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- 1 - 鉄道による日本海国土軸・列島横断軸の形成・強化に向けた

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- 1 - 鉄道による日本海国土軸・列島横断軸の形成・強化に向けた
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鉄道による日本海国土軸・列島横断軸の形成・強化に向けたシンポジウム
日時:平成 25 年 11 月 18 日(月)
午後1時から
場所:新潟グランドホテル
3階
悠久
第1部
主催者あいさつ(篠田市長)
皆さん、こんにちは。本日は上越新幹線活性化同盟会主催という形で、はじめて関係6団
体の皆様からも共催・後援をいだいた「鉄道による日本海国土軸・列島横断軸の形成・強化
に向けたシンポジウム」を開催させていただきました。本当に大勢の皆様からご参加いただ
きまして、誠にありがとうございます。
上越新幹線活性化ということで、これまで皆様とともに取り組んでまいりました。今後、
北陸新幹線の開業ということ、これがまさしく視野にしっかりと入ってきているという状況
でございます。この北陸新幹線と上越新幹線をどう連携させていくかと、また、その連携の
ためには長岡・柏崎・上越・信越本線、どのような形でさらに利便性を増し、活性化をさせ
るかということが大変大きなテーマですし、我々新潟市とすれば、庄内地方、秋田とつなが
る羽越本線、この活性化と、また、今なかなか風に弱い状況でございますので、これをしっ
かりと運行していただくということが、非常に重要だと思っております。
2年前の 3.11 大震災、我々新潟県域、また、日本海側、本当に最大の救援拠点、救援セ
ンターとして機能したというふうに把握しております。そういう中で、日本海軸が大事だと
いう議論がようやく認められたということでございました。今、日本海東北自動車道が、山
形県境に向けて力強く建設が進むという状況にやっとなってまいりました。また、横断軸に
つきましても道路関係、磐越道、新潟県内ほとんど片側1車線という状況で、我々が救援拠
点としての機能を果たすうえで、なかなか厳しいものがあるという状況でございます。
そして、日本海軸として一番重要なのは、やはり鉄道ということになろうかと思います。
この鉄道を北陸新幹線を契機にして、より日本海横断軸、そして日本海軸として機能するに
はどうすればいいのかということをこれから皆様としっかりと考え、また、実践する案を作
り、また、実践していくという最終段階に入ってくるということだろと思います。
今日はそういう中で列島強靱化、この人をおいてほかにいないという方でございますけれ
ども、京都大学大学院の藤井先生からおいでいただいたということであります。藤井先生、
もう全国ひっぱりだこということでございますし、今日もこの会の後、もう2つくらい新潟
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でご講演をいただくというような状況になっています。我々も藤井先生のお話をしっかりと
聞かせていただいて、そして、やはり日本海側の連携、これが何より重要であり、今後、太
平洋側が広範に被害を受けるときに、日本海側と太平洋側が同時に被災することは、今まで
歴史のうえではございませんので、そういうときには、日本海側がしっかり救援拠点として
機能する、そのためには何をすればいいか、今、本州日本海側には石油精製基地がないとい
う大変な状況であります。そういう中で太平洋側が被災したらどうなるか、また、仮に日本
海側が広範囲に被災した場合、横断軸が多様にできていれば、太平洋側から機能的、また、
迅速に救援を我々が受けることができるということだと思います。こういうしなやかに、ど
んな災害にも対応していくということが、国土強靱化の大きな考え方と、私どもそういう面
では大賛成であります。この国土強靱化の視点の中で日本海軸、横断軸の強化、そして道路、
鉄道に限らず、我々もっと多彩な機能分散、そして、連携というものを図っていく、新しい
国家デザインを描いていく、そういう時期ではないかと思っております。
それでは、最後までご熱心なご参加をお願いいたしまして、私のあいさつとさせていただ
きます。本日は、誠にありがとうございました。
基調講演(藤井
聡
氏)
ただいまご紹介にあずかりました京都大学大学院の藤井
聡と申します。
京都大学では、レジリエンス研究ユニットというのを今作っておりまして、そちらの代表
を務めさせていただいております。このレジリエンス研究ユニットという研究所であります
けれども、レジリエンスというのは、安倍内閣の中で作っているレジリエンス懇談会という
のがあるのですけれども、そのレジリエンスでありまして、要するに強靱化研究所という意
味です。京都大学ではインフラはもちろんのこと、インフラに限らず金融・経済・財政・産
業・社会・国民意識、そういうものを全部含めて、強靱化していくための基礎研究を分野を
横断的に進めているところでありまして、そちらの研究ユニット長を務めさせていただいて
ございます。
元々、強靱化の研究をやりはじめたきっかけは、3.11 の前に経済レジリエンス研究会と
いうのを経済産業省で主催しておりまして、大きな被害があったときに、その被害を最小化
すると同時に、受けた被害を迅速に回復すると、被害を受けてしまうと、それを放っておく
とずっと痛みになりますから、できるだけ回復する、要するに復興過程、それもきちんと見
据えたうえでの事前対策、だから体質の改善というものをやっていくことが必要だというこ
とで、強靱化研究というものをやっていたのですが、そんなことをしているうちに 3.11 が
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起こりまして、いわんこっちゃないというようなことが起こってしまいまして、ずっと京大
で防災研究所をやるべきだみたいなことを言っていたのですけれども、そういうことが起こ
ってしまいました。
これはお国の一大事だということで、そこで国会に提案申し上げたのが、列島強靱化とい
うもので、これは田中先生の列島改造論の、僭越ながらパクリをさせていだいたということ
