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運用中の光ネットワーク資源の利用効率を 高める波長デ

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運用中の光ネットワーク資源の利用効率を 高める波長デ
運用中の光ネットワーク資源の利用効率を
高める波長デフラグメンテーション技術
Photonic Network Defragmentation Technology Improving Resource
Utilization during Operation
● 関屋元義 ● 王 溪 ● 青木泰彦 ● 曽根恭介 あらまし
クラウド型サービスや,スマートフォンなどの普及に伴い,ネットワークを活用した
様々なサービスがデータセンターを中心に展開されようとしている。それを支えるコア
ネットワークにおいては,急速に増加するデータ量を支える回線容量の強化とともに,
オンデマンド型で提供されるサービスに向けた柔軟なネットワークの実現,そして低消
費電力化などがより強く求められている。このため,光ネットワークでは,従来の固定
された波長単位での光パスの管理に代わり,光波長上で必要な帯域を自由に設定できる
フレキシブル光ネットワークの研究が盛んになされている。このような光ネットワーク
においては,運用途中で光パスの増減などの変更により光周波数帯域の利用が断片的に
なる。富士通研究所が開発した波長デフラグメンテーション技術は,これを連続した領
域に整理・集約することでユーザー領域を確保し,リソースの継続的な有効活用を可能
とする。
本稿では,フレキシブル光ノード
(光送受信,スイッチ)
,フレキシブル光ネットワー
ク上での収容容量およびデフラグメンテーションの効果,そして無瞬断の波長デフラグ
メンテーションの原理検証実験について報告する。
Abstract
Recently, various new information services have emerged as a means for sustaining the
significant growth of modern applications spearheaded by Cloud and smart phones. These new
services rely heavily on the underlying network and data center infrastructures. Thus, core
networks are demanded to further expand the capacity to support the rapid increase in data
traffic. Meanwhile, it is becoming increasingly important for core networks to be more flexible
in order to accommodate feature-rich services such as bandwidth-on-demand. Additionally, for
the realization of a sustainable human society and eco-friendly IT services, products capable of
low energy consumption are strongly desired. In the near future, it is expected that conventional
optical networks which operate on a rigid fixed channel basis will be replaced by flexible optical
networks in which signals can be freely allocated on arbitrary frequency slots of the optical
spectrum. This flexibility enables a more dynamic and efficient utilization of resources, which
in turn leads to lowered energy consumption, heightened usable capacity, and superior agility,
making it capable of providing adaptive networking services based on the dynamism of user
requests. In flexible optical networks, due to the frequent setup and tear down of optical signals
that occupy different spectrum slots, the utilization of such slots has the potential to become
heavily fragmented. This so-called spectrum fragmentation phenomenon dramatically degrades
resource utilization and reduces usable network capacity. Therefore, spectrum defragmentation
technology that Fujitsu Laboratories has developed is needed to restore efficient resource
utilization by reallocating the fragmented slots to more continuous ones. In this paper, we
discuss a photonic network defragmentation technology that can improve resource utilization
during network operation by continuous and in-sync reconfiguration of flexible optical nodes
(transceivers and optical switches, etc.). We show the effectiveness of this technology through
network simulations, as well as experimental results of hitless defragmentation.
