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Page 1 Page 2 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第14号
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Title
Author(s)
Citation
EUにおける経営統合とコーポレート・ガバナンス
明山, 健師; AKIYAMA, Tsuyoshi
研究年報, 14: 167-179
Date
2010-03-25
Type
Departmental Bulletin Paper
Rights
publisher
KANAGAWA University Repository
神奈川大学大学院経営学研究科 『
研究年報』第 1
4号
201
0
年 3月
1
67
■ 研究論文
EUにおける経常統合とコーポレートガバナンス
Co
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nM&A
神奈川大学大学院 経営学研究科
国際経営専攻
明
博士前期課程
山 健
師
Am AMA,
Ts
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i
■キーワー ド
M&A
コーポ レー ト・ガバナ ンス/コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則/
動 を行 うことがで きることとなったので ある。欧
1 は じめに
州株式会社 を設立す る方法の 1つ に合併 による設
グ ローバ リゼーシ ョンのなかで、E
Uは、市場
立 とい う方法がある。つ まり、欧州株式会社 を設
を統合 し、地域の国境障壁 を取 り除 くことによっ
Aを実施 す る場合 が ある。 この
立す るためにM&
て、経済 を活性 化 した。地域統合 に よって世 界
よ うな背景 か ら、E
Uで は、地域統合 が深 化す る
最大 の市場 となったE
Uで、 グローバ リゼーシ ョ
Aが増加 したのである
ことによって、M&
U市
ンが深 化 した の で あ る。 これ に よ って、E
。
異 なる国籍 を有 す る複数の企業 がM&Aを行 う
場 は世界 か ら注 目を集 め ることとなった。 まず、
場合 に さまざまな問題が発生す る。 しか し、 クロ
1
990
年代 に投資がE
U企業 に集 中 し、E
U企業への
Aに関す る研究 は、 シナジー効果
スボーダーM&
M&Alが増加 した。 また、 このEU企業へのM&A
や戦 略 な どに焦 点 をあて た ものが多 く、 コーポ
の中心 にいたの は、 アメ リカ企業 で ある
しか
レー ト・ガバナ ンスに焦点 をあててな されている
998年 ごろか ら、E
U企業 は、 アメ リカ企業
し、1
研究 は多 くない. そこで、本稿では、
EUのグロー
に対抗す るべ く、
EU域内での大型 クロスボーダー
U
バ リゼ ー シ ョンにつ い て考 察 す る こ とで、E
。
M&Aや アメ リカ企業 に対す るM&Aを行 うように
のグ ローバル化の展 開 を明 らかにす る。つ ぎに、
EU企業 によるクロスボー
なった。 これによって、
EUにおけるM&Aについて考察す ることで、地域
Aが増加 したので ある。
ダーM&
Aとその合理性 を明 らかに
統合後 に増加す るM&
地 域 統 合 に よ って、E
U域 内で 自由 に経 営 活
Aによって企
す る。 そ して、 クロスボーダーM&
動 を行 うこ とが で き る欧州 株 式 会 社 (
S
o
c
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t
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s 業 が実際に直面 したコーポ レー ト・ガバ ナ ンスに
関す る問題 と課題 を解明す る。以上の 3つ を検討
Eu
r
o
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a
)が誕生 した。 欧州株式会社 の誕生 に
よって、E
U域 内で あれば、 1つ の法人 で経営活
M&Aの際のコーポ レー ト・
す ることで、本稿では、
1
6
8
神奈川大学大学院経営学研究科 r
研究年報』第 1
4号
2
01
0
年 3月
ガバナ ンス問題 に対 しては、両社間で合議 ・調整
ンと呼び、グローバ リゼーシ ョンの反対概念 とす
の もとで コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原 則 2を策定
る考 え方 がある4。 これ は、経済統合 が、 ブロ ッ
ク経済化のように封鎖的な市場 を形成す ることで
す ることの重要性 を明 らかにす る。
犀済 を保護 してい るとい うネガテ ィブなとらえ方
2 EU統合 とグローバ リゼーシ ョンの進
展
2
1 リージ ョナ リゼーシ ョンとグローバ リゼー
である。た しかに、地域的な経済統合 はその地域
の経済的な発展 を目的 としている。 しか し、大西
洋経済統合地域 にむけた動 きか らも分かるように、
EUの経済統合 は 1つ の地域 に限 らず、徐 々に拡
大 している。 したがって、経済統合 はグローバ リ
ン ヨ/
近年、経済統合地域化にむけた動 きが活発化 し
ている。そのなかで も、 もっとも注 目すべ きで あ
るのは、EUとアメ リカによる大西洋経済統合 地
ゼーシ ョンを段階的に実現 しようと試み るもので
あるといえるだろう。
経済統合 とは、単に企業がグローバルに活動す
域の実現にむけた動 きである。大西洋経済統合地
るグローバ リゼーシ ョンではな く、制度的な統合
域 の枠組み は、2007年 のEU ・アメ リカ首脳会議
を含む、よ り高度のグ ローバ リゼーシ ョンを段階
Uの地域 に特化 した政策 は、EU
で採択 された。E
的に実現す るための第 1歩 として、地域で制度面
とい う地域 を越 えて さらに広範 な地域 をノ
包括 した
か ら市場 を統一 した ものであるとい うことがで き
政策へ と広 が りつつ ある。 また、 日本 において も、
る。 そ して、各地域で経済統合地域が誕生 し、各
2009年 に鳩 山政権 によって東 ア ジア共 同体 の構
経済統合地域が拡大す ることで、世界中に無数に
築 が提 唱 され た3
0 この よ うに、世界 の各地 で経
存在 していた市場や制度 がい くつかの市場や制度
済統合 が、着実 に進行 している。
に統合 され る。 そ して、統合 された市場や制度 を
域
統
合
と
グ
ロ
EUのような、経済統合 を リージ ョナ リゼ-シ ョ
図
1
地
(
出所)著者作成。
調和す ることでよ り完全 なグローバ リゼ-シ ョン
ー
バ
リ
ゼ
ー
シ
ョンへの過程
EUにおける経営統合 とコーポレー ト・ガバナンス
1
6
9
が完成す るので ある。 ただ し、地域経済統合 や世
この よ うに、世界 または地域 の統一基準 は、 まず
界標準化の段階かち、各国独 自の制度へ と戻 ろう
最低限の規則 を定め るに留 め るべ きで あ り、各国
とす るもの もある。 これは、一度調和 ない し標準
の多様性 はある程度保 たれ るべ きで ある。 そ して、
化 された市場や制度 を自国内で再度最適化 しよ う
グ ローバ リゼーシ ョンが進 め られ ることで、制度
とす るもので ある。
