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〔6〕人にやさしい道路を求めて ~岸和田市の現状~

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〔6〕人にやさしい道路を求めて ~岸和田市の現状~
〔6〕人にやさしい道路を求めて
~岸和田市の現状~
岸和田市消費生活研究会
(発表者) 貝塚
文子・河原
島山紀代子・西山
一子・岸田 靖子
清子・原田 博海
はじめに
総務省の推計では平成 27 年には国民の 4 人に 1 人が 65 歳以上の高齢者となり本格的な高齢社
会を迎えようとしています。今は元気で何事もなく生活をしている人でも高齢になるとともに障
害者になる可能性が高くなりますが、現在の道路は高齢者や障害者にふさわしいと言えるでしょ
うか。歩道と車道が明確に区別されていない道路が多く、歩行者はもちろん自転車で通るにも幅
員は狭すぎ危険と背中合わせです。どの道路も車優先のように思えてなりません。誰もが日常生
活を快適に過ごせる安全で安心な道路を求めています。
岸和田市消費生活研究会では、
「道路交通法」や自転車安全利用五則等の机上学習と市内の道路
の現地調査から出た問題点にも触れながら「人にやさしい道路」について考えます。
調査の概要
調査方法:留置法(会員が配布)
調査期間:平成 21 年 8 月 1 日~8 月 31 日
調査対象:会員及び岸和田市民
配 布 数:800 枚
回 収 率: 616 枚(77%) 内訳:男 149 人(24%)
女 467 人(76%)
年代:20~30 代 55 人(8%)、40~50 代 145 人(24%)、60 代以上 416 人(68%)
調査結果
「あなたが岸和田市内で日常的に利用されている道路についてお答えください」
問1 この地点を通る手段は何ですか。
(複数回答) 問2 どれくらいの頻度で利用しますか。
cその他
(バイク・車)
36人 4%
a 徒 歩
368人 38%
b 自転車
557人 58%
d月1~2回
61人 7%
aほぼ毎日
388人 42%
c週1~2回
187人 21%
b週3~4回
270人 30%
手段は、ほとんどの人が自転車または徒歩でほぼ毎日か週 3~4 回利用しています。
問3 その地点の利用日はいつですか。
問4 その地点の利用目的
g その他
78人 6%
b 休 日
78人 12%
c 業 務
108人 8%
b 通学
26人 2%
a 通 勤
121人 9%
f 通 院
158人 12%
a 平 日
586人 88%
d 買い物
585人 47%
e 余 暇
206人 16%
9 割近くが平日、また、約半数の人が買い物に利用しています。続いて余暇、通院、通勤の順
で、通院は 12%あり 60 代以上が 7 割を占めていることから頷けます。
問 5 日常的に利用している道路の渋滞時間帯についての質問です。
回答者の 37%は朝、夕方は 32%となっており、人の動きは朝と夕方に多いことがわかります。
問6 その地点はどのような問題があると思いますか。
42
る
問 題 点
捨て
94
を
ない
ゴミ
105
f 渡れ
機
単位:人
て
断
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心 k 遮 柱
安
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147
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237
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d a ある
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248
差
い
に段 量多
290
道
い
通
歩
g e 交 員狭
296
I 幅 帯なし
0
50
100
150
200
250
300
350
離
分
b
問題になった各地点は、(b)歩道と車道の間に分離帯がないので危険が最も多く、次いで(i)
