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50 Gbps光通信用HBT-ICモジュールの開発
50 Gbps 光通信用 HBT-IC モジュールの開発 50 Gbps 光通信用 HBT-IC モジュールの開発 Development of HBT-IC Modules for 50-Gbps Optical Communication Systems 青 木 生 朗 *1 小 林 信 治 *1 八木原 剛 *1 AOKI Ikuro KOBAYASHI Shinji YAKIHARA Tsuyoshi 松 浦 裕 之 *1 三 浦 明 *1 MATSUURA Hiroyuki MIURA Akira 自社開発の超高速 HBT 素子を使い,我々は次世代 40 Gbps DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing:高密度波長多重) 光通信用 HBT-ICモジュールを開発している。HBT素子のもつ超高速性能及び 低ジッター特性を生かし,優れた波形品位の 4:1 マルチプレクサ (MUX) ,1:4 デマルチプレクサ (DEMUX) , D フリップフロップ(DFF)をはじめとする標準ロジック IC 群,並びに 30 kHz ∼ 33 GHz で 23 dB ± 1 dB の フラットなゲイン特性で5 Vpp以上の高出力が得られるLN (Lithium Niobate) 光変調器用ドライバICを開発し た。さらに,2:1 MUX モジュールにて 45 Gbps の動作を確認した。各種 IC をアルミナ基板に実装し,コネク タインタフェースとした HBT-IC モジュール(現在サンプル提供評価中)を紹介すると共に,次世代 40 Gbps DWDM 光通信用システムの実用化段階での市場ニーズに配慮し,通信装置への組み込みが容易な量産型セラ ミックパッケージモジュールについても触れる。 We have been developing HBT (Heterojunction Bipolar Transistor) -IC modules for next-generation optical communication systems of 40-Gbps DWDM (Dense Wavelength Division Multiplexing) using Yokogawa-made ultra-highspeed HBT devices. With the advantage of HBTs’ ultra-highspeed performance and low jitter, we have developed standard Logic IC groups of high-quality output waveforms such as 4:1 multiplexer (MUX), 1:4 demultiplexer (DEMUX) and D flip-flop (DFF), and also an LN (Lithium Niobate) optical modulator driver-IC of flat gain of 23 dB ±1 dB at 30 kHz–33 GHz along with 5 Vpp or more output voltage. Especially, 2:1 MUX IC modules can operate at 45-Gbps with 22.5 Gbps × 2 input. We have mounted these ICs onto an alminum substrate and made them a packaged module with a connector interface. We introduce the HBT-IC modules (now on sample-release for evaluation) and demonstrate the ceramic-packaged modules for mass production that can be easily set in communication equipments, meeting the market needs in the practical stage of next-generation 40-Gbps DWDM optical communication systems. 1. は じ め に 我々は,1983 年から超高速化合物半導体デバイス技術 の開発を行ってきた。