で、列島強靱化というものを国会に提出させていただいて、それから自由民主党の先生方を
中心に、途中から公明党の先生方、防災減災ニューディールという言葉を使いながら、最後
には民主党も強靱化というものに賛同するようになりまして、やはりこういう大きな大自然
災害が起こる危機を前にして、政府たるもの手をこまねいていてはいかんというコンセンサ
スが徐々に形成されていって、いわゆる3党合意というものの中にも強靱化の思想というの
が入ってまいったわけでありますけれども、その中でもやはり一番熱心に強靱化を進めてい
たのが、現在の安倍先生、当時、谷垣先生が率いておられた自由民主党でありまして、昨年
の1月には、「谷垣ドクトリン」というのをおまとめになったのですけれども、そのときに
列島を強靱化すべきだと、国土を強靱化すべきだという文言が、震災復興とともにやるべき
第一番の仕事として党の方針の中に入りました。その後、総裁選中でも5名の総裁候補の先
生方、皆さんが強靱化をしていくべきだとおっしゃった。その中で安倍総裁が勝利されまし
て、安倍総裁とは、僭越ながら、かねてからおつきあいさせていただいていまして、いわゆ
る積極的な財政政策と積極的な金融政策を組み合わせるニューディール政策を用いて、デフ
レ脱却をやるべきだということをいつもご進言申し上げておりました。並びに、せっかく財
政主導をやっていて、それを終わらせるのだったら財政主導する項目、その内容は国土の強
靱化であるべきだと、そういうことを申し上げていたわけであります。
その方針が、ありがたいことに、総選挙のどちらの論点も公約の方に入れていただきまし
た。前者の経済政策の方はアベノミクスというふうに、これは我々が、党がつけた名前であ
って、どこかの経済評論家がインターネットジャーナルの小さな原稿でそれを書いたのがき
っかけでありました。それをすぐ目撃して、当時、総裁にもアベノミクスといっている人も
いますよと、ぜひ、この宣伝、どんどん言ってくださいというようなことを当時、申し上げ
たことも記憶してございます。そのアベノミクスの方針とともに、国土の強靱化というもの
を自由民主党の中で、大きな公約として掲げられるに至ったということであります。
党が政権をとり、安倍内閣が誕生すると同時に、僭越ながら、内閣の官房参与という役職
をいただきました。謹んでお受けさせていただいて、今、官邸周辺でお仕事をさせていただ
いてございます。内閣の方が仕事をまだ続けてはいるのですが、週の大半は官邸周辺でいろ
いろとお仕事をさせていただいているという状況でございます。そういう意味で、今日はこ
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ちらの方に泊めさせていただきまして、おいしいお酒でもちょうだいして、明日また官邸周
りにまいりまして、国土の強靱化並びにアベノミクス関係の執務のお手伝いと。私、参与で
ありますから行政官ではございませんで、職責が明確にあるというわけではないのですが、
行政官の方々のお手伝いをさせていただいているという立場でございます。
今日は、鉄道による日本海国土軸・列島横断軸の形成・強化に向けたシンポジウムにお声
がけいただきまして、本当にありがとうございます。国土の強靱化におきまして、私の持論
というふうにご理解いただきたいと思いますけれども、必ずしも内閣で日本海軸に徹底的に
投資していくという方針が閣議決定されたわけでもございませんので、今のところ内閣官房
参与という立場で、施策の内容をご説明する立場にはないのですが、今、私の、例えば京都
大学の研究の方針ですとか、並びに後々にご紹介する国土強靱化の基本的な方針から、理論
的に演繹される重要な政策、事業の要素となるであろうと想像されるのが、こういったとこ
ろでございますので、それがいかに理論的に国土の強靱化に資するのか、そのあたりについ
て、今日は僭越ながらお話し申し上げたいと思いまして、今回のお話を恐れながら受けさせ
ていただきまして、今日、僭越ながら、こちらでお話しさせていただくという機会をちょう
だいした次第でございます。それでは、恐れ入りますが、着座のうえ、少しお話しさせてい
ただきたいと思います。
まず、こちらの方にレジリエンスジャパンというスライドが出てございますが、これは国
土強靱化というのはどういう取組なのかということを簡単におまとめしたものであります。
要するに1.日本は今、多様な危機に直面していると書いてございますが、先ほど申し上げ
た巨大地震、これは言わずもがなでありますけれども、老朽化の問題、それから世界恐慌の
問題、さらには、こちらには記載してございませんが、富士山の噴火の問題とあるわけです。
ちみに自由民主党の中には、国土強靱化の総合調査部会に加えて、それと関連する格好で大
噴火対策の議員連盟研究会というのも立ち上がっております。ちなみに、富士山が大噴火い
たしますと、場合によってはリニア新幹線も機能を停止する可能性があります。それを考え
ると、まずここでひと言申し上げておきたいのが、日本海軸の形成という、しばしばリニア
新幹線が通るとリダンダンシー、冗長性の観点からも、北陸新幹線はいらないという議論が
あるのですが、実は相当程度の確率であるのではないかということを指摘する学者もいるぐ
らいの富士山の噴火というものを考えた場合、やはり日本海軸の形成というのは、東西の分
断対策において極めて重要な役割を担うというような意見を申し上げておきたいと思います。
例えばそういうようなものも含めて、様々な危機があるというのが1.であります。この危
機に対して我が国としても適切に対応できるような強靱性、レジリエンスを入れようではな
いかという話をしていると、これが安倍内閣の国土強靱化と呼ばれる内容でございます。
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そのときに、オールジャパンでと書いてあるのですが、しばしば東京オリンピックという
議論があると、東京だけの話だなとか、例えばリニア新幹線、また太平洋ベルトだけの話だ
なというふうに思われるときがあるのですが、国土強靱化も南海トラフと、それから首都直
下地震ですか、また太平洋側の話で、日本海側とか北海道とか九州は関係ないなというふう
に、しばしば受け取られることもあるのですが、このオールジャパンというのは、決してそ
