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助動詞の意味・用法を理解しよう 古文 助動詞の公式
古文 助動詞の公式 助動詞の意味・用法を理解しよう ⒜上に「人物+に」がある→受身が多い 「る・らる」の意味の取り方 ていたり、同じ形なのに違う意味を表す助動詞があったりして、なか しうと 【例文】ありがたきもの。 舅 にほめらるる婿。 めったにないもの。舅にほめられる婿。 (枕草子) ⒝身分の高い人物が主語である→尊敬が多い 新大納言は顔色が変わって、さっとお立ちになったが け しき いが明確になってくるはずである。これから紹介する公式は、活用表 【例文】新大納言気色かはりて、さつと立たれけるが、(平 家物語) 現代語には見られない用法が多いため、そのまま丸暗記するのがよい。 ⒞心情を表す動詞に付いている→自発が多い 暗 記 は 苦 手 だ と い う 人 も、 面 倒 が ら ず に き ち ん と 覚 え て も ら い た い。 入試レベルの文章読解に挑むためには、基礎をしっかりと身につけて 我ながら得意にならずにはいられなかった。 【例文】我ながら心おごりせられし。 ひつ す いることが必須条件なのである。 実際のところ、今回のカリキュラムを消化できれば、古文はずいぶ ん読みやすくなるはずである。 ⒟下に打消語「ず・じ」を伴う→可能が多い 【例文】さらにこそ信ぜられね。 まったく信じることができない。 【例文】弓矢して射られじ。 弓矢で射ることはできないだろう。 (竹取物語) (大鏡) (大鏡) の丸暗記と同じくらい、実際の文章を読み解く際に役立つことだろう。 ので、それらを関連づけて理解すれば、助動詞相互の意味や用法の違 ツを伝授しよう。意味の取り方や見分け方にはいくつかの法則がある な か 一 筋 縄 で は い か な い。 そ こ で 今 回 は、 助 動 詞 の 文 法 を 覚 え る コ マスターすることである。しかし、一つの助動詞が複数の意味を持っ 助動詞の学習において重要なのは、それぞれの意味・活用・接続を 予習編見本 スタンダード 高2 中高一貫コース 国語 メインシリーズ LC2091HR1Y2BZ-001 ※実際の教材(レギュラー)では現代文・古文・漢文がありますが、ここでは古文のみを掲載 しております。 LC2091HR1Y2BZ-002 ⒜受身 人 ―物などの動作主体が「……に」で示されるという形になっ ている。ただし、この句は省略されることも多い。 ⒝尊敬 貴 ―人が主語であるのに、補助動詞「給ふ」が使われていない ことがある。そういうときは、たいてい助動詞「る・らる」が尊敬 の意で用いられている。なお、この助動詞が他の尊敬語といっしょ に使われるときには、次のように解釈される。 れ給ふ・ ― られ給ふ……受身か自発 ― 仰せらる・おぼし召さる ……ほとんど尊敬 おぼさる ……ほとんど自発 ⒞自発 「 ―思ふ・嘆く・驚く」など心情を表す語や、「笑ふ・泣く」 などそれに準ずる動詞につく。ただし、文脈の確認を忘れずに。 「す・さす・しむ」の意味の取り方 ⒜他の尊敬語との併用→尊敬が多い 【例文】とくこそ試みさせ給はめ。 すぐにお試しになるのがよろしいでしょう。 ⒝単独使用→必ず使役 させ給ふ・ ― しめ給ふ ― (源氏物語) (徒然草) 実 ―際には次の形になる。尊敬「る・らる」とは併用しない。 人に食べさせることはない。ただ一人だけで食べた。 【例文】人に食はすることなし。ただ一人のみぞ食ひける。 ⒜尊敬 せ給ふ・ ― せおはします・ ― させおはします ― せまします・ ― させまします・のたまはす ― ただし、これらのパターンがいつも《尊敬+尊敬》を表すわけでは ない。