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現代社会/現代史 ヘーゲルの「市民社会」(1)
現代社会/現代史 No. 3 ヘーゲルの「市民社会」(1) • ドイツ観念論と、ヘーゲル(1770-1831年) – 分裂状態のドイツ→プロイセンによる国家統一 • ドイツが最も惨めな時代(とは言え、芸術文化は大発 展 e.g.ベートーベン「英雄」)に思索を続け、プロイセン 興隆(e.g.ワーテルローの戦い 1815年6月18日)以後 は国家イデオロギーとなる – ドイツ観念論 • カント哲学を出発点として「自己意識」や「精神」、「自 我」などの精神的なもの、・・・略・・・、その根底として 観念的原理の自己展開をおき、それを絶対者あるい は神と呼んで・・・略・・・世界や人間の本質を捉える立 場から説明しようとする立場 • カント哲学の二元論(現象/物自体)の克服を目指した 1 参考図 ヘーゲルの「市民社会」(2) • 歴史を、精神(Geist)の発展・自己形成(Bildung) 課程と見る(←Bildung: 「教養」) – 世界史とは自由の進歩の歴史。Geistが自己の本質であ る自由を実現していく過程。 「時代精神(Zeit Geist)」 • 弁証法・・・もともとは対話法 – テーゼ/アンチテーゼ/ジンテーゼ – an sich/für sich/an und für sich – 家族→市民社会→国家 • 家族・・・自然的な倫理的精神(愛情)による結合 • 市民社会・・・競争と欲望の下での自由・平等 • 国家・・・「家族」と「市民社会」とが総合された場 人間倫理の最高形態 2 「市民社会」の再定義 • 国家 vs. 市民社会 – 権力を持った者たちの暴走 – 王制でも民主制でも暴走はあった – 国家=権力者 vs. 市民社会 – ヘーゲルはプロイセンを美化、しかし・・・・ • 国家を離れた自律的領域としての「市民社 会」 – ヨーロッパにおける具体性・・・国境を越えて広が る市民社会 市民革命の果実、憲法 • イギリスの憲法・・成文憲法なし・・3つの法から成る – マグナ・カルタ(the Great Charter) 1215年6月15日 • ジョン王の権限を限定する法。63か条から成る。すべての条文は その後廃止されたが、前文は廃止されずに現行法として残ってい る。 – 第1条 教会は国王から自由 – 第12 条 王の決定だけでは戦争協力金などの名目で税金を集め ることができない – 第13条 ロンドンほかの自由市は、交易の自由を持ち、関税を自ら 決められる – 第14条 国王が議会を召集しなければならない場合を定める – 第38条 自由な イングランドの民は、国法か裁判によらなければ、 自由や生命、財産をおかされない • 前文: 「国王ジョンは、以下の条文を承諾する」という内容 – 権利の請願:1628年 – 権利の章典:1689年 3 市民革命の光と翳 • 市民的権利・三権分立・・アメリカ憲法明文化、 しかしアフリカ系アメリカ人・先住民は対象外 (独立宣言1776、独立1783、憲法1787) • 「市民」の範囲はどこまでか – 4500部のベストセラー 『百科全書』 – ブルジョア革命 cf.ラッダイド運動 • Civilization 都市化・市民にする・文明⇔未開 • 奴隷貿易・植民地政策の展開 ※矛盾の蓄積と弁証法的アンチテーゼ?? →マルクスの批判へ 4 「光」はいつ届いたか: 義務教育 • 義務教育制度の萌芽的形態は 17 ~ 18 世紀のア メリカ植民地やプロイセンの法令 • 一国のすべての子どもを対象とした近代義務教育 制度の発足は 先進資本主義諸国でも 19 世紀後半 • アメリカでは 1852 年の〈マサチューセッツ州義務教 育法〉を皮切りに各州 • イギリスでは〈1870 年初等教育法〉 • フランスでは〈1882 年教育法〉 • 日本1872 年 (明治 5)〈学制〉、 保護者に対する就 学義務を法的に明記したのは 86 年の〈小学校令〉 消費者の権利 • • • • 1844 年、ロッジデール公正先駆者組合設立 以来イギリスを中心に生活協同組合発達 農協・信用金庫もこの流れ 1891 年にニューヨーク市で消費者連盟が結 成され, これがもとになって 98 年全国消費 者連盟The National Consumers ’ League が発足 5 普通選挙 年齢・性別以外で信条・財産等の制限を設けずに 選挙権を行使できる選挙形式 • 1848年 フランス第二共和政において、世界初の男子普通 選挙(狭義の普通選挙)が実施された。 • 1870年 アメリカで黒人を含む男子普通選挙が実施された。 • 1918年 イギリスで男子普通選挙が実施された。 • 1919年 ドイツ共和政において、世界初の完全普通選挙(広 義の普通選挙)が実施された。 • 1920年 アメリカで女性に選挙権が認められる。 • 1926年 日本で衆議院選挙の際に男子25歳以上の者で実 施された(狭義の普通選挙)。 • 1928年 イギリスで女子(21歳以上)に選挙権が認められた。 • 1945年 日本において男女20歳以上の者に選挙権を与える 規定に基づき婦人参政権が成立した(広義の普通選挙)。 • 1945年 フランスで女子(21歳以上)の選挙権が認められた。 Wikipediaより 女性参政権 • • • • • • • • • • • • • • 1893年 ニュージーランド 1902年 オーストラリア 1906年 フィンランド 1915年 デンマーク、アイスランド 1917年 ソ連 1918年 カナダ、ドイツ 1919年 オーストリア、オランダ、 ポーランド、スウェーデン 1920年 アメリカ 1928年 イギリス 1931年 ポルトガル、スペイン 1932年 タイ 1934年 ブラジル、トルコ 1945年 フランス、ハンガリー、イ タリア、日本 1947年 台湾(中華民国) • 1948年 ベルギー、イスラエル、 韓国 • 1949年 中国(中華人民共和国)、 チリ • 1950年 インド • 1952年 ギリシャ • 1953年 メキシコ • 1956年 エジプト、パキスタン • 1957年 マレーシア • 1959年 シンガポール • 1963年 イラン • 1971年 スイス • 2002年 バーレーン、オマーン • 2003年 カタール • 2005年 イラク、クウェート(2007 年の選挙から) Wikipediaより 6 黒人奴隷、先住民 • 「奴隷」は古代ギリシャ・ローマ時代でもある – 戦利品、異教徒(キリスト教徒⇔イスラム教徒) • 「黒人奴隷」1200万人~1500万人・・・異質 – 15世紀ポルトガル・・・アフリカ西海岸で探検費 用捻出のため、始まる – アメリカ大陸の発見と共に「大西洋三角貿易」 – 16世紀以降、スペイン、ポルトガル、オランダ、イ ギリス、フランス・・・植民地主義と重商主義 • 16世紀30万、17世紀150万、18世紀650万人以上 重商主義と大西洋三角貿易 • 重商主義 ※富とは金(や銀、 貨幣)であり、 国力の増大と はそれらの蓄 積 (重金主義→ 貿易差額主義) (東インド会社) (伊万里焼、有田焼もこの会社 無くては始まらなかった) 図: http://kunta.nomaki.jp/ より 7 ジャン・メイエール『奴隷と奴隷商人』創元社1992, p.176 ジャン・メイ エール『奴隷 と奴隷商人』 創元社1992, p.176 8 African American 後日談? • 1954年 ブラウン判決 – 公立校における分離政策を違憲 • 1955年 モンゴメリー・バス・ボイコット事件 ローザ・パークス ・・・タスキギー生まれ • 1964年 公民権法 • 1972年 「ニューヨーク・タイムズ」タスキギー 梅毒人体実験(1932~1972)を報道 – 1997年5月16日、クリントン米大統領は生き残っ た被験者5人らをホワイトハウスに招き、正式に 謝罪 奴隷関係その他 • 豊臣秀吉、九州統一直後、博多でガスパー ル・コエリョに対し、日本人奴隷貿易を詰問 • 天正15年(1587年)豊臣秀吉、バテレン追放 令を発布。十条で日本人奴隷の売買を禁止 • 慶長元年(1596年)宣教師側、奴隷売買禁止。 – しかし朝鮮出兵捕虜を奴隷として売った例も(日) • 南アフリカ:アパルトヘイト・・・最も遅くまで 残った人種差別体制 – 1948年に法制化、1994年に廃止 (1666年白人自由民32家族、うち1家族は日本人?) 9 労働者: マルクス主義? • W – W’ • W – G – W’ – 蓄蔵手段 – 価値尺度 – 支払手段 – 流通手段 物々交換 特別な商品としての貨幣G 通貨 W0 - G - W 1 W1 - G - W 2 W2 - G - W 3 • G – W – G’ 商人資本 • 資本主義的生産 G – W ・・・ P ・・・ W’– G’ 生産P 資本 • 不変資本 constant capital c (Pm: 生産手段) • 可変資本 variable capital v (A: 労働力) G(c + v) → G’(c + v + m) m: 剰余価値 剰余価値率 m/v (→剰余価値率逓減の法則) 10 労働者と資本家 • 労働力を売る人と買う人 – Gの無いところからスタートする人、とりあえずG を持っている人 – 「労働」ではなく「労働力」が売買される • 「何をすることができるか」が売買の対象、時間単位で 売買される・・・個人の時間が「モノ」として売買される • なぜ経済成長するのか – 市場が本当に機能して等価交換を達成するなら ば、市場自体が大きくなることは無い・・・どこから か何かが供給されている・・・サービス残業? →剰余価値=「搾取」 価値・資本について • 使用価値と交換価値 • 労働価値説(マルクス主義は労働価値説を必要と しないという立場もある) • 価値を生む価値→資本 • いずれ、c: 死んだ労働 v: 生きた労働 • 「cは蓄積され増大→剰余価値逓減」はマルクス主 義の基本命題・・・資本主義崩壊という理論 11 歴史の発展図式 • • • • 余剰生産力・剰余価値の増大に伴って 原始共産制 奴隷制 封建制 資本主義社会 講座派 vs. 