そして,各種高速デバイスを開発す インターネットやマルチメディアネットワークの急速 る中で得てきた超高速電子素子技術と長年培ってきた高 な普及拡大に伴い,近年の通信技術は高速・大容量化に向 精度計測技術を融合させ,来たるべき高速大容量通信の け,大きな発展をとげている。特に,WDM (Wavelength 根幹を支える次世代 40 Gbps DWDM 光通信のキーコン Division Multiplexing:波長多重) 技術により,その伝送 ポーネントである送受信モジュールの開発を行っている。 容量は飛躍的に増大しており,10 Gbpsが実用化段階にあ 超高速通信用素子として,我々は直流領域からの使用 るが,さらなる多重化やベースバンド信号のさらなる高 を前提としていることを考慮し,ベースの入力インピー 速化へと開発が進んでいる。次世代光通信技術として,特 ダンスが低く,化合物半導体基板の不完全性に起因した に注目されるのが,40 Gbps DWDM (Dense WDM:高密 雑音成分の影響が FET 系に比べて少ない HBT 素子を選 度波長多重) 光通信であり,商用システム構築に向けた研 (1) (2) 択し,開発を進めてきた。 本文では,次世代40 Gbps 究開発が光通信分野で活発に行われている。 DWDM 光通信システムの送受信モジュールを構成する 外部光変調器用ドライバIC,並びに超高速ロジックIC群 *1 R&Dセンター フォトニクスデバイスPJTセンター 3 について紹介する。 横河技報 Vol.46 No.2 (2002) 39 50 Gbps 光通信用 HBT-IC モジュールの開発 Vcc 30 Out Gain [dB] 25 In 図 1 単位アンプ 20 15 10 5 0 -5 単位アンプ -10 0 10 20 30 40 50 Frequency [GHz] 図 4 光変調器用ドライバ IC モジュールのゲイン特性 図 2 20 段カスケード型分布定数アンプの IC チップ 単位アンプを 20 段並列化した変調器用ドライバ IC を 図 2 に示す。チップ寸法は 6 mm × 1 mm である。分布 2. 光変調器用ドライバ IC モジュール 4 0 G b p s D W D M 用光変調器には,L N(L i t h i u m (3) 型アンプを実装したドライバICモジュールの外観写真を 図 3 に示す。プリドライバ用とドライバ用の 2 つの分布 型アンプを V コネクタを用いて実装したもので,モ Niobate) 変調器 とEA(Electro-Absorption) 変調器があ ジュール全体のネットワークアナライザによる小信号周 る。前者は,5 Vpp 以上という高い駆動電圧が要求され 波数特性測定結果を,図4に示す。周波数帯域幅30 kHz るが,波長帯が広く,1 設計で WDM バンド帯を広範囲 ∼ 33 GHz でゲイン 23 dB ± 1 dB,消費電力 2.3 W であ にカバーできるという特長を有する。一方,後者は 2 ∼ る。43 Gbpsの擬似ランダム信号PRBS (Pseudo Random 3 Vpp という低い駆動電圧で済むが,損失特性と吸収特 Binary Sequence) 印加時の出力アイパターンを,図5に 性の関係から対応波長範囲が狭くなり,いくつかに分割 示す。PRBS の繰り返し長は 231 − 1 ビットである。出力 した波長帯毎に設計する必要がある。変調器用ドライバ 振幅 6 Vpp が得られ,良好なアイ開口を得ている。 IC としては,高い駆動電圧を要する LN 変調器用に開発 さらに,我々の開発したドライバICモジュールで住友 すれば,駆動電圧の低い EA 変調器用としても使用可能 大阪セメント殿ご提供の 40 Gbps 用 LN 変調器を駆動し, となる。周波数に関しては,数十 kHz から 30 GHz を超 光出力波形についても評価し,良好な結果を得ている。こ える超広帯域において,平坦な出力特性が要求される。 れは,43 Gbps の超高速電気信号をドライバ IC モジュー 以上の要求を満たす光変調器用ドライバICの開発に際 ルに入れ,LN変調器で光変調した後,PDで再び43 Gbps し,我々は 40 Gbps で 5 Vpp 以上の開発目標を掲げ,注 力して取り組んだ。ドライバICの回路構成として,分布 型アンプを採用した。化合物半導体の基板は半絶縁性で あるために,電子素子への応用では分布定数回路を比較 的容易に導入できる特長がある。図 1 に示すカスコード 型アンプを単位アンプとして,各単位アンプを分布定数 線路上に位相を揃えて配置し,分布型アンプを構成して いる。分布型アンプとすることにより,高出力化のため に単位アンプを多段並列化しても,広帯域特性が損なわ 図5 れにくい。 