最上級の身分の人が主語であるときは、たいていこの最高敬語 (枕草子) が使われるが、ときには《使役+尊敬》の場合も見られる。 【例文】題出して、女房にも歌詠ませ給ふ。 題を出して、女房にも和歌を詠ませなさる。 LC2091HR1Y2BZ-003 反実仮想の構文 (源氏物語) ましかば ― ませば ― ……まし=もし ― だったら……だろうに せば ― ば (後半の結果部分は省略される場合がある) ― ⒝一人称以外が主語→推量が多い かう ろ ほう 【例文】少納言よ、香炉峰の雪はいかならむ。 少納言よ、香炉峰の雪はどのようであろうか。 (枕草子) 【例文】かのもとの国より迎へに人々まうで来むず。 ( 竹取物語) あの以前いた国から迎えに人々がやって来るだろう。 えんきよく ⒞〈む+体言〉→婉 曲 ・仮定が多い 【例文】思はむ子を法師になしたらむこそ心苦しけれ。 ( 枕草子) かわいいと思うような子を法師にしたとしたら、それは気の毒である。 ⒜意志 こ ―の公式には例外がある。すなわち受身や自発を表す助動詞 「る・らる」といっしょに使われているときである。 (古今和歌集) あ わ た だ し く 散 る 桜 が も し 世 の 中 に ま っ た く 存 在 し な か っ た な ら、 春 【例文】ながらへばまたこの頃やしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき (百人一首) この和歌において「しのぶ」という動作の主語は作者すなわち「私」 だが、自発を表す「る」(の未然形)が付いているため、〈もし生きな がらえたなら、現在のことが将来はなつかしく思い出されるのだろう 「む・むず」の意味の取り方 ⒜一人称(私・我々)が主語→意志が多い 合によってはどちらにも訳せることがある。 ⒞婉曲・仮定 こ ―れは「む」に付くはずの体言を省略した形になるこ とも多い。なお、婉曲と仮定との区別は必ずしも明確ではなく、場 になる。「なつかしく思い出そう」ではない。 か。つらかった昔のことも今となっては恋しいのだから〉という意味 (竹取物語) 「それを取って差し出した人には願い事を叶えよう」とおっしゃる。 「さあ、ぼた餅を作ろう」と言ったのを、 もち 【例文】 「いざ、かいもちひせむ」と言ひけるを、 ( 宇治拾遺物語) 【例文】 「それ取りて奉りたらむ人には願はむ事を叶へむ」とのたまふ。 かな の気分はのどかだろうに。 【例文】世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし もし昼間だったら、きっとすき間から拝見するだろうに。 【例文】昼ならましかば、のぞきて見奉りてまし。 144424443 LC2091HR1Y2BZ-004 (宇津保物語) 「む」が係助詞「こそ」の結びで已然形「め」になっているときは、 適当〈……するのがよい〉の意を表す場合が多い。 〔例〕花を 見 て こ そ 帰 り 給 は め 。 〔訳〕花を見てお帰りになるのがよい。 もちろん例外もあるので、実際に訳して確かめる必要がある。 なお、文末ではない箇所に使われた「こそあらめ」は、 〈よいだろ に立つはず。 う が 〉 と い う 意 味 に な る こ と が あ る。 慣 用 句 と し て 覚 え て お け ば 役 推量の助動詞の使い分け ⒜む 強 ―調→べし (肯定文=……だろう・……しよう) じ 強 ―調→まじ(否定文=……ないだろう・……まい) 【例文】勝たむと打つべからず。負けじと打つべきなり。(徒 然草) 勝 と う と 思 っ て 碁 を 打 っ て は い け な い。 負 け ま い と 思 っ て 打 た な け れ ばならない。 ⒝らむ=眼前にない現在の事実を想像する 【例文】いかにおぼつかなく思ひつらむ。 