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ガソリン価格が再び上昇中
平成 23 年7月 28 日 ガソリン価格が再び上昇中 静岡市物価アドバイザー 財団法人静岡経済研究所 大石 ガソリン価格が再び上昇しています。3月の東日本大震災の直後には、製油所の被災や 買いだめにより、一時的に価格の高騰が心配されましたが、節約や自粛ムードが予想以上 に広がり、また、業界も被災地以外からの積極的な転送などに努めた結果、混乱するよう な事態は回避されました。 しかし、ガソリン価格は、今年に入ってから高値基調で推移しています。3年前の1ℓ当 たり 180 円を上回るような事態にはなっていませんが、今年上半期は、前年に比べて1ℓ当 たり 10~20 円程度の高めで、毎回 50ℓ給油する人の場合、その給油の都度、500~1000 円 の負担増を感じているはずです。そして、今年も夏休みに入り、車で外出の機会も多い時 期に、再び価格が上昇する気配です。 ガソリン価格は、基本的には原油価格の動向に左右されますが、その原油価格に影響を 及ぼす要因はいくつかあります。 まず、今年に入ってからの上昇は、リビアやエジプトといった北アフリカや中東情勢の 緊迫による世界的な原油高騰が主因です。日本の原油は中東への依存が強いため、中東情 勢が混迷して原油が高騰すると、日本に大きな影響を及ぼします。しかし、そうした産油 国の事情といった供給側の要因だけでなく、原油を消費する需要側にも要因があります。 中国やインドなど新興国の急成長により原油需要が旺盛であるためです。日本をはじめ先 進国経済は低成長ですが、新興国経済は高成長を続け、産業用としてだけでなく、所得水 準の上昇より自動車の保有率も急上昇し、ガソリン消費も活発です。 こうした需要と供給の両面から原油価格は上昇していますが、より大きな要因は投機資 金の流入です。原油は投機の対象品となっていますので、以前は証券市場をターゲットと していた投資家の資金が、世界的な過剰流動性(カネ余り)のなかで、原油市場をターゲ ットに資金が動いているため高騰しているといえます。 こうした原油市場の動きに対しては、一国で対応することは難しいわけですが、今後の 見通しとして、基調的には高値の状態が続くとみられます。原油価格は4月まで急騰、5 ~6月は米国や中国の景気に対する不透明感から一進一退しました。しかし、6 月に行われ た国際エネルギー機関(IEA)による石油備蓄の協調放出も、一時は価格が下がりまし たが、規模的な問題や、産油国、消費国の思惑もあり、一週間から 10 日ほどで元の水準を 上回る所まで戻してしまいました。 一方、 1ドル 80 円を割り込む円高で、輸入価格が下がる恩恵も期待されるところですが、 現実のガソリン価格は上昇しているわけで、もし円安に戻った場合には、さらにガソリン 価格が急騰しかねません。 今後も原油市場では、中期的にみると、新興国での需要増加、投機マネーの流入、中東 の政情不安の影響など、価格を押し上げる要因が数多くあり、こうした環境が一気に大き く変化することも見込めません。 では、消費者はどのように対応したら良いのか。ガソリン価格が高いときには車に乗ら ない、あるいは利用機会を減らすことが一番ですが、そうばかりはしていられませんので、 エコドライブを心掛けることが大事です。たとえば急発進・急加速はしない、エアコンや 過積載、夜間走行による車への負担に注意するなど、燃費効率を考えて乗ること。また、 愛車が買い替え時期に近い場合には、最近の低燃費車に買い換えることも、将来的な環境 面から考えてみても大事です。 一方、原油が上がるということは、ガソリン価格だけでなく、原油によって作られる製 品のほとんどに関わるわけであり、私たちの生活に大きな影響を及ぼします。消費者とし ては、ガソリン価格の動向だけでなく、石油を原料として使用するプラスチック製の日用 品や容器、あるいは生産過程で燃料として大量に利用する製品、さらには輸送コスト全体 への影響など、常に関心を持っておく必要があるでしょう。