道路幅員が狭い、
(e)交通量が多く恐怖を感じる、
(g)歩道に段差があり危険、
(h)歩道が平ら
でなく歩きにくい、
(a)抜け道になっている、の順で(k)踏切で遮断機の下りている時間が長
いは、南海春木駅・和泉大宮駅・JR東岸和田駅の踏切です。
問7 その地点の問題に対処するため何かしていますか。
問題箇所の対処法では、▶ 渋滞時を避け時間帯を変える
時も自転車の時も止まるようにしている
渡らず次の信号を待つ
▶ 回り道をする
▶ 十字路は徒歩の
▶ 常に前後左右に気をつける ▶ 青信号でも途中から
▶ 信号を見て気をつけて歩いている
▶ 必ず止まって待ち確認する
▶
危険を感じるときは自転車を押して歩くなど結局自分で気をつけるしかないと回答しています。
問8 その地点はどこですか。調査場所が分かる目標物や目印などを記入した簡単な地図をお書きください。
(地図)
☞ 指摘があった地点
★ 凸凹や電柱、横勾配、交通量多く幅員せまい
◆ 信号や歩道の印がほしい
▲ 不法駐車や抜け道
● 歩行者、自転車専用道路
◎ 踏切で渋滞
▼ 歩道分離帯なし
★
▲
★
★
★
▲ ◆
南海電車→
★
★
★
▲ ▲
★ ▼★
★
N
★
◎
●
▲
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★
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★★★
★
◎
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★
★
★ ▼ ★
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★
★
★
★
★
★
▲
JR 阪和線→
★
◎
★
★
◎
★ ★★ ★
▼ ★
★
▼
◆
▲
★★ ★ ★
◎
★
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★
★
←府道 30 号
★
線
◆
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問9 その他自由意見(抜粋)
◎自転車利用者、歩行者に対するマナーの指摘
▶ 信号無視、交通ルールを守らず横断歩道以外のところで渡る中高生、老人、主婦が多い。
▶ 歩道を話しながら並進してくる中高生や主婦が多く、対向から人が来ても無視。
▶ 自転車は車と同じで左側通行にもかかわらず右側通行をしている。携帯電話を操作しながら
乗っている者が多く、その上、子供を乗せている母親もある。
◎運転者に対するマナーの指摘
▶ 横断歩道を渡るとき右折車、あるいは左折車は歩行者優先にしないで僅かな時間の隙を狙っ
て通過する。
▶ 踏切で一旦停止しない車や信号無視の車がある。
▶ 踏切で警報機が鳴って一旦停止しているのに追い越しをかける無謀な車がある。
▶ 飲食店などが並ぶ道路では脇道から出てくる車の一部は、歩行者や自転車が来ていても道路
をふさぎ先に大通りへ出ようとする。
▶ 店舗の前に長時間(おそらく終日かもしれない)駐停車し、歩行者専用道路を半分以上ふさ
ぎ歩行の邪魔をしている。
▶ 携帯電話を操作しながら運転している者が多い。
◎道路の指摘
▶ 段差や凸凹があり横勾配になっている道路は歩きにくい。
▶ 歩道エリアに電柱や看板が突き出し、その上、駐車している。
▶ 多くの歩道にある段差を取り除き歩きやすくしてほしい。歩道のスペースがありながら段差
があるため車いすが通れず危険な車道を通らねばならない。道路管理者、また警察も法改正
が伴うならば検討してみてはどうか。依然として道路工事時に段差のある道路を見かける。
歩道と車道の区別は縁石、グリーンベルト、柵の設置などをして歩きやすいものに。
▶ 歩道の溝蓋は滑らない材料に。
▶ 車道から歩道に上がるところの段差はなくせないのか。
▶ 車いすや幼児を乗せたバギーを押すのに押しにくい歩道が多く車道はせまく危険・・・とい
っている人が多いと思う。これからは車に乗る高齢者も増えると思うので車に乗る人にとっ
ても安心して走れる道路を考えてほしい。病院周辺は人も多いので危険なところは早く整備