どんなに心もとなく思っているだろう。 けむ=過去にあった事実を想像する 【例文】右大臣の御歳五十七、八にやおはしましけむ。 (大鏡) (大和物語) (竹取物語) 右大臣殿のご年齢は五十七か八でいらっしゃっただろうか。 めり=眼前にある事実を推測でとらえる 【例文】子になり給ふべき人なめり。 子におなりになるはずの人であるようだ。 らし=確かな根拠に基づいて推定する 【例文】春過ぎて夏来たるらし白妙の衣ほしたり天の香具山(万 葉集) 春が過ぎて夏が来たらしい。真っ白な衣がほしてある。天の香具山に。 よど かも なり(終止形接続)=音声から推定する(および伝聞情報) 【例文】吉野なる夏美の河の川淀に鴨そ鳴くなる山陰にして(万 葉集) 吉野にある夏美の川のよどみで鴨が鳴いているようだ。山の陰に隠れて。 LC2091HR1Y2BZ-005 ⒝伝聞推定の「なり」は断定「なり」との識別が必要である。両者 「き」と「けり」の用法の違い ⒜き=直接経験した過去の出来事を述べる を見分けるには終止形接続か連体形接続かが決め手になるのだが、と きにはこの方法を使えないこともある。例えば、四段活用動詞につい 【例文】世の中飢渇して、あさましきこと侍りき。 (方丈記) (方丈記) (徒然草) この場所に住み始めた時は、ほんのちょっとの間だと思ったけれど、 ⒝けり=伝聞によって知った過去の出来事を述べる 【例文】この所に住み始めし時は、あからさまと思ひしかども、 世の中に飢饉が起こって、ひどく悲惨なことがありました。 き きん け かつ ているとき。そういう場合は文脈から判断する。概して「鳴く・言ふ・ 聞く・音・声」など聴覚に関する語がいっしょに使われているときの 「なり」は、伝聞推定である確率が高い。 一方、視覚と関係が深いのは「めり」である。これは、ある事実を 目で確認しているにもかかわらず、自信をもって言い切るのを避ける 事実を頭の中で思い浮かべるときの助動詞。見えているか見えていな 【例文】城陸奥守泰盛はさうなき馬乗りなりけり。 ときに使われる。逆に、現在推量「らむ」というのは、目の前にない いかが、二つを分けるポイントである。 城陸奥守泰盛は肩を並べる者のない馬術家だったそうだ。 「興味深く感じられた」とある人がおっしゃったというのが、たいそう (徒然草) 【例文】「をかしく覚えし」と人の語り給ひける、いとをかし。 面白い。 ⒜「き」の用法 話 ―し手がじかに経験した出来事をふつうに語るとき に使われる。それゆえ日記や随筆に多く見られる。 ⒝「けり」の用法 「 ―今は昔……」で語られるような昔話ふうの作品 とら に典型的に用いられる。ただし、これを伝聞過去の助動詞として捉 えるだけでは、じつは不十分である。次の例を見てみよう。 LC2091HR1Y2BZ-006 あ がいぜん 本来「つ・ぬ」は完了を表すが、推量(意志)の助動詞といっしょ に使われたときは、 その推量 (意志)内容の蓋然性 (=実現する可能性) 【例文】逢ひ見ての後の心に比ぶれば昔はものを思はざりけり (百人一首) を強める働きがある。これを確述用法あるいは強意用法という。文字 当に」「確かに」「まさに」などの言葉を補ってやればよいだろう。未 あ の 人 に 逢 っ て か ら の こ の 切 な い 気 持 ち に 比 べ る と、 以 前 は そ れ ほ ど たとえ自分が直接経験した事実であっても、それを偶発的に思い出し 来のことを推量する「む」や「べし」と併用されているときは、完了 た場合は、 「き」ではなく「けり」で表現されていた。こういう〈気 の意味合いを含まないことが多いが、全般的にいえば、「……してし 通り〈確かなこととして述べる〉わけであり、訳すときには「きっと」「本 づ い て い な か っ た 事 実 の 発 見 〉 は 驚 き や 感 動 の 気 持 ち を 伴 い や す い。 