うではないという意味でございます。これは私が申し上げるまでもなく 3.11 の大災害のと
き、新潟が復興・救援・復旧の拠点基地になったというのは、私が申し上げるまでもなく重
要な論点になったわけでありますから、ナショナルスケール、国家レベルの大災害のときに
は、被災地の耐震補強だけすればいいという議論ではなくて、国家全体としてすべての地域
がそれぞれの役割のもと、どういうような対策をとるかということを考えなければならない
というのは、これはもう改めてここで指摘するものでもないと思います。したがって、こう
いう巨大地震、あるいは大噴火という問題については、オールジャパンで対応しましょうと
いうような話であります。
強靱化について色々と議論があるのですが、強靱化するというのはどういうことかという
のをいくつか、レジリエンス懇談会で、政府の古屋圭司担当大臣がいつも出席され、並びに
内閣官房副長官が強靱化推進室の室長をやっているのですけれども、そういう委員会で僭越
ながら座長をやらせていただきながら、国土強靱化するということは、どういうことなのか
ということを議論しております。その基本的な方針を5つ、こちらでまとめているのですが、
1・2・3のあたりは、何もかもマーケットにぶち込んで、とにかく規制緩和をして、なに
もかも行政の仕事を捨てて、マーケットにぶち込んで何でもやったらいいじゃないかという
ような考え方では、その国は脆弱するから、適切なマーケットと適切な規制、適切な政治の
力というものを活用しなければ、この国は壊れますよというようなことをいっているという
話であります。それが1・2・3であります。
4の方も、とにかく最近はマーケットがよくて、コミュニティの力とか社会の力とか、家
族の絆とか、そんなものはいらないようになる、そんな古くさいことをいわないで、とにか
くもうぜぜでカタをつけたらいいじゃないかと、市場でやったらいいじゃないかと、自由化
主体でいいじゃないかと、そういうような話が猫も杓子もやっているような状況であります
けれども、そんなことではなくて、きちんと社会の力というものを活用していくのが強靱化
の方針ですねなんていうことを議論しているのですけれども、ここで申し上げたいのは5番
目なのです。
強靱なシステムというのはどういうシステムかというと、自律分散というようなシステム
であります。何もかも東京に一極集中していると、そこが激甚被害を受けると、その国自身
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が終わってしまうということになりますから、必然的に分散化していることが必要であると
いうことであります。分散化しているだけで、しかも、分散化しているのだけれども、結局、
枢要なものはすべて東京にあるとか、一極にあるというのでは全然意味がなくて、やはり分
散化していても中心が壊れてしまうと、国全体が終わってしまうということになりますから、
一定の自律性が必要であります。要するに富士山が噴火して東京がなくなったとしても、こ
れは科学的にあり得る話です。巨大噴火というものは、その半径数百キロくらいとか、全部
消失してしまうという話がありますから、そういう可能性がありますから、東京くらいはつ
ぶれてしまうかもしれないと。ですから、例えば東京とか大阪とか名古屋とかが、仮に完全
に破壊されてつぶれたとしても、例えば日本海側が自律的に生産活動ができるとか、自律的
な様々な活動ができるという状況になっていけば、国はつぶれないです。それが強靱なシス
テムということになりますから、自律分散性というのは、これは強靱なシステムのすべての
基本になります。
ちなみに、そういうものを作ろうとするときに、マーケットメカニズムで作ろうといって
も不可能です。マーケットメカニズムには規模の経済という概念があって、とにかく東京で
商売する方が、田舎で商売するより金が儲かるのです。ですから、とにかくマーケットに何
もかもぶち込むとかというような下品な考え方で政治を運営していくと、脆弱なシステムに
なる、一極集中になって自律分散型の国土はできません。したがって、自律分散型国土をつ
くる以上は、強力な政治の介入が絶対に不可欠です。しかも、そのときに必要なのは強力で
あることが必要であって、地方行政だけの力では不可能です。当然ながら中央政府の強力な
リーダーシップのもと、適切な中央集権の適切な地方分権化のバランスのもと、中央集権の
力を徹底的に活用しつつ、国家の方針として自律分散型国土を作っていかない限り、この国
の強靱化は達成することが不可能なのだということが、理論的に導かれる解であります。こ
れをどこまで中央政府が理解するかというこの1点に、日本が地震が来ても、もつ国になる
かどうかという未来がかかっているといってもいいでしょう。少なくとも安倍内閣は、今、
こういう方針を議論しながら、国土強靱化を政府として進めようとしておりますし、場合に
よっては、今週審議していますけれども、国会で二階先生を中心にまとめられた国土強靱化
基本法というのがありまして、これがひょっとすると今週あたり通るかもしれない、来週に
なるかもしれませんが、ひょっとしたら今期は無理かもしれません。一番最速で、今週あた
り成立するかもしれないと言われていますけれども、もし仮にこれが成立すると、国土強靱
化を進めていくという方針が立法で決まりますから、こういう国土強靱化をやっていかない
政府は法律違反になりますから、立法といいますか、法治国家である我が国日本においては、
国土強靱化をやることが政府の義務になってまいります。ぜひともそういう状況になればと
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いうことを国会の先生方に心から祈念申し上げるとともに、先週は特別委員会が衆議院であ
ったのですが、その点は何度も何度も私の方から強くお願い申し上げていたところでありま
す。
さて、そういうことで、国土強靱化をするということは、自律分散型の国土を作るという
ことなのだということが、今、議論されています。自律分散型の国土をつくるうえでどうし
たらいいのか、私がいろいろなことを申し上げているのですが、私が最も重視しているもの
の一つが鉄道、とりわけ新幹線であります。今年の8月9日に、こちらの「新幹線とナショ
ナリズム」という本を出版させていただきました。これは東京オリンピックが決定する少し
