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エルニーニョに関して

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エルニーニョに関して
東海大学 2008 年度
海洋科学研究Ⅰ
エルニーニョに関して
指導
轡田
邦夫
教授
東海大学海洋学部海洋科学科
5AOG1201
土屋 裕太
目次
1.
はじめに
2.
エルニーニョ、ラニーニャ現象について
2-1 エルニーニョ現象の定義
2-2 エルニーニョ現象と南方振動
2-3 エルニーニョ現象発生中の大気循環と海面水温の変化
2-4 エルニーニョ現象とテレコネクション
3.
論文について
3-1 エルニーニョ現象と地球温暖化
4.
今後の課題
5.
参考文献
1
1.はじめに
エルニーニョは海の現象をさす言葉で、日本とは地球の裏側にあたるペルーやエクアドル
で使われてきた言葉です。ペルーやエクアドルではスペイン語が話されており。スペイン語
で EL Nino と書き男の子(神の子)という意味で、逆に女の子は La Nina(ラニーニャ)だ
そうです。ペルーやエクアドルの漁師は、ペルー沖の水温が高くなる12月のクリスマスを
過ぎた頃から漁が休みになり、この季節的に水温が高くなる現象を「エルニーニョ」と呼んで
いたそうです。しかし、数年に一度、水温が低くなる季節になっても少しも下がらず、ペル
ー沖の海が暖かい水で占められている状態(平年に比べて2~5度程高い状態)のことも、
先に述べたのと区別せず「エルニーニョ」と呼ばれているそうです。
2.エルニーニョ、ラニーニャ現象について
2-1 エルニーニョ現象の定義
エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の中央部(日付変更線付近)から南米のペルー沿岸に
かけての広い海域で海面水温が平年に比べて高くなり、その状態が1年程度続く現象です。
これとは逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ば
れています。
エルニーニョ現象とラニーニャ現象には世界的な基準はなく、日本の気象庁の場合は、図
1にのせたようにエルニーニョ監視海域(南緯5度-北緯5度、西経 150 度-西経 90 度)の
海面水温の基準値(その年の前年までの30年間の各月の平均値)との差の5か月移動平均
値が6か月以上続けて +0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、-0.5℃以下となった
場合をラニーニャ現象と定義しています。図2に監視海域の海面水温の基準値との差をのせ
ています。図の折線は月平均値、滑らかな太線は 5 か月移動平均値を示していて、赤い斜影がエ
ルニーニョ現象、青い斜影がラニーニャ現象発生期間を表しています。上段が海面水温の基準値
との差で、下段が南方振動指数を表しています。
図1
エルニーニョ監視域
図3 エルニーニョ監視域の海面水温の基準値との差と南方振動指数
気象庁 HP から抜粋
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2-2 エルニーニョ現象と南方振動指数
南方振動(Southern Oscillation)とは熱帯の西部太平洋と東部太平洋の間の地上気圧が、
数年ごとにシーソーのように変動する現象のことを示し、さらにこの気圧の振動によって起
こる大気の大規模循環の変動も含めて用いられています。名づけ親であるウォーカーは、当
時世界各地の地上気圧の相関関係を調べられており、その結果インドネシア付近からインド
洋かけての地上気圧と東部熱帯太平洋の間に大きな負の相関関係があることを発見し(図3
に記載)
、南方振動と名づけられました。その当時、北大西洋振動や北太平洋振動といった現
象が北半球で発見されていましたので、それらとの混同を避けるために、それらの現象より
も南で発生することから「南方」振動と名づけられたそうです。
そして、その西部太平洋と東部太平洋の観測点であるタヒチとダーウィンの地上気圧の差
を指数化したものを南方振動指数といいます。赤道域の貿易風の強さの目安の一つであり、
正(負)の値は貿易風が強い(弱い)ことを表しています。
エルニーニョ現象と南方振動指数の関係は、南方振動指数が正(負)の値の時にラニーニ
ャ(エルニーニョ)が発生している。そのため、南方振動指数はエルニーニョ(ラニーニャ)
の発生の目安にもなっています。
図3、ダーウィンと世界各地の年平均海面気圧偏差の相関係数(10 分位)の分布
2-3 エルニーニョ現象発生中の大気循環と海面水温の変化
赤道付近の大気循環を支配しているウォーカー循環が存在し、通常状態では太平洋赤道域
の西側で上昇気流が発生し、東部のペルー沖の海で下降気流になり、海面付近を東から西へ
風が吹き(貿易風)
、上層では西から東へ時計回りに大気が流れています。これは太平洋赤道
域の海面水温場の影響を受けている為です。赤道域の水温場は一年を通して西側で高く、東
側で低くなっているため、先説明したような大気の循環が発生するのです。このウォーカー
循環の強さの変化が南方振動としても現われています(図6)
。この循環に強弱の影響を与え
るのがエルニーニョやラニーニャです。エルニーニョが発生中にはこの大気循環の力は弱く
なります。これは、エルニーニョが発生していると太平洋赤道域の東西の水温差が小さくな
り、東から西への貿易風が弱くなるからです。そのため、赤道域の西側にあった水温の高温
域が東へずれてくる為、気流の上昇域も東へずれてきます(図7)。ラニーニャの時は、これ
とは逆に東西の水温の差が大きくなり、大気の循環は強まり赤道域西側の高温域が西へずれ、
気流の上昇域も西にずれます。
エルニーニョとラニーニャの発生時の海面水温の図8、9を載せます。
図6、ウォーカー循環の模式図(通常時)
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図7、ウォーカー循環の模式図(エルニーニョ時)