まいそうだ・……してしまっただろう」などと訳される用例もしばし 物思いをしていたわけではなかったのだ。 そのようにして派生したのが「けり」の詠嘆用法である。圧倒的に和 ば見られる。 み いだ 歌に見出されることが多く、過去の意味をほとんど含まずに詠嘆の感 「てむ・なむ」は、可能の意味を含むことがある。 感じがする。 お 見 捨 て 申 し 上 げ て 月 に 行 く の は、 本 当 に 空 か ら 落 ち て し ま い そ う な (竹取物語) 【例文】見捨て奉りて(月に)まかる、空よりも落ちぬべき心地す。 船に乗ろうとする。 「満潮になった。きっと風も吹くにちがいない」と騒ぐので、いよいよ (土佐日記) 【例文】「潮みちぬ。風も吹きぬべし」と騒げば、船に乗りなむとす。 「つ・ぬ」+推量「む」 ― 情〈……だなあ〉だけを表す用例もある。 「つ・ぬ」の確述用法 てむ・なむ 「つ・ぬ」+推量の助動詞→きっと……だろう(しよう) つべし・ぬべし 「つ・ぬ」+現在推量「らむ」 ― 「つ・ぬ」+過去推量「けむ」 ― 「つ・ぬ」+推量「べし」 ― 「つ・ぬ」+反実仮想「まし」 ― てまし・なまし つらむ・ぬらむ てけむ・にけむ ん と降りることができるだろう。 〔例〕かばかりになりては飛び下るとも降りなむ。 (徒然草) 〔訳〕これくらいの高さになっていれば、飛び下りたとしても、ちゃ LC2091HR1Y2BZ-007 完了「つ」 「ぬ」の連用形用法 ⒜てき・てけり →「て」は完了の連用形 (訳 ……してしまった) ⒝にき・にけり・にたり→「に」は完了の連用形 断定「なり」の連用形用法 に+係助詞+あり(侍り・候ふ・おはす)→「に」は断定 *係助詞が使われなかったり、補助動詞「あり・侍り」などが省略 されることもある。 (徒然草) る所にて夜ふくるまで連歌して、ただ一人帰りけるに…… 【例文】「一人歩かん身は心すべきことにこそ」と思ひける頃しも、あ 「一人歩きをするような身にとっては、気をつけなければならないこと (古今和歌集) 【例文】うたたねに恋しき人を見てしより夢てふものは頼みそめてき 仮 寝 の 夢 に 恋 し い 人 を 見 た 時 か ら、 夢 と い う も の を 頼 み に し 始 め て し この公式は実際には次のような形になる。 たった一人で帰った時に…… で あ る ぞ 」 と 思 っ て い た 頃、 あ る 所 で 夜 が ふ け る ま で 連 歌 を つ く っ て、 かかと まった。 くつ (宇治拾遺物語) 【例文】沓の 踵 を刀にて斬りたるやうに引き切りて取りてけり。 をみなへし 沓の踵を刀で斬ったように引き切って取ってしまった。 三つ目の形が補助動詞を伴わない場合、すなわち単に「にて」という 〔例〕……にやあらむ ……にこそありけれ ……にて侍り 名前に感心して折り取っただけなのだ、女郎花よ、私が堕落してしまっ 形で現れる場合は、同形の格助詞との識別が難しい。その際、「…… (古今和歌集) 【例文】名にめでて折れるばかりぞ女郎花われ落ちにきと人に語るな たなどと人に語ってくれるな。 「……によって・……において・……として」と訳されるなら格助詞「に であって」と訳されるなら《断定の助動詞+接続助詞「て」》であり、 (徒然草) だということもわかるはず。 「なほ同じ泊にあり(=まだ同じ港にいる)」が、じつは例外(格助詞) て」であると考えればよい。文脈重視を心がければ、公式に合致する (土佐日記) た び た び 強 盗 に あ っ た た め に、 こ の 名 を( 人 々 が ) つ けて し ま っ た と 【例文】たびたび強盗にあひたるゆゑに、この名をつけにけるとぞ。 いうことだ。 