図 3 光変調器用ドライバ IC モジュール (外形寸法:26 × 24.2 × 7.5 mm) 40 横河技報 Vol.46 No.2 (2002) 光変調器用ドライバ IC モジュールの 43 Gbps 231 − 1 PRBS 出力波形 図 6 住友大阪セメント殿ご提供の LN 変調器光出力後 の 43 Gbps 231 − 1 PRBS 出力波形 4 50 Gbps 光通信用 HBT-IC モジュールの開発 図 7 2:1 MUX IC モジュールの外観 図9 (外形寸法:23.2 × 26.6 × 9 mm) の電気信号に戻し,波形を評価したものである。図 6 に 31 2 − 1 PRBS 印加時のアイパターンを示す。 の231 −1 PRBS出力波形を,図8に示す。消費電力は1.1 W である。 以上,我々は初期に掲げた 40 Gbps で 5 Vpp 以上とい う目標を達した後も,高出力化とゲイン平坦化に向け, 実装技術の改善をはじめとした改良を行っている。 3. 1:2 DEMUX IC モジュール (左)と DFF IC モジュール (右)の外観 同様に,1:2 DEMUX IC,DFF IC についても,超高 速 HBT 素子を用いて集積回路化し,モジュール化した (図9) 。図10,11に,43 Gbps入力時の各々の231 −1 PRBS 出力波形を示す。消費電力は 1.7 W と 1 W。これらの IC 光通信用超高速ロジック IC モジュール モジュールは 2 31 − 1 ビットの繰り返し長 PRBS アイパ 40 Gbps DWDM光通信システムを構成する上で重要な ターン測定時に,BERT (Bit Error Rate Tester) にてエ 超高速ロジック回路の中で,電気信号を束ねるマルチプ ラーフリーを確認しており,40 Gbps 光通信システムに レクサ(MUX),電気信号を分配するデマルチプレクサ 適用可能な超高速ロジック IC モジュールとなっている。 (D E M U X ),リタイミング用の D フリップフロップ 近い将来の 40 Gbps DWDM 光通信の実用化を念頭にお (DFF) をはじめとする40 Gbps超高速ロジックIC群を開 き,我々は各種ICモジュールを集約した4:1 MUX,及び 発した。40 Gbps という超高速信号では,ジッター特性 1:4 DEMUX の集積化に取り組んだ。図 12,13 に開発し (位相雑音等による時間軸上での信号の揺らぎ)は誤り率 た 4:1 MUX IC と 1:4 DEMUX IC のチップ写真を示す。 に致命的な影響を及ぼすため,ジッター特性の極めて良 共に 2.8 mm × 3.8 mm のチップ上にそれぞれ約 2000 と約 好な半導体素子が必要となる。我々の開発しているHBT 1600 の集積素子数で,消費電力は各々 3.5 W と 3.2 W であ 素子は,FET系に比べ原理的にジッターが低く,数ps以 る。本ICチップを実装し,モジュール化した。40 Gbps以 下のジッター特性が要求される 40 Gbps の信号を扱う上 上の高速信号にはVコネクタを使用し,その他高速信号に で優れるものと期待される。 はKコネクタを使用した。図14に,4:1 MUX ICモジュー 標準ロジック ICの開発では,2:1 MUX ICの開発から 取り組んだ。標準ロジックICは,差動バッファ入力,オー プンコレクタ出力とし,外部ロジックインタフェース電 圧は 0 V ∼− 0.5 V である。図 7 に本 IC チップをアルミ ナ基板を用いて実装し,モジュール化した 2:1 MUX IC モジュールの外観写真を示す。高速信号用に K コネクタ を使用した。2:1 MUX ICモジュールを3個用い,10 Gbps 入力4系統を1本に束ねて40 Gbps信号が得られる。次段 の 2:1 MUX IC モジュールに,21.3 Gbps × 2 入力並び に 22.5 Gbps × 2 入力時のそれぞれ 42.6 Gbps と 45 Gbps 図 10 1:2 DEMUX IC モジュールの 43 Gbps 入力時の 231 − 1 PRBS 出力波形 45.0 Gbps output 2:1 MUX 22.5 Gbps or 21.3 Gbps 0.2 V/div. 10 ps/div. 0.2 V/div. 10 ps/div. 42.6 Gbps output Clock (22.5 GHz or 21.3 GHz) 図 8 2:1 MUX IC モジュールの 231 − 1 PRBS 出力波形 5 図 11 DFF IC モジュールの 43 Gbps 231 − 1 PRBS 出力波形 横河技報 Vol.46 No.2 (2002) 41 50 Gbps 光通信用 HBT-IC モジュールの開発 図 12 4:1 MUX IC モジュールのチップ (a)4:1 MUX (b)LN Driver (c)1:4 DEMUX 図 16 各種セラミックパッケージモジュール (43 Gbps 2.8 × 3.8 mm 3.5 W 集積素子数:2000) はない。