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5 - 経済産業省

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5 - 経済産業省
5
政府等におけるリサイクル製品の調達促進
5−1 ドイツ
ドイツにおいては、リサイクル製品を優先して調達する直接的な制度はない。
しかし、ドイツ・循環経済法は、第 37 条「公共機関の義務」において、第 4 条「循環経
済の基本原則」及び第 5 条「循環経済の基本義務」を考慮し、環境配慮型の調達に関して
次のように述べている。
… 材料及び消費財を調達または使用する場合並びに建設事業及びその他の発注業務にお
いて、寿命、修理のしやすさ及び再使用または利用の面で優れ、比較的廃棄物の発生また
は有害成分が少ない製品または利用廃棄物を用いた再生品を使用することの可否及びその
程度に関して可能か否かについて検討しなければならない。
(循環経済法 第 37 条
一部抜
粋)
連邦政府及び自治体等の公共機関は上記の 37 条を受ける形で、リサイクル製品を含めた
グリーン調達を促進する取り組みを行っている。
連邦レベル及び州レベルともにグリーン調達を義務づけする正規の法制度はないが、連
邦レベルでは、連邦環境庁が主体となって係る環境ラベル「ブルーエンジェル」マークを
各省庁が調達・購入する際に尊重して製品の選択を行うことが申し合わせされていると言
うことである(ドイツ・エコインスティチュート)。
また、州レベルでは各州独自のグリーン調達に関する覚書(訓令)等を定め取り組んで
いる事例がある(下記のノルトラインヴェストファーレン州の例を参照)。
ノルトラインヴェストファーレン州における公共発注時における環境保護の配慮(概要)
(州首相・大臣名における訓令)
環境負荷の削減及び製品のライフサイクル全体に視野を置いた経済的な負担の低減を目
標とし、発注手続において環境にやさしい製品及びプロセスの開発、上市及び普及を、行
政機関が手ほどきし、または加速させることができる。公共機関がグリーン購入を促進す
れば、行政機関の莫大な調達量により、環境にやさしい製品の市場規模を大幅に拡大する
ことが可能である。
以上の理由からノルトラインヴェストファーレン州の各局及び各機関は、調達に際して
環境へのやさしさという観点への留意を強化することを自ら義務づけするものである。
1
建設工事を除く履行対象物の請負発注規則において履行対象に関する一般入札、指名
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入札及び入札競争に際しては、下記の手順によるものとする。
①請負発注書においてまたは引合書において、可能な限り環境にやさしい製品やプロセス
を積算書の中で提案させること。とくに、環境マーク(ブルーエンジェルマーク等)を
つけた製品を考慮する。また、入札等の際、積算書や落札時の評価においては他の必要
条件のみならず環境にやさしいという観点の評価も合わせて導入されることを入札事業
者に注意を喚起しなければならない。
②環境にやさしい製品やプロセスは、価格的には少し安いが環境にやさしいい性質をもた
ない製品やプロセスと比較した場合、発注内容に見合っている場合において、より経済
的だと見なされる場合がある。
③環境にやさしい製品とはとりわけ「環境マーク」がつけられている製品である。環境マ
ークは連邦環境庁によって、専門家のヒアリングを学術的に行い、環境適合性のみなら
ず、その使用機能性及び安全性についても詳しくテストした結果認定されたものである。
(1985 年 3 月制定)
5−1−1
ドイツにおけるグリーン調達
我が国では、ドイツの政府調達における環境優先主義がクローズアップされて取り上げ
られてきたが、必ずしもすべての調達で環境が優先される場合ばかりではない。
具体的には、次のような状況が間々見うけられる。
①ブルーエンジェルが設定されている品目においても、必ずしもブルーエンジェル製品が
購入されているわけではない。
②サービス分野における調達では環境面を考慮した選択がなされていない場合が多い。
③グリーン購入の実施に当って企業との間でもめることも少なくない。また、環境面が企
業によって悪用されているとの指摘もある。
④ドイツは集権国家ではなく、連邦国家であるために、州政府や自治体における調達は、
それぞれが調達の権限と窓口を持ち、分散的に行われ統一のグリーン調達基準が機能して
いるわけではない。連邦政府の役割は、自治体への助言や調整活動という形で影響を与え
ることに留まっている。