【例文】皆荒れにたれば、 「あはれ」とぞ人々言ふ。 すべて荒れてしまったので、「ひどい」と人々が言う。 LC2091HR1Y2BZ-008 よく使われる音便形の助動詞 ⒜伝聞推定「なり」に続くもの ななり →断定「なり」 (本来は「なるなり」) 連用形を使った仮定条件 ⒜ずは=もし……でないならば (古今和歌集) 【例文】あひ見ずは恋しきこともなからまし音にぞ人を聞くべかりけ も し 会 わ な け れ ば 恋 し い こ と も な い だ ろ う に。 う わ さ で だ け 恋 人 の こ る たなり →完了「たり」 ( 〃 「たるなり」) とを聞くべきだったなあ。 べかなり→推量「べし」 ( 〃 「べかるなり」) ざなり →打消「ず」 ( 〃 「ざるなり」) ⒝眼前推量「めり」に続くもの ⒝べくは=もし……すべきならば・もし……できるならば かり なめり →断定「なり」 (本来は「なるめり」) 【例文】行く蛍雲の上まで往ぬべくは秋風吹くと雁に告げこせ (伊勢物語) 過 ぎ 行 こ う と し て い る 蛍 よ、 も し 雲 の 上 ま で 行 く こ と が で き る な ら ば、 秋風が吹いていると雁に告げてほしい。 ⒞たくは=もし……したいならば べかめり→推量「べし」 ( 〃 「べかるめり」) ためり →完了「たり」 ( 〃 「たるめり」) ざめり →打消「ず」 ( 〃 「ざるめり」) はつ ⒜⒝ いずれも連体形活用語尾「る」の撥音便「ん」が表記されてい ― ない形である( 「ん」が表記される場合もある)。このように伝聞 【例文】屋島へ帰りたくは、一門の中へ言ひ送つて、三種の神器を都 へ返し入れ奉れ。 推定「なり」や眼前推量「めり」のすぐ上にある語が音便形(の 無表記)になるという現象は、動詞や形容詞についてもしばしば もし屋島へ帰りたいならば、(平家)一門の中へ連絡して、三種の神器 活用語のほとんどは《未然形+接続助詞「ば」 》という形で順接の仮 (平家物語) 見られる。 を都にお返し申し上げなさい。 あはれなるめり→あはれなんめり・あはれなめり 定条件をつくるが、形容詞や助動詞「ず」 「べし」「たし」などに限っ あるなり →あんなり・あなり これら撥音便化する語の共通点は、ラ変型(あるいは形容詞型) ては《連用形+係助詞「は」 》という形をとるのが普通である。なお 多かるめり →多かんめり・多かめり で活用することである。 中世以降は「ずんば」「べくんば」も使われた。 LC2091HR1R2BZ-001 古文 助動詞の公式 みかど そで ぬ (更級日記) (大鏡) (大鏡) (伊勢物語) (落窪物語) ⑸人々、足どもいと白し。盗人にはあらぬなめり。 ⑷あはれに言ひ語らひて泣くめれど、涙落つとも見えず。 ⑶この帝、延長元年七月四日に生まれさせ給ふ。 ⑵悲しくて人知れずうち泣かれぬ。 ⑴控へ給へる人々も皆鎧の袖をぞ濡らされける。(平 家物語) よろひ 問一 次の各傍線部を口語訳せよ。 ⑹女をば草むらの中に置きて逃げにけり。 ⑺行成朝臣の取りなしたるにや侍らむ。 ⑻海賊は夜歩きせざなりと聞きて 問二 次の文章を読み、あとの問に答えよ。 しき ぶの たい ふ (枕草子) (土佐日記) お まへ ( 光 源 氏 は 息 子 の 夕 霧 に ) *寮 試 受 け さ せ ⑴ む と て、 ま づ 我 が 御 前 だい ない き かた にて試みさせ給ふ。例の *大将、左大弁、式部大輔、左中弁などばか い りして、(夕霧の)御師の大内記を召して、史記の難き巻々、寮試受 くま け⑵むに(試験官の)博士の *返さふ⑶べき節々を引き出でて、一渡 つま り 読 ま ⑷ せ 奉 り 給 ふ に、 至 ら ぬ 隈 も な く 方 々 に 通 は し 読 み 給 へ る 様、 たれ おとど 爪じるし残らず、あさましきまでありがたければ、さるべきにこそ * (源氏物語) おはしけれと、誰も誰も涙落とし給ふ。