564
FUJITSU. 64, 5, p. 564-572(09, 2013)
運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める波長デフラグメンテーション技術
ま え が き
デフラグメンテーション技術を開発した。
本稿ではフレキシブル光ネットワークとそれを
クラウド型サービスやスマートフォンの普及に
実現するために必要となる,ソフトウェアで制御
より,日常生活の中で様々な形で大量の情報が生
できるフレキシブル光ノード(光送受信機,スイッ
成,消費され,データセンターを中心に様々なサー
チ),ネットワーク上でのトラフィック収容および
ビスがネットワークを介して提供されている。
デフラグメンテーションの効果分析,実現検証に
光ネットワークは従来,大容量の情報を安価か
つ高信頼,そして低消費電力で伝送する技術とし
て,ビットレートの高速度化,波長多重による大
容量化を進めてきた。これらの特長を生かしつつ,
様々な利用形態に応じ,柔軟に対応する光ネット
ワークを実現することで,これらのサービス要求
ついて報告する。
フレキシブル光ネットワークおよび有効性
フレキシブル光ネットワークを実現する技術に
ついてその特徴を以下に説明する。
ネ ッ ト ワ ー ク の 構 成 を 図-2に 示 す。 各 拠 点 に
はフレキシブル光ノードが配置され,ユニバー
に応えようとしている。
その中心となるのが,以下に示すフレキシブル
サル光送受信機の間を光パスで結ぶ。このとき
光ネットワークである。光周波数グリッド上で,
長 距 離 を 伝 送 す る 場 合, 例 え ば 拠 点1,5間 を 結
光の周波数帯を変調帯域に比較し小さな周波数ス
ぶ 光 パ ス に はQPSK(Quadrature Phase Shift
ロット(6.25 GHz)間隔に分割する。光パスの中
Keying)を設定し,短距離,例えば拠点1,2間を
心波長を,占有スロット幅が12.5 GHzの整数倍に
結ぶ光パスには16QAM(Quadrature Amplitude
なるようにスロット境界上に割り当てる。光パス
Modulation)を設定する。これにより途中のノー
は任意の複数のスロット上にまたがることが可能
ドで電気信号に戻す光再生中継を行わずに信号
で,異なる周波数幅を必要とする複数の変調方式,
を送ることができる。フレキシブル光ノードは
複数のレートの信号を,状況に応じて必要な区間
光ROADM(Reconfigurable Optical Add Drop
に適切な周波数領域を割り当てる。これにより,
Multiplexing) 装 置( 光 ス イ ッ チ を 含 む ), ユ ニ
従来の固定グリッドに対して周波数利用効率の格
(1)
ともにソフト
バーサル光送受信機から構成され,
段の改善が実現可能となる(図-1)。
ウェアにより変調方式や波長設定などの設定パラ
このような光ネットワークにおいては,運用途
メーターの変更が可能である。前者を構成する波
中での光パス経路の増減などの変更により光周波
長選択光スイッチは任意の方路に任意のスペクト
数帯域の使用が断片的になることがある。富士通
ルスロットを割り当てることで光のパスを切り替
研究所では,これを連続した領域に整理・集約す
える。これにより,フレキシブル光ノードはADD/
ることにより多くのユーザー領域を確保し,周波
DROPおよびThruの光パスを任意の方路に切り替
数利用の効率化を継続的に行うことができる波長
えることができる。後者は図-2(b)に示すように
変調方式に関わらず,波長配置は固定
40 Gbps 10 Gbps 100 Gbps 100 Gbps 40 Gbps 10 Gbps
変調方式に応じて,最小間隔単位で自由に配置
2×200 Gbps 2×200 Gbps 1×400 Gbps 4×100 Gbps
256QAM
QPSK
16QAM
QPSK
波長グリッド(例:50 GHz間隔)
波長グリッド(例:6.25 GHz間隔)
(a)現在:固定グリッドでの運用
(b)将来:適用変調+可変グリッド
図-1 波長配置 固定グリッドから可変グリッドへ
FUJITSU. 64, 5(09, 2013)
565
運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める波長デフラグメンテーション技術
ユニバーサル
光送受信機
16QAM
ソフトウェアで切替え
QPSK
短距離
100 km
ユニバーサル
光送受信機
長距離
1000 km
拠点1
光ROADM装置
フレキシブル光ネットワーク
拠点3
拠点2
フレキシブル
光ノード
拠点4
拠点5
ユニバーサル
光送受信機
(a)フレキシブル光ネットワークと距離に応じた変調方式の切替え
Tx DSP
DAC
E/O
Rx DSP
ADC
O/E
送信
QPSK
16QAM
フレーマー
受信
E/O:Electrical to Optical Convertor
