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資料1 池内委員プレゼンテーション説明資料
資料1 平和のフロンティア部会(第 3 回) 2012 年 3 月 5 日 グローバル市民社会への適応に向けて──新しい競争の場所 池内恵(東京大学先端科学技術研究センター・准教授) 要点: 新興国の「勃興」は「若さ」の強み(人口規模ではない) 新興国と欧米先進国が繋がった「グローバル市民社会」への認識と対応が急務 世代交代:一刻も早く メディアと教育の刷新が不可欠 1.前回までの議論を踏まえて:2025 年までに (1)経済規模⇒低下(新興国の台頭) (2)軍事力⇒それに伴って低下(パワーバランスの変化) (3)人口⇒減少 2.特に深刻なのは 高齢化⇒意思決定の不能・偏り、活力の低下 ⇔新興国の人口圧力:単なる人口規模ではなく、その「若さ」の圧力、「若さの 力」の向かう方向や速度が重要 世代交代は必須・急務:時間は残されていない 3.経済力も軍事力も人口規模も低下・縮小するならば (1)「その他」に活路を見出す⇒それは何か ⇒(概念の細かな定義はともかく) 「ソフト・パワー」的な影響力や魅力で、有為 の人材を引き付け、人口減少・経済成長の停滞を食い止める、ということにな らざるを得ない (2)有為の人材が飛来し、定着して経済・社会活動に貢献するためには ⇒前提条件として、老人支配の国には来ない(順番を待っていられない) 4.「ものづくり」「もてなし」の日本を超えて (1)理想化された 「ものづくりの精神」に富んだ 「もてなしの心」に溢れた 「便利で快適」な日本 は魅力的に感じられるが・・・ (2)しかしそれが「有為の人材を諸外国から引きつけて、鈍る成長、のしかかる高齢 化をはねのけられる」ほどのものかは疑問(内向きの論理) *「鄙の論理」である点は否めない⇒「都」に富と才能が集まるのは古今東西不変 *「お金がなくなれば、今の程度の快適さも失われる」という厳しい現実 5.「グローバル市民社会」の中の日本の再定義・再定置 (1)ソフト・パワーはどこで競われているのか? 欧米市民社会と新興国の新中間層が繋がる「グローバル市民社会」の出現 ⇒新たな「開国(社会) 」 グローバル化とその上での「市民社会」=ソフト・パワーの争われる場所 ⇒この「市民社会」は従来の「国家に対抗する市民社会」とは趣を異にする ⇒グローバルな階層秩序の再編、国家を横断する共通の文化・経済階層の出現 ⇒グローバル企業の人材供給源(であり新興市場の中核でもある) (2)「新興国の勃興」のもう一つの側面「グローバル市民社会」への、新興国エリート の適応 (⇒副作用伴う。エリート階層と多数の国民の経済水準・文化だけでなく実質的 に言語すら異なる。しかしこの新興エリート層に活力・競争力の源がある) *「アジアの活力」とは、「安い、均質な、労働力」だけではなく、それを使いこな し、グローバル化の中で活路を見出す「若い、活力があり、権限をもった、飛び 抜けたエリート層」の存在に依拠する⇒英米圏はこれを取り込むのが得意(特に 教育機関とメディア) *日本ではこの層を企業やメディア産業が、人材としても消費者・読者・視聴者と しても取り込むことができていない⇒ガラパゴス化の所以 (3)「日本型エリート」に求められているもの、日本社会の選抜・養成基準が、「グロ ーバル市民社会」に合致していない⇒既存エリート・指導層の成功体験が邪魔を する 6.メディアと教育 (1)グローバル市民社会の出現への対応にはメディアと教育の刷新が不可欠 (2)批判・検討がなされにくい二つの領域 (3)飛び抜けた才能の発掘⇒日本のメディアと教育が苦手とするところ (4)国内完結=多様性の縮減の弊害 (5)一部の大学は、均質性をあえて捨ててみる =「一律に捨てろ」などとは言っていない(「足並みを揃えた多様性」の矛盾 (6)国際報道の立ち遅れ=従来から:インターネットの出現で顕在化 (7)教育・メディアの「公的役割」をどうするか ⇒経営悪化・能力の低下でやがて担えなくなる/既に担っていない部分も 公的役割と営利事業が矛盾するなら、公的部門は「財団」に 公的役割を果たせない/果たす気がないのであれば純粋な私企業に (8)公共圏、議論の場、情報共有の場、意思疎通の円滑化、社会の紐帯 ⇒この機能を担うために、多様性と活力を殺しては逆効果 7.メディアと教育を変えて、どのような社会を作るか:「議論のできる社会」 (1)日本社会の次の段階:「出る杭を打つ」社会から「出る杭同士が鍛え合う」社会へ (2)価値を生む人を評価する社会へ (3)そうでなければ有為の人材は日本に来ない:諸外国の競争社会に疲れた人たちが 癒されに流れ着く、もてなしの心のある快適な鄙びた国で良いのか? 8.「市民社会」育成に政府が関与できるのか? (1)そもそも政府が旗を振ってできるものか⇒矛盾 (2)政策が意図して/せざるして発展を「阻害」している面があれば直すべき ①一定の方向性の提示 ②条件・環境の変化の社会への周知 ③これまでの社会通念・固定観念からの変化の必要性をアナウンス