大将はまして「 *故大臣⑸お はせましかば」と聞こえ出でて泣き給ふ。 *寮試=大学寮の試験。 *大将=夕霧の伯父。 *返さふ =〈繰り返し質問する〉の意。 *爪じるし=減点箇所に爪で つける印。 *故大臣=「大将」の父。夕霧の祖父にあたる。 ⒤傍線⑴~⑷の文法的意味をそれぞれ次の中から選び、記号を記せ。 ア使役 イ尊敬 ウ可能 エ推量 オ意志 カ婉曲 ⑴= ⑵= ⑶= ⑷= LC2091HR1R2BZ-002 ⅱ傍線 ⑸のあとに補うのに最適な語句を次の中から選び、記号を○で 囲め。 ア嘆き給はむ イいみじう思すまじ ウあはれみ給はまし エ誇りかに御覧じけむ わり ご 問三 次の文章を読み、あとの問に答えよ。 今日 *破籠持たせてきたる人、 「波の立つなること」とて詠める歌、 行く先に立つ白波の声よりもおくれて泣かむ我やまさらむ と ぞ 詠 め る。 こ の 歌 を こ れ か れ あ は れ が れ ど も、 一 人 も *返 し せ ず。 ⑴しつべき人も混じれれど、これをのみ *いたがり、物をのみ食ひて 夜 ふ け ぬ。 こ の 歌 主、 「 *ま だ ま か ら ず 」 と 言 ひ て 立 ち ぬ。 あ る 人 の わらは 子の童なる、 「 *まろ、この歌の返しせむ」と言ふ。驚きて、「いとを かしきことかな。詠み⑵てむやは。⑶詠みつべくは、はや言へかし」 (土佐日記) と言ふ。 「まからずとて立ちぬる人を待ちて詠まむ」とて求めけるを、 夜ふけぬと⑷にやありけむ、やがて往⑸にけり。 ひのき *破籠=檜で作った弁当箱。 *返し=返歌。 *いたがり =賞賛して。 *まだまからず=まだ帰るわけではありません。 *まろ=私(一人称) 。 ⒤傍線⑴⑶をわかりやすく口語訳せよ。 ⑴= ⑶= ⅱ傍線⑵⑷⑸を例にならって文法的に説明せよ。 例推量の助動詞「む」の終止形 ⑵= ⑷= ⑸= LC2091HR1R2BZ-003 問一 ⑴主語は「控へ給へる人々」であるから、尊敬語の対象となる。 ⑵「悲しくて」 「泣く」など心情を表す言葉がヒントになる。こう いう場合の助動詞「る・らる」は自発を表す。末尾の「ぬ」が打消で はなく完了であることにも気をつけよう。 ⑶主語は帝。最上級の身分の人物である。したがって、「させ給ふ」 は最高敬語《尊敬+尊敬》であると考えるのが自然。 ⑵すぐ下には「時」が省略されている。 「む」が体言に続く場合は 婉曲(仮定)用法。 ⑶ここは〈博士が質問すると予想される部分〉の意になる。 ⑷最高敬語であれば、二つの尊敬語がくっついているはず。ここで は謙譲語「奉る」が割り込んでいる。 ⅱ反実仮想の構文「……ましかば……まし」を思い出すことがポイ ント。「いみじ」や「誇りか」などの言葉に惑わされないように。 問三 ⒤⑴サ変動詞「す」は「詠む」の代わりに使われている。その ⑶「べし」が《連用形+は》という形になっているときは、順接の 下の「べし」は可能の意味で訳すのがよい。 ⑸「に」の下に補助動詞「あり」が見えるので、この「に」は断定 仮定条件〈もしも……ならば〉を表す。確述用法「つべし」にも気を ⑷「めり」は眼前推量〈……のように見える〉を表す。 の助動詞だと判断できる。未然形「あら」についている「ぬ」は打消 つけよう。 動詞「往ぬ」に助動詞「けり」が付いているのである。 ⑸ は「 に け り 」 と い う 形 で あ る が、 じ つ は 完 了 の 助 動 詞 で は な い。 り」が続いているときは、断定を表すことが多い。 ⑷「にやありけむ」のように、すぐあとに係助詞および補助動詞「あ ⅱ⑵「てむ」は確述(強意)の助動詞「つ」+推量の助動詞「む」 。 の助動詞。