O/E:Optical to Electrical Convertor
切替え可能
(b)ユニバーサル光送受信機の構成
図-2 フレキシブル光ネットワーク
DSP(Digital Signal Processor),DAC(Digital
to Analog Convertor),ADC(Analog to Digital
Convertor)
,E/O,O/E か ら 構 成 さ れ, 主 に,
ネットワーク条件:
・14ノ ー ド 23リ ン ク: メ ッ シ ュ ネ ッ ト ワ ー ク
(注1)
(DTnet)
DSPの内部動作を切り替えることにより,同一の
・平均パス長:342 km(最大728 km)
ハードウェアで異なる変調方式,例えばQPSK,
・変調方式:DP-QPSK,DP-16QAM,DP-64QAM
16QAMの光パスの送受信を行うことができる。ま
・所要スロット数:各16,8,6スロット
た,光パスの中心波長は周波数スロット上で任意
・伝送距離:1250,500,200 kmを想定
に外部から設定することができる。ネットワーク
上記ネットワーク上で,ランダムにソースとデ
上でこれらを適切に設定することにより任意の
スティネーションを選択しその間を結ぶ光パスに
ノードから任意のノードにかけての光パスをソフ
ついて二つのシナリオ,すなわちDP-QPSK(Dual
トウェアで外部から設定することが可能となる。
Polarization-QPSK)のみの場合と3種類の変調方
次に,ここで述べたようなフレキシブル光ネッ
式を距離に応じてアダプティブに使い分けた場合
トワークの有効性についてシミュレーションによ
について収容可能な伝送容量を比較した。その結
る検証を行った。シミュレーション条件を以下に
果,後者の場合はDP-QPSKのみの場合に比較し
示す。
566
(注1) Deutsche Telecom のネットワークトポロジー。公開さ
れた情報でネットワークのシミュレーションにおいて
標準的に使用される。
FUJITSU. 64, 5(09, 2013)
運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める波長デフラグメンテーション技術
14ノード,23リンク
平均パス長342 km(最大728 km)
256
100 132
249
217
183
32
30
55.16
20
36.64
10
固定グリッド
フレキシブルグリッド
100
152
230
188
157
135
151
DTnet
デマンド(%)
295
153
40
149
262
73
約51%増加
50
0
215
31
34
全容量(Tbps)
95
60
80
DP-QPSK
60
DP-16QAM
DP-64QAM
40
20
0
56
固定グリッド
(a)ネットワークの構成
フレキシブルグリッド
(b)全容量およびデマンドの分布
図-3 ネットワーク容量のシミュレーション結果
51%増加する(図-3)
。
た光パスの経路変更が繰り返されると,徐々に周
このように,フレキシブル光ネットワークでは
波数スペクトラムが断片的になり,有効に使えな
これを構成する光ノードと距離に応じた変調方式
いスロットが増えてくる。これをフラグメンテー
の選択とスペクトラム配置の組合せを適切に行う
ションと呼ぶ。
ことで,従来のチャネル単位で固定した変調方式
こうして発生した断片化された光波長領域を連
でネットワークを構成する場合に比べて大幅な収
続した領域に集約することで,大容量の通信が可
容効率の改善が可能となる。
能な帯域を確保する技術を波長デフラグメンテー
ションという。この技術により使われていない光
波長デフラグメンテーション
波長資源を再び有効に活用することができるよう
将来のネットワークにおいては,一般に,ユー
ザーの使用状況に応じて動的に対応できることが
求められる。つまり,必要なときに必要なパスと
になる。
デフラグメンテーションは大きく次のように分
けられる。
容量を提供し,不要になった場合には速やかにそ
(1)光パスの経路変更を伴うもの
のリソースを開放して新たなサービス需要にその
・波長変更を伴うもの
リソースを割り当てることで効率的なネットワー
・波長変更を伴わないもの
クを実現する。フレキシブル光ネットワークは,
(2)光パスの経路変更を伴わず波長変更を伴う
このような要求にも光レイヤーで応えることがで
もの
きる。その際に,変調方式や,データレートに応
(1)はメッシュネットワークなどで特定の区間
じて必要とするスペクトラムスロット数が異なる
に光信号の経路が集中している場合などに有効で
(2)
ため,効率的なリソース運用の実現が課題となる。
ある。集中を避けるために必要以上に遠回りしな
例えば400 Gbps 7スロット,100 Gbps 4スロット
ければいけない光パスがある状況で,集中した区
が必要な場合を考える。一例として,400 Gbpsの
間を通る光パスの一部のサービスがなくなった場