しかしながら、「環境にやさしい公共調達」の歴史は長く、1980 年代に端を発する。
連邦環境庁(UBA: Umwelt Bundes Amt、連邦環境・自然保護・原子力安全省の調査研
究部門)が、1981 年に「公共調達における環境保護」に関する文書を起草した。また、1992
年には、公共調達における自治体レベルの役割に関した研究プロジェクトの成果を公表し
ている。
現状では、情報不足ではなく情報過多が問題となっており、適切な情報を提供するため
に、ドイツ全土を対象とした「環境配慮型調達関連情報機関」を設立すべきとの声が高ま
っている。自治体はグリーン調達の重要性を十分認識しており、『Umwelt Kommunal』
『Oeo-Test』などの環境・商品テスト関連の月刊誌を参考にしている。
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ドイツの公共調達の第一原則は「経費節減の原則(経済性の原則)」で、「環境保護の原
則」は「経済性の原則」に反しない場合に限って尊重される二次的なものに留まっている。
「経済性の原則」については連邦および各州の歳出関連法に規定されているが、
「環境保護
の原則」にはそうした規定はない。
近年、「環境に配慮した業務指針」を作成する自治体が増えている。こうした業務指針は
自治体職員の業務執行に関する内部規定(ガイドライン)と位置づけられている。
連邦環境庁は適切な情報を提供しグリーン購入を促進するツールとして、「環境にやさ
しい調達ハンドブック」を作成しているが、これが公共調達に対して最も大きな影響を与
えている。
5−1−2
「環境にやさしい調達ハンドブック」の掲載項目
「環境にやさしい調達ハンドブック」には次のような品目が掲載されている。
①事務用品、その他の汎用品
・紙類
・事務用品
・家具
・事務織・事務機具
・タイプライター
・コピー機
・プリンター、ファックス
・バッテリー
・繊維類
・消火器・消火材
②自動車関連
・乗用車
・乗用車廃棄物削減用追加機器・装置類
・給油・保守・走行規定
・トランク
・バス
・公共交通機関用車両
・ガソリン等の揮発油
・車両用塗装
・オートバイ類
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・ブレーキ装置
・タイヤ
・洗車・エンジンの洗浄
・車両廃棄、リサイクル
・出張時の公共交通機関・自転車利用
・エンジン駆動ボート、汚れ止め剤
・潤滑油・グリース類、分離剤、油圧機用油
③高層建築
・フェーバーセメント、アスベスト含有建材
・断熱材
・防音材
・PVC 製建材
・熱特産木材
・再生素材製建材
・チップボード
・ラッカーおよび溶剤壁紙類
・建築用接着剤
・床材
・その他建築用化学薬品
・塗装除去作業、建物外装洗浄
・木材保護剤
④その他の建築
・道路建設材料(再生素材を利用したもの)
・建材(リサイクルプラスチック、中古ゴムを利用したもの)
・道路塗装材
・建築排材、建築に伴って発生する廃乗物
・官敷防止剤、同工程
・建築時の防音
・スポーツ用射撃施設
⑤暖房、電力
・公共施設におけるエネルギー使用・の合理化
・暖房戸エネルギー、暖房効率の向上
・暖房用オイル、ディーゼル
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・生物ガス、ごみ煙め立て地生成ガスの利用
・暖房機具
・石油を利用する暖房施設
・ガスを利用する暖房施設固形燃料を利用する暖房施設
・熱回収装置、ヒ一トポンプ
・ブロック火力発番装置
・太陽熱装置
・太陽電池装置
・トランス、コンデンサ
・照明
⑥水回り
・街上陶器・水栓類
・配管パイプ
・飲料水施設
・水軟化装置。
・温熱輸送システム、給湯・スチーム・冷気供給システム用付加材料
⑦洗濯・清掃・衛生関連製品
・洗剤
・洗濯法、洗濯機
・ドライクリーニング設備
・清掃用薬剤
・殺菌・防虫剤
・室内用害虫駆除荊。
・手の乾燥装置・用具
・衛生用紙
⑧庭園および農業用品
・冬季凍結防止用被布材
・害虫駆除剤、農薬
・土壌改善剤
・公共慶薬物の堆肥化
・ゴミから作った堆肥の販売・利用
・手供遊戯場用砂・土壌
・公共緑地
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・庭園用機具・機械
・リサイクル材を用いた庭園用製品
・屋根・建物外装・中庭の緑化.・職員用食事施設
・献立
・冷凍庫・冷蔵 1 鷹
・食器洗い機、同洗剤
・エコ農法製食品
・食器運搬用具
⑨廃棄物処理関連
・大規模催事の組織・実施
・梱包・包装公共施設における使用済み素材回収
・資源回収用容器類
・処理の困難な物質の処理、回収の可能性