的に① 国際基準 が策定 されて国際的な統一 を目指
す動 き、① さらに多様化へ進む動 き、の両方 が促
22 グローバ リゼーシ ョン とコーポ レー ト ・ガ
進す ることになるので ある。
バナ ンスの標準化
グ ローバ リゼーシ ョンが深化 し、制度 を統一す
23 地域統合 とM&Aの関係性
るための世界標準 コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則
企業 の経営活動 を考察 してみ ると、後述す るよ
や国際会計基準 など、 さまざまな面 で国際的な統
うに、EU企業 の なか には欧州 会社 法 に よって最
一 が図 られ た。EUで も、最低 限 の規 則 を会社法
低限の基準 は統一 されつつ あるものの、 アメ リカ
によって統一す ることで各国の規則 を調和 してい
型 の経 営 を取 り入 れ 、M&Aに よって新 た な コー
る。 さま ざまな制度 が乱立す るなかでグ ロ-バ リ
ポ レー ト・ガバ ナ ンスを構築す る企業 が現れてい
ゼ-シ ョンを さらに深化 させてい くことには限界
る。 まず 、M&Aはお もに アメ リカで盛 んに行 な
があ り、統 一基準 の策定が今後 もな されてい くと
われていた。つ ぎに、 ヨーロッパ企業 がアメ リカ
007年 には、 ニ ュー ヨー ク
考 え られ る。 また、2
型 の経営 を取 り入れ る様 にな り、 アメ リカ と同様
(
NYS
E)とユ ー ロネクス トが統合 さ
にM&Aが盛 んに なった。 しか し、 ヨー ロ ッパ企
れ た。EUで は、ユ ー ロネクス トの他 に も証券取
業 は、単 に ア メ リカ企業 の模 倣 を したの で は な
引所 が統合 され国際的な証券取引所 が誕生 してい
か った7。 かつて、 アメ リカ企業 は、M&Aを繰 り
る。国際的な証券取引所 が上場規則 を定め ること
返す ことで大型化 し、 ヨーロ ッパ を含む海外 の企
で、統 一基準 が設 け られ た ことにな る。 そ して、
業 に対 してM&Aを行 った。 そ こで、M&Aの対象
証券取引所
いっそ うコーポ レー ト・ガバ ナ ンスの収敵 が進む
となっていた ヨーロ ッパ の企業 は、 アメ リカ企業
と考 えられ る。
に対抗す るためにM&Aを行 ったので ある。
しか し、 多 くの学者 によって論 じられてい るよ
990年 代 は シナ ジー
上 述 の よ うな背景 か ら、1
うに、 この よ うな統一基準が永久 的に標準的な基
効果 が固 く信 じられていた。 シナ ジー効果 を達成
準 で あ り続 け る こ とあ り得 ない ため、新 しい基
す ることで吸収合併 を防 ぎ、競争力 を高 め ること
準の策定や改訂 が継続 的に行 なわれ るで あろう5。
で生 き残 りを狙 っていたので あった。 その よ うに
欧州委員会 は、各国の多様性 を維持 しつつ、重要
して誕生 した企業の代表 的な例 として、頻繁 に取
な内容の規則 に関 してはEU域 内 を統一 してい る6。
り上 げ られ る企業 に、 ダイムラーク ラィス ラーや
表 1M&Aの系譜 と分類
時期
1
8
80年代末 -1
900
代初頭
1
920
年代後半
M&Aブーム
特徴
第 1次
スタンダー ド石油 、USスティール、GE、AT&Aが成立 した○
第 2次
垂直統合、水平統合が盛んに行なわれたo
1
9
60年代
第 3次
コングロマ リッ ト合併が盛んに行なわれたo
1
9
70
年代後半 -1
980
代末
第 4次
LBO型の超大型合併 (
Me
gaMe
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ge
r
)が盛んに行なわれた○
1
9
90
年代
第
(
出所)筆者作成。
5次
業界や国境 を越 えた戦略的な性格 を有す るM&Aが盛んに行なわ
1
70
神奈川大学大学院経営学研究科 『
研究年報』第1
4号
アベ ンテ イス な どが あ る。 この よ うな、業界 再編
は、 自動 車 、石 油 、科 学 、 医薬 医療 、流 通 、情 報
通 信 、 メデ ィア、航 空 宇 宙 ・軍 需 、 エ アサ ー ビス、
金 融 ・銀 行 ・保 険 の各業 界 で進 んで い った。 ヨー
201
0年 3月
3 EUにおけるM&Aの活発化
31 EU企 業 によ るア メ リカ企 業 へ の M&
A
EUで は、 ア メ リカ企 業 に対 抗 す る為 に、 規 模
ロ ッパ の 企 業 に と って 、M&Aは非 常 に大 きな変
を拡 大 を 目的 と して M&Aが盛 ん に な っ た。 そ し
化 を もた ら した とい え るだ ろ う。
998年 に ドイ ツ企 業 で あ るダ イ ム ラ ー が ア
て 、1
表 2世界 3位 以 内 の欧州 企 業 に よ る大型 ク ロスボ ー ダ ーM&
Aの事 例
買収企業
被 買収企業
1998 ダイムラー (ドイツ)
BP (
イギ リス)
クライス ラー (
アメ リカ)
ア コモ (
アメ リが
1999 マ
ボーダフォン
イギ
リス)
ンネスマ ン (
ドイツ)
エ
(
アメ
リカ)
オ アタッチ
レンジ (
イギ
リス)
ゼネカ (
イギ リス)
2000 ボーダ
フォン
.エア
タ ッチ (
イギ リス)
ヴ イヴエ
ンデ イ
(
フランス)
BPアムコ (
イギ リス)
2001 ドイツ ーテ レコム (ドイツ)
ギ
ブ リス)
リテ ィッシュ .テ レコ ミュニ ケーシ ョン (
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2002 エーオ
ン (ドイツ)
ヴ イヴエンデ
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フランス)
ナ シ ョナルグ リッ ドグル -プ (
イギ リス)
2003 H
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イギ リス)
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ドイツ)
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アス トラ (
ス ウェーデ ン)
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(ドイツ)
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カナダ)
ア トランテ ィツク .リッチ フィール ド (
アメ リが
ボイスス トリーム .ワイヤ レス (
アメ リカ)
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イギ リス)
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アメ リカ)
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イギ リス)
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イギ リス)
2005 ロイヤル .ダ ツジ .ベ ン トリアム (
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アメ リカ)
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2008】を参考 に筆者作成.