信号のサービスが不要になり100 Gbpsの新たな信
合に,空いた光波長を用いるように経路を再設定
号の需要が発生したとする。前者により7スロット
することにより最適な光経路を配置し直す。この
空きができるが後者は4スロット必要とするので
ようなデフラグメンテーションは,従来の光ネッ
信号一つ分の収容に限られ,3スロットの未使用
トワークでもソフトウェアで設定できる光スイッ
領域が発生する。このようにサービス需要に応じ
チノードがあれば実現できる。
FUJITSU. 64, 5(09, 2013)
567
運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める波長デフラグメンテーション技術
一方,この手法の課題は光の経路を切り替える
ることができるようになる。
ため,切り替える間の信号の断絶が不可避である
ここではシンプルな構成を基に説明したが,リ
ということにある。また,経路長が変わるため変
ニアな構成の場合だけでなくメッシュネットワー
更前後で遅延時間が変化する。該当光パスを用い
クでも有効な方法である。
ているサービスによっては大きな影響を受けるた
そこで,下記に示す条件のもとでシミュレーショ
(4)
ンによる検証を行った。
めデフラグメンテーションを実施するためのハー
検証条件:
ドルは高い。
・10ノ ー ド の リ ニ ア ネ ッ ト ワ ー ク お よ び
これに対し,
(2)は経路変更を伴わないため遅
NSFNET(注2)
延時間はほとんど変化しない。波長変更の間の信
・88スロット・10 000接続要求(ポアソン分布で
号の瞬断が課題であるが,フレキシブル光ネット
発生,ガウス分布ホールドタイム)
ワークの特徴を生かすことで信号断せずにこれを
・3種の信号 各33%
実現することができる。これが富士通研究所で開
100 Gbps(1スロット),200 Gbps(2スロット),
発した無瞬断での波長デフラグメンテーション技
300 Gbps(3スロット)
(3)
術である。
・ブロックされた接続要求数と新たに指標として
無瞬断波長デフラグメンテーションの効果
導入したストランデッドスロット数
無瞬断波長デフラグメンテーションの基本コン
リニアネットワークの場合のシミュレーション
結果を図-5に示す。デフラグメンテーションを行
セプトは次のとおりである。
(1)該当信号と隣接する信号との間のスロットが
うことにより40%の連続的なスロットを確保する
空いている場合に,そのギャップを埋めるように
ことができる。また,NSFNETの場合の計算結果
該当信号の光波長をシフトさせる。それにより該
を表-1に示す。
条件には依存するが,ブロックされたデマンド
当信号が使用していたスロットは空く。
数とストランデッドスロット数の大幅な改善が得
(2)該当する送受信機と経路上の全ての光デバイ
られることが分かった。
ス(例えばフレキシブル光ノード)の光スイッチ
このように,大幅な改善が期待できる波長デフ
の波長を同時にシフトさせる。
ラグメンテーションであるが,無瞬断で実現する
(3)
(1),(2)のプロセスを繰り返すことにより
ためには,いくつかの課題がある。
ギャップを埋めて連続したより大きな不使用帯
(1)送信光波長のシフトと光受信機の追従
域を作ることができる。
これを模式的に示したのが図-4である。この例
送 信 光 波 長 の シ フ ト と 同 時 に 光 受 信 機 のLO
ではC-D間の信号3が使われなくなる。これにより
(Local Oscillator)の光波長シフト,ADC/DSPの
B-D間に連続した空きスロットが生じる。ここに信
オフセット補償などを追従させることで絶えず受
号2をシフトさせることでA-B,B-Dの経路の信号
信可能状態にすること。
がこのスロットを埋めることができる。続いて信
号1を信号2が使用していたスロットにシフトさせ
(注2) ネットワークの研究で標準的な条件として使われる
ネ ッ ト ワ ー ク ト ポ ロ ジ ー。NSF(National Science
Fundation)がファンドしている学術向けネットワーク。
ることでA-C,C-D間に連続したスロットを確保す
λ
信号1
信号1
信号2
信号2
信号3
信号4
A
B
C
(a)
信号1
信号4
D
A
信号4
B
C
D
A
( b)
信号2
B
C
D
(c)
図-4 波長デフラグメンテーションの原理
568
FUJITSU. 64, 5(09, 2013)
運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める波長デフラグメンテーション技術
断片化された領域
光波長の使用状況
デフラグメンテーションにより
使用可能な帯域が増加
ノード間の接続関係
(a)デフラグメンテーションなし
(b)デフラグメンテーションあり
図-5 同一量のトラフィック負荷をかけた場合の波長資源の利用状況
