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2011-MMRC-350 - 経営教育研究センター

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2011-MMRC-350 - 経営教育研究センター
MMRC
DISCUSSION PAPER SERIES
No. 350
中国における電気モビリティ社会の成立と持続成長
―中国における電気自動車ビジネスへの取り組みを中心に―
東京大学ものづくり経営研究センター
李
澤建
2011 年 4 月
東京大学ものづくり経営研究センター
Manufacturing Management Research Center (MMRC)
ディスカッション・ペーパー・シリーズは未定稿を議論を目的として公開しているものである。
引用・複写の際には著者の了解を得られたい。
http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/dp/index.html
Eco-innovation: Sustainability of China's Economic Growth and
Strategies: A Case Study on for Chinese EV Business
Zejian LI, Ph.D.in Economics
Manufacturing Management Research Center, the University of Tokyo
Abstract
Since 1993, China has shifted from a net crude oil exporter to a net crude oil importer. However,
Due to the country's fast economic development, the imports of crude oil has increased
dramatically in the following years, and reached alarming levels, as 51.29%, in 2009. It means that
more than 50% of total oil consumption of China mostly has needed to be imported from Africa &
Middle Eastern Countries. Furthermore, since more than 75% of oil imports are supplied by
shipping, the shipping security and energy self-sufficiency have become into an issue for China
urgently.
Basing on the view from environmental management, in this paper, we focus on the sustainability
in Chinese economy, as we have discussed above, and try to clarify the variation and
interdependency in Chinese energy security issues by using DPSIR framework.
In this preliminary exploration, under China’s present energy portfolio, we posit that: firstly, the
structural risk management system of China needed to be optimized as a hedging for energy
security risk from growing future dependency on oil imports and also from geographical ubiquity
in coal; secondly, it is the risks me mentioned above that force Chinese government, as a potential
factor, to promote eco-innovation through Coal-electricity integration project; finally, as a potential
synergy between power generation and consumption, plug an electric vehicle (EV) into grid will
not only enhance coal-fired power plant efficiency, also improve the energy efficiency of renewable
energy. Therefore, that is why we use case studies on Baoya New Energy Vehicle and BYD Auto to
show how corporate grow under above eco-innovation creation in China
Actually, we agree with those comments that a study from industrial organization is needed here to
enforce our opinions; we like to cope with it within our following works.
Keywords: Chinese economy, energy security issues, sustainable development, Environmental
Management, Electric Vehicle
中国における電気モビリティ社会の成立と持続成長
Eco-innovation: Sustainability of China's Economic Growth and Strategies
―中国における電気自動車ビジネスへの取り組みを中心に―
A Case Study on for Chinese EV Business
1.はじめに
2009 年 中 国 の 原 油 生 産 量 は 1.89 億 ト ン で ,原 油 輸 入 量 は そ れ を 上 回 っ た 1.99 億
ト ン で あ っ た 。1993 年 に 中 国 が 原 油 純 輸 入 国 に 転 落 し て 以 降( 図 1 参 照 ),2000 年
ご ろ ま で の 原 油 輸 入 依 存 度 は 24.8%程 度 と 依 然 と し て 低 い 水 準 で あ っ た が ,2009 年
に な り そ れ が 遂 に 50%と い う 警 戒 線 を 越 え 51.29% に 達 し た 。 そ れ 故 に , 金 融 危 機
後 の 中 国 政 府 の 経 済 運 営 に お い て ,持 続 可 能 な 発 展 に 必 要 と さ れ る エ ネ ル ギ ー 安 全
問 題 が い っ そ う 顕 在 化 し た 。と り わ け ,中 国 の 原 油 輸 入 問 題 に お い て は ,調 達 量 の
75%が 中 近 東 と ア フ リ カ な ど の 政 治 不 安 定 地 域 に 集 中 し て い る た め ,石 油 輸 入 の 大
半 が 海 上 運 送 に 頼 ら ざ る を え な い 状 況 に あ る 1。 し か も , そ の 海 上 運 送 量 の 8 割 が
マ ラ ッ カ 海 峡 を 経 由 し な け れ ば な ら な い ( 張 ・ 管 , 2007)。 調 達 先 が 偏 っ た 以 上 ,
航 路 に 死 角 が 存 在 す る た め ,中 国 の 石 油 事 情 に お い て ,調 達 ,運 送 ,消 費 に そ れ ぞ
れ 大 き な 不 安 が 伴 わ れ る 。更 に ,図 1 が 示 す よ う に ,近 年 中 国 の 一 人 当 た り の 一 次
エ ネ ル ギ ー ( 石 油 , 石 炭 , 天 然 ガ ス ) 消 費 量 は 2009 年 時 点 に は , 日 本 の 4 割 弱 の
水 準 に す ぎ な い が , 一 次 エ ネ ル ギ ー 総 消 費 量 で は , 既 に 世 界 全 体 の 17.29%を 占 め
る よ う に な っ て い る 。 他 方 で , 2009 年 中 国 の GDP 総 額 は 世 界 全 体 の 8.48%で , 両
者 を あ わ せ て 考 慮 す れ ば , 中 国 の GDP あ た り の エ ネ ル ギ ー 利 用 効 率 に お い て 改 善
の 余 地 が 依 然 大 き い こ と が 指 摘 で き る 。し か し ,そ の 一 方 で 経 済 成 長 を 最 優 先 の 目
標 に 据 え る 中 国 政 府 に と っ て ,こ れ か ら の 高 成 長 維 持 に は ,エ ネ ル ギ ー 安 全 問 題 が
避 け て 通 れ な い 緊 急 な 課 題 に な っ て い る 。と り わ け ,輸 入 原 油 に 対 す る 依 存 度 が 今
後 も 大 き く 低 減 す る と 期 待 で き な い な か ,石 油 の 国 際 価 格 に 対 す る 影 響 力 が い ま だ
薄 い 中 国 に と っ て は ,経 済 の 持 続 成 長 を 維 持 す る た め に ,何 よ り「 脱 石 油 依 存 」は
エネルギー安全問題を解決するための最優先課題となっている。
だ が ,こ れ ま で の 先 進 国 の 経 済 発 展 の 歴 史 に お い て ,化 石 燃 料 が 果 た し た 役 割 は
絶 大 で あ る 。中 国 の よ う な 人 口 超 大 国 が 主 と し て 非 化 石 燃 料 に 基 づ い て 工 業 化 が 進
行 し つ つ ,低 炭 素 社 会 へ の 移 行 に 成 功 し た 前 例 が ま っ た く 無 か っ た た め ,脱 石 油 依
存 の 具 体 策 に は 創 発 的 戦 略 = イ ノ ベ ー シ ョ ン が 必 要 と さ れ る 。更 に ,原 油 輸 入 依 存
度 が 既 に 70%に 達 し て い る イ ン ド 経 済 の 今 後 の 離 陸 を 考 え れ ば ,持 続 経 済 発 展 の た
め の エ ネ ル ギ ー 問 題 は ,中 国 の 一 国 特 有 な 問 題 で は な く ,新 興 国 の 経 済 発 展 に 共 通
する課題として認識する必要がある。
1
図 1
中 国 と イ ン ド の 経 済 成 長 と 石 油 需 給 状 況 ( 単 位 : Thousand Barrels Per Day)
出 典 : International Monetary Fund, World Economic Outlook Database, October 2010 , US Energy
Information Administration, よ り 筆 者 作 成 。
そ こ で , 本 稿 の 課 題 は 環 境 経 営 学 の 視 座 か ら , DPSIR フ レ ー ム ワ ー ク を 用 い て ,
中国における持続可能な発展に必要とされるエコイノベーションを促す因果連鎖
を解明し,政府が対応策の一部として推進し続ける電気自動車ビジネスを対象に,
比 亜 迪 自 動 車 や 宝 雅 新 能 源 汽 車 が ,戦 略 的 に サ ス テ ナ イ ビ リ テ ィ 維 持 需 要 を 自 社 の
成 長 戦 略 に 織 り 込 も う と す る 事 例 を 試 論 す る こ と に あ る 2。
2.サステナイビリティからエコイノベーションへ:諸視点の整理
持 続 可 能 な 成 長 発 展 に 対 す る 主 な 関 心 は ,比 較 的 に 資 本 主 義 が 新 た な 変 貌 を 遂 げ
よ う と す る 20 世 紀( 1960 年 代 以 後 )の 出 来 事 で あ っ た 。Fuller( 1969)は ,地 球 資
源 の 有 限 性 を , 食 糧 が 満 載 し た 閉 じ ら れ た 宇 宙 船 ( Spaceship Earth) と い う 世 界 観
を 提 起 し ,資 源 が 無 限 性 で あ る と い う 認 識 に 基 づ い た 当 時 の 人 間 社 会 の 経 済 成 長 パ
タ ー ン と そ の 無 謀 な 資 源 消 費 の あ り 様 に 問 題 が あ る と 説 き ,世 間 の サ ス テ ナ イ ビ リ
テ ィ に 対 す る 関 心 を 湧 き 立 た せ た 。 後 に Spaceship Earth と い う 概 念 の 影 響 を 受 け ,
Boulding( 1966)は 従 来 の「 消 費 は 生 産 を 呼 ぶ サ イ ク ル 」を カ ウ ボ ー イ 経 済( cowboy
economy) = 開 か れ た シ ス テ ム と 称 し , そ の 方 式 か ら 将 来 的 に 閉 じ ら れ た シ ス テ ム
= 宇 宙 飛 行 士 経 済( spaceman economy)へ 移 行 す べ き で あ る と 主 張 し た 。そ の 主 張
を 簡 単 に 解 釈 す れ ば ,カ ウ ボ ー イ 経 済 で は ,大 草 原 で 移 動 し な が ら 生 活 す る カ ウ ボ
ー イ が ,た と え 放 牧 地 域 内 の 資 源 を 全 部 消 費 し た と し て も ,移 動 す れ ば 新 た に 資 源
を 獲 得 で き , 制 約 を 受 け な い ま ま 生 活 で き る 。 す な わ ち ,「 資 源 は 無 限 に あ り , 成
長はいつまでも続く」という当時の社会認識をこの事例で喩えた。それに対して,
宇 宙 飛 行 士 経 済 で は ,将 来 の 経 済 成 長 パ タ ー ン と し て ,ス ト ッ ク が 有 限 な 宇 宙 船 に
生活する宇宙飛行士が全ての活動を閉じられた環境システムとしての宇宙船内で
保障可能な範囲内におさめる必要があるように,経済活動を持続させるためには,
有限な資源を循環させる必要性に基づくステナイビリティという理解は必要不可
2
欠 で あ る こ と を こ の よ う に 比 喩 的 に た と え た の で あ る 。こ の 主 張 は Boulding( 1966)
の 最 大 の 示 唆 と い え る 。更 に ,ス テ ナ イ ビ リ テ ィ を 厳 密 に 論 じ る 研 究 で は ,ダ イ ナ
ミック・システム・モデルに基づき,幾何級数的成長=加速度的に進む世界人口,
工 業 化 ,汚 染 ,食 糧 生 産 ,及 び 再 生 不 可 能 な 天 然 資 源 の 消 費 と い う 五 つ の 独 立 変 数
の 間 の 相 互 作 用 を ,数 学 的 工 程 式 を 用 い て 分 析 す る こ と を 通 し て ,成 長 限 界 が 想 定
外に早く到来しうること,そして持続可能な成長への早期移行の必要性を訴えた
Meadows et al.( 1972)が 挙 げ ら れ る 。以 来 ,サ ス テ ナ イ ビ リ テ ィ 問 題 に 対 す る 関 心
は ,地 球 環 境 問 題 を は じ め と す る 人 口 問 題 ,地 球 温 暖 化 ,生 物 多 様 性 の 維 持 ,環 境
保 全 ,資 源 保 護 な ど 多 岐 に わ た っ て ,定 常 経 済 ,グ リ ー ン 経 済 ,生 態 経 済 な ど の 多
数 の 経 済 学 的 ア プ ロ ー チ に よ っ て 議 論 が な さ れ て き た ( Daly,1973; Pearce et al.,
1989; Daly et al., 2004)。
一 方 ,経 営 学 的 ア プ ロ ー チ か ら ,企 業 行 動 と サ ス テ ナ イ ビ リ テ ィ と の 結 び 付 き を
扱 う 環 境 経 営 理 論 ( Environmental Management) の 登 場 が 20 世 紀 末 か ら 21 世 紀 初
頭 に か け て よ う や く 成 立 ち 始 め た の で あ る 。そ の 定 義 に つ い て い ま だ 諸 説 が 試 さ れ
て い る が ,「 企 業 の ビ ジ ネ ス 運 営 に 起 因 し た 環 境 負 担 を 低 減 さ せ る こ と を 目 標 と す
る 技 術 的・組 織 的 活 動 を 対 象 と す る 研 究 」と し て 一 般 的 に 認 識 さ れ て い る( Cramer,
1998)。 そ の 定 義 か ら わ か る よ う に , こ の 学 問 の 初 期 の 研 究 関 心 は 主 に 企 業 経 営 に
よ る 環 境 負 荷 の 改 善 を 持 続 的 に 実 現 さ せ る た め の 制 度 設 計 に 置 か れ ( Arthur D.