また末尾の「なめり」は、断定「なり」の音便形「なん」 の無表記に眼前推量「めり」がついたものである。 ⑹「にけり」は《完了の助動詞+過去の助動詞》。これは「……し てしまった」と訳せばよい。 ⑺「に」の下に係助詞「や」があり、さらにその下に補助動詞「侍 り」がある。したがって、この「に」は断定の助動詞〈……である〉 だと判断できよう。口語訳にあたっては、丁寧表現にすることと、疑 問一 ⑴控え ていらっしゃった人々も皆鎧の袖を涙で濡らしなさった。 ひそ ⑵悲しくて密かに泣かずにはいられなかった。 全訳 に伝聞推定の「なり」がついたもの。ここでは「と聞きて」と続くの ⑶この帝は、延長元年七月四日にお生まれになった。 問文にすることを忘れないように。 で、推定ではなく伝聞の意で解釈すべき。 ⑻「ざなり」は音便形「ざんなり」の無表記。これは打消の助動詞 問二 ⅰ⑴「寮試受けさせむ」は光源氏が心の中で思った言葉。した ⑷しみ じみと語り合って泣くようだけれど、涙が落ちているようには 見えない。 がって、 「私は息子夕霧に寮試を受けさせよう」と解釈すればよい。 LC2091HR1R2BZ-004 ことで、まずご自身の前で模擬試験を行わせなさる。いつものように 問二 (光源氏は息子の夕霧にいよいよ)寮試を受けさせようという ⑻海賊は夜に外出をしないそうだと聞いて ⑺行成朝臣が取りはからったのでしょうか。 ⑹女を草むらの中に置いて逃げてしまった(そうだ)。 ⑸この人たちは、足がたいそう白い。盗人ではないようだ。 てしまったということだった。 ふけたからだろうか、(その人は)そのまま(=席を立ったまま)帰っ た人(が戻るの)を待ってから詠もう」といって探したけれど、夜が さい」と言う。(するとその子は)「帰るのではないといって (席を)立っ いことだな。本当に詠むつもりなのか。詠めるのなら、はやく言いな の 返 歌 を し よ う 」 と 言 う。 ( 私 は ) 驚 い て、 「(それは)たいそう面白 大将と左大弁と式部大輔と左中弁などぐらいが同席して、(夕霧の) 師である大内記をお呼びになり、史記の難しい巻々で、(実際に)寮 試を受けるような時に(試験官の)博士が繰り返し質問しそうな部分 ⑶お生まれになった ⑷泣くようだけれど 問一 ⑴濡らしなさった ⑵ついつい泣いてしまう もすんなりとお読みになった様子は、(減点を示す)爪じるしが残る ⑸盗人ではないようだ ⑹逃げてしまった(そうだ) を抜き出して、一通り読ませ申し上げなさると、隅々まであれもこれ こともなく、驚くほど類まれ(な成績)であるから、(夕霧は)そう ⑺取りはからったのでしょうか たぐい いう天才でいらっしゃったのだと、誰もが皆感涙をこぼしなさる。と ⑻夜に外出をしないそうだ 問二 ⒤⑴オ ⑵カ ⑶エ ⑷ア ⅱウ だれ くに大将は、 「もし亡き大臣が生きておられたなら……」と申し上げ てお泣きになる。 問三 ⒤⑴確かに詠めそうな人も混じっていたけれど ⑸ナ変動詞「往ぬ」の連用形活用語尾 ⑷断定の助動詞「なり」の連用形 ⅱ⑵確述(強意)の助動詞「つ」の未然形 ⑶もし本当に詠めるのならば 問三 今日、弁当箱を(召使に)持たせてきた人が、「波が立つとい うこと(を和歌にした) 」といって詠んだ歌は、 行く 先に……〈行く先に立つ白波の音よりも、あとに取り残され て泣く私の声の方が大きいだろう〉 と詠んだ。この歌を誰も彼もが賞賛するが、一人も返歌をしない。確 実に返歌ができそうな人も混じっていたけれど、この歌ばかりを賞賛 し て、 料 理 ば か り を 食 べ て( い る う ち に ) 夜 が ふ け た。 こ の 歌 を 詠 んだ人が、 「まだ帰るわけではありません」と言って(席を)立った。 ある人の子どもで(まだ元服前の)児童である者が、「僕が、この歌