前に出版した本であります。要するにこの本で書かせていただいているのは、新幹線を作る
ということなかりせば、現在の戦後日本はあり得なかったのだということが一つ、並びに、
もう一つ主張しているのは、この新幹線を作るという仕事は、要するに大きなナショナリズ
ムの物語の中で出てきたものなのだということがもう一つ、この後者のナショナリズムの物
語とは何なのかということ、これは物語ですから当時の歴史的な検証を踏まえて、当時、何
があったのかということ、池田勇人が何を言ったのかとか、十河さんがそのときにどういう
決断をしたのかとか、そんなことが書かれているわけでありますけれども、1つ申し上げた
いのは、新幹線をつくるという議論を言い出したのは十河国鉄総裁なのですが、十河国鉄総
裁が新幹線をつくるのだという議論をしたとき、日本中全員が、こいつはアホなことを言っ
ているなとみんなが思っていたということであります。昭和30年に新幹線なるものがこの
世に誕生するとは、誰も想像していなかったということであります。
おりしも当時、鉄道行政に関しては鉄道斜陽論というのがあって、昭和30年代というの
は、これから日本は自動車の時代になると、鉄道は古くさい乗り物であって、そんなものは
どんどんいらなくなっていくだろうと、これから自由化の時代だから、とにかく自動車をど
んどん大切にしていって、全国高速道路を張り巡らせば鉄道はいらなくなるだろうと、折し
もさらには、もっと遠いところへ行くのだったら飛行機があるじゃないかと、飛行機をつく
り、そして、鉄道は捨てて自動車をつくれば、それだけで日本は明るい未来が開けるのだと
いう論調が右から左まで、上から下まで、北から南まで、みんなそんなことを言っていたの
です。
ところが、十河は、そんなことは絶対にあり得ないと、理屈で考えただけでも、鉄道にし
かできない仕事が山のようにあって、それこそ距離が300キロから400キロ、500キ
ロ、そのくらい離れたところは、飛行機で行くよりも新幹線で行くことを考えれば、時間的
にもほとんど一緒だし、予約もいらないし、しかも、輸送量も圧倒的に違うわけです。1両
で線数百人運ぶことができると、それは飛行機ではとうてい対応できないし、車でも不可能
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です。そもそも車はどれだけ太い道を造っても渋滞します。アメリカを見れば、一目瞭然で
す。片側7車線、8車線あったとしても、車だけに頼っているまちは大渋滞を起こします。
大渋滞を起こして、結局は物流も通勤もできないという社会にアメリカはなっています。で
すから、冷静に考えれば、どう考えたって鉄道というものが必要だということが誰だって分
かる話だったのですが、今のTPPがそうだとは言わないのですけれども、とにかく国を開
いたらいいのだとか、あるいは自由化したらいいのだとか、何か訳の分からない話がありま
す。訳が分かるか分からないか分かりませんけれども、僕は必ずしも一例として挙げただけ
で、TPPのことについて賛成も反対も言及してはいないですが、ほとんど議論しないまま
に自由化したらいいじゃないかという話が、この20年間、どんなやつでも言っているわけ
です。ものすごい天才、秀才的な人から、何も考えていない床屋の、うちの家内の父親は床
屋なのですけれども、床屋の親父まで含めて自由化したらいいとか、そういう空気があるの
です。山本七平という人が空気の研究をやっておりますけれども、日本人は特に空気に弱い。
理屈を全部捨てて、空気だけで考えるのです。おそろしいことに、空気だけでこの国は動く
のです。本当にばかばかしい話ですが、そういう空気が当時もあったのです。それが、鉄道
斜陽論です。
そこに十河さんは、果敢に立ち向かったのです。日本の未来を切り開くには、東海道に高
速の鉄道を敷くことが絶対に必要だと。戦時中は弾丸列車といって、そういう構想があった
のですけれども、弾丸列車構想というのがあって、これはつぶれたのですけれども、もう一
度あれを復活したい、あれと同じようなアイデアで東京と大阪を3時間で結ぶのだと、こう
いうことを考えたわけです。当然のことながら彼は、単なるアイディアを言っただけではな
くて、国鉄の技術者として一生懸命技術力で可能かどうか考えていくわけです。そして、こ
れは絶対に可能だということを確信しながら、数人の技術者と一緒に新幹線の構想を総裁に
なってからぶち上げていくわけです。何度も繰り返しますが、当時は馬鹿なことをいうなと
言っていたわけであります。多くの新聞・メデイアも、こんな馬鹿なことを言っているやつ
がいる。ずっとそう言われていたのです。そんな中で十河さんは、徹底的な論理に基づいて、
一人ずつ説得して回るのです。最初は、世論を説得しても仕方がないですから、まずは国鉄
の中で説得を繰り返していきます。それと同時に、政府の中でも数人の心のある政治家の先
生方に頼んで回ります。絶対に新幹線が必要なのだと。
そして、一定程度の理解者ができてきた頃、シンポジウムを開催します。東京大阪間を3
時間でつなぐのだと、これは夢だと、夢の新幹線なのだと、夢の超特急なのだということを
ぶち上げます。このとき、大手新聞社各社が、その夢に気づいたのです。それができるとい
うことは、すばらしいことではないかということで、そこから「夢の超特急」という言葉が
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できてまいります。これも先ほどアベノミクスという言葉がメディアから出てきた言葉なの
だと申し上げましたが、これは政府から、国鉄から出た言葉ではない、国民の側から出てき
た言葉、それが「夢の超特急」なのです。おりしも昭和 30 年、終戦から 10 年間、我々はぼ
ろぼろにされていたわけであります。そして、一流国であるという誇りはズタズタに切り刻
まれていたわけであります。我々は戦争に負けて二流国に凋落していって、これ以降、二度
と立ち上がれない国になるのではないかと、そんな危惧すら当時はあった。そういう不安感
が、残念ながら沖縄が帰ってきてはいなかった時代ではありますけれども、北は北海道から
九州まで、そういうふうに何となく漠とした不安感があった。我々は本当に二流の民なのか
と、我々は欧米よりも劣等民族なのかと、そういうふうに感じていたわけです。