(
出所)J
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rPLC (
イギ リス)
EUにおける経営統合 とコーポレー ト・ガバナンス
メ リカ企業のクライスラーを対等合併 と銘打 って
実質 的には吸収合併 を行 った。 これ を契機 にEU
171
る。
さらに、 ク ロスボー ダ ーM&
Aを行 うことで、
企業 によるアメ リカ企業 に対す るM&Aが増大す
異 なる法制度や上場規則、企業慣習 などによって
の ように、近年では、EU企
ることとなった。表 2
構築 されているコーポ レー ト・ガバ ナ ンスを有す
業 によるM&
Aが3
位以内を占め、 クロスボーダー
る企業 が合併す ることになる。 そこか ら生 じる問
M&Aのなかで もEU企業 によるアメ リカ企業への
大規模 なM&Aが増 えていることが理解で きる。
21
世紀 に入 ってか らは、E
U域 内におけるクロ
スボーダー M&
Aが増加 してい る。 これ は、 「グ
U加盟
ローバ リゼーシ ョン下 の主役企業」 を、E
題点の解決 も必要で あると考 えられ る
。
32 欧州株式会社 とM&A
Aが特 にEU域 内で増加 し
ク ロスボーダー M&
てい る理 由 に欧州株式会社 の設立要件 が挙 げ ら
国の欧州ヘゲモニーの観点に立 った共存共栄の社
れ る。 欧州株式会社 の根拠 法 とな る 「欧州株式
会 ・経済 ・政治構造の ヨーロッパ舞台の創建 に基
Co
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EC)No.21
57
/2001
会社法 (
U域 内の各国が共 同 して構築 しよ うと
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0
」 によって、欧州株式会社 は、合併
い うのである8
。
また、E
Uの なかには、 フランスの よ うに国営
または持株会社の設立、子会社 の設立、子会社の
企業や政府 が大株主で ある企業が多 く存在す る国
欧州株式会社への転換のいずれかのよってのみ設
もある。そのため、 自国企業の競争力の強化の観
立す ることがで きる。
点か ら国家 レベルでの判断が影響す る場合がある
まず、合併 によって欧州株式会社 を設立す る場
た とえば、後述す るサ ノフイ ・アベ ンテ イスなど
合 は、異 なる加盟国 を所在地 とし、異 なる加盟国
。
の国内法 によって規制 され る 2社以上の企業の合
が例 に挙 げ られ る。
そ して、国 防会社 や電 力会社 な どで も国益保
併 によって欧州株式会社 を設立す ることがで きる
。
護 の観 点 か ら、国家 レベル での話合 い によって
また、持株会社の設立 によって欧州株式会社 を設
M&Aがな され る場合 がある。 た とえば、汎 ヨー
立す る場合 は、加盟国の国内法 に規制 され る企業
ロ ッパ航空宇宙 ・国防会社 として誕生 したEADS
の うち、欧州株式会社 を設立 しようとす る当該企
などで ある9
。 日本 において も、J
パ ワー株問題 な
業の 2社以上が異なる加盟国の国内法 によって規
どで この よ うな政府 の介入が問題視 されてい る。
制 され るか、 2ヶ国以上 に 2年以上、子会社 を有
このような、問題の解決 も必要であると考 えられ
す ることで欧州株式会社 を設立で きる。 そ して、
表3欧州株式会社 の設立要件
設立方法
設立要件
合併
異なる加盟国を所在地とし、異なる加盟国の国内法によって規制 される.