Little, 1992; Hopfenbeck, 1993; Brezet and van Hemel, 1997), 反 対 に , 企 業 が い か に
自らの行動を通じて,環境経営を実践するかに対する関心は疎かになっていた
( Vermeulen et al., 1995; Wallace, 1995; van der Mandele et al., 1995)。 つ ま り , 環 境
経営にまつわる議論は個別に識別かつ認証可能な企業のボランティア活動とそれ
に 基 づ く 政 府 の 環 境 方 針 策 定 に そ っ て 展 開 さ れ( Wagner, 2007),主 に 企 業 が 自 ら 環
境 問 題 に 対 す る 方 針 を 設 定 し た り ,そ れ に 基 づ い て 取 り 組 ん だ り ,結 果 を 環 境 報 告
書としてまとめて公表したりする企業の社会的責任に関連する活動がメインな議
論 の 対 象 に な っ て い た 。そ の 反 面 ,企 業 の ビ ジ ネ ス 運 営 に 起 因 し た 自 己 責 任 に よ る
環 境 負 担 で な く て も ,社 会 全 般 の 環 境 負 担 の 低 減 に 取 り 組 む 活 動 に 対 す る 議 論 が 欠
如 し て い た と 指 摘 で き る 。 こ う し た 関 心 は 2000 年 以 後 , よ う や く 環 境 問 題 に 取 り
組む企業活動に見られるイノベーティブな側面として,環境イノベーション
( Environmental Innovation) = エ コ イ ノ ベ ー シ ョ ン ( Eco- Innovation) と い う テ ー
マ の 下 , 着 目 さ れ る よ う に な っ て き た ( Brunnermeier & Cohen, 2003; Ziegler &
Rennings, 2004; Rennings et al., 2006)。
エ コ イ ノ ベ ー シ ョ ン と は 新 し い ア イ デ ア ,行 動 ,製 品 ,プ ロ セ ス を 開 発 し ,も し
く は そ れ ら を 新 た に 導 入・応 用 す る こ と を 通 じ て ,環 境 負 荷 の 低 減 や 生 態 学 的 に 指
定 さ れ た 持 続 可 能 な 目 標 に 貢 献 す る 企 業 と 個 人 に よ る 取 り 組 み を さ す ( Klemmer et
al., 1999; Rennings, 2000;)。 こ の 定 義 か ら わ か る よ う に , エ コ イ ノ ベ ー シ ョ ン に は
3
製 品 的 イ ノ ベ ー シ ョ ン( Environmental Product Innovation)と 過 程 的 イ ノ ベ ー シ ョ ン
( Environmental Process Innovation)と い う 二 つ の 構 成 要 素 が 内 包 さ れ て い る 。従 来
の 生 産 - 消 費 サ イ ク ル に お い て ,企 業 の 社 会 的 責 任 の 下 で 行 わ れ る 環 境 保 全 活 動 が
主 に 環 境 に 対 す る 負 の 外 部 性 を 低 減 さ せ る 効 果 を 有 す る 一 方 で ,エ コ イ ノ ベ ー シ ョ
ン は ,環 境 保 全 に 必 要 と さ れ る 新 製 品・新 手 法 を 開 発 す る 行 為 を 通 じ て ,そ の 行 為
自 体 に 伴 う 負 の 外 部 性 を 低 減 さ せ る と 同 時 に ,環 境 に 対 す る 正 の 外 部 性 を 向 上 さ せ
る 効 果 を 併 せ 持 っ て い る 。し た が っ て ,エ コ イ ノ ベ ー シ ョ ン は 環 境 外 部 性 に お い て
正 と 負 の 二 面 に わ た り 起 用 で き る 点 に 特 徴 が あ る 。特 に ,正 の 外 部 性 を 向 上 さ せ る
こ と を 通 じ て ,環 境 保 全 を 達 成 で き る こ と は 環 境 経 営 学 に お い て ,エ コ イ ノ ベ ー シ
ョンが注目される理由の一つとも言える。
本 稿 で 後 述 す る 中 国 に お け る 電 気 自 動 車 製 品 の 普 及 は ,こ の 範 疇 の 議 論 に 属 す る 。
し か し ,こ う し た エ コ イ ノ ベ ー シ ョ ン 活 動 に は ,政 府 ,企 業 ,個 人 ,環 境 な ど 数 多
く の 主 体 が 絡 み ,従 来 の 一 企 業 内 で 行 わ れ る 狭 義 の イ ノ ベ ー シ ョ ン と は 異 な り ,
「社
会 性 」が 要 求 さ れ て い る 。こ の よ う に し て ,エ コ イ ノ ベ ー シ ョ ン に 対 す る 記 述 と 評
価 は ,そ の 中 の 各 主 体 間 の 因 果 連 鎖 関 係 に 対 す る 分 析 と し て 置 き 換 え る こ と は 可 能
で あ り ,そ の 中 身 を 理 解 す る た め に 必 要 不 可 欠 な 作 業 と な っ て い る 。そ の 際 に ,ダ
イナミックシステムの各内部ファクターの因果連鎖関係及び内外相互作用の有効
な 分 析 ツ ー ル と し て 広 く 知 ら れ て い る の は DPSIR フ レ ー ム ワ ー ク で あ る ( 図 2 参
照 )。DPSIR フ レ ー ム ワ ー ク で は ,推 進 力( D:Driving forces)→ 圧 力( P: Pressures)
→ 状 態( S: State) → 負 荷 ( I: Impact) と い う 因 果 連 鎖 を 特 定 で き る 一 方 ,因 果 連 鎖
と 相 応 し い 対 策( R:Response)を い か に 策 定 で き る か ま で ,分 析 を 可 能 に し て い る 。
図2
エ コ イ ノ ベ ー シ ョ ン 諸 フ ァ ク タ ー の 構 造 関 係 ― DPSIR モ デ ル
出 典 : EEA( 1999) に 基 づ き , 筆 者 加 筆 。
推 進 力( D:Driving forces)と は 生 産・消 費 な ど の 人 類 活 動 に よ っ て 環 境 に 圧 力 を
も た ら す 潜 在 要 因 の こ と で ,本 稿 で は 主 に 中 国 の エ ネ ル ギ ー 安 全 問 題 を も た ら し た
潜 在 要 因 と し て 分 析 す る 。圧 力( P: Pressures)と は 環 境 に 波 及 し た 圧 力 そ の も の を
4
指 す が ,本 稿 で は 主 と し て 中 国 が エ ネ ル ギ ー 安 全 問 題 で 直 面 し て い る 圧 力 と し て 分
析 す る 。状 態( S: State)と は 上 記 圧 力 を 受 け た 後 の シ ス テ ム の 様 子 で あ り ,本 稿 で
は ,中 国 の エ ネ ル ギ ー 安 全 問 題 に お け る 一 次 エ ネ ル ギ ー の 需 給 構 造 に 見 ら れ る ね じ
れ 構 造 と し て 説 明 す る 。 負 荷 ( I: Impact) と は シ ス テ ム の 変 化 に 起 因 し た 影 響 を 指
し ,こ こ で は 主 に エ ネ ル ギ ー 安 全 問 題 の 存 在 に よ る 中 国 経 済 の サ ス テ ナ イ ビ リ テ ィ
に 与 え る 制 約 を 分 析 す る 。 最 後 に , 対 策 ( R:Response) と は , 前 述 し た 制 約 を 解 消
す る た め の 取 り 組 み で ,本 稿 で は 政 府 施 策 と 関 連 企 業 の 成 長 戦 略 と い う 二 つ ア プ ロ
ーチにおいて,分析を進める。
3 . DPSIR フ レ ー ム ワ ー ク に よ る 中 国 の エ コ イ ノ ベ ー シ ョ ン の 動 因 分 析
( 1 ) 推 進 力 ( D:Driving forces)
図 3 が 示 す よ う に , 2010 年 1- 10 月 期 の 中 国 の 自 動 車 生 産 実 績 を 見 る と , 仮 に
11 月 と 12 月 は 10 月 と 同 様 の 水 準 で 推 移 す る と 予 測 す れ ば ,通 年 で は 総 生 産 台 数 が
1800 万 台 に 届 く 勢 い で あ る 3 。 2009 年 の 1379 万 台 か ら 30%以 上 の 増 加 と な り , 2
年 連 続 世 界 最 大 の 自 動 車 生 産 国 に な る の は 確 実 で あ ろ う 。し か し ,2000 年 当 時 の 生
産 台 数 は 僅 か 206 万 台 だ っ た と い う 歴 史 を 思 い 返 せ ば , ま さ し く 『 成 長 の 限 界 』
( Meadows et al., 1972)で 指 摘 さ れ た 幾 何 級 数 的 成 長 で あ る 。こ の 10 年 間 の 自 動 車
市 場 の 拡 大 速 度 は 平 均 し て 年 率 25%に 達 す る 。そ の 加 速 度 は ,同 期 間 内 の 道 路 総 延
長 の 年 間 平 均 増 加 率 4 の 10.65%, 原 油 生 産 量 の 年 間 平 均 増 加 率 の 1.69%, 石 油 消 費
量 の 年 間 平 均 増 加 率 の 5.54%の い ず れ よ り も 高 く ,中 国 全 体 の 石 油 消 費 量 を 押 し 上
げ る 主 要 な フ ァ ク タ ー に な っ て い る 5。
一 方 ,図 3 か ら わ か る よ う に ,1960 年 ご ろ 日 本 で は 池 田 内 閣 に よ る 所 得 倍 増 計 画 ,
そ し て ,同 計 画 に よ る 各 メ ー カ ー 自 動 車 生 産 能 力 の 拡 張 を 背 景 に ,モ ー タ リ ゼ ー シ