・化学薬剤を用いるトイレ、し尿処理
・納品・輸送
・病院における廃棄物量の削減、再利用
5−1−3
「環境にやさしい調達ハンドブック」の考え方
環境にやさしい調達ハンドブックは個別製品評価を行なっているが、調達対象品目が膨
大であることから、具体的な環境基準が設定されていない品目も多く、市場流通している
競合製品に環境面で差がない品目も少なからず存在する。しかし、環境適合性を判断する
上で、基準のリストを作成するのは有効な手法だと連邦環境庁は見ている。
環境適合性は、「製品のライフサイクル」、「当該製品の環境への影響」の二分野にわけて
評価される。主に考慮すべき項目としては次のようなものがある。
①製造工程(素材の分解性、中間生産物を含む)での環境適合性
②使用時(修理のしやすさ、耐久性を含む)の環境適合性
③廃棄時(リサイクル、焼却処理時の特性、最終投棄問題を含む)の環境適合性
さらに、連邦環境庁は環境適合性を判断する際に次頁のような極めて概括的な項目リス
トを利用している。
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【表 5-1-3-1 ドイツ連邦環境庁
製品の環境適合性に関する項目】
適切な製品の特性
危険物質
環境にやさしい製品の特性
含有
排除または最大限の減量
大気汚染物質を大量に排出
排出量・濃度の低減
水質汚染物質を大量に排出
排出せず
土壌汚染物質排出の可能性大
汚染の可能性無し
希少材料
代替品を利用
使用
再生材を使用せず
使用
梱包の複雑性・再利用困難
リサイクルに配慮
耐久性・修理
長期的配慮無し
長期的配慮あり
回収規定
回収なし
回収あり
水・電気消費量
消費量大
リサイクルへの配慮
消費量少
配慮なし
配慮あり
騒音 騒音大
環境特性の表示
騒音少
表示なし
表示あり
ドイツ工業標準規格(DIN)において関連する項目の数値基準等は定められていない。
調達に係る担当官の現状から、詳細かつ専門的な規定の設定は意味がないものと連邦環境
庁は判断している。
連邦環境庁が中心になって学術機関や市民団体等と共同の審査委員会を運営し、環境適
合的な製品に授与する環境ラベル「ブルーエンジェル・マーク」はドイツで最も信頼度の
高い環境ラベルのひとつである。また、リサイクル製品の調達に関しても、「ブルーエンジ
ェル・マーク」の授与基準の中に、紙製品や自動車等の品目でリサイクル製品やリサイク
ル率に関して規定されたものが多く含まれる。
5−1−4
連邦環境庁の環境にやさしい調達に関する新提案
「環境に配慮した公共調達」が実施されるようになって、既に数年が経過しているが、
連邦環境庁は過去の経験を踏まえ、新たに『環境にやさしい調達に関する9カ条の新提案』
を作成した。その概要は以下のようである。
①状況認識:公的イニシャチブの重要性の再確認
「環境に配慮した調達」運動を公的機関が率先して行なうべきであるとの政治的判断を
行なったのは 80 年代初頭のことであった。当時の状況は今日も変わっておらず、連邦、公
共団体が範をたれる必要性はいささかも減じていない。私的セクターの行動を規制し、「環
境に配慮した製品」の調達・購入を推進するような法的措置をとることは極めて困難であ
る。そのため、環境配慮型製品の中には販売面で苦戦しているものも少なくない。
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②法的整備の現状
今日では、
「環境に配慮した公共調達」を組織的に妨げるような予算・歳出関連法規は姿
を消している。それどころか「廃棄物処理法」のように、廃棄物処理に配慮した調達を推
進するような法規も既に制定されている。
③情報提供の現状
「環境に配慮した公共調達」は多岐多様な領域にわたる課題であり、情報不足の問題を
解消するには多大な時間を要する。この間、当該問題に関する膨大な情報が提供されてい
るのは確かだ。しかしながら、公共調達にかかわる官公庁・機関、その他の職員が具体的
な発注を行い際に役立つような情報は依然として不足している。
④調達推奨品認定作業の実施
「環境にやさしい製品」を評価したり、どのような基準を満たす製品を公共調達しよう
として推奨するかを決定する作業は、個々の公官庁の任務ではない。これらの作業は「環
境保護関連公官庁」の職務に明確に属する。
⑤理想から実行へ
「環境保護の原則」を公共調達時の検討項目の一つとするという姿勢は、今日では広く
受け入れられるようになった。しかし、こうした考え方を現実の購入・調達行動の中で活
かすという点では、なお改善の余地が大きい。
⑥政策面の整備
「環境に配慮した公共調達」を実施するためには、こうした調達行動を義務づける旨の