そのときに「夢の超特急」という響きは、我々はやはり一流の民族なのだと、国家なのだ
と、そういう国民意識に大きく訴えかけ、その「夢の超特急」という言葉から、日本人の心
の奥底にある大きなうねりと結び付いたのです。琴線というような微妙なものではない、も
っと心の底にあるマグマが、「夢の超特急」という言葉でうごめきだしたのです。国土強靱
化という言葉は、こういう力を本当は持つはずなのだと思うのですが、当時の日本人と今の
日本人では、東京に住んでいる人間の割合が全然違いますから、「東京物語」といって笠智
衆の息子・娘がめちゃくちゃやっていた映画がありましたけれども、あんな話がどんどん今
なってきていますから、今、日本人は日本人でなくなっているというやつが多いのですけれ
ども、それはちょっとおいといて、少なくとも昭和30年当時は、まだまだ立派な日本人が
たくさんいたのです。東京にすらまだいたのでしょう、大阪にすらまだいたのでしょう。
「夢の超特急」という言葉が、それとも大きく結び付いていくのです。それを当時の新聞記
者は、まだ何人もいたのでしょう。これはナショナリズムを喚起していかないといけないと
いうことで、「夢の超特急」ということをみんなでどんどん言っていくわけです。当然、主
に左翼系とまで言われるような人たちが反対します。公害があるじゃないかと、こんな無駄
な箱物になるじゃないかというのですけれども、そういう反対論、元々鉄道斜陽論が世の中
を席捲していたのですから、そもそもなぜ鉄道斜陽論が席捲していたのか分かりません。
ちょっと話は戻りますけれども、なぜかというと、アメリカ様が鉄道斜陽論を主張してい
たからです。日本人というのは馬鹿ですから、アメリカが言うことは全部正しいと思ってい
たのです。何でも正しいはずがないじゃないですか、そんなものは。だけど、アメリカ様が
言うことは正しいという風潮が当時からあったのです。今あるのかどうか、僕は内閣官房参
与ですから言及は控えますけれども、そういう風潮があったわけです。アメリカ様が言って、
しかもそれが飛び火して、ヨーロッパにもそういう空気があった。おりしも劣等民族ではな
いという誇りを持ちたいと思いながら、やはりどこかで劣等民族なのだという鬱屈したコン
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プレックスが日本人の心の中にあって、そんな中で欧米の皆様方が鉄道はいらんとおっしゃ
っているのだったら、やはり鉄道はいらないのだろうと、そんな中で我々はしょうゆとか、
たくあんとか、お茶漬けとかを食っているような情けない田舎者の日本人が、そこで言って
いる鉄道なんていうものは、古くさいものだと思っているやつが多かったわけです。そこを
十河さんは徹底的にそうじゃないということを説得して回って、日本人の心に火をつけたわ
けです。したがって、主に左翼側と呼ばれる方々からの反対論というものは、徹底的に力を
持たなかったのです。そして、政治家が動いて、そして決断が下されていくわけです。昭和
30年に十河がやるべきだという議論を、始めてからたった4年で、政府の方針として東海
道新幹線をつくるのだということが決定します。決定したらたった1年で、1年後ですから
昭和 35 年に着工するのです。当然ながら当時は、お金は全然ありません。今の方がむちゃ
くちゃ金はあります。国債も刷る余地なんて、今の方がずっとあります。当時はインフレだ
けれども、今はデフレですから今の方が国債を本当は刷れるのです。当時は、インフレのと
き、国債をすったらもっとインフラになりますからやりにくいのです。このあたりのところ、
アベノミクス論ですから、今日はおいておきます。
そんな中で、お金がないのです。しかも、技術力は今の方が圧倒的にあるのです。どう考
えても、東大とか京大だってあるし、世界を席巻するような技術力はある。技術力は当時は
ない、お金もない、そんな中でも我々にはなくて、当時の日本人にあったものがあるのです。
それは何かというと、気合いです。つくってやるんだという気合いです。金もないし、技術
力もないけれども、気合いだけあったわけです。そして、その気合いに関して一人の日本人、
一部の日本人、一部の政治家、一部の技術者だけではなくて、日本人全体がそれを絶対につ
くらなければいけないという、ものすごく深い深い思いがあったわけです。この思い一発で、
それからどうなったか、私が申し上げるまでもない。池田勇人は、オリンピックが来ると決
まった時、オリンピックまでに絶対に新幹線を間に合わせると言明したのです。当時、そん
なの無理だとみんなが思ったのです。お金もないし、技術力もないし、トンネルも掘らなけ
ればならないし、無理だと。だけれども、政府はできるはずだと、本当にできなかったら仕
方がないかもしれないけども、絶対につくれると。そもそも当時の日本人は、GNPが当時
の日本の10倍もあるような、あの大国アメリカと開戦をしたのが日本人です。たかだか5
年でインフラをつくることぐらい簡単な話です。この話を我々はしているわけです。でも、
今の日本人はだめです。私どもは砂で撫でてトンネルを掘るくらいしかできないような、そ
れくらいの情けない日本民族になり下がっていますけれども、少なくとも当時はそういう日
本民族だったわけです。
だから、この本のタイトルが、「新幹線とナショナリズム」となっているわけです。今言
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った極みというものを社会科学の用語を使って説明すると、それはナショナリズムというの
です。ナショナリズムというのは何か、一般用語であったり、イデオロギーであったり、特
定の偏った思想であるかのように思っているのは、馬鹿な日本人だけです。ナショナリズム
という用語は、近代国家が誕生した頃から言われている政治経済学のすこぶるアカデミック
な、社会科学的用語なのです。だから、この本で書こうとしているのは、ナショナリズムが
あったから新幹線ができたのだという物語なのです。それをゲブラーとかスミスとかという
社会科学者たちの議論を一部引用しながら分かりやすく、3時間くらいで読めるという評判
ですから、皆さん、受付で売っていますから、ぜひ、買っていただければ、この気持ちがよ
く分かると思いますけれども、ぜひ、お読みいただければと思います。そうやって新幹線が
できたわけです。