ョ ン が 一 気 に 進 行 し ,マ イ カ ー ブ ー ム が 到 来 し た 。そ れ 故 に ,1970 年 代 初 頭 ま で 年
間 自 動 車 生 産 台 数 に 占 め る 乗 用 車 生 産 の 比 率 = 「 日 本 乗 用 車 生 産 比 率 」 が 1962 年
の 27.36%か ら ,僅 か 10 年 の 間 で 60.41%( 1972 年 )に 上 昇 し た 。一 方 ,同 図 の「 中
国 乗 用 車 生 産 比 率 」 が 示 す よ う に , 中 国 市 場 で は 「 乗 用 車 生 産 比 率 」 が 2000 年 の
29.22%か ら ,一 気 に 2009 年 の 75.29%に 上 昇 し ,日 本 の 歴 史 経 験 に 照 合 す れ ば ,モ
ー タ リ ゼ ー シ ョ ン が 急 進 行 し た 事 が 理 解 で き よ う 。そ の 中 で 注 目 し た い の は ,自 動
車 保 有 台 数 の 増 加 に よ っ て 増 え 続 け る 潜 在 波 及 で あ る 。例 え ば ,2010 年 2 月 に 北 京
の 自 動 車 保 有 台 数 が 400 万 台 を 突 破 し ,1000 人 あ た り の 自 動 車 保 有 台 数 が 227 台 に
達 し た 。 し か し , そ れ は 2007 年 5 月 に 300 万 台 を 突 破 し て か ら 僅 か 2 年 7 ヶ 月 の
出 来 事 で あ る 。 同 様 の 変 化 は 東 京 で は 12 年 か か っ た 。 実 際 に は , 北 京 の 自 動 車 保
有 台 数 が 200 万 台 と 300 万 台 を 突 破 し た 所 要 期 間 は そ れ ぞ れ 6 年 半 と 3 年 9 ヶ 月 で
あ る の に 対 し て ,東 京 で は 5 年 と 10 年 の 歳 月 を 費 や し て い る 6 。倍 増 期 間( Doubling
time) で 見 れ ば , 北 京 の 自 動 車 保 有 台 数 が 100 万 台 か ら 200 万 台 に 倍 増 し た 所 要 期
間 は 6 年 半 だ っ た に 対 し て , 200 万 台 か ら 400 万 台 に 倍 増 し た の は 僅 か 6 年 4 ヶ 月
5
で あ っ た 。一 方 ,東 京 で は そ れ ぞ れ 5 年 と 22 年 で あ っ た 。2006 年 以 後 ,総 じ て「 中
国 乗 用 車 生 産 比 率 」の 増 加 傾 向 が 鈍 化 し は じ め た も の の ,こ れ ま で の 自 動 車 市 場 は
主 に 沿 海 部 大 都 市 圏 に 偏 在 し て い た が ,2009 年 よ り ,二 段 ロ ケ ッ ト の 点 火 役 と し て
期 待 さ れ る 農 村 市 場 の 始 動 が ,引 き 続 い て モ ー タ リ ゼ ー シ ョ ン を 好 調 に 牽 引 し て い
く と 思 わ れ る( 李 ,2010a)。よ っ て ,エ ネ ル ギ ー と イ ン フ ラ な ど に 対 す る 圧 迫 問 題
が中国全土に亘り,エスカレートする可能性も懸念される。
図3
中国の自動車生産(単位:万台)
注 : *2010 年 の 中 国 生 産 台 数 は 1- 8 月 ま で の 実 績 の 1.5 倍 と し て 算 出 し た も の 。
出 典 : CATARC, JAMA, 筆 者 作 成 。
図4
中 国 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 生 産 消 費 構 造 ( 単 位 : 億 ㌧ SCE)
出 典 :『 中 国 統 計 年 鑑 ( 2007)』,『 2010 中 国 汽 車 市 場 展 望 』, 各 種 報 道 に よ り 筆 者 作 成 。
6
( 2 ) 圧 力 ( P: Pressures)
モ ー タ リ ゼ ー シ ョ ン は ,様 々 な 社 会 的 影 響 を 引 き 起 こ し う る が ,紙 幅 の 関 係 上 こ
こ で は 主 に エ ネ ル ギ ー 関 連 で 分 析 を 進 め る 。図 4 か ら わ か る よ う に ,1990 年 代 を 通
し て ,中 国 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 総 需 給 量 は ほ ぼ 横 ば い で 推 移 し て き た が ,2000 年 以 後
増 加 に 転 じ 始 め た 。同 時 に ,総 消 費 量 と 総 生 産 量 の 差 額( = エ ネ ル ギ ー 不 足 分 )も
次 第 に 拡 大 し ,2009 年 に は 不 足 分 が 総 生 産 量 の 11.49%に 達 し た 。前 述 し た よ う に ,
2009 年 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 総 消 費 量 で は , 中 国 が 既 に 世 界 全 体 の 17.29%を 消 費 す る
状 況 に な っ て お り ,持 続 的 成 長 を 維 持 す る た め に ま ず 乗 り 越 え な け れ ば な ら な い の
が エ ネ ル ギ ー の 持 続 安 定 供 給 で あ る 。何 よ り ,自 動 車 保 有 台 数 で は 2000 年 で 1608.91
万 台 に し か 過 ぎ な か っ た の が , 2005 年 に 3160 万 台 に 達 し , 2009 年 に は 7619 万 台
に 急 増 し た 。 保 有 台 数 の 急 増 化 は 主 に 2006 年 以 後 に 起 こ っ た た め , 石 油 消 費 に 対
する影響も今後加速度的に顕在化すると予想できよう。
図 1 と 図 4 が 示 す よ う に ,1990 年 代 以 降 ,中 国 石 油 製 品 の 消 費 量 が 増 え 続 け て い
る が ,自 国 の 石 油 生 産 が 追 い 付 か な い 状 態 と な っ て い る 。と り わ け 自 動 車 使 用 に よ
っ て 消 費 さ れ た 燃 料 の 比 率 が 増 加 し つ つ あ り , 2008 年 に は , 全 体 消 費 量 の 40%に
達 し て お り ,2020 年 に は ,自 動 車 燃 料 生 産 に 使 わ れ る 年 間 石 油 の 総 需 要 量 が 5 億 ト
ン に な る 予 測 も 立 っ て い る 7 。 つ ま り , 10 年 後 に は 自 動 車 を 走 ら せ る た め だ け に ,
2009 年 の 中 国 石 油 総 消 費 量 の 1.25 倍 の 石 油 が 必 要 と さ れ る と い う 計 算 に な る 。
( 3 ) 状 態 ( S: State)
他 方 で は , 中 国 の 石 油 確 認 埋 蔵 量 が 2009 年 に は 27.9 億 ト ン = 世 界 全 体 の 1%前
後 で あ り ,2009 年 の 1.89 億 ト ン の 原 油 生 産 量 で 割 る と ,静 態 的 予 測 可 採 年 数 は 14.7
年 に な る 。 な お , 中 国 で は 石 炭 可 採 埋 蔵 量 は 2007 年 に 1145 億 ト ン = 世 界 全 体 の
13.5%で , 米 露 に 次 ぐ 世 界 3 位 の 高 さ を 誇 る 。 そ の た め , 2007 年 時 点 で は , 石 炭 が
28.5%,石 油 が 35.5%,天 然 ガ ス が 23.7%,水 力・風 力・原 子 力 な ど の 自 然 エ ネ ル ギ
ー 発 電 が 12.3%と い う 世 界 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 消 費 構 造 に 対 し て ,中 国 で は ,石 炭 が
69.5%,石 油 が 19.7%,天 然 ガ ス が 3.5%,自 然 エ ネ ル ギ ー 発 電 が 7.3%と な っ て お り ,
全 体 需 要 が 急 拡 大 す る な か ,一 貫 し て 70%を 維 持 し て い る 石 炭 の 役 割 が 一 目 瞭 然 で
あ る ( 図 4 参 照 )。 し か し , 石 炭 に し て も , 2009 年 の 生 産 量 で 計 算 す れ ば , 静 態 的
予 測 原 炭 可 採 年 数 が 僅 か 40 年 間 し か な い の で あ る 。 こ の こ と は , 加 速 度 的 に 増 加
し て い く 中 国 の 石 油 消 費 量 の 大 半 が 輸 入 に 頼 ら ざ る を 得 な い こ と を 意 味 す る 。こ の
こ と は デ ー タ で 検 証 す る こ と が で き る 。 1990 年 代 か ら 2000 年 代 に か け て , 中 国 の
一 次 エ ネ ル ギ ー 消 費 構 造 に 占 め る 石 油 の 比 率 が 緩 や か に 増 加 し ,反 対 に ,一 次 エ ネ
ル ギ ー 生 産 構 造 に お け る 原 油 の 比 率 が 低 下 し て い る( 図 4 参 照 )。そ の た め ,石 炭 ,
天 然 ガ ス , 自 然 エ ネ ル ギ ー 発 電 に お け る 自 給 率 が 依 然 100%前 後 に 維 持 で き た こ と
に 対 し て , 石 油 の 自 給 率 が 2000 年 以 降 に 急 低 下 し , 2009 年 に は 遂 に 50%を 下 回 っ
て し ま い , 全 体 の 一 次 エ ネ ル ギ ー 自 給 率 を 89.69%ま で に 引 き 下 げ た 。 工 業 化 , 都
7
市 化 を 背 景 に ,さ ら に は ,モ ー タ リ ゼ ー シ ョ ン に 突 入 す る 中 国 に と っ て ,一 次 エ ネ
ル ギ ー の 持 続 供 給 問 題 ,そ し て エ ネ ル ギ ー 消 費 に お け る 石 油 に 起 因 し た 供 給 確 保 問