包括的政令および個別の調達分野ごとの詳細な情報がどうしても必要である。さらに、具
体的な調達行動を促進するための抜本的施策も欠かすことができない。
⑦政策の展開・拡大
現状を見ると、「環境に配慮した公共調達」を促進するためにあらゆる手を尽くしたとは
言い難い。調達に対する提言をより一層具体化していかなければならない。PVC代替問
題などのように「どのような調達行動を行なうことが環境保護の面で有益なのか?」とい
う議論が政治問題化している場合には、政治的な話し合いも強化する必要がある。
⑧情報交換・経験交流
部門ごとの情報交換・経験交流は極めて重要だが、これまで無視されてきた。
⑨民間への影響力
「環境に配慮した公共調達」が成功すれば、民間セクターでもこれを見習う動きが加速
されることになろう(主に製造業、また手工業部門への波及も期待できる)。
90
5−2 イギリス
英国の政府機関におけるリサイクル製品の調達促進は、全省庁による連絡会を設け、グ
リーン調達の促進や成功事例の情報交換を行ないつつ、リサイクル素材やリサイクル製品
の積極的な使用に取り組んでいる。具体的な方法および取り組みは、以下に示す。
5−2−1
グリーン調達
イギリスの現政権の環境に対する姿勢は、1997 年国連総会の特別セッションにてブレア
首相が語ったように、「政府をグリーンに変えていかねばならない。セクターにかかわりな
く、環境への配慮がわれわれのすべての決定に組み込まなければならない。環境への配慮
は最初に組み込むだけでなく、後になって締め出してはならない」との考え方に基づいて
いる。
この考え方が調達にも導入されている。法的な義務づけはせずに、政府の公約を実現す
るよう各省庁が積極的にグリーン調達を行なっている。
各中央省庁が任命した「グリーン大臣(Green Minister)」から構成される「グリーンな
政府(Green Goverment)」という名の委員会が中心となり、持続的な発展を目指す中央官
庁のオペレーションのグリーン化を進めている。
グリーン大臣たち次のような目的を目指して活動を行なっている。
○政府及び公的セクターにおいて経済面、環境面、社会面の 3 側面を持続可能な発展のコ
ンセプトのもとに統合したアプローチを取る。
○各省庁における政策づくりのプロセスの中に環境評価を組み込むことを促進する。
○各省庁の活動の環境への影響を明らかにし、各省庁の環境パフォーマンスを向上させる
ための戦略を立案する。その戦略は、各省庁の目標を反映し、政府全体の目標に貢献する
ものとする。
グリーンな政府の一環として、グリーン調達(Green Procurement)が行われている。
政府の調達政策によって、各省庁が予算を対費用価値に基づく判断をベースに効率的な
調達を実施し得る範囲で、各省庁は商品やサービスの調達の方針を独自に環境面を取り入
れて決定することが認められている。
政府は最大の購入者として、供給者が持続可能な商品やサービスを提供させ、持続可能
な商品やサービスの市場をより競争的にする上で、大きな影響を与えることができると考
えている。
この考え方には、政府が公的予算を用いて製品やサービスを調達する際の二つの基本的
な配慮事項が背景にある。
第一に、公共予算の対費用価値(コスト効率)を高めるために、初期投資のみを考えるので
なく、製品やサービスの全ライフサイクルを通じて消費されるコストを検討すべきとする
考える方である。例えば、省エネ機器の選択は、初期費用は多く生じるが長い時間をかけ
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て取り戻すことが可能な場合が多いなどである。
第二に、あらゆる分野の調達に関して、各省庁は自らのニーズを満たす品質を決めるこ
とができる。それによって、各省庁が多種多様な製品やサービスの調達ための契約に際し
て、スペックの中に環境的要素を盛り込むことを可能にしている。また、各省庁は、資源
の効率的な利用や廃棄物削減に関してお互いの利益のために、供給者と協力するように努
めている。
このように調達に際して環境側面は唯一の決定要素ではないにしても、コスト効率性や
必要な各種の要件に見合う範囲で常に配慮していくべき要素としての位置付けが明確にさ
れている。その意味で、英国におけるグリーン調達の取り組み方は現実的でありまた柔軟
性のある運用がなされていると見ることが出来るだろう。
5−2−2
グリーン購入者ガイド
各 省 庁 の 調 達 担 当 者 が 参 考 に す る 目 的 で 、 環 境 ・ 運 輸 ・ 地 方 省 ( Department of