ただ、それはただ単に不合理なナショナリズムではないのです。冒頭にあるのは、十河並
びにものすごく優秀な国鉄の技術者たち、国鉄マンたちの徹底的な合理性に基づいた計算と、
それから予測とか工学的な計画、交通工学に基づいて、絶対にこれは負けがないとふんだ戦
だから、そこで打って出たのが、新幹線をつくるという戦だったわけです。そして、昭和3
0年から39年、彼が言い出してからたった9年でつくりあげたのが、新幹線だったわけで
す。我々日本人は、こういう物語を知らなければなりません。今は誰も知らない。鉄道を所
管している鉄建公団というのがあるのですけれども、彼らだってほとんど忘れかけている。
こういうのを知っているのは、本当に年配の80歳とか70歳以上くらいのおじいちゃんた
ちで、「そう言えば、そんな話があったな、藤井君」と言ってくれるだけの話です。今の若
い者、20や30や40くらい、僕と同世代くらいのやつは、いい大学は出ているかもしれ
ないけれども、工学的な計算しかできないわけです。こういうシャバの動態というか、シャ
バの力学は何も分かっていない。でも、新幹線をつくるというのは、当然ながら一面におい
て計算とか、合理的な冷静な計算というのは必要ですけれども、もう一面において、こんな
とてつもないインフラをつくるときには、シャバの力学というのがないとできないのです。
それを理解するような人間でないと、新幹線みたいなでかいものができるはずがないのです。
さて、実はこの新幹線によって、日本は大きく成長を遂げていきます。それは私が言うま
でもない。想像すれば、一目瞭然でありますけれども、東海道新幹線がなくて、新幹線がな
くて、飛行機と車だけで東京と大阪の間をポチョポチョやっていたのです。日本の今のGD
Pは300兆とか、下手したら200兆くらいの国です。全然ビジネスができないのですか
ら。新幹線があるから、ものすごく国が発達したわけです。どのくらい発達したかと言うと、
例えばこういうのを見ると非常に分かりやすい。明治時代のベスト15都市というのは、こ
んなのです。日本中全部の地域に、大きなまちがいっぱいあったわけです。残念ながらこの
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当時、新潟市というのは大都市ではなかったのです。富山・金沢の方が大きかったのです。
これは明治9年、すなわち江戸時代の国土の形です。ところが、今はこうなっているわけで
す。ご覧のように、赤い字は明治初期には大都市ではなかったのですが、今は大都市になっ
た町々であります。新潟もそうであります。埼玉、千葉、相模原、川崎、静岡、堺、岡山、
北九州、福岡、こういう町々であります。黒いところは昔からの大都市です。仙台、名古屋、
神戸、広島、京都、大阪、東京、横浜、何となく分かりますよね。昔からのまちで、今も大
きなまちです。赤いまちが、途中から近代において大きく変わったまち、そして、×がつい
た函館や富山、金沢、和歌山、徳島、熊本、鹿児島、こういう町々は大都市だったのですけ
れども、大都市でなくなったまちです。この1枚の地図は、いかに新幹線当時が日本の国土、
あるいは近代の歴史において巨大な意味を持つのかということを意味しています。
それは、これに新幹線の地図を重ね合わせればいいのです。ご覧のように、札幌は特殊な
事情があり、道州制という訳の分からない制度を先に入れてしまったので、一極集中してし
まったので、ここはおいておきますと、それ以外のまちは見てくださいと、すべての政令指
定都市が新幹線の沿線なのです。新潟もそうなのです。仙台もそう、福岡、博多もそうなの
です。そして、この新幹線の軸から外れたまちは、すべて大都市になれなかったのです。新
幹線から外れた大都市というのはないのです。かつて大都市であった、都市であったとして
も凋落するのです。これが新幹線のパワーです。なぜか分かりますでしょうか。理由は簡単
です。たくさん人が来るからです。たくさん人が来るし、そこからたくさんいろいろなとこ
ろに、短い時間で行けるからなのです。だから、工場を造るのです。一次産業、二次産業を
つくるのです。三次産業をそこにつくるのです。一次産業、二次産業、三次産業ができれば、
そこに人が住みますから、彼らはいろいろな需要を持っていますから、そこにまた産業が生
まれるのです。産業が生まれると、人口が増えていくのです。すなわち、新幹線があれば、
それはさながら、海の底に沈める魚礁のように、どんどん魚が寄ってくるのです。いい魚礁
になるのです。新幹線というのは、人工的に埋める魚礁のようなものなのです。一目瞭然で
すよね。新幹線がなければ、魚礁がなかったら、せっかくいっぱい魚がすんでいる近代とい
う文脈の中で、魚がいなくなるのです。ただ魚礁さえ沈めたらいいまちになるかと、そうで
もないです。
例えば先週、山口へ行きましたけれども、新山口といって、宇部からも山口市からも遠い
中途半端なところに駅をつくったのです。そんなところにつくっても、たいしたまちはでき
ないのです。さらに言うと、大阪が凋落しているのは、新大阪といって、未だにろくでもな
いまちができて、あんな変なところに駅をつくったのです。昔は鉄道の駅というのは、迷惑
施設だったのです。だから、多くの人は鉄道駅をまちなかに引き入れるなといったのです。
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だから、長州藩は山口なんか入れるなといって、新山口の方につくってしまってだめになっ
てしまった。大阪人は、そんなのうちのところにつくるなといってやめて、それで大阪は凋
落していったのです。新大阪というちょっと遠いところにつくって。さらにいうと、駅が辺
鄙なところにあるというと、岐阜羽島とか、ご存じないのではないですか、全然ろくでもな
いところにある。何も栄えていません。さらに言うと、滋賀県の米原、これは元々何もない
ところなのです。そんなところに駅をつくっても、たいしたことがないのです。
ところが、元々大きな都市に投資をして新幹線を敷くと、またたく間に枯れ木に花が咲い
てきます。それは、元々潮の流れがいいところにいい魚礁を沈めると、瞬く間によい漁場に
なっていくのと一緒です。例えば一番分かりやすいのが、ここで×になっています熊本です。
一度凋落したのです。だけど、今や新幹線が通って政令指定都市になりました。これは当然
