Comments
Description
Transcript
医薬品特許
2010年問題 いくつかの医薬特許が切れることが、 なぜ大きな問題になるのか? 医薬品業界の3つの特殊性に由来 1. 新製品創出の困難さ 2. 少品種で巨大な売上を稼ぐ 3. 特許切れによる売上の激減 2 2010年前後に特許切れを迎える主な医薬品 年 2008 2009 2010 2011 2012 2013 薬品名 フォサマック プログラフ アムロジピン オノン ラジカット タケプロン ハルナール コザール アリセプト クラビット パキシル リピトール アクトス シングレア バイアグラ ブロプレス パリエット 対象疾患 骨粗鬆症 臓器移植 高血圧 アレルギー 脳梗塞 胃潰瘍など 前立腺肥大 高血圧 認知症 感染症 うつ病 高脂血症 糖尿病 喘息 ED 高血圧 胃潰瘍など 発売元 メルク/萬有 アステラス ファイザー 小野薬品 三菱ウェル 武田薬品 アステラス メルク/萬有 エーザイ 第一三共 グラクソ・スミスクライン ファイザー 武田薬品 メルク/萬有 ファイザー 武田薬品 エーザイ 2008年売上 3300M$ 2010億円 2800M$ 250億円 298億円 2714億円 1378億円 3350M$ 3038億円 970億円 1106M$ 13476M$ 3870億円 4266M$ 1764M$ 2231億円 1599億円 弁理士会研修資料から改(東京大学大学院理学系研究科 佐藤健太郎) 3 国内大手4社の主要医薬品売上(2008年) アクトス 3870億円 その他 5226億円 プログラフ 2010億円 その他 3640億円 アステラス 9657億円 武田薬品 1兆5383億円 タケプロン 2714億円 リュープリン 1270億円 ブロプレス 2303億円 ガスター 530億円 ベシケア 714億円 ハルナール 1166億円 リピトール 953億円 ミカルディス 644億円 アリセプト 3038億円 オルメテック 2111億円 その他 3180億円 その他 4929億円 第一三共 8625億円 クラビット 977億円 メバロチン 608億円 エーザイ 7817億円 パリエット 1599億円 4 新薬の創出は難事業 そもそも医薬とは何か? 人体を動かす物質であるタンパク質に結合し、 その働きを調整する化合物 胃潰瘍 高脂血症 高血圧 細菌 感染症 胃酸放出を司るタンパク質に結合し、出過ぎを防 ぐ コレステロール合成を司るタンパク質に結合し、合 成を止める 血圧上昇ホルモンが結合するタンパク質に結合し、 その作用を止める 細菌の細胞壁を合成するタンパク質に結合し、合 成を止める 5 しかし、創薬の道のりは単純ではない ♥ 体内には多数の似たようなタンパク質があり、これら を見分けて狙いとするタンパク質のみに結合する必 要がある ♥ 医薬は患部にたどり着く前に、胃酸・消化酵素・代謝 酵素などによって分解されてしまわない、丈夫な構 造である必要がある ♥ 水に溶かして飲むため、ある程度の水溶性が必要 ♥ 細胞膜を通過して吸収されるために、ある程度の脂 溶性が必要 ♥ 毒性・発ガン性などがない、高い安全性が必須 ……等々、多数の条件を満たしている必要がある 6 現在、研究所で作り出された化合物のうち、 医薬として世に出るのは約2万分の1 一つの医薬が世に出るまでには、約15年の 歳月と、1500億円の費用が必要 最近では、新規構造の医薬は世界中でわず か年間15~20種程度しか認可されない 7 研究所で数千分の一の確率をくぐり抜けた医薬品候補は、 厳密な臨床試験を突破せねばならない(通過率:約5%) 第Ⅰ相 健康な被験者に少量ずつ投与し、安全性を確認 第Ⅱ相 軽症の少数の患者に投与し、体内動態の確認有効性・安全性 の確認 第Ⅲ相 多数の患者に投与し、比較対象となる医薬との薬効の差、副 作用の有無を確認 承認申請 得られた全データを国の機関に提出、有効性・副作用・統計の 妥当性などの検証 8 一般用医薬品 日本の市場は約7700億円(2009年) 数年間、横ばいから微減傾向が続く ドリンク剤、感冒薬などが大きなシェアを占める 医療用医薬品 日本の市場は約8.9兆円、世界では70兆円規模 市場の伸び率は低下傾向 高脂血症・高血圧・ガンなどの治療薬が大シェア 新たな成分が開発されるのは、ほとんどの場合医療用 トータルすれば、研究所で作られた化合物のうち、薬に なるのは2万分の1一つの薬が世に出るまでに、15年の 期間と1500億円の費用がかかる 佐藤健太郎著から 9 【DDS(ドラッグ・デリバリー) の目的と要素技術】 「必要な時に、必要な量の薬剤をターゲッ ト部位に選択的に送達する」 ターゲットは癌、循環器疾患、糖尿病等 この実現のための技術が重要 10 【DDS(ドラッグ・デリバリー)の要素技術】 •薬剤放出技術 コントロールリリース技術、徐放化技術、 生物・化学・物理的応答薬剤など •薬剤標的化技術 