2社以上の
企業の合併によって欧州株式会社を設立することができるo
持株会社の設立
加盟国の国内法に規制される
企業のうち、欧州株式会社
を設立
しようとする当該企
されるか
、2
ヶ国以上に 2年以
業の 2社以上が異なる加盟国の国内法によって規制
上、子会社を有することで欧州株式会社 を設立できる○
子会社の設立
加盟国の国内法に規制される企業のうち、欧州株式会社を設立
業の 2社以上が異なる加盟国の国内法によって規制 されるか、 しようとする当該企
2ヶ国以上に2
年以
上、子会社を有することで欧州株式会社 を設立できるo
EU域内に本店または本社 を有 し、その本店または本社を設置する加盟国以外に 2
子会社の
欧州株式会社への転換 年以上子会社を有する場合に、子会社を欧州株式会社に転換することができるo
(
出所)筆者作成。
172
神奈川大学大学院経営学研究科 F
研 究年報』 第 1
4号
2010年 3月
子会社の設立 によって欧州株式会社 を設立す る場
えてい るとはい えないの も現状 で ある。 そこで、
合 は、欧州株式会社 を設立 しよ うとす る当該企業
クロスボーダ ー M&Aに伴 うコーポ レー ト・ガバ
の 2社以上が異なる加盟国の国内法 によって規制
ナ ンス改革 を考察す ることで、 これ らの改革の問
され るか、 2ヶ国以上 に 2年以上、子会社 を有す
ることで欧州株式会社 を設立で きる。 さらに、子
題点 と課題点 を明ちー
かにす る。以下では、 このよ
うなM&Aによって生 じる問題点や コーポ レー ト・
会社の欧州株式会社への転換 によって欧州株式会
ガバ ナ ンスの問題 点 を考察す るために、M&Aが
社 を設立す る場合 は、EU域 内に本店 または本社
盛んに行 なわれた製薬業界 と石油業界の企業 を取
を有 し、その本店 または本社 を設置す る加盟国以
り上 げ、 クロスボーダ ーM&Aによって生 じる問
外 に2
年以上子会社 を有す る場合 に、子会社 を欧
題点 を明 らかに してい く。
州株式会社 に転換す ることがで きる11。
欧州株式会社の設立要件 には、合併 による欧州
株式会社の設立が含 まれてお り、欧州株式会社 を
設立す るためのM&Aが増加す ることが考 え られ
る。 その場合 に、上述 したよ うなコーポ レー ト・
4 M&Aに伴 う企業経営機構改革
41 アベ ンテ イスの企業経営機構改革
今 日、製薬業界 は、 クロスボーダ ー M&Aが盛
ガバナ ンスに関す る問題が生 じることは十分に考
んに行 なわれ てい る。一ヨ- ロ ッパ で最大 の製薬
え られ る。 このような問題 にどのように対処 して
会社 で あるサ ノフ イ ・アベ ンテ イス も、 クロス
い くのかは、今後地域統合 を進 めてい くためにも
ボーダー M&Aによって発足 した企業 で ある。 ま
重要 な課題で ある。
998
年 に ドイツのヘキス トとフランスの ロー
ず、1
ヌ ・プーランが合併 したことで、 フランスに本社
33 M&Aに伴 う諸問題
1
9
98年代 か ら増大 したクロスボーダー M&Aに
を持す アベ ンテ イスが発足 したO その後、 2004
よって、M&Aによって誕生 した企業の内部では、
年 にフランス企業のサ ノフイ ・サ ンテラボによっ
′
\
て、 アベ ンテ イスが買収 されてサ ノフイ ・アベ ン
歴史 ・文化 ・慣習 ・コーポレー ト・ガバ ナ ンスな
テ イスが発足 したので ある。 このサ ノフイ ・アベ
どの変化が発生 している。 まずは、異なる国籍の
ンテ イスが誕生す るまでのM&Aには、クロスボー
企業が結合す ると、 どち らの法に準拠 して設立す
ダー M&Aによるコーポ レー ト・ガバ ナ ンス改革
るのか とい う問題 を解決 しな くてはな らない。 く
とフランス政府 による介入の 2つの問題が隠 され
わ えて、 どのようなコーポレー ト・ガバナ ンスを
ていた。
採用す るのか も決定 しな くてはな らない。 このよ
まず、第 1の問題 は、 クロスボーダ ー M&Aに
うな必要性 か ら、 クロスボーダーのM&Aによっ
よるコーポ レー ト・ガバ ナ ンス改革 の問題 で あ
て誕生 した企業 に、 コーポ レー ト・ガバナ ンスに
る。 アベ ンテ イスの前 身で あ るへ キス トとロー
関す る改革 を行 う企業 が現れた。 そのなかには、
ヌ ・プーランがそれぞれ本社 を設置 していた ドイ
は じめか らアメ リカ型の経営 を取 り入れ るために
ツとフランスは、歴史的に戦争 などを通 して対立
M&Aを実施 し、 アメ リカ型 の企業経営機構 を採
して きた。 その よ うななか、今 日の よ うにEUを
用す る企業や合併 した企業のなかで影響力の強い
統合す ることに成 功 したのは、それ まで対立 を続
企業側の企業経営機構 により近い形態 を採用す る
けていた ドイツとフランスが和解 したことがきっ
企業、新 しいハ イブ リッ ド型の経営機構 を採用す
かけとなったといって も過言ではないほどの対立
る企業 などがある。
であった。 そのような両国 を代表す る企業である
しか し、世紀 の大合併 とまで いわれ なが らダ
イムラークライス ラーが失敗 に終 わったよ うに、
M&Aに伴 うの改革 が必ず しも企業 に好影響 を与
2社が統合す ることは、独仏和解の象徴 ともいえ
る出来事であった。
へキス トは医薬医療 の企業 として知 られ る ドイ
EUにおける経営統合 とコーポレー ト・ガバナンス
1
73
図2 サ ノフイ ・アベ ンテ イスの M&A
(
出所) C
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s・Ar
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【
2
0
0
4
】
7
9
頁.
を参考に筆者作成.