表-1 デフラグメンテーションの効果
自動デフラグメンテーションなし
自動デフラグメンテーションあり
単位時間あたりの
ブロックされた
ストランデッド
ブロックされた
ストランデッド
接続要求
改善(%)
改善(%)
接続要求
スロット数
接続要求
スロット数
16
10
496
3
70
305
38
18
42
545
10
76
358
34
20
110
581
79
28
396
31
30
783
653
642
18
478
26
40
1480
671
1377
7
493
26
50
1905
656
1800
5
489
25
76%少ないブロッキングそして38%少ないストランデッドスロット数が可能
(2)フレキシブル光ノードの光スイッチのスロッ
トのシフト中に信号の光スペクトルに影響を与
・10万のダイナミックなコネクション
・伝送速度400 Gbps
えないこと。
Dual 200G DP-16QAMスーパーチャネル,
これらのハードウェアの制御を同時に行うこと
所要帯域幅75 GHz,伝達距離400 km,
が必要になる。実際のハードウェアはステップ単
Quad 100G DP-QPSKスーパーチャネル,
位で変更が可能なため,単位時間あたりのステッ
所要帯域幅137.5 GHz,伝達距離2000 km
プ幅が小さければハードウェアの追従は相対的に
・ス テ ッ プ 幅2.5 GHz,1,10,100,1000 ms/ス
容易である一方,ギャップを埋めるために必要な
テップ
総シフト時間は多くなる。そのため,デフラグを
スイープ速度をパラメーターにブロッキング
行っている間にデマンドの変更が発生するとデフ
率 を 表 し た の が 図-6で あ る。 ス イ ー プ 速 度 が 速
ラグが追いつかないというような場合が考えられ
いほどブロッキング率が低くなることが分かる。
る。このようなスイープ速度,すなわち単位時間
10 ms/ステップの速度で理想状態にかなり近くな
あたりの光波長のシフト量依存性について,その
り,同時にデフラグメンテーションの効果として
影響を14ノード 23リンクの汎用のドイツテレコム
10−3のブロッキング率でロード量が15%改善する
(DTnet)トポロジーの構成を用いてシミュレーショ
ことが分かる。
ンで検証した。シミュレーション条件を次に示す。
FUJITSU. 64, 5(09, 2013)
569
運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める波長デフラグメンテーション技術
・四つのフレキシブル光ノード
実 験 検 証
グリッドレス波長選択スイッチと光増幅器から
波長デフラグメンテーションを有効に実施する
ためには前章で述べたように,送受信機,光スイッ
構成
・可変波長LD(Laser Diode)(送信側と受信側の
チを同期させつつ一定以上の速度でスイープする
ことが必要となる。特に周波数オフセット補償(局
局発光)
・80 km SMF(Single Mode Fiber) ×3ス パ ン
発光のゆらぎなどに生じる変調信号の周波数上で
の変動を補償するアルゴリズム)が十分に機能し
伝送
・スイープ速度20 pm(2.5 GHz)/100 ms
ないと光波長を変化させている間にビット誤りを
コントローラから制御信号を送ることにより
発生させる可能性がある。そこで,次に述べる実
WSS(Wavelength Selectable Switch) と 送 信 側
伝送系により光波長のスイープとその間の符号誤
LD,受信側LO/LDの波長を1ステップずつシフト
り率変動を実測により検証した。
さ せ,Cバ ン ド 帯(1530-1560 nm) に わ た っ て,
系の構成を図-7に示す。また,主な構成は下記
波長を変化させながら符号誤り率(BER)を測定
のとおりである。
した。測定のスナップショットを図-8(a)に示
・112 Gbps DP-QPSK変調 PN15段
す。X偏光,Y偏光および平均の符号誤り率が見て
取れる。
波長とBERおよび波長とQペナルティの測定結
果を図-8(b),(c)に示す。スイープする間のQ値
ブロッキング率
10−1
のばらつきは1 dB以内に収まっており,またBER
10−2
も10−3以下になっており,通常のFEC(Forward
15%の改善
Error Collection)を適用すれば十分にエラーフ
デフラグなし
スイープ速度最速(理想)
スイープ速度 1 ms/2.5 GHz
スイープ速度 10 ms/2.5 GHz
スイープ速度 100 ms/2.5 GHz
スイープ速度 1000 ms/2.5 GHz
10−3
10−4
10−5
60
80
100
120
140
160
180
リーで波長のスイープを実現できることが分かる。
C-band帯で3分弱かかるが,ネットワークのシミュ
レーション結果から分かるように,十分に有効性
が得られるスピードである。
200
ロード量(アーラン)