そこで,我々は高速入出力信号ラインを CPW (Coplanar Waveguide) 線路化とし,ワイヤーボンディン グで外部とインタフェースする方式のセラミックパッ ケージモジュール化を進めている。図16に,将来の商用 量産を目指した装置組み込み用セラミックパッケージモ ジュール群の一部 (4:1 MUX,LN Driver,1:4 DEMUX) を示す。今後,セラミックパッケージモジュール群の充 図 13 1:4 DEMUX IC モジュールのチップ (43 Gbps 2.8 × 3.8 mm 3.2 W 集積素子数:1600) 実を図っていく。 4. お わ り に ルの 43 Gbps PRBS 出力波形を,図 15 に 1:4 DEMUX IC 自社開発の超高速 HBT 素子を用いた 40 Gbps DWDM モジュールの 43 Gbps 入力時の 10.75 Gbps × 4 出力波形 光通信用ICモジュールについて,サンプル提供可能な超 を示す。これら高集積ICモジュールは,これまでの複数の 高速ロジック IC 群と光変調器用ドライバ IC の一部を紹 ロジックICモジュールで構成した機能をワンモジュール化 介した。現在注力して取り組んでいる高集積化によるワ することにより,大幅なコストダウン (%1 ∼ $1) を図れる。 ンモジュール化,並びにコネクタフリーのセラミック 本高集積ICモジュールのサンプル提供評価は,2002年2月 パッケージモジュール化という形での我々のソリュー から開始した。 ション提供が,次世代40 Gbps DWDM光通信システムの これまで紹介したモジュールは Vコネクタや K コネク 実用化を大きく推進していくことを期待している。 タ付きであり,次世代光通信システムの開発段階に向け さらに我々は,次々世代の 80 Gbps 光通信システムに た仕様となっている。近い将来の商用段階で通信機器を 向けた取り組みも始めており,2 ps以下という超高速ス 構成する際には,コネクタ付きモジュールでは実用的で イッチングが可能なRTD(Resonant Tunneling Diode) 素 子と HBT 素子との融合を視野に入れ,検討中である。 4:1 MUX 43 Gbps 参 考 文 献 (1)小林信治,内田賢治,手塚賢太郎,岡貞治,藤田忠重,青木生 10 Gbps 朗,八木原剛,松浦裕之,三浦明,”超高速 HBT 素子の開発と 応用”,電子情報通信学会,光通信システム研究専門委員会, OCS40G-5,2001 年 6 月 14 日,p. 23-28 図 14 4:1 MUX IC モジュールの 43 Gbps 231 − 1 PRBS 出力波形(振幅:0.5 Vpp) (2)Ikuro Aoki, Shinji Kobayashi, Sadaharu Oka, Tadashige Fujita, Kenji Uchida, Kentaro Tezuka, Hideki Takeda, Hirotoshi Kodaka, Tsuyoshi Yakihara, Hiroyuki Matsuura, Akira Miura, “Development and Application of Ultra High-speed HBT for 1:4 DEMUX 10.75 Gbps Measurement,”ANDO Technical Bulletin, November 2001, pp. 59-65 43 Gbps (3)Akira Miura, Katsuhiko Yamanaka, Akihisa Hashimoto, “AN E L E C T R O O P T I C A L M O D U L A T O R (O P T I C A L WAVEGUIDE)IC IN AN OPTICAL LINK USED FOR VOLT- 図 15 42 43 Gbps 入力 1:4 DEMUX IC モジュールの 231 − 1 PRBS 出力波形(振幅:0.5 Vpp) 横河技報 Vol.46 No.2 (2002) AGE SENSOR ISOLATION” ,PROCEEDING IECON84,1984, pp. 795-801 6