ツを代表 す る企業 で あった。M&Aが行 なわれ た
わ えて、取締役の任期 は 6年 で、取締役の年齢制
当時のへキス トは、7つの主要 な子会社 を有す る
5
歳 以下 で あ るこ とが定 めれ て い た。 取締
限 は6
持株会社 で あった。 へ キス トは企業 経営機構 に、
役会 は、必要 に応 じて開催 され ることと定 め られ
0
人 の取締 役 を有 し
二層 型経 営機 構 を採 用 し、2
ていたため、比較 的、頻繁 に開催 され、意 思決定
ていた。 その うち、半数 が従業貝 か ら選出 された
は、定足数 に対 す る多数決 によって行 なわれた。
取締役で あった1
2
。 くわ えて、取締役 の任期 は 5
株主総会 の出席 には、株主総会 開催 の 5日以上前
年で、取締役 に年齢制限 はなか った。取締役会 は、
か ら株 を保有 してい ることが求 め られていた。 ま
最低 で も半年 に 1回行 なわれ、意思決定 は多数決
ALO (
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た、株主総会 開催 の通知 は、B
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)に よ って告 知 さ
によって行 なわれていた。株主総会 の出席 には、
株主総会開催の 7日以上前か ら株 を保有 してい る
れ た。 そ して、委任状 による投票 が認め られ 、 1
ことが求 め られていたO また、株主総会 開催 の通
株 1議決権制 が定 め られていた。
知 は、公式広報 によって告知 され た。 そ して、委
そ して、へキス トとローヌ .プーランが統合 さ
任状 による投票 が認 め られ 、 1株 1議決権制 が定
れ たアベ ンテ イスは、企業経営機構 に二層型経営
め られて いた。
機 構 を採 用 し、1
6
人 の取締 役 を有 して い たQ そ
ローヌ ・プ ー ラ ンは医療 と工業 の コ ング ロマ
の なか で も、 4人 が従業 員 か ら選 出 され た取締
リッ ト企業 と して知 られ るフランスを代表す る企
役 で あった14。 くわ えて、取締 役 の任期 は 5年 で、
業 で あ った。M&Aが行 なわれ た 当時 の ロー ヌ ・
取締 役 の年 齢 制 限 は75
歳 以下 で あ るこ とが定 め
プー ランは、製薬、動植物衛生、科学工業の 3つ
れていた。取締役会 は、最低 で も 3ヶ月に 1回の
の部門 を有 していたO ローヌ ・プー ランは企業経
開催 が定め られ、意思決定 は、 多数決 によって行
営機 構 に、一 層型 経 営機 構 を採 用 し、1
2
人か ら
なわれ た。株主総会の出席 には、株主総会 開催 の
1
8人 の取締 役 を有 して いたO その なかで も、 3
3日以上前 か ら株 を保有 してい ることが求 め られ
人が従業員 か ら選 出 され た取締役で あった13。 く
LO (
Bu
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ていた。株主総会 開催 の通知 は、BA
1
7
4
神奈川大学大学院経営学研究科 『
研究年報』第 1
4
号
2
01
0
年 3月
表 4アベ ンテ イスの コ-ポ レー ト・ガバナ ンス
ローヌ .プーラン
へキス ト
アベ ンテ イス
取席役数
1
2
1
8
人
20
人
1
6
人 _
従業員代表
3
人 (
1
6
25%)
1
0
人 (
50%)
4人 (
25
%)
取締役の資格
自然人 または法人
自然人
自然人
取廟役の持株制限
最低 1
0
株
なし
最偵 l
株
任期
6
年
5
年
5
年
棉
企
経
業
横
普 企業経営機構体制
年齢制限
一層型企業経営機構
6
5
歳 以下
二層型企業経営機構
なし
二層型企業経営機構
1
/3が75
歳 以下
会議の頻度
必要に応 じて
最低 6ケ月に1
回
最低 3ケ月に1回
意思決定
定足数に対す る多数決
単純 な多数決
単純 な多数決
報酬
出席 に応 じた報酬
固定報酬 と変動報酬
固定報酬 と変動報酬
総会の通知
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に公表
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公式公報で公表
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秩
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総
主
T
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= 出席に必要な株式保有期間 総会の5日前
委任状 による投票
あり
総会の7日前
あり
J
総会の3日前
のツ-ルが許可
あり
レコ ミュニケーシ
(
テ レビ会議
され
とテ
ョン
る)
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出所)Chr
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200
41
35
3
6頁 を参考 に筆者作成
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) に よ って告
れ たので あ るcM&Aに おいて、 各 国政府 間の対
知 された。委任状 に よる投票 が認 め られ 、 1株 1
立 に よって、M&Aが行 なわれ て い る とい う現状
議決権制 が定 め られていた。 さらに、株主総会 で
が ある。 これ に よ り、
リ市場 の公平性 が失 われて し
はテ レビ会議 とテ レコ ミュニケー シ ョンの ツール
ま うため、国家 に よる市場 の介入 は厳 に慎 まなけ
が許可 されていた。 この よ うに、 アベ ンテ イスは、
ればな らない。国家 レベル の利害衝 突 をな くす た
両社 の よ り厳 しい規 定 を採用 して いた。
めに も、地域統合 を進 め、国家 レベル の利害 とい
第 2の問題 は、 フランス政府 による介入で ある。
