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変貌する米国コンサルティング業界 - Nomura Research Institute

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変貌する米国コンサルティング業界 - Nomura Research Institute
02-NRI/p76-77 03.1.16 17:49 ページ 76
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変貌する米国コンサルティング業界
齊藤義明
30%オーバー論の衝撃
業との統合によりメガファーム化
変化は、プロフェッショナルサー
し、またマッキンゼー、ベイン、
ビス産業全体の変動をも意味し、
今、歴史的な逆風にさらされてい
ボストン・コンサルティングなど
それは日本の知識サービス産業、
る。ITバブルが崩壊し、金融、ハ
の伝統的な戦略コンサルティング
ひいては企業の経営戦略一般へも
イテク、通信、M&A(合併・買
会社の多くは、アップ・オア・ア
影響するため看過できない。
収)などのコンサルティング需要
ウト(昇進か退社か)の人事制度
は大幅に減少した。また、エンロ
を一段と厳しく運用することによ
ン、ワールドコム、グローバル・
って、急速に組織のダウンサイジ
クロッシング、スイス航空といっ
ングを進めている。
米国のコンサルティング業界は
ROIの波
ベリングポイント( 旧KPMG
コ ン サ ル テ ィ ン グ )の C E O は 、
「次のテクノロジーの波はない。
た大型顧客の崩壊により、1件10
コンサルティング業界の1990年
億円以上の契約金の回収が困難に
代の売り物は IT であった。コン
あるのはROI(投資対効果)の波
なるなどの損失を被っている。
サルティングサービスに対する企
だけである」と断言する。「多く
加えて、そもそもこれらの大企
業の支出は、1990年代後半は過大
の顧客は今、事業をスタートアッ
業に対しコンサルティングを行っ
に膨張し、2002年には逆に過小投
プしようとしていない。顧客は次
ていながら、倒産を回避できなか
資に転じた。その成長率は1990年
の経済上昇サイクルまで投資しな
った、さらにはその不祥事を見て
代後半は20%以上だったが、2002
い。顧客の関心は IT投資のROI
見ぬふりをした、との不信と疑念
年度は2.6%と大幅な下方屈折を
に集中している」と言う。
が市場に渦巻いている。
起こしている。
今や、eビジネスコンサルティ
こうした苦渋の状況をとらえ、
キャップジェミナイ・アーンス
ト・ヤングのCEOも同様に、「顧
ング強化のために設立した新規組
英国エコノミスト誌が、米国のコ
客はテクノロジーとコンサルティ
織は撤退や縮小を余儀なくされ、
ンサルティング業界は30%のオー
ングに永遠にお金を使い続けると
またCRM、SCM、EVA(経済的
バーキャパシティであるとの評論
いう仮説は幻想だとわかった。コ
付加価値)などいかなる3文字英
を発表した。同誌はまた、インタ
ンサルティング業界はもはや20%
語のソリューションでさえも不況
ーネット検索技術の発達と経営理
成長を期待できない。これから起
の突破口足りえていない。
論の普及によって戦略コンサルタ
こるのは淘汰・統合である」との
このため、ビック5系コンサル
ントは用無しになると、構造的問
見方を持つ。彼もまた、「顧客は、
ティング会社は、ITサービス企
題点をえぐった。このような構造
信頼性、ROI、リスクの最小化な
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知的資産創造/2003年 2月号
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
Copyright © 2003 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
02-NRI/p76-77 03.1.16 17:49 ページ 77
ど、いくつかの基本的な価値に焦
きか、という今日的課題を扱った。
プという戦略ブティック(スタッ
点を合わせている」と言う。
助教授自身は、たとえ株式公開し
フ約200人)が成長している。こ
たとしても、パートナーシップ型
こは企業の知的財産の評価と活用
の強みを活かす経営が必要との見
にかかわるコンサルティングに特
コンソリデーション(企業統
解を持つ。また、今は戦略コンサ
化している。エンロンの債権者た
合)も業界変動を読むキーワード
ルティングにとって試練の時であ
ちから雇われ、その知的財産価値
である。
り、Be Close to Client(顧客に密
を分解・評価し、最も有効な活用
着)、Be Efficient(効率的経営)
方策までを提案するために選ばれ
に徹することが重要と言う。
た会社である。このような独自の
企業統合と混乱
PwCコンサルティング+IBM、
ATカーニー+EDS(エレクトロ
ニック・データ・システムズ)な
どの企業統合が進んでいる。だが、
ノウハウは、経済の下降期にも需
突破口
要が増大する。
ケネディ・インフォメーションの
現場の声を聞くかぎり、米国の
ワシントン DCにあるCEB(ス
リサーチャーは、「戦略コンサル
コンサルティング業界が厳しい状
タッフ約700人)という会員制リ
ティング会社の多くは、IT サー
況に直面しているのは疑いない。
サーチビジネスも注目される。会
ビス企業との統合によりブランド
当面は、効率的な経営、顧客への
員企業のエグゼクティブが互いに
再構築を図っているが、他方で顧
さらなる密着が重要だが、その先
ベストプラクティスを共有し合
客は戦略コンサルティングと IT
の不確実な未来を率先先導するの
う、新しいタイプの情報ビジネス
サービスの一括提供を嫌ってい
がコンサルタントのコンサルタン
モデルである。ここでは1つのリ
る」との傾向を示した。
トたる価値であろう。
サーチコミュニティに数百社が加
MBA(経営学修士)の量産に
入しており、規模や相互交流の効
タントは、統合親会社であるEDS
より、一般的な戦略経営ツールは、
果が圧倒的に大きい。CEBのビジ
の失敗を引き立て役にして、自ら
米国の管理者なら今や皆が知って
ネスモデルは、コンサルティング
のコンサルティングを売り込んで
いる。インターネットの普及によ
業界の構造変革に対応した1つの
いる。「EDSは特定のサービスや
り、情報の収集・分析も容易にな
例である。
製品を売り込むよううるさく言う
った。顧客が今求めているのは、
コンサルティング業界が、この
が、私は自分の身の危険を賭けて
強みに特化したコンサルティング
たびの逆風プロセスを経験して、
も、あなたに違う提案をします」
サービスである。ただし、それは
どのように変貌するのか。コンサ
と言い、そうした営業手法が顧客
3文字英語の流行ソリューション
ルティング会社自身にアントレプ
に受けているという。
ではない。昨日までの流行分野で
レナーシップが求められる時代が
ハーバード大学のアシシ助教授
はない領域ややり方、時代の潮が
到来している。
は、コンサルティング組織はパー
180度変わったことに対応したビ
トナーシップモデルであるべき
ジネスモデルである。
事実、ATカーニーのコンサル
か、株式公開会社モデルであるべ
例えば、シカゴのインテキャッ
齊藤義明(さいとうよしあき)
NRIアメリカ・ワシントン支店長
変貌する米国コンサルティング業界
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