丙予発第44号昭和37年4月6日) (2) 当該規定による配管は、タンク本体と配管との結合部も含まれる ものであること。 15 危険物の漏れを検知する設備(危険物令第13条第1項第13号、危険 物規則第23条の3) 液体危険物の漏れを検知する設備に検知管を用いる場合は、危険物 規則第23条の3によるほか、次によること。 (1) 検知管は、二重管とすること。 (2) 検知管の材質は、金属管又は硬質塩化ビニール管とすること。 (3) 検知管の直径は、原則として40ミリメートル以上であること。 (4) 検知管の長さは、コンクリート地盤面から地下貯蔵タンクの基礎 (タンク室の底)に達する長さとすること。 (5) 上部にはふたを設け、水の浸入しない構造とすること。 (6) 検知管の小孔は、原則として下端からタンク中心までとすること。 ただし、地下水位の高い場所では、地下水位の上方まで小孔を設 けること。 図3-6-5 検知管の構造図の例 (7) 2以上のタンクを1メートル以下に接近して設ける場合は、図3 -6-9の例によることができるものであること。 図3-6-6 検知管の設置例(注:○印は検知管を示す。) (8) 1の検知管の有効検知範囲は、おおむね3メートルとすること。 図3-6-7 16 検知管の設置例(注:○印は検知管を示す。) タンク室の構造(危険物令第13条第1項第14号、危険物規則第23条 の4、第24条) (1) タンク室の壁及び底は、地下室の壁等と兼ねることなく専用のタ ンク室とすること。ただし、強度上支障のない場合はこの限りでな い。 (2) 地下貯蔵タンクを2以上隣接してタンク室内に設置し、又はタン ク相互間にコンクリートの壁を設けて区画した場合は、タンク間の 間隔を1メートル以下にすることができること。 図3-6-8 タンク室に設ける場合の例 (3) 危険物規則第24条第1項第1号による水密コンクリートとは、硬 化後に水を通しにくいコンクリートで、一般に、水セメント比は、 55%以下とし、AE剤(コンクリートなどの中に、多数の微細な空 気泡を一様に分散させ、施工軟度及び耐凍害性を向上させるために 用いる混和剤)若しくはAE減水剤(AE剤と減水剤(所要の柔ら かさや流動性を得るために必要な単位水量を減水させるために用い る混和剤)の両方の効果を兼ね備えた混和剤)又はフライアッシュ (石炭灰)若しくは高炉スラグ粉末等の混和剤を用いたコンクリー トをいうこと。 (4) 危険物規則第24条第1項第2号による「タンク室の内部に浸入し ない構造」とは、振動等による変形追従性能、危険物により劣化し ない性能及び長期耐久性能を有するゴム系又はシリコン系の止水剤 を充填する等の措置があること。 (5) 平成18年5月9日付け消防危第112号「地下貯蔵タンク及びタン ク室の構造例について」により例示された構造以外の方法により 設置する場合は、指導課と協議すること。 図3-6-9 地下タンク室に設けられた地下貯蔵タンクの例 17 マンホールの構造 地下貯蔵タンクにマンホールを設ける場合は、次によること。 (1) マンホールは、地盤面まで立ち上げることなくできるだけ低くす ること。 (2) マンホールのプロテクターは、タンクに溶接すること。 (3) プロテクターのふたは、ふたにかかる重量に耐えられる厚さのも のとし、直接プロテクターにかからないように設けるとともに、雨 水等が浸入しない構造とすること。 (4) 配管がプロテクターを貫通する部分は、溶接等によって浸水を防 止するように施工すること。 18 燃料の切替え ボイラー等の燃料を切り替えることにより、新たに地下タンク貯蔵 所として法第11条第1項の許可を受けなければならない地下貯蔵タン クの取扱いは、次によること。 なお、この基準の適用範囲は、原則として燃料を重油から灯油又は 軽油に切り替えるものに限るものとする。 (1) 許可申請書には、関係明細書及び図面を添付すること。 (2) 当該地下貯蔵タンクは、原則としてタンク室に設置されたもので あること。 (3) 当該地下貯蔵タンクの構造は、危険物令第13条の基準に適合する ものであること。 (4) 水圧試験は、検知管及び気密検査(加圧試験に限る。)により漏 油が認められない場合に限り、省略することができること。 19 植栽(昭和63年12月9日消危第283号) 植栽については、第4章第23(危険物製造所等の保有空地等におけ る植栽について)によること。 20 その他 (1) 危険物令第13条第2項に規定する二重殻タンクを地下貯蔵タンクと して設置する場合は、第4章第27、第31、第31の2の基準によること。 (2) 地下貯蔵タンクの基礎を砕石基礎による施工方法により設置する 場合は、第4章第31の3の基準によること。 (3) 危険物令第13条第4項に規定する危険物を貯蔵する地下タンク貯 蔵所については、指導課と協議すること。 (4) 平成17年政令第23号により改正前の危険物令第13条第1項に規定 する地下貯蔵タンクでタンク室に設置されていないものについて ア 地下鉄、地下トンネル又は地下街から水平距離10メートルの離 隔を必要とする。 「地下トンネル」とは、電力ケーブル、電話ケーブル、ガス管、水 道管等の共同溝形式又は単独で収納する地下工作物で、点検、補修 等のため人の出入りするもの、地下街、地下横断歩道等をいうもの であること。 図3-6-10 単独洞道断面図 図3-6-11 関連洞道断面図 参考:自消丙予発第164号昭和40年10月21日 消防予第239号昭和43年10月25日 消防危第95号昭和51年11月16日 消防危第47号昭和52年3月25日 消防危第84号昭和54年8月3日 消防危第143号昭和56年10月30日 消防危第40号昭和57年3月30日 イ 地下トンネルが設置される時点で、既に設置されている地下貯 蔵タンクについて、次のアからウのすべてに該当する場合は、当 該タンクをタンク室に設置しないことができるものであること。 ただし、地下鉄及び地下街、地下横断歩道等にあっては該当しな いものであること。 (ア) 地下貯蔵タンクと地下トンネルとの垂直距離が10メートル以 上であること。 (イ) 地下トンネルは、地下水面より10メートル以上深い位置に設 置されていること。 (ウ) 地下貯蔵タンクに貯蔵される危険物は比重が1.0未満で、か つ、非水溶性であること。 図3-6-12 タンク室を設置しないことができる既存地下貯蔵タンク (5) 地下貯蔵タンクの外面保護については、電気的腐食のおそれの ある場所に設置する場合には、塗覆装及び電気防食により、それ 以外の場所に設置する場合にあっては、塗覆装により保護するこ と。(危険物規則第23条の2) なお、塗覆装は、次に掲げるいずれかの方法によること。 ア エポキシ樹脂又はウレタントラストマー樹脂を用いた方法 イ FRPを用いた方法 ウ 次の性能について、上記ア、イの方法と同等以上の性能を有 する方法 (ア) 水蒸気透過防止性能 (イ) 地下貯蔵タンクとの付着性能 (ウ) 耐衝撃性能 (エ) 耐薬品性能 なお、これらの性能を確認するための試験方法等は、平成17年 9月13日付け消防危第209号「地下貯蔵タンクの外面保護に用い る塗覆装の性能確認の方法について」によること。(第4章を参 照)