してほしい。また、道路工事のあとにできた段差で車が通ると響く。車道と歩道の段差が僅
かなところは車輪が横滑りしやすい。側溝の蓋の設置。
◎抜け道になっている
▶ スクールゾーンを抜け道にする車が多く登校時間7時 30 分~8時 30 分に約 150 台が通る。
同じ時間帯に通る児童は 180 名。対策として①車両通行時間を規制する②地点に横断標識を
つける③スピードの取り締まりを指導する。
◎車社会に対する意見
▶ 住みよい街をつくるためには常に現状を把握し問題点を解決する努力が必要だと思います。
今回の調査は誠に的を射たものと思います。ハード面の解決は経費が発生するため困難です
が、交通規則、利用者のマナーなどソフト面で改善できる余地は十分あると思います。
▶ 現代の道路の多くは、車が通過するための空間である車道と歩行者が通行するための空間で
ある歩道に分類され線や段差で区切っている。線で区切るのはいいが段差、しかも直角に角
をつけて高く(3㎝~15 ㎝)しているので、車いすは通れない。また、道路の地下空間には
水道管やガス管など、地上には電線や電話線等のライフラインが敷設されている。都市部で
は道路の掘り起こしを避けるため、これらライフラインを一括する共同溝というトンネルを
つくることもある。幅員のせまい歩道に電柱があると車と接触しなければならならないほど
危険である。共同溝にして電柱のない広くて通りやすい道路にならないのか。特に府道 30
号線(大阪和泉南線)に必要と思う。
▶ 「車社会」といわれいつも渋滞している道路が多くなった。車線の数を増やすのはよいが歩
行者のことも考えて道路づくりをしてほしい。道路の主役は車だけではない。自転車、歩行
者、体の不自由な人、老人、みんなが安心して歩ける「道路」がほしい。
▶ 道路の広さは「道路構造令」によって定められているが、近年のように車が多くなると以前
できた道路は狭くなっている筈である。府道 30 号線は車の数も多く幅員が狭いため人や自
転車、まして車いすでは常に危険を感じながら通らねばならない。体に障害のある人や老人
が危険な思いをしないように、段差をなくした道路や横勾配を緩やかにした安全な道路づく
りを望む。
▶ 道路は平らで歩きやすく電線などは地下に埋めて広い歩道にしてほしい。
▶ 歩行者が安心して歩ける道路がほしい。自動車が走りやすい道路整備では邪魔な歩行者を路
端に追いやるために歩道に段差をつけ、車が歩行者に邪魔される交差点を通過できるように
歩道橋や横断地下道がつくられたと思いたくなるような状況です。バリアフリーの視点も入
れたヒト優先の道づくりを期待します。
▶ 府道 30 号線はほとんど車道と歩道の区別がなく、その上電柱があるため歩行者はもちろん
自転車も危険である。車いすの人も時々見かけるが何とかならないのか。
▶ 自転車で車道を走ると車が怖いし、歩道は凸凹が多いし、歩行者優先で自転車は走り辛い。
車の時も自転車の時も感じるがウォーキングの人が 2~3 人と並んで歩いているので怖い。
▶ 踏切で遮断機の下りている時間が長いため遮断機が上がると歩行者、自転車、手押し車で渡
る人が交差します。渡り終わらないうちにまたベルが鳴り遮断機が下りてくる、といったこ
とが多く高齢者や足の弱い人は特に危険です。
▶ 現在は車優先の道路である。
歩行者と車の分離をすすめ安全で快適な歩行者の空間が欲しい。
災害時の避難や緊急車両の活動がスムーズに行える道づくりを望む。
▶ 府道 30 号線は人が通れる道路ではない。溝蓋がゆがんで凸凹がありまた、電柱が突き出て危
険である。勾配や段差の改善を望む。
▶ 溝蓋の鉄板が平らでないため車椅子は通れない。歩道と車道の区別がなく自転車や人が通れ
る道ではない。
以上の回答から多くの人が安全で安心して通れる道路を求めているのかがわかります。
次頁の写真は、今回の調査で何らかの指摘があった地点を自転車で現地調査をした時のもので
す。ご覧のように「人にやさしい道路」とは言い難い状況でした。岸和田市内だけでなく府内の
多くの道路はまだまだ歩行者にとってやさしいとは言えないのではないでしょうか。
☞ 主な指摘点の状況
・補修をすれば通りやすくなる
・電柱などの障害物で通りにくく横勾配(左)があって車いすは通れない