Enviroment, Transport and the Regions: DETR)は環境にやさしい調達に関する多様なア
ドバイスを盛りこんだ『グリーン購入者ガイド(Green Guide for Buyers)』を公表してい
る。ガイドは大蔵省と通産省の調達方針検討グループが作成した「公共調達のガイドライ
ン」との整合が図られている。
【 環境にやさしい製品の定義】
同ガイドは「環境にやさしい製品の定義」を「同一の目的に役立つ競合製品と比べて人
間の健康と環境に害が少ない製品」であるとして、次のような要件を満たすものであると
示している。
・適切な目的に使用され金額に見合った価値を提供する。
・エネルギー効率と資源効率が良い。
・バージン資源を最小限にしか使用しない。
・リサイクル素材を最大限に使用する。
・汚染がない、または少ない。
・耐久性があり、簡単にアップグレード及び修理が可能である。
・リユース、リサイクルができる。
【環境・運輸・地方省のグリーン調達の方針】
『グリーン購入者ガイド』(1997 年 12 月)に述べられた環境・運輸・地方省のグリーン
調達方針の骨子を以下に紹介する。
①グリーン調達を行なう条件と目的
1) 対費用価値の最大化
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2) (政策づくりの中核に環境への配慮を組み込むという)政府の公約の実行
3) 公的な監視(議会の環境監査委員会による)に耐える
4) 国際的な義務(EU 条約やリオ宣言など)を果たす
5) グリーン・テクノロジーの市場を刺激する
6) 生活水準の維持・向上
7) 健康と環境の改善
8) 経費節減
製品、労働、サービスを購入する際、環境に関する法規制を遵守する。供給業者や請負
業者たちの環境意識を高め、彼らが競争的な価格で環境にやさしい製品やサービスを提供
することを奨励する。
②可能ならば環境にやさしい製品を買う。リサイクル素材で作られた製品を選ぶ。
③購入決定への環境の統合には、次のような項目が含まれる。
○ライフサイクル・コストを考える際に、契約にかかわる環境コストとその効果を考慮に
いれる。
○可能なら使い捨て製品をリユースやリサイクルが出来る製品に置き換える。
○製品やサービスを提供する業者の製造工程を始めとする環境パフォーマンスを評価する。
④実行可能で、価格に見合った価値を提供してくれる場合は、EU のエコ・ラベルがついた
製品を優先的に購入することによって、EU エコ・ラベル計画を支援する。
⑤スタッフに関連した情報やトレーニングを提供することによって、調達に影響する環境
問題に対する意識を高める。
⑥廃棄物のヒエラルキー
英国の廃棄物管理に関するヒエラルキー(優先順位)は、「リデュース(削減:reduce)」が
最上位で、次いで「リユース(再使用:reuse)」「リサイクル(recycle)」
、「処分(dispose)」
の順である。これは、廃棄物の量を減らし、廃棄物の再利用を促進し、直接的および将来
的な環境汚染のリスクや人間の健康への害を低減することを意図している。
また、上記の廃棄物管理のヒエラルキーによる考え方では十分な環境保全が実行できな
い場合には、その場合に応じた施策(例えばリース販売にする等)を講じる、完全なる「再
考(rethink)」が要求される。
同ガイドには、さらに「資源保護のためのチェックリスト」および「補遺」が添付され
ている。
「資源保護のためのチェックリスト」では、エネルギー(建築、輸送)、水、木、紙、園
芸について述べられている。また、
「補遺」では、チェックリストの内容を補うための情報
がまとめられている。例えば、「再生紙に関する情報」、「オゾン層破壊物質のリスト」、「自
動車の排気ガス」「低公害型自動車の調達に関する手引き」、「新車の排出基準」「有害物
質」「バッテリー」「参考文献リスト」「役立つ連絡先リスト」「役立つホームページリス
ト」「水素:将来の燃料」「環境に望ましい冷媒を用いた製品」「環境用語集」「森林製品の
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認定」等について述べられている。
5−2−3
各省庁における具体的な取り組み
実際のグリーン調達は各省庁の判断で行われていることは既に述べた。特にリサイクル
製品の使用促進に関連した取り組みを行なっている各省庁は以下の通り。
1) 国際開発省(Department for International Developement)
持続不可能な硬材を使った家具の購入を禁止し、リサイクル製品の購入を奨励している。
2) 内務省(Home Office)
可能な場合は、リサイクル製品を指定する。