う概念 その もの をな くす必要 があ ると考 え られ る。
フランス政府 は、 フランス を代表 す る企業 が、 ド
イツ とフ ランスの合 同出資の企業へ とな ることに
42 アル セ ロール ミタルの企 業経営機構改革
抵 抗 が あ った15。 つ ま り、 フ ラ ンス政府 は、国 内
鉄鋼 会 社 で あ るアル セ ロール ミタル もク ロス
の有 力 な企業 は純 粋 な フランス企業 で あ るべ きで
ボ ーダ ー M&Aに よって誕生 した企業 で ある。 ア
あると考 えていた。 そのために、 フランス政府 は
ル セ ロール ミタル は、 ル ク セ ンブル クの アル セ
サ ノフ イ ・サ ンテ ラボによるアベ ンテ イスの買収
ロール とオ ラ ンダの ミタル スチ -ル の合併 に よっ
を支援 した といわれ て い る16。 一連 のM&Aに は、
て誕生 した。 アル セ ロール と ミタル スチ ール の両
政府 の介入 が見 られ るな ど、極 めて政策 的に行 な
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ndum
社 は、2006年 に 「協 定 規 約 (
われていた とい う特徴 がある。企業規模 がアベ ン
以下 「
MOU」とい う)」に調 印 し,
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テ イスの半分程度 で あったサ ノフ イ ・サ ンテ ラボ
合併 に ともな うコーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの問題
によって、 アベ ンテ イスへ の敵対 的買収 が行 なわ
につ いての合 意 を した17。 その ため、 アル セ ロ-
EUにおける経営統合 とコーポレー ト・ガバ ナ ンス
ル ミタル の コ ー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス はMOUを
1
75
の全 員 が独 立 取 締 役 で構成 され て い た。 その構成
基礎 と して構 築 され る こ と とな っ た。MOUに基
員 は、6ヶ国 の国 か ら招曙 され 、 国 際 的 な視 野 を
8
人 と し、アル セ ロー
づ いて 、設立 時 は、取締 役 は 1
持 つ こ とがで きた。 アル セ ロール の取 締 役 の独立
ル 出身 の取締 役 か ら 6人 、 ミタル スチ ール 出身 の
性 の基 準 は、 (1) 社 内 の 管 理 職 の位 置 を 占め な
取締 役 か ら 6人 、 アル セ ロール の主 要株 主 を代 表
い、 (2) 独 立 した判 断 に影 響 を及 ぼ す 可 能 性 が
す る取 締 役 か ら 3人 、従業 員代 表 か ら 3人 指名 す
3)
あ る経 営機 関 の メ ンバ ー と家族 関係 が ない 、 (
るこ と とな った 18。
会 社 の株 式 資本 の少 な くと も 2%を所 有 す る株 主
まず 、 アル セ ロール は、本 拠 地 をル ク セ ンブル
4) 会 社 に取 締 役 会 の意 見 に判
を代 表 しない 、(
クに設 置 しル クセ ンブル ク法 に準拠 して い た。 そ
断 に影 響 を及 ぼす 品物 あ るい はサ ー ビス を提 供 し
して 、 遵 守 す るコー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス規 則 に
ない、 の 4つ が挙 げ られ る。取 締 役 会 内委 員 会 は、
国際基 準 全般 を挙 げて い た。 具体 的 な コ ーポ レー
監 査 委 員 会 と指名 ・報 酬 委 員会 の 2つ で あ った 19。
ト ・ガバ ナ ン ス を考 察 す る と、 一 層 型 企 業 経 営
つ ぎに、 ミタル スチ ール は、 本拠 地 をオ ラ ンダ
機 構 を採 用 し、 取 締 役 会 会 長 とCEOの 役 割 は 分
に設置 しオ ラ ンダ法 に準 拠 して い た。 そ して、遵
8人 を定 員 と し、 そ
離 して い た。 取 締 役 会 は、1
守 す る コ ー ポ レー ト ・ガバ ナ ンス規 則 にNYSE上
表 5アル セ ロール ミタル の コーポ レー ト ・ガバ ナ ンス
アノ
レセロール
準拠法
ル クセ ンブル ク法
遵守
レー するコーポ
ト.ガバナ 国際基準全般
ンス規則
企業経営機構
一層型企業経営機構
CEOの分離と 分離
取締役会会長
ミクル スチ-ル
オ ランダ法
アルセ ロール ミタル
ル クセ ンブル ク法
SEC規則
Unde
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オY
ランダ法
SE上場規則
T
Nh
Ye
SE
Me
上場規則
mor
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f
オ ランダコーポ レー ト .ガバ ル クセ ンブル クコーポ レナ ンス規則
ト .ガバ ナ ンス原則
一層型企業経営機構
一層型企業経営機構
なし
分離 (
CEOは取締役 を兼任)
取締役会人数
18
9
18 (
過半数 が独立)
取締役 の国籍
6ヶ国
4ヶ国
めないo
(
2
)独立 した判 断に影響 を及
ぽす可能性 が ある経営機 関の
メ ンバ ーと家族 関係 がない○
(
1
)会社の株式資本
社 内の管理職の位置
を占
3
の少 な
く
とも2%を所有す る株主 を代
シ ヨンにつ かな
(
2)経営管理 の全 ての構成 員
と関係 がないo
(
3) ミタル スチ ールか らその
(
1
)
社 内の執行力の
あるポジ
年
間収益
の1
%以上 を取
引す
るあ らゆ る組織 の執行役 を務
独立性 の基準
い
D
(
2)NYSEの独立性 の基準
(
3)ル クセ ンブル ク証券取引
所 コーポ レー ト .ガバ ナ ンス
原則
(
1
)CEOの兼任 の禁止
表
判
いはサービスを提供
(
4)会社
断に影響
しないo
に取締役会
を及ぼす品物
の意見
しない○
ある
に めない○
委員会
指命 .報酬委員会
監査委員会
報酬委員会
監査委員会
指命 .報酬 .コーポ レー ト .