題 へ の 対 応 は ,エ ネ ル ギ ー 安 全 面 に し て も ,サ ス テ ナ イ ビ リ テ ィ 実 現 に し て も ,避
けては通れない課題になっている。
( 4 ) 負 荷 ( I: Impact)
「 富 煤 ・ 貧 油 ・ 少 気 ( 豊 富 な 石 炭 ・ 欠 乏 し た 石 油 ・ 希 少 な 天 然 ガ ス )」 と い う エ
ネ ル ギ ー 供 給 構 造 を 有 す る 中 国 で は ,石 油 の 欠 乏 だ け で は な く ,石 炭 を 中 心 に 据 え
る こ と に よ る 独 自 の 課 題 に も 直 面 し て い る 。ま ず ,資 源 の 偏 在 性 で あ る 。中 国 の 石
炭 供 給 の 60%は 北 西 部( 山 西 ,陝 西 と 内 モ ン ゴ ル )に 集 中 し て お り ,他 方 ,消 費 地
は 主 に 経 済 が 発 達 す る 東 部 沿 海 地 域 に あ る 。そ の た め ,石 炭 の 消 費 に は 長 距 離 運 送
の 問 題 が 生 じ る 。現 在 ,石 炭 運 送 の 70%が 鉄 道 に 依 存 し て い る が ,鉄 道 運 送 力 の 拡
張 が 石 炭 の 生 産 増 加 速 度 に 追 い つ か ず , 一 番 の 制 約 条 件 と な っ て い る 8。 鉄 道 の 貨
物 運 搬 力 が 不 足 し て い る 中 , 自 動 車 に よ る 石 炭 の 道 路 運 送 量 は 2007 年 に 総 生 産 量
の 8.68%を 占 め る 2.2 億 ト ン に の ぼ る 。 し か し , 鉄 道 と 水 上 運 送 と を 比 較 し て , 自
動 車 に よ る 石 炭 運 搬 に は 多 大 な 石 油 が 必 要 と さ れ る 。2008 年 ,交 通 運 送・倉 庫 物 流・
郵 便 通 信 産 業 の エ ネ ル ギ ー 消 費 は 全 体 の 7.86%に 上 り ,こ れ か ら も 加 速 度 を も っ て
増 加 し て い く と 予 測 さ れ る 。ま た ,石 炭 資 源 の 偏 在 性 と 大 範 囲 の 石 炭 運 搬 に よ っ て
支 え ら れ る 発 電 構 造 に は ,電 気 需 要 の 増 加 に 伴 う 運 搬 量 増 大 に し た が っ て ,シ ス テ
ム リ ス ク も 増 大 す る 傾 向 に あ る 。つ ま り ,大 規 模 自 然 災 害 や 戦 争 に よ っ て 石 炭 運 送
が 止 め ら れ る と ,75%以 上 の 電 力 供 給 が 火 力 発 電 に 依 存 し た 中 国 の 発 電 網 に は 直 ち
に 大 き な 支 障 が 生 じ る 。こ の 点 は 中 国 の エ ネ ル ギ ー 安 全 問 題 に 内 包 さ れ る 構 造 的 矛
盾 と し て 指 摘 で き よ う 。更 に ,2005 年 以 後 ,石 炭 採 掘 に 伴 う 人 身 事 故 の 頻 度 と 死 亡
人 数 が 共 に 減 っ て お り 9 ,大 き な 改 善 が 見 ら れ る も の の ,一 度 に 30 人 以 上 が 死 亡 す
る 事 故 の 発 生 が 大 き な 経 済 的 損 失 と 共 に ,社 会 に 悪 影 響 と 不 安 を 与 え て い る 。採 掘
段 階 の 技 術 向 上 に よ る 安 全 対 応 が 迫 ら れ て い る 。最 後 に ,CO2 排 出 低 減 と 環 境 保 全
で あ る 。現 に ,中 国 で は ,粉 塵 排 出 の 70%,二 酸 化 硫 黄( SO2)の 90%,CO2 の 70%,
窒 素 酸 化 物( NOx)の 67%の 排 出 が 石 炭 使 用 と 関 連 し て い る( 陳 ,2008)。よ っ て ,
石炭使用段階の技術革新による排出物の低減をはかる環境保全活動による負の外
部 性 抑 制 効 果 と し て 期 待 さ れ て い る 。石 油 の 欠 乏 と 石 炭 資 源 立 地 の 偏 在 性 に 伴 う エ
ネ ル ギ ー シ ス テ ム に ま と う リ ス ク は ,総 じ て 中 国 社 会 を エ コ イ ノ ベ ー シ ョ ン に 向 か
わせる最大な動因と言えよう。
( 5 ) 対 策 ( R:Response)
2020 年 ま で に 単 位 GDP あ た り の 二 酸 化 炭 素 排 出 量 を 2005 年 比 で 40~ 45% 削 減
す る 目 標 を 定 め た 中 国 に と っ て ,石 炭 を 主 体 と す る 代 替 エ ネ ル ギ ー の 普 及 は 問 題 解
決 の カ ギ に な っ て い る 。 供 給 サ イ ド に お い て は , 第 一 に ,「 煤 電 一 体 化 」 と い う 火
力 発 電 の バ リ ュ ー チ ェ ン の 垂 直 統 合 を 推 進 す る こ と に よ っ て ,炭 鉱 立 地 の 発 電 所 を
8
建 設 し ,石 炭 運 送 か ら 電 力 運 送 へ と 切 り 替 わ り ,総 エ ネ ル ギ ー 利 用 効 率 の 向 上 が 図
ら れ て い る 。そ こ に は 石 炭 運 搬 に 伴 う エ ネ ル ギ ー 消 費 と 運 送 中 断 に よ る 電 力 供 給 中
心というリスクを一括で回避する狙いである。第二に,零細火力発電所を淘汰し,
火 力 発 電 所 の 集 約 化 と 大 規 模 化 を 図 る う え で , 石 炭 ガ ス 化 複 合 発 電 ( IGCC) 技 術
を 普 及 さ せ ,石 炭 の エ ネ ル ギ ー 転 換 率 を あ げ な が ら ,CO2 と 空 気 汚 染 物 質 の 排 出 を
低 減 さ せ る 。第 三 に ,石 炭 化 学 の 推 進 で あ る 。主 に 石 炭 液 化 と 合 成 ガ ス 化 が 主 流 で
あ る が ,特 に 後 者 の 場 合 ,ジ メ チ ル エ ー テ ル( DME)生 産 に よ っ て ,将 来 的 に 大 規
模 な 軽 油 代 替 が 期 待 さ れ て い る 。そ の 他 ,再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 普 及 の 推 進 も 期 待 さ
れ て い る が ,不 安 定 な 供 給 は 制 約 に な っ て い る 。こ う し た 理 由 に よ っ て ,石 炭 の 偏
在 性 と い う 課 題 が「 煤 電 一 体 化 」で 電 力 供 給 の 北 西 部 集 約 を も た ら す も の の ,電 力
網 改 造 に よ る 長 距 離 高 圧 送 電 シ ス テ ム へ の 移 行 で ,一 括 で の 解 決 が 計 画 さ れ て い る 。
こうした長距離高圧送電システムへの移行が実現できれば,水力,風力,原子力,
バイオエネルギーなどの自然エネルギー受容と利用に大いなる潜在性がある。
し か し ,周 知 の 通 り ,自 然 由 来 エ ネ ル ギ ー の 利 用 に お い て 最 も 問 題 と し て 指 摘 さ
れ る の は ,出 力 予 測 困 難 に 起 因 し た 供 給 の 不 安 定 性 や ,常 に 発 電 量 と 消 費 量 を 一 致
さ せ る 必 要 に 応 じ た 出 力 制 御 の 困 難 性 と い う 点 で あ る 。と こ ろ で ,ス マ ー ト グ リ ッ
ド へ の 移 行 は ,こ う し た 問 題 の 解 決 策 と し て 期 待 さ れ て お り ,そ の た め「 ス マ ー ト
充 電 シ ス テ ム 」の 一 環 と し て ,電 気 自 動 車 は 戦 略 的 に 推 進 さ れ て い る 。紙 幅 の 制 約
上 ,本 稿 で は ,中 国 経 済 の 持 続 成 長 に 関 す る エ ネ ル ギ ー 戦 略 の 分 析 に 関 し て こ れ 以
上 立 ち 入 る こ と は 避 け ,こ れ か ら ,自 動 車 産 業 に お け る 電 気 自 動 車 ビ ジ ネ ス の 成 立
に 関 す る 政 府 の 役 割 を 説 明 し た う え で ,比 亜 迪 汽 車( 以 下「 BYD」と 略 称 す る )と
低 速 電 気 自 動 車 を 中 国 で 切 り 開 い た 宝 雅 新 能 源 汽 車( 以 下「 宝 雅 汽 車 」と 略 称 す る )
の事例を説明する。
4. エコイノベーション創出に向けた中国自動車産業
( 1 )「 ダ ウ ン サ イ ジ ン グ 」 か ら 「 省 エ ネ 」 へ : 強 ま る 政 府 の 政 策 運 営 の 影 響 力
2008 年 ,米 国 に 端 を 発 し た 世 界 金 融 危 機 は ,中 国 政 府 に 自 国 産 業 構 造 を エ コ イ ノ
ベーションへ移行する発展ロードマップへと向かわせる絶好なきっかけを与えた。
世 界 同 時 不 況 で 一 気 に 冷 え 込 ん だ 国 内 経 済 に 対 し て ,中 国 政 府 は ,単 に 需 要 を 喚 起
す る た め の 刺 激 救 済 策 を 一 般 的 に 実 施 す る の で は な く ,好 況 期 に な か な か 進 ま な か
っ た 自 国 産 業 の 構 造 調 整 を は か る 好 機 と し て 捉 え た 。2009 年 2 月 に ,製 造 大 国 か ら
製 造 強 国 へ の 飛 躍 を は か る た め に ,エ ネ ル ギ ー 効 率 の 低 い 部 門 や 重 複 建 設 に よ る 生
産 能 力 の 過 剰 を 淘 汰 抑 制 す る こ と を 目 的 と し て ,自 動 車 ,鉄 鋼 ,繊 維 ,設 備 ,船 舶 ,
IT, 軽 工 業 , 石 油 化 学 , 有 食 金 属 , 物 流 と い っ た 10 大 重 点 産 業 の 振 興 と 構 造 調 整