図-6 ブロッキング率vs.ロード量
デフラグ コントローラ
送信機
波長選択
スイッチ
SMF
80 km
PN 215-1
波長選択
スイッチ
SMF
80 km
波長選択
スイッチ
SMF
80 km
波長選択
スイッチ
可変波長LD
(LO)
誤り率検出機
112 Gbps
DP-QPSK
ノードD
ノード
インター
フェース
ADC/DSP
CMOS LSI
LD
ノード ノードC
インター
フェース
O/E
可変波長
ノード ノードB
インター
フェース
フロントエンド
ノードA
ノード
インター
フェース
リアルタイムDSP
WSS
信号
λ0
λ1
λ0
λ1
λ0
λ1
図-7 無瞬断デフラグメンテーションの実験系
570
FUJITSU. 64, 5(09, 2013)
運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める波長デフラグメンテーション技術
X- 偏光 誤り率
Y- 偏光 誤り率
平均誤り率
(a)誤り率測定中のスペクトラムと誤り率
1.5
Q ペナルティ(dB)
10−1
符号誤り率
10−2
10−3
10
−4
10−5
10−6
1531
1541
1551
1561
WSS 操作あり
1.0
0.5
0.0
−0.5
−1.0
−1.5
−2.0
1531 1536 1541 1546 1551 1556 1561
波長(nm)
(b)波長 対 符号誤り率
波長(nm)
(c)波長 対 Q ペナルティ
図-8 デフラグメンテーション中の符号誤り率変化
む す び
技術として光ネットワークが大きくその役割を果
たす時代が来よう。
本稿ではフレキシブル光ネットワークについて,
これを実現するために必要なフレキシブル光ノー
参考文献
ドの構成を示し,経路と周波数スロット割当てを
(1) Y. Aoki et al.:Dynamic and Flexible Photonic
適切に行うことによりネットワークレベルで資源
Node Architecture with Shared Universal
の有効利用が可能になることをシミュレーション
Transceivers Supporting Hitless Defragmentation.
で示した。また波長シフトに制約がないという特
ECOC 2012,paper We.3.D.2,2012.
性を活用した波長デフラグメンテーション技術に
(2) X. Wang et al.:Blocking Performance in Dynamic
より,運用中の波長資源の有効活用を継続的に実
Flexible Grid Optical Networks - What is the
現できることをシミュレーションで示し,更にこ
Ideal Spectrum Granularity?.ECOC 2011,paper
のための基本技術,すなわち回線に誤りを起こす
Mo.2.K.6,2011.
ことのない無瞬断波長デフラグメンテーションを
実験により示した。
これらの技術により光ネットワークはサービス
に応じて容易に構成変更ができ,かつ自律的にネッ
トワーク資源の最適化ができるようになる。今後
(3) K. Sone et al.:FirstDemonstration of Hitless
Spectrum Defragmentation usingReal-time Coherent
Receivers in Flexible Grid Optical Networks.ECOC
2012,post-deadline paper Th.3.D.1,2012.
(4) X. Wang et al.:A Hitless Defragmentation Method
の増大するネットワーク需要と多様化するサービ
for Self-optimizing Flexible Grid Optical Networks.
ス需要を低エネルギーで効率良く実現するための
ECOC 2012,paper P5.04,2012.
FUJITSU. 64, 5(09, 2013)
571
運用中の光ネットワーク資源の利用効率を高める波長デフラグメンテーション技術
著者紹介
572
関屋元義(せきや もとよし)
青木泰彦(あおき やすひこ)
米国富士通研究所
Network Systems Innovation Group
所属
現在,フォトニックネットワークの研
究に従事。
ネットワークシステム研究所フォトニ
クス研究部 所属
現在,フレキシブルフォトニックネッ
トワークの研究に従事。
王 溪(Wang Xi)
曽根恭介(そね きょうすけ)
米国富士通研究所
Network Systems Innovation Group
所属
現在,フォトニックネットワークの研
究に従事。
ネットワークシステム研究所フォトニ
クス研究部 所属
現在,フレキシブルフォトニックネッ
トワークの研究に従事。
FUJITSU. 64, 5(09, 2013)
Fly UP