監査委員会
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出所)Ar
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2005]
,
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Mi
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2007]
,
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2005]を参考 に筆者作成 。
176
神奈川大学大学院経営学研究科 『
研究年報』第1
4号
201
0年 3月
場規則やSEC規則、オ ランダ法、オ ランダ ・コー
の存在 は不可欠な もので あるとい うことがで きる
ポ レ- 卜・ガバ ナ ンス規 則、 を挙 げて いた。 具
で あろ う。
体 的 なコーポ レー ト・ガバ ナ ンス を考察す ると、
一層型企 業経 営機 構 を採 用 し、取締 役 会会長 と
CEOの役割 は分離 していなか った。取締役会 は、
9人 を定員 と し、 その全員が独立取締役で構成 さ
43 M&Aにお ける最善 の コーポ レー ト・ガバナ
ンス改革
本拠地が異 な り、準拠法 が異 なる 2つの企業 が
れていた。 その構成員 は、4ヶ国の国か ら招樗 さ
合併 す る場合 には、法例 ・規則 等 だけで はな く、
れ、 アル セロールほ どではないが、国際的な視野
文化や歴史、慣習や イデオ ロギーなどさま ざまな
を持つ ことがで きた考 えられ る. ミタル スチール
要 因によって構築 されたコーポ レー ト・ガバ ナ ン
の取締役 の独立性 の基準 は、 (1)社 内の執行 力
スを統合 す る必要がある。 この よ うな統合作業の
の あるポジシ ョンにつ かない、 (2) 経営管理 の
全 ての構成 員 と関係 がない、 (3) ミタル スチ -
過程 では、幾度 に も.
わた る国家 レベルでの会議や
調整 な どが実施 されてい る。 その よ うに して、複
ルか らその年間収益の 1%以上 を取引す るあ らゆ
数 の国で構築 されたコーポ レー ト・ガバ ナ ンスを
る組織 の執行役 を務 めない、の 3つが挙 げ られ る。
企業 レベルで統一す るには、国家 レベルでの統合
取締役会 内委員会 は、監査委員会 と指名委員会、
と同様 に、幾度 に もわた る合議や調整 が必要 とな
報酬委員会の 3つで あった20。
るのである。
そ して、両社 が合併 して誕生 したアル セロール
これ 抜)対 等合 併 は もち ろん、 吸収合 併 や買
ミタル は、本拠地 をル クセ ンブル クに設置 しル ク
収 の場合 に もい え る。立 場 が対 等 で ない に して
セ ンブル ク法 に準拠 してい る。 そ して、遵守す る
も、吸収 もしくは買収 され る企業 に も、文化や歴
コーポ レー ト・ガバ ナ ンス規 則 にMOU、NYSE
史、制度や慣習、 イデオ ロギーなどは存在す るの
上場規則、ル クセ ンブル クコーポ レー ト ・ガバ ナ
で ある。 その環境 が急激 に変化す ると少 なか らず
ンス原則 を挙 げてい る.具体的 なコーポ レー ト・
内部 か らの反発が生 じる。 これ を最小限 に抑制す
ガバ ナ ンスを考察す ると、一層型企業経営機構 を
るため に も、 入念 な合 議 や調整 が必要 なの で あ
採 用 し、取締 役 会会 長 とCEOの役 割 は分離 して
る。先 に挙 げたダイム ラークライス ラーの対等合
8人
い る。取締 役 会 は、 アル セ ロール と同様 、1
併 の よ うに、内外 に対等で あることを公表 しつつ
を定員 とし、 その全貝 が独立取締役で構成 されて
も、実質的なダイムラーの支配 によって クライス
いた。 アル セロール ミタルの取締役の独立性 の基
ラ-部門 とダイムラー部門の連携 が取れ な くなっ
準 は、 (1)CEOの兼任 の禁止 、 (2)NYSEの独
て しまった例 があるO ダイムラー とクライス ラー
立性の基準 、(3)ル クセ ンブル ク証券取引所 コー
では、両社の文化 が極端 に異 なるに もかかわ らず、
ポ レー ト.ガバ ナ ンス原則、の 3つ が挙 げ られ る。
ダイムラー部門 とクライスラー部門の経営者 を分
取締役会 内委貞会 は、監査委員会 と指名 ・報酬 ・
け、 それぞれがほぼ独立 して経営 していた。 この
コーポ レー ト・ガバ ナ ンス委員会の 2つ がある21.
よ うな状況 の なか、 ダイムラ-クライスラーが失
アル セロール ミタルのコーポ レー ト・ガバ ナ ン
敗 に終 わって しまった ことか らも、企業 内では合
スは、本社 を設置 したアル セロールの コーポ レー
議 や調整の うえで統制 され ることが重要で あると
ト ・ガバ ナ ンス を基 に、MOUに よって規 定 され
考 え られ る。
てい る。MOUはアル セ ロール と ミタル スチ ール
その方 法 と して、 アル セ ロール ミタル のMOU
がM&Aを行 う際 に合議 の もとで決 定 され た もの
の よ うな両社の合意の もとで作成 された企業独 自
で あ る.つ ま り、MOUに よって、両社 の コーポ
コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 を新 たに策定す る
レー ト ・ガバ ナ ンスの調和 が図 られてい るので あ
ことが必要 で あ ると考 え られ る。EUが地域 レベ
る。 アルセ ロール ミタルのM&Aにおいて、MOU
ルの コーポ レー ト・ガバ ナ ンスの調和 を進 め る際
EUにおける経営統合 とコーポレー ト・ガバナンス
1
77
図3巨∪と企業のM&Aにお けるコーポ レー ト・ガバナ ンスの調整
EU
国 レベル
合議
調和
地
域
統
一
(
出所)著者作成。
に も、EU内での最低 限の基準 を定 め るこ とを 目
し、 その設立方法の 1つ の合併 が含 まれた ことか
標 とした。地域 レベルでの コーポ レー ト・ガバ ナ
ら、EUにおい て ク ロス ボ ー ダ ー M&Aが盛 ん に
ンスの統合 と同様 に、企業 がM&
Aに伴 って コー
なった. そ こで、 クロスボーダ ーM&
Aに よって
ポ レー ト・ガバ ナ ンス改革 が必要 とされ る場合 は、
新た誕生す る企業 におけるコーポ レー ト ・ガバ ナ