政 策 が 打 ち 出 さ れ ,優 位 部 門 に お け る 自 主 創 新 に よ る イ ノ ベ ー シ ョ ン 能 力 と 産 業 集
中 度 の 向 上 ,そ し て 持 続 可 能 な グ リ ー ン 経 済 へ の 移 転 に 伴 っ て 自 主 ブ ラ ン ド 製 品 の
育成が図られた。
9
図5
2009 年 中 国 自 動 車 市 場 の 価 格 帯 構 成
出 典 : CATARC, SOHU 汽 車 よ り , 筆 者 作 成 。
自 動 車 産 業 に 関 し て 言 え ば , 主 に , エ ン ジ ン 排 気 量 の 1600cc 以 下 の 小 型 車 に 対
し て , 取 得 税 ( 購 置 税 ) 率 を 10%か ら 5%へ 半 減 し , 新 車 需 要 全 体 の 「 ダ ウ ン サ イ
ジ ン グ = 小 排 気 量 自 動 車 普 及 」 が 図 ら れ た 10 。 続 い て , 燃 費 の 悪 い 高 年 式 中 古 車 の
淘 汰 を は か る 施 策 と し て ,「 汽 車 下 郷 」 11 と 「 以 旧 換 新 」 12 を 相 次 い で 打 ち 出 し た 。
そ の 政 策 の 実 施 に よ っ て ,1600cc 以 下 の 乗 用 車 の 販 売 台 数 が 全 体 の 7 割 を 超 え ,通
年 で は 対 前 年 比 71% 増 の 719 万 5500 台 に な っ た 。 自 動 車 市 場 全 体 で は , 製 販 台 数
が 共 に 1300 万 台 を 超 え ,そ れ ぞ れ ,対 前 年 比 の 54・11% と 52・93% の 急 増 と な っ
た 。 図 5 の よ う に , 2009 年 に 一 連 の 自 動 車 産 業 振 興 政 策 が 奏 功 し , 10 万 元 以 下 の
廉 価 車 市 場 が 半 分 以 上 の シ ェ ア を 占 め る よ う に 拡 大 さ れ た 。 特 に 5 万 元 ( 65 万 円 )
以 下 の 超 廉 価 車 市 場 は ,シ ェ ア と 増 加 率 の い ず れ か ら み て も 名 実 と も に ボ リ ュ ー ム
ゾ ー ン に な っ て い る 。こ の 層 の 伸 び に 最 も 貢 献 し て い る の は ,乗 貨 両 用 車 ,い わ ゆ
る 日 本 の 軽 の ワ ン ボ ッ ク ス 型 ミ ニ バ ン で あ る 。 排 気 量 は 殆 ど 1600cc 以 下 で , 価 格
も 5 万 元 以 下 の た め ,「 購 置 税 半 減 」 と 「 汽 車 下 郷 」 な ど の 政 策 の 影 響 で , 特 に 農
村 部 に お い て 大 い に 販 売 さ れ て い た 。さ ら に ,上 記 施 策 の ほ か ,上 海 ,北 京 な ど の
13 都 市 で の 公 共 サ ー ビ ス 用 車 両 を 対 象 と し た エ コ カ ー 購 入 に 対 す る 補 助 金 支 給 政
策 の 「 十 城 千 輌 13 」 プ ロ ジ ェ ク ト が 並 行 し て 実 施 さ れ , 次 世 代 自 動 車 の 普 及 に お け
る 脱 石 油 依 存 が 正 式 に 取 り 組 ま れ 始 め た 。し か し ,次 世 代 自 動 車 の ロ ー ド マ ッ プ に
対 す る こ の 時 期 の 中 国 政 府 の 認 識 は ,ハ イ ブ リ ッ ド 車 ,Plug-in ハ イ ブ リ ッ ド 車( 以
下「 PHEV」と 略 す ),燃 料 電 池 車 ,ク リ ー ン デ ィ ー ゼ ル 車 と 電 気 自 動 車 な ど に 分 散
し て お り ,特 に 対 象 を 絞 ろ う と は し な か っ た が ,2010 年 に 入 る と 状 況 が 一 転 し 始 め
た 。図 6 の よ う に ,エ ン ジ ン を 中 心 と す る ハ イ ブ リ ッ ド と ク リ ー ン デ ィ ー ゼ ル を「 省
エ ネ 」 技 術 と し て 認 定 し , 台 当 た り 3000 元 の 補 助 金 を 支 給 す る の に 対 し て , モ ー
10
タ ー を 中 心 と す る PHEV と 電 気 自 動 車 を「 新 エ ネ 」技 術 に 認 定 し ,手 厚 く 補 助 し て
全面普及に取り組んだ。
2010 年 の 政 策 運 営 で は , 先 ず , 2010 年 に 入 っ て か ら , 中 国 政 府 が , 1600cc 以 下
の 小 型 車 に 対 す る 購 置 税 減 税 を 微 調 整 し , 税 率 を 7.5%に 引 き 上 げ た こ と で , 優 遇
幅 を 半 減 さ せ た 。 代 わ り に , 2010 年 8 月 か ら , 1600cc 以 下 の 小 型 車 の 中 か ら , 既
存 燃 費 が 20%以 上 に 改 善 さ れ た 省 エ ネ 型 製 品 を 対 象 に , 更 に 台 当 た り 3000 元 の 助
成 金 を 支 給 す る 「 節 能 産 品 恵 民 工 程 ( 省 エ ネ 製 品 キ ャ ン ペ ー ン )」 を 打 ち 出 し た 。
こ う し た 微 調 整 で ,同 様 に 1600cc 以 下 の「 省 エ ネ 車 」の 小 型 車 を 購 入 す る こ と で ,
購 置 税 優 遇 幅 の 半 減 の 影 響 を 受 け て 2136 元 減 以 上 に 対 し て , 3000 元 が 補 助 さ れ る
よ う に な る 。需 要 安 定 化 を は か り な が ら ,石 油 消 費 の 増 加 勢 い を 抑 制 す る と い う 政
府 の 思 惑 が 明 白 で あ る ( 図 6 参 照 )。
ま た ,補 助 額 の 上 限 が 中 古 車 の 下 取 り 価 格 よ り も 安 か っ た た め ,効 果 が 薄 か っ た
「 以 旧 換 新 」に 対 し て ,確 実 に 廃 車 の メ リ ッ ト を 感 じ さ せ る た め に ,政 府 は 上 限 額
を 3000-6000 元 か ら 5000- 18000 元 に 引 き 上 げ る 作 戦 に 躍 り 出 た 。
図6
中国次世代自動車戦略補助スキーム
出典:各種報道に基づき,筆者作成。
最後に,
「 十 城 千 輌 」プ ロ ジ ェ ク ト に 第 二 次 モ デ ル 都 市 14 と し て ,天 津 な ど 7 都 市
を 新 た に 追 加 し , 公 共 サ ー ビ ス 部 門 に お け る エ コ カ ー 推 進 範 囲 を 20 都 市 ま で 拡 張
さ せ た 。同 時 に ,20 モ デ ル 都 市 か ら ,上 海( VW,GM,上 海 汽 車 ,華 普 ),長 春( 第
一 汽 車 ,ト ヨ タ ),深 セ ン( BYD),杭 州( 吉 利 ,万 向 ,衆 泰 ,青 年 蓮 花 ),合 肥( 奇
瑞 , 江 淮 ) と い っ た 5 都 市 を 指 定 し ,「 新 エ ネ 車 」 の 個 人 購 入 も 補 助 の 適 用 対 象 に
し た 。 各 都 市 に 立 地 す る メ ー カ ー の 状 況 を 見 れ ば わ か る よ う に ,PHEV と 電 気 自 動
車の最初の普及機会を民族系メーカーに振り分けようとする育成方針が見て取れ
る 15 。
(2)確立しつつある低速電気自動車という新ジャンル
11
近 年 , 中 国 の 都 市 化 の 下 で , 都 市 再 開 発 が 急 速 に 推 進 さ れ て き て い る 。 特 に 90
年 代 後 半 よ り ,一 連 の 大 規 模 開 発 が 国 民 の 生 活 様 式 を 大 き く 変 化 さ れ ,今 日 の 低 速
電気自動車を誕生させる伏線となった。住宅と道路の建設が急ピーチに進む一方,
公 共 交 通 の 整 備 が 比 較 的 に 遅 れ た こ と が 指 摘 で き よ う 。特 に 定 刻 運 転 が 達 成 で き な
い こ と が ,自 転 車 や オ ー ト バ イ な ど の 需 要 に 繋 が っ た 。し か し ,90 年 代 以 後 ,中 国
で は 交 通 渋 滞 ,大 気 汚 染 ,交 通 事 故 な ど を 理 由 に ,オ ー ト バ イ の 走 行 を 禁 止 し た り ,
総 保 有 台 数 を 増 や さ な い よ う に 制 限 し た り す る 都 市 の 数 が 168 以 上 に の ぼ り ,オ ー
ト バ イ が 都 市 部 市 場 か ら 追 い 払 わ れ た 。他 方 で ,都 市 再 開 発 に よ っ て ,中 心 部 の 地
価 が 高 騰 し ,都 市 住 民 は 次 第 に 周 辺 部 へ 住 ま い を 移 す こ と に よ っ て ,通 勤 距 離 が 延
び ,自 転 車 で の 通 勤 も 次 第 に 不 便 と な っ て い っ た 。そ の た め ,動 力 機 関 を エ ン ジ ン
か ら モ ー タ ー に 置 き 換 え た 電 動 自 転 車 が ,関 連 法 規 制 が 存 在 し な い た め ,急 速 に 普
及するようになった。
図7
中国電動自転車の生産状況(単位:万台)
出 典 :『 中 国 自 行 車 』 各 年 版 に 基 づ き , 筆 者 作 成 。
図8
低速電気自動車の進化経路
12
出典:筆者作成。
図 7 で 示 す よ う に , 1997 年 に 初 代 製 品 が 開 発 さ れ た 後 , 2000 年 以 後 , 急 速 に 生
産 の 勢 い を 増 し て い っ た 。 2009 年 に は , 普 通 の 自 転 車 生 産 台 数 の 3 割 に 相 当 す る
2369 万 台 の 電 動 自 転 車 が 生 産 さ れ て い た 。現 在 ,中 国 で は 平 均 4 世 帯 に 1 台 の 割 合