図8、1997年エルニーニョ期間中の太平洋赤道域の海面水温(上)と平年差(下)
図9、1999年ラニーニャ期間中の太平洋赤道域の海面水温(上)と平年差(下)
2-4 エルニーニョ現象とテレコネクション
テレコネクションとは、何も関係なさそうな遠く離れた2地点の天候が同期して変動する
ような現象のことを呼び、テレコネクションの気候パターンをテレコネクションパターンと
呼びます。パターンの種類、季節によっても異なりますが、1 週間から数十日間の持続性を
もつものもあり、さらに季節は限られますが、数年~十数年もの長期間で見たとき、特定の
パターンの活動度が高いものもあります。
テレコネクションパターンの中に、PNA(Pacific North American)パターンと呼ばれて
いるものがあります。このPNAパターンが発生すると、北米大陸の西海岸の西側が低気圧、
東側が高気圧の配置となります。この気圧配置により、西海岸からアラスカ付近は南風偏差
となり、暖冬となる傾向があります。一方、北米大陸中央部では逆の気圧配置になり、北風
偏差のため、厳しい冬をもたらしやすくなるといわれています(図4)
。PNAパターンが発
生する要因としてエルニーニョ現象が関係しています。それは、通常西部赤道域にある高水
温域が中部~東部へ移動することによって、大気への移動が東へ移動することで発生すると
考えられています。
その他にも、日本に冷夏と暑夏をもたらす傾向があるPJ(Pacific Japan)パターンは、
エルニーニョとラニーニャ現象と関係があるといわれています。PJパターンとは、日本の
夏の気候を支配する、北太平洋の亜熱帯高気圧の西への張り出しの強弱のテレコネクション
のパターンです。この高気圧の西への張り出しによって、日本の夏が猛暑になりやすくなる
か、冷夏になりやすくなるかの影響がでます。このPJパターンとエルニーニョ、ラニーニ
ャ現象との関係とは。ラニーニャが発生した時に赤道域の西部熱帯域に暖水が蓄積し、海面
水温が平年より高いときに日本の上空の気圧は平年よりたかくなります。これは亜熱帯高気
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圧の発達が著しく、西に張り出すことに相当する。そのため、日本は暑夏になる傾向となり
ます(図5)
。逆にエルニーニョのときは、西部熱帯域の海面水温が平年より低くなり、気圧
の偏差が逆になります。
図4 エルニーニョ現象に伴う赤道域の熱源に対する対流圏中・上層の応答(PNA)
テレコネクションパターンの模式図(Horel and Wallace,1981)
図5
PJテレコネクションパターンの模式図
3. 論文について
3-1 エルニーニョ現象と地球温暖化
このエルニーニョ現象と地球温暖化については論文「地球温暖化で大気と海洋の相互作用
はどうなるの?」(花輪広雄、2006)より引用しまとめたものです。
エルニーニョは全球の天候に大きな影響を与えるため、地球温暖化時にエルニーニョの発
生がどのようになるのかは、重大な関心事です。現にこれまでも、大気海洋結合(気候)モ
デルを用いた多くの研究例があり。ここでは、まず、互いに逆の結論に至った二つの研究例
を紹介します。
一つ目は、米国プリンストン大学/海洋大気庁(NOAA)の流体力学研究所(GFDL)
のグループ(Knutson et al.)は、気候モデル中で大気のCO2濃度を意図的に増加させ、
現在のCO2濃度の2倍、または4倍したときの、エルニーニョやラニーニャの発生につい
て検討した。その結果、発生頻度は同じ程度に推移するが、その振幅は小さくなるというモ
デル結果を得ています。一方、ドイツのマックスプランク研究所(MPI)のグループは、
同所で開発した気候モデルを用いて、CO2を増加させたときのエルニーニョやラニーニャ
の発生について検討しました。結果は、GFDLのそれとは異なり、温暖化が進むとエルニ
ーニョやラニーニャは頻繁し、とりわけラニーニャの振幅が大きくなると結論を得ています。
モデル結果の観察から、この理由は、地球が温暖化すると、赤道域では表層混合層がより温
められ、一方、混合層下層では湧昇が強まるため、より低温になることが原因であるとして
います。
現在、温室効果ガスの排出シナリオに基づく気候モデルを用いた将来予測が、世界各国の
研究機関で数多く行われています。気候モデルのアウトプット資料は、世界中の研究者に公
開されており、さまざまな観点から解析が進められています。この成果一つとして、ごく最
近、地球温暖化時のエルニーニョやラニーニャの発生に関し、世界の19の気候モデルの結
果をまとめた報告が公表された(Oldeborgh et al)。それによると、モデル間で結果が大き
く異なり、将来のエルニーニョやラニーニャの発生頻度やその強さについてなんら明言でき
ないとしながらも、
「複数のモデルに対する今回の統計的解析に従えば、エルニーニョやラニ
ーニャに及ぼす地球温暖化の影響は、ほとんどないだろう」と結論付けています。
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今後の展開
今回のこのレポート提出と今期の勉強によってエルニーニョ現象の概要についてはあるて
いど理解できましたが、それは頭の中にあるものですので、実際に手を動かしデータを調べ
図などやグラフを作成し考え、自分がエルニーニョのなにをテーマにしたいのかを決め、そ
のテーマにあった論文を読み人に聞かれても説明できるようになりたいと思います。
5
参考文献
花輪 広雄(2006)
:地球温暖化で大気と海洋の相互作用はどうなるの?
気象庁(2005)
:異常気象レポート2005
佐伯
6-8pp
全体のページ数 pp
理朗(2001)
:エルニーニョ現象を学ぶ,成山堂書店,全体のページ数
パリティ編集者委員会
気象庁 HP
編(2003):地球大循環とエルニーニョ、全体のページ数 pp
http://www.jma.go.jp/jma/index.html
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