ながら、足入れ区間といって、先にずっと新幹線をつくっていたのです。だから、ずっと人
が集まってきて、実際に開通してしばらくしたら、すぐ政令市になれたのです。さらに言う
と、金沢だって、今の駅前には相当投資が進んでいます。これは当然ながら、新幹線がくる
からいいビジネスになるぞと民間投資が進んでいるのです。厳密な意味で、新幹線も公共投
資ではないですが、今のところ残念ながら公共投資ではないですが、北陸新幹線は公共投資
ですけれども、リニア新幹線は違うという側面がありますけれども、いずれにしても、こう
いう公共投資を行うことが、民間投資を誘発するのにものすごく巨大な起爆剤になるのです。
歴史を変えるのです。たかだか民間投資、小さなダムを1個つくったとか、工場を1個建て
たでも、それは自治体の税収が増えたということです。いいのです。平成においては、歴史
が変わるということはありません。この近代社会においては、たかだか一民間投資で歴史が
変わるということはないのですが、今、歴史を変える力を持っているのは、国家だけなので
す。国家というのは、なめてはだめなのです。そもそも90兆円企業です。GDPの1割近
くの金を使う大企業なんてないのです。だから、政府が本気になれば、歴史くらい変わるの
です。
ところが、最近の平成の人間は、十河のようなやつが少なくなったのです。常にこそくな
ことを考えるのです。僕も今官邸の周辺にいますから、ほとんどこそくなことを考えていま
すけれども、いろいろと細かいことばかり考えていますけれども、それは仕事というものは
そういうものだからそうですけれども、心の中には絶対に忘れてはいけないことがあるので
す。日々の日常を考えるときには、こそくなことを99%考えてもいいかもしれないですけ
れども、男たるもの、十河みたいな小物に負けてたまるかくらい思わなければいけないわけ
です。それをせこい話でちまちま、四六時中ちまちま考えているようなやつには、未来は絶
対にないとだけ言っておきましょう、腹が立つ。僕がどれだけ官邸に入ってイライラしてい
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るか、これで伝わりますよね。官邸の悪口ではないですよ、政府の役人というふうにご理解
いただければと思います。したがって、そういう思いが絶対にないと、これはできないわけ
ですよ。しかも、一応言っておこうとかという話ではないですよ。絶対につくってやると、
誰もやらなかったら、俺が一人でつくってやるくらいの話がないとできないわけです。
おりしも財務省は、706億円しか出さないと言っているわけでしょう。これに風穴を開
けない限り、早期実現なんてあり得ないわけです。しかしながら、この706億円が、たっ
た1,000億円というはした金がくっついて1,706億円になった瞬間にですよ、分かり
ますか、僕が何を言っているか。行政の方だったらそのあたりのことはご理解されているか
と思って、今しゃべっているわけでありますけれども、1,706億円を使うのだったら、
あの二コブが一コブになるわけです。分かりますか、706億円にしているから、債務計画
がずっと時間がかかって、北陸新幹線をつくるのに、あそこまで通るのに20年後とか、そ
れからボチボチとそこから先はお金を出さないから、フリーレイジトレインでやりましょう
かみたいな話になるのです。何でたかだか1,000億円で、そこまで日本国民がないがし
ろにされなければいけないのですか。元々1,000億円というお金を払っているのは、日
本国民ではないですか。そもそも今回の法人税減税は、8,000億円払うわけですよ、
我々日本国民は。あの8,000億円はどこにいくか分かりますか、大企業ですよ。大企業
は今回の5兆円の補正予算で、8,000億円が法人税減税で財務相と経済産業省でいろい
ろと調整をして、経済産業省の意向などもあって、これから第3の、4の起爆剤でアベノミ
クスを成功させるためには、法人税を減税するとインベストが進んでいいのではないかとい
う議論があったわけですけれども、そもそも冷静に考えると、あの8,000億円のすべて
日本国民のものになるとは思えないわけです。なぜならば、法人税を払っている企業は、今
や3割しかおらず、その3割というものはグローバル企業であり、グローバル企業というも
のは日本国内だけに投資するとは限らないからであり、多くの法人税は、場合によっては東
南アジアとか、中国とかアメリカの海外投資に差し向けられる可能性があるわけじゃないで
すか、こんなもの、馬鹿が考えても分かります。でも、それが国益につながるのだったら、
それはいいのだというのが官邸の判断ですから、これについて反対しているわけではないで
す。客観的な事実を言っただけですから、僕は今。だとしたら、8,000億円というのは、
そういうオーダーの数字なわけです。
じゃあ、なぜその1,000億が出てこないのですか。こういう問題は、皆さんご存じで
しょうか、小里貞利という男が命を削って働き倒したわけです。渡辺ミッチーに200回か
300回くらい説得に行って、何とかつくりあげたのが九州新幹線です。九州新幹線であり、
何とか整備新幹線4つが通ったのです。要するに、そこでも一人の男、当然ながら小里先生
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だけがつくり上げたわけではないですけれども、一人の男のとてつもない情熱が、世の中を
大きく動かすことだってあるわけです。敵ばかりなのです。小里先生にインタビューに行っ
たときに、こう言っています。四面楚歌だったと、当然ですよ。ものすごい四面楚歌なんで
すよ。右を見ても左を見ても、上を見ても下を見ても、後ろを見ても敵がいるわけです。に
もかかわらず、つくろうという気概がなければできるはずがないです、そんなもの。絶対に
これをつくっていただきたいと私は内閣官房参与として、なぜならば、国土を強靱化するう
えでは、自立分散協調型の国土がなかりせば、富士山が噴火して東京がつぶれたときに、こ
の国の未来はなくなってしまうので、ぜひ、良質な魚礁を日本海側に沈めておいていただく
と、自律分散型の都市が日本海側に連なって、さながら、この絵にあるように、元々静岡や
浜松はあまり大きなまちではなかったわけです。けれども、右に東京、左に名古屋・大阪が
あったから、だんだん発展していくわけですよ。それが新幹線というインフラが持つ魔力な