で 電 気 自 転 車 が 保 有 さ れ ,保 有 台 数 も 1 億 台 を 超 え た 。事 実 上 ,中 国 は 既 に ,世 界
最 大 の 電 動 モ ビ リ テ ィ 市 場 と な っ て お り ,何 よ り も ,電 気 モ ビ リ テ ィ の 使 用 に 馴 染
ん だ ユ ー ザ ー が 大 量 に 出 現 す る こ と は ,低 速 電 気 自 動 車 と い う 新 し い ジ ャ ン ル が 確
立 さ れ 始 め る き っ か け と な っ た 。つ ま り ,電 動 自 転 車 生 産 で 広 が る 裾 野 産 業 に 立 脚
し つ つ ,従 来 の オ ー ト 三 輪 な ど の 軽 車 両 の 生 産 資 源 と の 合 体 で ,消 費 者 の 高 ま る 電
気 モ ビ リ テ ィ ニ ー ズ に 対 応 す る こ と で , 低 速 電 気 自 動 車 16 が 登 場 し た の で あ る ( 図
8 参 照 )。 鉛 バ ッ テ リ 搭 載 で , そ の 値 段 は 大 体 3 万 元 = 40 万 円 前 後 で あ る 。 そ の 先
兵役を果たしているのは宝雅汽車である。
( 3 ) 低 速 電 気 自 動 車 ビ ジ ネ ス を 牽 引 す る 宝 雅 汽 車 の 成 長 戦 略 17
宝 雅 汽 車 の 操 業 経 緯 は 紆 余 曲 折 で あ る 。創 業 者 の 張 海 波( 総 経 理 )と 周 忠 濱( 執
行 取 締 役 )は 共 に バ イ ク メ ー カ ー の 山 東 軽 騎 集 団 の 関 係 者 で ,2007 年 に 宝 雅 汽 車 の
前 身 に あ た る 済 南 宝 雅 車 業 有 限 公 司 を 設 立 し た 。済 南 宝 雅 車 業 有 限 公 司 の 前 身 は さ
ら に 2001 年 に 設 立 さ れ た 周 忠 濱 が 関 わ る 済 南 飛 宝 精 機 有 限 公 司 と い う 貿 易 会 社 ま
で遡ることができる。
2000 年 以 後 , 中 国 製 全 地 形 対 応 車 ( ATV : All Terrain Vehicle, 俗 称 : バ ギ ー ) の
輸 出 が 次 第 に 増 加 し , 最 初 の 数 十 台 規 模 か ら , 一 気 に ピ ー ク 時 の 2005 年 の 71.05
万 台 ま で に 拡 大 し た 。周 氏 の 貿 易 会 社 も 当 時 バ イ ク ,オ ー ト 三 輪 ,ATV 車 両 や そ の
関 連 部 品 な ど の 輸 出 に 携 わ っ て い た の で あ る 。2006 年 に ,海 外 の バ イ ヤ ー か ら ,米
国 向 け 電 気 コ ミ ュ ー タ ー( NEV : Neighborhood Electric Vehicle 18 )の 納 品 は 可 能 か ど
う か と い う 打 診 を う け ,周 氏 が 軽 騎 集 団 か ら 技 術 者 を 集 め ,製 造 会 社 と し て ,済 南
宝 雅 車 業 有 限 公 司 を 設 立 し ,試 作 に 取 り 組 み は じ め た 。2007 年 に サ ン プ ル カ ー を 提
示 し , 2008 年 よ り 量 産 が 開 始 さ れ た 。 や や 遅 れ た 2007 年 に 低 速 電 気 自 動 車 の 開 発
に 取 り 込 み 始 め た 山 東 時 風 集 団 と 山 東 濱 州 紅 星 と 異 な り ,宝 雅 汽 車 の 製 品 は 全 て 海
外 輸 出 向 け で ,国 内 販 売 は 一 切 お こ な っ て い な か っ た 。一 方 ,上 記 で 言 及 し た 2 社
は 農 村 市 場 を タ ー ゲ ッ ト に ,低 速 電 気 自 動 車 を 開 発 し ,輸 出 は あ ま り お こ な っ て い
な い 。上 記 三 社 間 の 波 及 連 鎖 に つ い て は ,資 料 の 制 約 上 い ま だ 明 ら か に な っ て い な
い と こ ろ は あ る も の の ,2006 年 か ら 始 ま っ た 宝 雅 汽 車 の 試 作 活 動 が ,先 駆 的 な 役 割
を 果 た し ,そ こ で 開 拓 さ れ た 経 営 資 源 が ,後 に 国 内 市 場 向 け の 低 速 電 気 自 動 車 の 製
造に携わる多くのメーカーの出現に繋がった可能性は否めない。同社の影響力は,
後に国内で販売された低速電気自動車製品からも確認することができる。
ま ず ,2006 年 よ り ,張 海 波 が 中 心 と す る 技 術 者 が ,既 存 の 電 動 自 転 車 ,オ ー ト 三
輪 な ど の 軽 車 両 ,自 動 車 関 連 分 野 か ら ,利 用 可 能 な 部 品 を 選 定 し ,NEV の 試 作 に 挑
13
ん だ 。 米 国 の NEV 基 準 を 満 た す た め に , ボ デ ィ の 試 作 で は , 限 ら れ た 既 存 の ミ ニ
車 両 製 品 の ボ デ ィ 設 計 を モ チ ー フ に し て , 少 量 で は あ る が , FRP( 繊 維 強 化 プ ラ ス
チ ッ ク )を 利 用 し ,最 初 の ボ デ ィ 製 品 の 開 発 を お こ な っ た 。同 様 の ボ デ ィ を 利 用 し
た 製 品 が ,後 に 他 の メ ー カ ー か ら も 発 売 さ た が ,こ れ は ボ デ ィ メ ー カ ー に 対 す る 他
社への並行納入に関する取り決めはなかった故に,起こった現象だと推測される。
ま た ,「 軽 量 ・ 低 速 ・ 廉 価 」 と い う 製 品 コ ン セ プ ト に 共 通 性 も 見 ら れ た 。 走 行 速
度 と 車 両 重 量 に 対 す る 規 制 が 存 在 し な い 中 国 で は , 米 国 で 規 制 さ れ る NEV の 特 徴
が 強 く 出 る こ と は あ ま り に も 不 自 然 で ,仮 に ,宝 雅 汽 車 の 試 作 活 動 が ,中 国 に お け
る 低 速 電 気 自 動 車 ビ ジ ネ ス の 種 を 播 い た と 理 解 す れ ば ,そ の 最 た る 貢 献 は 関 連 裾 野
産業の結成に貢献したこととして指摘できる。
低 速 電 動 自 動 車 の 芽 生 え に つ い て ,公 共 交 通 機 関 が 発 達 し て お ら ず ,電 気 料 金 が
安 く ,充 電 に 便 利 な 条 件 が そ ろ っ て い る 農 村 部 に お い て ,こ う し た 60Km 範 囲 内 の
農 民 の 移 動 手 段 と い う ニ ー ズ の 存 在 19 に 対 し て ,理 解 を 示 す 意 見 も 存 在 す る 一 方 で ,
関 連 法 規 制 が 存 在 し な い た め に ,大 量 の 普 及 に よ る イ ン フ ラ ,特 に 道 路 に 対 す る 圧
迫が危惧されている。そのため,公安交通管理部門が,このような理由によって,
低 速 電 動 車 の 一 般 道 の 走 行 に 対 し て は 強 く 反 対 し て お り ,低 速 電 動 自 動 車 の 製 造 活
動はいまだに正式には許可されていない。
も う 1 点 の 障 害 要 因 と し て は ,使 用 者 の 身 の 安 全 を 考 慮 し ,中 央 政 府 が 普 通 の 自
動 車 と 同 様 の 衝 突 安 全 基 準 を 要 求 す る 意 向 を 見 せ る 中 で ,時 風 を 代 表 と す る 内 販 メ
ー カ ー が ,低 速 だ か ら と い う 理 由 か ら ,逆 に 衝 突 安 全 水 準 の 引 き 下 げ を 申 し 入 れ て
い る こ と で あ る 。い ず れ に せ よ ,現 在 ,政 府 は 普 及 可 能 な EV の ス ペ ッ ク に 対 し て ,
明 確 な 要 求( 最 高 走 行 速 度 は 70Km/h 以 上 ,航 続 距 離 は 160Km/h 以 上 )を 提 示 し て ,
低 速 電 気 自 動 車 の 氾 濫 に 対 し ,選 定 条 件 を 設 け る こ と で ,イ ン フ ラ へ の 圧 力 を 抑 制
しながら,将来の有望なメーカーが台頭する余地を残している。その理由は以下 2
点と考えられる。
ま ず ,宝 雅 汽 車 が 国 内 資 源 に 立 脚 し つ つ ,海 外 需 要 に 依 拠 し て ,進 化 を 遂 げ て い
る 。同 社 は ,自 社 開 発 ,そ し て 大 学 と の 共 同 研 究 を 通 じ て ,燃 料 電 池 技 術 ,ハ イ パ
ワ ー モ ー タ ー , 低 出 力 CVT ト ラ ン ス ミ ッ シ ョ ン , ア ル ミ シ ャ シ ー 軽 量 化 , バ ッ テ
リ 制 御 技 術 ,回 生 ブ レ ー キ ,独 自 意 匠 な ど に お い て ,技 術 力 と 製 品 力 の 向 上 を 図 り
な が ら ,海 外 販 売 台 数 を 操 業 当 初 の 2007 年 に は 100 台 前 後 か ら ,2008 年 に 660 台 ,
2009 年 に 1365 台 と 順 調 に 拡 大 さ せ て き た 。 2010 年 に 3000 台 弱 の 販 売 台 数 が 見 込
ま れ て い る 。 2011 年 に は , 現 行 の 月 産 300 台 の 生 産 能 力 を 1000 台 ま で 引 き 上 げ る
こ と も 企 画 さ れ て お り ,更 な る 規 模 拡 大 を 図 っ て い る 。依 然 小 規 模 で は あ る が ,精
確 な 狙 い に よ っ て ,組 織 学 習 の 指 向 性 が 明 確 で あ り ,な に よ り ,国 内 の 政 府 そ の 学
習 効 果 は 同 社 取 り 組 み を サ ポ ー ト す る サ プ ラ イ ヤ ー を 通 じ て ,他 社 へ の 拡 散 が 期 待