企業 内で独 自の基準 を定め、 コーポ レー ト・ガバ
ンスをどの よ うに構築す るのか、 とい う問題 が生
ナ ンス原則 として文書化す ることが必要 なので あ
じたので ある。
る。
実際に企業 では、両社の よ り厳 しい規定 を採用
す ることで新 しいコーポ レー ト・ガバ ナ ンスを構
5 おわ りに
地域統合 に関す る研究 はい まだ発展途上で あ り、
築 した り、両社間で コーポ レー ト・ガバ ナ ンスに
関す る合意文書 を作成 し、原則化す ることで、コー
ポ レー ト・ガバ ナ ンスを調整 していた。 また、サ
地域統合 その ものに対 して も意見の割れ るところ
ノフ イ ・アベ ンテ イスに関 して は、M&
Aに国家
で ある。論者 によっては、地域統合 をブロ ック経
が介入す るなど、国家 レベルの利害 が関わ ってい
済の よ うなネガテ ィブな もの として とらえ、地域
ることが明 らか となった。 そ こで、筆者 は、国家
統合 をまるで悪 の よ うに論 じてい る。 しか し、筆
によ る介入 は、市場 の公平性 を侵 す もので あ り、
者 の考 える地域統合 は、経済発展 をために地域 が
厳 に慎 まなければな らず、 それ を地域統合 を進め
協調 し、 よ り国際的な地域経済 を創造す るもので
ることによって解決す ることがで きるで あろ うこ
なければな らない
。 その ような意味で、地域統合
とを明 らかに した。 また、
M&Aの際の コーポ レー
は、 グローバ リゼーシ ョンを段階的に達成 しよ う
ト ・ガバ ナ ンス問題 に対 して は、両社 間で合議 ・
とす るもので あ り、統合地域 が複数出現す ること
調整 の もとで コーポ レー ト・ガバ ナ ンス原則 を策
で各統合地域 がグローバル な視点では さまざまな
定す ることで円滑 にコーポ レー ト・ガバ ナ ンスを
制度 を調和す ることにつ なが るので ある。
構築す ることがで きることを解明 した。
EUで は、 地 域統 合 が進 み EUが単 一 市 場 を完
成 させ るとM&
A増加 した。 その性質 は、 は じめ
はアメ リカ企業 によるEU企業 の買収 で あったが、
その後EU企業 はアメ リカ企業 に対抗 して、 アメ
リカ企業 にM&
Aを仕掛 け るよ うにな った。 さら
に、欧州株式会社法 によって欧州株式会社が誕生
1
7
8
神奈川大学大学 院経営学研究科 『
研究年報』第 1
4
号
勤草書房.
注
】
奥村唯一【
2007 『
グローバル資本主義 と巨大企業
1 本稿 で は、M&Aは敵対 的買収 を含 む買収 ・
2001 『
グローバ リゼーシ ョ
加藤義菩 ・青木一能 【
2 小島大徳 【
20041
は、 コーポレー ト・ガバ ナ ン
ス原則 とは、 「
企業 の コーポ レー ト・ガバ ナ
ンス構築 を目的 として、経営者 が企業の利害
関係者間の利害調整 を行いなが ら、健全で効
世 紀世 界 の経済 ・政治 ・社
ンの光 と影-21
会-』文異堂.
】
2
008 『
企業の責
厚東偉介 ・平 田光弘 ・菊池敏夫 [
任 ・統治 ・再生』文具堂.
】
率的な企業経営 を行 える企業構造の一形態 を
2
009 『
企業経営原論』税務経理協会 .
小島大徳 [
なす もの」で あると定義 してい るO小島大徳
小島大徳 【
2
008
a
汗EUの企業行動 と企業統治改革 」
【
2004】
1
87頁.
「
東 ア ジア共 同体 首相 が講演
」『朝 日新 聞』
2009年11月1
6日付。
4 鈴井清巳 [
2005】
92
頁.
5
合併』 日本経済評論.
】
合併 を意味す る。
3
2
0
1
0
年 3月
た とえば、小島大徳 【
2007]
215頁.
などが挙 げ
られ る。
6 小島大徳 【
2008a]
89頁.
7 奥村暗-【
2007】
256
257頁.
8 奥村暗-[
2007】
398頁.
9 奥村暗-[
2007]
206
208頁.
1
0 Eur
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nCommi
s
s
i
on【
2001
a】
ll European Commi
ssi
on【
2001a】
Ti
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Ⅱ,
Fo
r
ma
t
i
on.
『
企業の責任 ・
統治 ・
再生一 国際比較の視点-』
78
95頁.
文具堂 ,
】
2008
b 「自由の対立
小 島大徳 【
」『国際経営論集』
第36号,
神奈川大学経営学部,
11
9
1
34頁.
】
小邑木徳 【
2
00
7 『
市民社会 とコーポ レー ト・ガバ
ナ ンス』文具堂.
2
004]『
世界の コーポ レー ト・ガバ ナ ン
小島大徳 【
ス原則一原則の体系化 と企業の実践-』文英
堂.、
∴
、
」『総合政
信夫隆司 [
2
004]
「コへインの国際制度論
策』第5
巻第 1号,
岩手県立大学,
75
11
8頁.
2005】「
m
鈴井 清 巳 【
(自由貿 易協 定) 再 考 -
EUの対地中海通商政策 を手がか りに-」『
調
開発研究 セ ンター 2
0
0
4-Ⅳ
1
2 Chr
i
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s・Ar
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oBr
i
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20041
20頁.
査研究報告書
1
3 Chr
i
s
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s・Ar
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ur
oBr
i
s【
2004】
20頁.
-2
0開発戦略 と地域経済統合- エ ジプ トを
1
4 Chr
i
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osCa
bol
i
s・Ar
t
ur
oBr
i
s【
2004】
20頁.
1
5 奥村略- [
2007]32頁.
中心に-』 アジア経済研究所 ,
91-1
05頁.
チャールズ ・グラン ト著 ・伴野文雄訳 【
1
995】『
EU
1
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