のです。
北海道だけがポツンとなるのは、鉄道をつくっていないからなのです。飛行機だけで一点
集中して、そこだけ大きくなって、さながら新潟の皆さんには申し訳ないのですが、札幌と
新潟は似ているのです。北陸という地域に対して1点でしかインフラがつながっていないの
です。それをさながら、言っておきますけれども、東京・札幌間の飛行機というのは、世界
で一番の旅客を誘導する大ドル箱路線なのです。それは、ほとんど上越新幹線に似たところ
があるわけです。そういうようなインフラでつながっているので、そこしか発展していない
のです。その都市化のエネルギーを右に左に広げていくことは、可能なのです。線としての
鉄道をつくれば。それをぜひ、この地でつくっていただきたいのです。それは、僕は内閣官
房参与を首になろうが何しようが、僕はずっとこれを叫び続けます。だって、日本国民なの
ですから。一部の人間が裕福であって、一部の人間が不幸であるなんて許せないですよ。
我々家族であり、同胞ではないですか。なんで東京だけいいベベ着て、よその子は鼻たらし
てTシャツ着て、ぼろぼろのパンツはいて、ぶらぶら歩いて風邪引かなくてはならないので
すか。いいベベ着て、きれいな革靴を履いているのが東京だとしたら、それ以外のところは
そういうふうになりつつあるわけです。それはおかしいですよ、日本国民として、同胞じゃ
ないですか。しかも、そういうことをやっているから国土が脆弱化して、地震がきたときに
吠え面かくのが東京のやつだということになりつつあるわけです。東京に対して吠え面をか
かさないようにするためにも、ぜひとも日本海側が発展していくことが、僕は絶対に必要だ
と思います。そして、僕は今日は道路の話、港湾の話をしていないですけれども、それから
パイプラインの話とか、それから発電所の話は、国土強靱化の中でやっているのですが、そ
のいろいろなインフラの中でも、とりわけ新幹線に僕は強烈な思い入れがあります。
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なぜかというと、ここまで巨大な影響力を持つインフラは、新幹線をおいてほかないので
す。しかも、道路は田中角栄先生が昭和47年でしたか、列島改造論を出版されたとき、あ
の本の中に2枚の日本地図を書かれているのです。いくつかの日本地図があって、その中重
要な地図が二つあります。一つは、高速道路の計画の地図です。もう一つは、新幹線の地図
なのです。高速道路の地図は、なんとほとんどできているのです。できていないところがあ
りますよ、しかも、1車線でつくっているようなところがいっぱいあります。何でここ、6
0キロ制限のところがあったりしますけれども、それでも、それなりにつながっているので
す。なぜか分かりますか。国家事業でやってきたからです。田中角栄先生が、揮発油税の制
度を作ってくださったわけですよ。あの力でどんどん自動的につくられるという制度があっ
たから、なんだかんだ言われながら、道路国会になったら猪瀬みたいな人がいて、ピーチク
パーチク言われながら、なんとかかんとか、十分とは言わないですけれども、何とかつくっ
てこられた。これは国家事業でやったからですが、もう一つの新幹線の地図は、はっきり言
って何もできていない。元々この裏に書いていますけれども、日本中に新幹線を敷く構想が
あったわけです。日本海軸は当然のこと、四国にだって新幹線を敷いて、山陰にだって新幹
線を敷く構想があったわけです。田中先生はこういうことをやろうと思っていたのです。当
然ながら、国鉄という仕組みがありますから、田中角栄先生は鉄建公団という政府組織を作
ったのです。道路公団とともに。そこに対してものすごく協力化したわけです。しかしなが
ら、その後の歴史の展開は、私が申すまでもなく、今のような状況になっているわけです。
国鉄は民営化され、東京でむちゃくちゃ儲かった金が、全部財務相に吸い上げられる仕組み
になったのです。あれがプールでつくられていたら、新幹線なんてすぐできているのです。
東京も山手線も掃いて捨てるほど人が乗っていますからね。僕は中央線に住んでいましたけ
れども、何でこんなに人がいるのかというぐらい、しかも、それが定期を買いまくっている
わけですよ。一人 10 円ずつくらい全国に配ったら、それだけで新幹線なんて一瞬でできる
わけです。それがJRになるということで、できなくなっているわけです。
さらに言うと、この問題の弊害は、どんどん進むと、論理的にはJR北海道の今の状況に
もつながっている可能性が、論理的に考えられるわけです。本当に日本の近代史は、涙なく
ては語れない。でも、多くの日本人は、それを知らないのです。情けない。これはもう先進
国ではないでしょう、日本人もこれだけ馬鹿になったら。ちょっと考えれば分かることを、
みんな分かっていないです。いずれにしても、そういう歴史をしっかりと理解したうえで、
しかしながら、我々は未来を切り開くのは、今日の今、この時点、この大地の上からしか前
に進めませんから、今のこの状況を100%肯定する必要があります。JR東海さん、JR
西さん、JR東さん、それぞれの方としっかりと協力しながら、財務相の皆様方のお知恵を
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借りて、経済産業省のお知恵を借りて、さらには場合によっては、中国や韓国やアメリカ
等々ともつきあいながら、その中でこの現状から1ミリでも2ミリでも、少しでも日本国民
が幸せになるような方向に動かしてやるのだというような情熱を持つ以外に、この国の未来
はないです。ぜひ、そういうような視差から新幹線の議論を、これからのパネルディスカッ
ションで、市長の皆様方と星野先生とご一緒させていただくことになりますけれども、ぜひ、
そういう前提に立って、このどうしようもないシャバの中で、どうやって1ミリでも2ミリ
でもいい方向に動かすのかと、そして理想は絶対に忘れないという思いのもと、そういう合
理的な、理性的な議論を先生方のお話をさらに拝聴して、私も今日は勉強したいと思います。
以上で、私のお話を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
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