で き よ う 。そ の 中 で ,参 入 に 関 す る 国 家 レ ベ ル の 法 規 制 が 存 在 し な い た め に ,現 在 ,
14
国内販売を躊躇している宝雅汽車が,政府の政策運営を慎重に見守っている。
次 に ,中 央 政 府 レ ベ ル で は ,大 局 を 考 え ,低 速 電 気 自 動 車 製 品 に 対 し て ,否 定 的
な 態 度 を 取 っ て い る が ,地 域 産 業 振 興 の 観 点 か ら ,山 東 省 地 方 政 府 が 支 持 的 な 態 度
を 表 明 し て い る 。更 に ,地 方 条 例 を 策 定 し ,域 内 で の 使 用 を 税 金 免 除 な ど の 優 遇 政
策 を 付 け ,認 め て い る 。現 在 山 東 省 に は 低 速 電 気 自 動 車 メ ー カ ー が 確 認 で き た だ け
で も 26 社 以 上 に 上 り ,生 産 能 力 は 10 万 台 で ,保 有 台 数 は 3 万 台 に 達 し て い る 。何
よ り ,山 東 省 政 府 の 保 護 姿 勢 に 対 し て ,中 央 政 府 は 厳 し い 批 判 も お こ な わ ず ,山 東
省でのトライアル結果を見ようとする思惑も見て取れる。
図9
BYD の 年 間 売 上 高 と 年 表
出 典 : BYD 社 年 次 報 告 書 筆 に 基 づ き , 筆 者 作 成 。
( 4 ) 巨 大 エ ネ ル ギ ー 企 業 へ 転 身 す る BYD 社 の 成 長 戦 略
低 速 電 気 自 動 車 に 対 す る 曖 昧 な 態 度 と 異 な り ,中 国 政 府 が 明 ら か に 期 待 し て い る
の は ハ イ ス ペ ッ ク の 電 気 自 動 車 で あ る 。そ の た め ,操 業 僅 か 16 年 の BYD が 早 く も
そ の フ ル ス ペ ッ ク EV 普 及 の 風 雲 児 と し て 脚 光 を 浴 び て い る 。
1995 年 , バ ッ テ リ メ ー カ ー と し て 創 業 し た BYD は , そ の 後 , モ ト ロ ー ラ , ノ キ
ア に リ チ ウ ム イ オ ン 電 池 を 納 品 し た こ と を き っ か け に ,携 帯 端 末 本 体 を 中 心 と す る
電 子 製 品 の EMS ( Electronics Manufacturing Service ) & ODM ( Original Design
Manufacturer) メ ー カ ー へ と 進 化 し た の で あ る 。 し か し , 業 界 を 大 き く 驚 か せ た の
は や は り 2003 年 の 自 動 車 製 造 へ の 参 入 表 明 で あ る 。 2003 年 に 秦 川 汽 車 を 買 収 し た
こ と で , 乗 用 車 製 造 に 参 入 し , 急 成 長 を 遂 げ た ( 図 9 参 照 )。 ま た , 2009 年 の 振 興
政 策 で 恵 ま れ た こ と も あ り , 自 動 車 販 売 に お い て 同 社 が , 対 前 年 比 162.40%増 の
44.48 万 台 の 実 績 で 大 躍 進 し , 初 め て TOP10 に ラ ン ク イ ン し た 。 続 い て 2010 年 に
80 万 台 の 販 売 目 標 を 掲 げ ,更 な る 規 模 拡 大 を 狙 お う と し た 。だ が ,前 述 し た よ う に ,
購 置 税 優 遇 幅 半 減 の 影 響 で ,2010 年 の 前 半 に ,自 動 車 市 場 全 体 が 一 転 し て 冷 え 込 む
中 ,直 近 三 年 間 で 急 拡 張 さ れ た デ ィ ー ラ ー ネ ッ ト ワ ー ク に 隠 さ れ た 不 安 要 因 が 噴 出
15
し た 。 そ の 結 果 , BYD は 2010 年 の 年 間 販 売 目 標 を 60 万 台 に 下 方 修 正 し た 。
周 知 の よ う に , 自 動 車 メ ー カ ー と し て の BYD が 世 間 一 般 か ら 注 目 さ れ る よ う に
な っ た の は ,燐 酸 鉄 リ チ ウ ム イ オ ン 電 池 を 搭 載 し た F3DM( PHEV)と E6( EV)を
発 表 し た か ら で あ る 。特 に F3DM は 世 界 初 の 量 産 品 で ,家 庭 で 充 電 可 能 な プ ラ グ イ
ン ハ イ ブ リ ッ ド 車 と し て , 周 囲 か ら 高 く 注 目 さ れ た 。 F3DM に 搭 載 さ れ た 1000cc
の ガ ソ リ ン エ ン ジ ン に 駆 動 と 発 電 と い う 二 つ の 役 割 が 与 え ら れ , 25Kw と 50Kw の
大 小 二 つ の モ ー タ ー と 組 み 合 わ せ る こ と で ,① 純 電 気 自 動 車 走 行 モ ー ド ,② エ ン ジ
ンが低出力モーターを駆動し発電しながら大出力モーターで走行するレンジエク
ス テ ン ダ ー モ ー ド ,③ エ ン ジ ン と モ ー タ ー が 同 時 に 車 両 を 高 速 に 駆 動 す る パ ラ レ ル
ハイブリッドモード,④減速時モーター発電によるエネルギー回収モードという 4
つ の 走 行 モ ー ド が 実 現 さ れ て い る 。 バ ッ テ リ の み で あ れ ば 100Km の 走 行 が 可 能 で
あ る 。EV と HEV の 長 所 を 兼 ね 合 わ せ て デ ュ ア ル モ ー ド に 自 由 に 切 替 え で き る た め ,
1000cc エ ン ジ ン が 実 際 に 2400cc 以 上 の 出 力 を 実 現 し て お り , ト ー タ ル 航 続 距 離 は
500Km に 達 し て い る 。
図10
BYD の 成 長 戦 略 ― 要 素 技 術 の 多 角 化 と 分 野 ご と の 垂 直 統 合
出典:筆者作成。
電 気 自 動 車 の ほ か ,省 エ ネ 家 電 ,蓄 能 装 置 ,ソ ー ラ ー 発 電 ,LED 照 明 な ど ,環 境
に 対 す る 正 の 外 部 性 を 向 上 さ せ る 製 品 領 域 に 続 々 と 参 入 = 多 角 化 し た BYD は , 携
帯 端 末 本 体 の 事 業 の 成 立 に よ っ て 確 立 し た EMS& ODM と し て 必 要 な 生 産 体 制 と コ
ス ト コ ン ト ロ ー ル 能 力 に 依 拠 し て ,急 成 長 の 軌 道 に 乗 り 始 め た 。詳 細 は 紙 幅 の 都 合
上 別 稿 に 譲 る が , そ の 可 能 性 を 示 せ る 所 以 は BYD の 「 EMS&ODM+ 垂 直 統 合 + 要
素 技 術 の 規 模 経 済 性 を は か る 多 角 化 」 と い う 独 特 な 経 営 戦 略 に あ る ( 図 10 参 照 )。
操 業 当 時 よ り ,二 次 電 池 の 生 産 体 制 に お い て は ,徹 底 的 な 動 作 分 解 に よ っ て ,大
量 の 手 作 業 に よ る 単 純 労 働 に と 治 具 の 大 量 採 用 に よ っ て ,生 産 変 動 に 対 す る フ レ キ
シ ビ リ テ ィ を 確 保 し て い る 。か く し て「 人 海 戦 術 + 治 具 」と い う 生 産 方 式 を 武 器 に ,
16
BYD が 原 価 構 成 に 大 き く 占 め る 要 素 技 術 , も し く は コ ア 部 品 に つ い て , 最 初 は 外
部 調 達 で 賄 う が ,ゆ く ゆ く は 内 部 化 し ,さ ら に 次 の 多 角 化 の シ ー ズ に 転 用 し て い く
の で あ る 。 例 え ば , EV 開 発 に 必 要 な イ ン バ ー タ ー 技 術 に つ い て , 2008 年 10 月 ,
BYD が 倒 産 し た 中 緯 積 体 電 路 ( 寧 波 ) 有 限 公 司 と い う 半 導 体 メ ー カ ー を 買 収 し ,
そ の 能 力 を 新 た に EV 用 大 出 力 イ ン バ ー タ ー の 中 枢 を 担 う IGBT ド ラ イ ブ の 開 発 に
充 て た 。 2010 年 , IGBT モ ジ ュ ー ル の 開 発 が 成 功 し た こ と に よ っ て , 競 合 製 品 の 数
分 の 一 の 原 価 達 成 で , BYD の EV の コ ス ト 優 位 性 の 創 出 に 大 き く 貢 献 し た 。 な お ,
こ う し て 垂 直 統 合 に よ っ て 一 度 内 部 化 さ れ た 電 子 デ バ イ ス の 生 産 設 計 能 力 を ,後 に
イ ン バ ー タ ー 技 術 を 搭 載 し た 省 エ ネ 家 電 へ の 多 角 化 に 転 用 す る よ う に な っ た 。こ う
し て , BYD が グ リ ー ン ビ ジ ネ ス を 狙 い , 原 材 料 , 要 素 技 術 , 中 間 財 , そ し て 完 成
品 ま で バ リ ュ ー チ ェ ン を 垂 直 統 合 し ,要 素 技 術 の 多 角 化 を 通 じ て ,次 々 と エ コ イ ノ
ベーション商品を世に送っている。
「人類社会の進歩と発展過程において避けては通れない課題=サステナイビリ
テ ィ 問 題 」を い か に 解 消 で き る か は「 技 術 為 王 ,創 新 為 本( イ ノ ベ ー シ ョ ン に 基 づ
き ,技 術 優 位 性 を 構 築 す る )」と い う BYD の 社 是 の 真 髄 と も 言 え よ う 。そ れ は ,BYD
にとって内部化と多角化を決定する判断指標,そして成長の原動力になっている。
か く し て ,エ ネ ル ギ ー 生 成 ,備 蓄 ,分 配 ,消 費 と い っ た 連 鎖 に そ っ て ,電 気 自 動 車 ,