能動標的(分子標的・抗体標識)、受動標的(PEG応用) エネルギー併用DDS技術 •薬剤吸収制御技術 薬剤の浸透、吸収制御(生物・化学的制御/物理エネルギー) 遺伝子導入・発現促進 11 新薬の開発には、 予期せぬ副作用の発現 既存薬に及ばない効果 などの不確定要素が多くあるため、 莫大な予算と時間が必要 新薬の開発に辿り着いた開発者の 権利(知的財産権)を守るために特許を利用 製薬企業にとって特に重要で価値が高いのは物質特許 物質特許を取得するためには大きな費用と時間が必要 それ以外の特許などで自社の知的財産を強化する 12 「物質特許」 :新しい化学構造の物質が医薬品に使用できること を発見 「製法特許」 :既存の医薬品の新しい製造方法を発見 「製剤特許」 :錠剤からカプセル剤など新しい製剤による処方 「用途特許」 :既存医薬品の新しい効能や効果を発見 「用法・用量特許」 :既存医薬品の新しい用い方に効果を発見 特許期間(patent term) 特許権期間は出願した日から20年間 最長5年間の延長制度あり 13 特許期間と治験期間の関係 特許出願 治験届 特許期限 出願から20年 成立日 延長 承認日 治験届 承認日 特許法67条2(特許期間延長制度) 他の制度により 「一定期間の独占排他権」の実施ができない場合、5年を限度に 特許期間が延長できる 薬事法等の規定により、製造販売承認の為には、臨床試験が義務付けられている ので、この期間延長制度が適用される 14 H2ブロッカー事件(シメチジン事件) H2ブロッカー(シメチジン)胃腸薬製造方法の特許権侵害 原告:特許権者 スミス・クライン 被告:藤本製薬 逸失利益25億6千万円の損害賠償及び5億円の不当利得返還請求 争点はシメチジンを生産する方法の発明について特許権の侵害があるかないかと いう点であり、被告はレック法によりシメチジンを生産していたため、原告が特許権を 所有する「オキシ法」によるシメチジンの製造方法の侵害にはあたらないと主張した が、原告側は不純物や収率の問題等でレック法では実施不能であり、被告のシメチ ジンの生産についてはオキシ法を使ったことが明らかであると反論 結果原告側の主張が認められ、侵害がなかったならば得られたはずの原告の逸失 利益を損害額として認めたため、1998年10月の時点での国内最高額の賠償額 その後、被告「Y1」らはオキシ法は特許権としては無効だとして特許無効審判を起 こし、一旦は無効審決がなされたが、今度は原告側がその無効審決の取消しを求め て、東京高等裁判所に出訴し、結果無効審決の取消しが認められた 二転三転後、最終的には藤本製薬がスミス・クラインに和解金を支払うことで 和解が成立 (金額不明) 15 インド、後発薬製造で独バイエル特許に対し初の強制実 【動向】発信:2012/03/16(金) 施権発動 国境なき医師団(MSF)の発表によると、インド特許庁は3月12日、同国で初となる医 薬品特許の強制実施権を発動した。これにより、インドの後発医薬品(ジェネリック薬)製 造会社ナトコは、ドイツのバイエルが特許権を有するトシル酸ソラフェニブ製剤による腎 臓・肝臓がん治療薬を製造できるようになった。ナトコはバイエルに対し、特許保護期間が 継続する2020年までの8年間、定率6%の特許権使用料を支払うとしている*。 インドは途上国で使われているジェネリック薬の大半を供給し「途上国の薬局」と呼ば れており、今回の決定は、特許権を付与された薬の価格が高額である場合に、ジェネリッ ク版の製造を可能にする強制実施権の発動が認められた初のケースとなった。特許庁 は、バイエルが適正で手ごろな薬価設定を怠り、インド国内で持続的に十分な量の薬を供 給していないことを判定の理由としている。ジェネリック薬による価格競争で、インド国内の トシル酸ソラフェニブの価格は、月間5500米ドル(約45万円)から、およそ97%減の175米ド ル(約1万4500円)近くまで、劇的に低下することが予想されるとしている。 MSFは、「今回の判定は一種の警告で、不当な価格で薬の流通や購入を制限する製 薬会社は、制裁を受けることを示している。特許庁には、国民が重要な薬を入手できるよ う、製薬会社の独占的な権力をけん制できる権限があり、この判定が前例となり、ほかの 医薬品や輸出品への適用が認められれば、ジェネリック薬治療に頼っているMSFの患者 や途上国の人びとにとって、大きな後押しとなりうる」と説明している。 16 光触媒 光触媒を応用した商品の例 (a)空気浄化用疑似観葉植物、(b)蛍光灯、(c)自動車サイドミラー用水滴防 止フィルム、(d)自動車のコーティング、 (e)光触媒をコートしたテント(右側は未処理)、(f)光触媒コートしたビルの 壁面、(g)街灯のカバー、(h)コップ http://www.d7.dion.ne.jp/~shinri/nyumon.html 17/18 「光触媒」について調査し、どのような活用がなされているか 今後、どのような分野に活用できるかを考えてください