・電柱、凸凹、横勾配、狭い幅員
・電柱、凸凹、横勾配、狭い幅員
・逆行する自転車と不要な縁石
・縁石を取れば通りやすい
・歩道を占拠する車
・段差を滑らかな曲線に仕
・歩行者専用道路
上げている
・ほぼ直角に仕上げた縁が段
差となり歩行を妨げる
・4m低くなった歩道
・歩道がない道路
お わ り に
私たちが普段何気なく利用している道路に多くの人はあまり関心がないのではないでしょうか。
この調査結果が、日常的に利用している道路の現状を知りより安全で安心な生活を送る条件の一
つとして道路のあり方を考える契機になればと思っています。
平成 12 年に「高齢者、身体障害者などの公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する
法律」
(交通バリアフリー法)が施行され、岸和田市でも駅や公共施設など不特定多数の人が利用
する一定規模以上の建造物、道路及び公園などのバリアフリー化に取り組んでいます。その後、
平成 6 年に施行された「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建造物の建築の促進に関
する法律」
(ハートビル法)と交通バリアフリー法を統合した法制度の検討が進められ、平成 18
年 12 月に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」
(バリアフリー新法)が施
行されました。しかし、街に出ると一部の駅や公共施設ではエレベーターやエスカレーターが設
置されていますが道路はまだまだ厳しい状況です。
今回の調査では 58%の人が自転車利用者でした。自転車の保有台数は昭和 45 年に 27,643 台だ
ったのが平成 18 年には 2.6 倍の 71,893 台で年々増加しています。都道府県別普及率では大阪が
トップで人口 100 人当たりの保有台数は 77.6 台(平成 19 年 10 月)です。自転車は高齢者から子
どもまで誰もが利用する交通手段として普及してきました。反面、手軽さゆえ自転車に関連した
交通事故が増加し、歩道上での無謀な運転など様ざまな課題も出ています。最近は自転車と歩行
者の接触事故が増え平成 10 年に 661 件だった事故が平成 20 年では 2,942 件になりおよそ 4.5 倍
に増加し、しかも被害者は高齢者に多いのです。二酸化炭素を出さない乗り物として、環境負荷
がなく交通渋滞の緩和など交通面からの効果が期待され、また、健康面にもすぐれた乗り物だと
言われています。この点からも環境に良い乗り物として今後も普及していくのではないでしょう
か。だからこそルール・マナーの徹底や安全な走行空間の確保が必要であり、誰もが現在の道路
状況を把握し「人にやさしい道路」のありかたについて考えなければならないと思います。今回
の調査では岸和田市内で歩行者や車いす利用者、自転車が安心して通れる道路は 1 か所のみでし
たが、
高齢化社会にも対応した安全な道づくりのために車優先から脱却し高齢者や障害者、
また、
児童生徒が安心して歩ける「人にやさしい道路」が少しでも多くなればと思います。
調査した岸和田市の道路事情は決して本市だけでの問題ではなく、近隣の市町村を含め全国的
に類似したものではないかと思われます。この調査で指摘のあった問題地点の道路が一日も早く
整備され快適な日常生活が送れるよう関係機関に期待したいところです。
参考文献
『歩いて暮らせる町づくりに関する世論調査』
2009.3 内閣府
『岸和田市交通バリアフリー基本構想』 岸和田市 平成 16 年
『道路交通令の解説と運用』 日本道路協会
2004.2
『自転車統計要覧』 自転車産業振興協会 平成 21 年 9 月
『自転車の安全利用の推進』 警察庁ホームページ
『自転車の安全利用の促進に関する提言』 自転車安全対策検討懇談会 警視庁
2006.11
『道路交通法軽自動車の世帯当たりの普及台数について』 全国軽自動車協会連合会 平成 17 年 8 月
『道路交通法』 他
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