労農派 日本資本主義論争 – 自由競争段階 – 国家独占資本主義段階 • 社会主義→共産主義 マルクスによる弁証法の再定式化 • ヘーゲルの弁証法→観念論的弁証法 – ある考え方「精神」と他の考え方の激突 →時代を次の時代へと動かして行く • 唯物弁証法/史的唯物論・・意識の社会的根拠 – ある社会を維持するには、それに相応しい意識が必 要・・・支配者の世界観・・・文化的支配 →それが機能不全に陥る時、次の意識が誕生 ・・・当然、支配者でないところで発生 (→ ヘーゲル: 主人と奴隷の弁証法) 12 マルクスの弁証法: 史的唯物論 • 上部構造と下部構造 – 経済・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・下部構造 – 制度・社会組織・イデオロギー・・・上部構造 • 唯物弁証法・史的唯物論「着実に進歩する (生産力が向上していく)下部構造⇔一度でき 上がると変化しにくい上部構造」 • 上部構造が下部構造の発展を阻害・・「矛盾」 →「革命」へ 下部構造と上部構造の“対話(闘争)”、新旧思想・背景の人々の“対話(闘争)” (上部構造) 制度 文化 意識 経済 (下部構造) 土台 うまく対応し ていれば何 も起きない (上部構造) 制度 文化 意識 歴史 の 発展 (上部構造) 制度 文化 意識 闘争 革命 経済 (下部構造) 土台 経済 (下部構造) 土台 経済の発展 →制度等機能不全 異なる意識の人々 (時代先取り階級) 新たな対応 13 「恐慌」をめぐって • 資本主義 →周期的 に発生す る「恐慌」 • それを繰 り返すこと によって 成長する 経済 14 景気循環と恐慌 労働力 好況 賃金率 利潤率 信用創造 産業予備軍 上昇しない 上昇 利子率低 豊富 or 低 (技術革新) 商品供給 不足 景気の山 産業予備軍 上昇 枯渇へ 低下 信用の制限 過剰 利子率高 恐慌 過剰雇用 一部分野で マイナス 破綻 過剰 不況 失業者 低 →予備軍へ 低 縮小 縮小 最高 資本主義的生産方法によって生産できないもの (奴隷売買でもできれば話は別だが・・・しかし限界も) 資本主義の矛盾と、その解消としての恐慌 • 恐慌によって過剰在庫・過剰雇用の解消 • 資本主義における危機的場面ではあっても、 「資本主義の危機」ではない ・・・景気循環の1ステージ • しばしば「戦争」による強力な在庫整理 • 資本主義にビルトインされた「戦争」 →それはさらに次の面でも・・・ 15 レーニン『帝国主義論』 • 資本主義が発達すると「資本輸出」が増大 • 資本は、自らの増殖のために動いていく – 独占による超過利潤: 産業資本→金融資本 – 金融資本と政治の結合 – 資本輸出と労働貴族の培養 →植民地支配 • 先進国の事情 – 自由競争段階→独占段階→国家独占資本主義 段階→世界分割(帝国主義段階) →再分割戦争 • しかし・・・ 植民地・従属国では資本投下により産業発展 資本輸出国では産業空洞化 →帝国主義国の「金利生活者国家」「高利貸国 家」 「寄生国家」化、「腐朽」、・・・→「主人と奴 隷の弁証法」(ヘーゲル)的反転への可能性 • 現実として、植民地・従属国での民族主義の 高まり、帝国主義国での労働運動激化 16 資本主義の成立・発展と、戦争の頻発 17 帝国主義国家による植民地化の展開・ 世界分割 18 世界分割 再 →分割/ロシア革命 世界分割が完了していたために、 世界戦争とならざるを得なかった 世界市場が成立していたために、 世界恐慌とならざるを得なかった 19 (で、労働者の生活は?)→ 物象化と疎外 • 貨幣の導入と共に変わったもの – 欲望の解放 自ら消費できる以上のものを欲求できるようになる – 価値に関する感覚の転倒 すごく良いものだから高い値段を認める →値段が高いからすごく良いものに違いない • 物象化(物神化) – 物自体に、価値があると思うこと←「なんでも鑑定団」 – 広い意味での「疎外」(自分の産み出したものが 自分に疎遠なものとして迫ってくる)の一環 労働の疎外 • 四つの疎外 – 労働生産物からの疎外 – 労働過程からの疎外 – 類的疎外 – 人間の人間からの疎外 「労働者と疎外」のテーマは、両大戦間時 代に言及する際、もう一度見直します。 20 ロシア革命、資本主義と社会主義 • 資本主義に問題があるのなら、どうしたら良 いのか? – 「所有」の問題 e.g.「土地を所有する」とは・・・ e.g.2 生産手段の私的所有 – 経済成長と、貧富の格差増大 • ロシア革命・・・社会主義 – 世界革命→一国社会主義へ(民族主義) • でも国際共産主義運動は続く・・・コミンテルン – 労働者の政権を標榜 – 計画経済 世界の東西分割へ 21