3) 大法官省(Lord Chancellor's Department)
公訴局(Crown Prosecution Service、LDP の一部門)が調達の際の環境問題について触
れた調達マニュアルを発行。ライフサイクル・コストだけでなく、しばしばリサイクル素
材使用の製品を指定している。マニュアルは各部門すべてに配付している。
5−2−4
ベスト・プラクティスの情報交換
グリーン大臣会議では、各省庁のグリーン調達における最善手法(ベスト・プラクティ
ス)に関する情報交換を行なっている。
具体例として、『政府のグリーン化の報告書』には、次のような事例が紹介されている。
「通産省(DTI)は不要になったコンピュータ機器のリユースに関するガイドブックを作成
した。競争・消費者問題相はこのガイドブックをグリーン大臣全員に配付し、全省庁がこ
の取り組みに参加するよう呼びかけた。このガイドブックは、各省庁が古くなったハード
ウェアをうまく活用する方法を考え、不要な機器を環境的にも社会的にも責任を持った方
法で処分するのに役立つだろう。」
5−2−5
『グリーン供給者ガイド』
環境・運輸・地方省では、更に『グリーン供給者ガイド』を公表している。同ガイドは
『グリーン購入者ガイド』の内容を納入業者に開示したものである。同省の購買方針、グ
リーン調達、環境・運輸・地方省の要件の充足、供給業者との協力、節約(全製品、エネ
ルギー、水、木、紙、園芸)、汚染(CO2、オゾン破壊物質、自動車の排気ガス、農薬と化
学肥料、アスベスト、危険物質、電池、生分解性物質)、廃棄物管理、連絡先、情報源(出
版物、関連機関)などについて述べられている。
なお同ガイドでは「生分解性物質」の優先的な使用ついても触れている。「可能かつ、環
境に最も適切で対費用価値も十分に高い場合、生分解性物質を優先的に用いること」とし
ている。生分解物質は自然の物質循環に戻るため、ライフサイクル・コストを考えるとコ
ストをかけてリサイクルしなくて済む生分解性プラスチック等の生分解可能素材は、リサ
イクルに代わる優れた選択肢となるであろう。
94
現時点では生産量が少ないため、生産施設の設備投資を償却するために価格を高くする
設定する必要があり、生分解可能プラスチックの価格は汎用プラスチックの数倍になって
いる。将来的には汎用プラスチックの使用量の2∼3割が生分解性プラスチックに取って
代わられるとの指摘もある。EU諸国の環境規制が強化されつつあることを考えると、生
分解可能プラスチックは、国際的に見ても有望な素材である。
生分解性プラスチック産業を育成するためには、生分解性プラスチックの使用を促進す
る施策が必要である。その意味で、
『グリーン供給者ガイド』の中で生分解性素材の優先的
な使用に関して触れている意義は大きいものと思われる。
5−2−6
まとめ
以上、述べたようにイギリスでは、法律による拘束を行う代わり、省庁間の協力と競争
心を活用することによって、実務的にリサイクル製品の利用の促進をはじめとするグリー
ン調達を推進する形が取られている。ドイツとは異なり、製品だけでなくサービスや労働
に関してもグリーン調達を十分配慮している点は注目に値する。
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5−3 フランス
フランスに関しては、政府のリサイクル製品購買の促進に係る取り組みは公式的なもの
はなく具体的な情報は入手できなかった。隣国ドイツのシンクタンクにおいても確認でき
ず、フランスでは明文化されたグリーン調達は行われていないか、さほど取り組みが進ん
でいないのではないかと考えられる。
但し。自治体レベルにおいては、グリーン調達を行なっているところもある。ドイツに
本 部 を 置 く ICLEI ( 国 際 地 方 環 境 イ ニ シ ャ チ ブ 協 議 会 : International Council for
Environment Initiative)には世界の 344 の自治体が参加しており、フランスからはルーア
ン、ストラスブール等が参加している。ICLEI では自治体グリーン調達ネットワークを作
り、ヨーロッパ各国の自治体のグリーン調達を促進する活動を行なっている。
自治体のグリーン調達は以下のような項目を目指している。
①グリーン調達の経験に関する情報交換を促進する。
②自治体がローカル・アジェンダ 21 にグリーン調達を組み込むことを促進する。
③地方レベルにおけるグリーン調達のツールを明らかにし、グリーン調達のツールを製品
の選択と契約締結の段階に組み込むのを助ける。
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