ソ ー ラ ー 発 電 , 大 容 量 蓄 能 装 置 , 急 速 充 填 ス テ ー シ ョ ン , EV, LED 照 明 な ど の 事
業 を 総 合 ソ リ ュ ー シ ョ ン ビ ジ ネ ス に お さ め , BYD が 巨 大 エ ネ ル ギ ー 会 社 に 向 か お
うとしている。実現できれば,更なる飛躍が期待でいる。
5.終わりに
本 稿 で は ,自 動 車 産 業 を 事 例 に ,高 成 長 を 経 験 し て い る 中 国 経 済 に 内 包 さ れ る サ
ステナイビリティ問題の増大とそれをもたらした各変動要因間のシステマチック
な 因 果 連 鎖 を エ ネ ル ギ ー 安 全 確 保 と い う 切 り 口 で DPSIR フ レ ー ム ワ ー ク に 基 づ き
試 論 し た 。 そ こ で ,「 富 煤 ・ 貧 油 ・ 少 気 」 と い う 資 源 ポ ー ト フ ォ リ オ 上 の 構 造 リ ス
ク と 共 に ,石 炭 資 源 の 偏 在 性 と 石 炭 依 存 に 由 来 す る シ ス テ ム リ ス ク が 増 大 し つ つ あ
り ,前 述 構 造 リ ス ク と 共 に ,そ れ ら の リ ス ク が 中 国 経 済 の サ ス テ ナ イ ビ リ テ ィ の 実
現に向けてエコイノベーション創出に向かわせる最大の潜在的動因力になったこ
と が 析 出 さ れ た 。そ の た め ,金 融 危 機 後 ,選 択 的 な 救 済 策 を 通 じ て ,産 業 全 体 の 構
造 改 革 を 望 む 中 国 政 府 の 一 連 の 施 策 の 下 で ,電 気 自 動 車 ビ ジ ネ ス も 次 第 に 確 立 さ れ
つ つ あ る 。し か し ,宝 雅 自 動 車 の 事 例 で 説 明 し た よ う に ,米 国 市 場 で 通 用 す る エ コ
イノベーション商品の低速電気自動車は中国では依然認められていない現状もあ
る 。山 東 省 政 府 の 保 護 の 下 で ,宝 雅 汽 車 ,時 風 集 団 な ど の メ ー カ ー な ど が 進 化 を 遂
げている。
な お , BYD の エ ネ ル ギ ー バ リ ュ ー チ ェ ン 統 合 の 取 り 組 み に と っ て , 無 視 で き な
い の が 地 方 政 府 の 役 割 で あ る 。電 気 自 動 車 の 普 及 は 単 な る パ ワ ー ト レ ン の 電 気 化 に
17
留 ま ら ず ,ス マ ー ト シ テ ィ 実 現 と い う 大 規 模 な 社 会 イ ノ ベ ー シ ョ ン の 一 部 と し て 政
府 か ら 期 待 さ れ て い る 。 こ う し た ゴ ー ル を 目 指 す BYD を 意 図 的 に 育 て る た め に ,
中 央・深 セ ン 市 政 府 が 制 度 設 計 し た り ,財 政 支 援 し た り す る こ と を 通 じ て ,産 業 全
体をこうした方向へ誘導しようとしている。
2008 年 12 月 か ら 法 人 向 け 販 売 を 開 始 し た プ ラ グ イ ン ハ イ ブ リ ッ ド の F3DM の 販
売 価 格 は 15 万 元 = 195 万 円 で , 月 数 台 し か 売 れ て い な か っ た 。 そ し て , 2010 年 3
月 に 個 人 ユ ー ザ ー 向 け の F3DM 低 炭 版 の 価 格 は 16.98 万 元 = 221 万 円 で 決 し て 高 く
は な い が , ベ ー ス と な る F3 の 6 万 元 と 比 べ る と は る か に 高 い こ と が わ か る 。 し か
し ,前 述 し た 次 世 代 自 動 車 補 助 に よ る 5 万 元 に ,地 方 政 府 が 提 供 し た 3 万 元 の 補 助
金 を 上 乗 せ す れ ば ,販 売 価 格 は 8.98 万 元 = 117 万 円 に な る 。か な り 現 実 的 に な っ て
き た 。そ の た め に ,販 売 も 少 し 上 向 き 始 め ,2010 年 11 月 ま で の 累 計 販 売 台 数 が 421
台 に 達 し て い る 。対 し て ,低 速 電 気 自 動 車 が 3 万 台 に 保 有 さ れ て い る こ と を 改 め て
吟 味 す れ ば ,モ ー タ ー 中 心 の 電 気 自 動 車 ビ ジ ネ ス が 中 国 に お い て ,金 融 危 機 後 に 急
速 に 成 り 立 ち 始 め た と い え よ う 。中 国 政 府 の 電 気 自 動 車 産 業 を 育 成 す る 姿 勢 に 対 し
て ,既 存 内 燃 機 関 技 術 に お け る 追 い 上 げ を あ き ら め ,電 気 自 動 車 で 世 界 を リ ー ド し
よ う と し て い る と い う 指 摘 も あ る が ,自 動 車 業 界 に 閉 じ た 発 想 で ,必 ず し も 本 質 を
見 抜 い て い る と は 言 え な い 。本 稿 で 明 ら か に し た よ う に ,電 気 自 動 車 の 普 及 は ,中
国の国家エネルギー安全策として着々と進められるスマートシティへの移行の一
環 と し て 位 置 づ け ら れ て お り ,サ ス テ ナ イ ビ リ テ ィ 実 現 に 向 か う エ コ イ ノ ベ ー シ ョ
ンの諸変動要因の一つとして明確に認識されている。
こ の 到 達 点 を も っ て ,3 度 目 の EV ブ ー ム が 沸 き 起 こ っ て い る な か で ,
「日本では
電気自動車が戦略的に必要とされるのか」という議論に一石を投じたい。
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〔 も の づ く り 紀 行 第 四 十 五 回 〕, 単 著 , 月 刊 『 赤 門 マ ネ ジ メ ン ト ・ レ ビ ュ ー 』( AMR) 9 巻 6
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29. 李 澤 建( 2010b)
「需要要件適応の競争と企業成長メカニズム―韓国メーカーの市場適応と中国
民族系メーカーの農村戦略―」
『 早 稲 田 大 学 日 本 自 動 車 部 品 産 業 研 究 所 紀 要 』5 号 ,早 稲 田 大 学
日本自動車部品産業研究所出版・編集委員会。
1
海上運送に依存する状況は,中国・ロシア,中国・カザフスタン,中国・ミャンマー間の国境越
え石油パイプラインがフル稼働するまで,構造的に大きく改善され難いであろう。
2
本 稿 で は , WECD( 1987) の 定 義 を 援 用 し , サ ス テ ナ イ ビ リ テ ィ を 「 将 来 世 代 の 要 求 を 満 た す 能
力 を 損 な う こ と な く , 既 存 世 代 の 要 求 を 満 た す よ う な 発 展 ( Development that meets the needs of the
present without compromising the ability of future generations to meet their own needs.)」 と 定 義 す る 。
3
中 国 の 自 動 車 輸 出 は 2000 年 ご ろ に は 2 万 台 前 後 に 過 ぎ な か っ た が , そ の 後 , 急 成 長 し 2007 年 に
は 68.1 万 台 に 達 し た 。 し か し ,そ の 後 の 金 融 危 機 の 影 響 で ,輸 出 不 振 に 陥 り , 2009 年 に は 37 万 台
で ,2010 年 1- 10 月 現 在 で は 45.48 万 台 程 度 で あ る 。通 年 で は 55 万 台 と 予 測 さ れ て い る 。従 っ て ,
国 内 生 産 と 国 内 販 売 と の 差 が 少 な く ,こ こ で は 処 理 便 利 上 ,中 国 の 輸 出 を 控 除 せ ず ,分 析 を 進 め る 。
4
2000 年 ご ろ の 中 国 の 道 路 総 延 長 は 140.27 万 km に 対 し て , 同 値 が 2009 年 に は 386.08 万 km に 達
し て お り , 年 平 均 増 加 率 は 10.65%で あ る 。
5
1990 年 代 以 来 ,中 国 経 済 が 工 業 化 ,都 市 化 と モ ー タ リ ゼ ー シ ョ ン と い う 3 つ の 波 に 押 さ れ ,高 成
長を遂げた。本稿では紙幅のため,主にモータリゼーションの関連議論に専念する。
6
「 北 京 市 汽 車 保 有 413 万 台 増 速 世 界 罕 見 」 人 民 網 記 事
( http://cppcc.people.com.cn/GB/11832680.html) 2010 年 11 月 20 日 閲 覧 。
7
「工業和信息化部解読軽型汽車燃料消耗量標示管理規定」
( 中 国 政 府 ホ ー ム ペ ー ジ ,2010 年 11 月
20 日 閲 覧 )( http://www.gov.cn/zwhd/2009-08/06/content_1384841.htm)。
8
2009 年 ,中 国 の 鉄 道 総 延 長 距 離 は 8.6 万 キ ロ メ ー ト ル に 達 し ,世 界 第 2 位 で あ る 。2007 年 に 総 鉄
道 運 送 量 の 49.3%が 石 炭 に 占 め ら れ て お り ,中 国 は 世 界 の 約 6%の 鉄 道 総 延 長 距 離 で ,世 界 の 約 24%
19
の 貨 物 運 送 量 を 実 現 さ せ て い る 。現 在 ,高 速 鉄 道 の 大 規 模 開 設 に よ っ て 旅 客 運 送 と 貨 物 運 送 の 分 離
によって,在来線を貨物運搬に特化する動きが見られたが,依然石炭増産に追い付かない。
9
石炭採掘安全指標として,
「 百 万 ト ン 当 た り 死 亡 率 」が 使 用 さ れ て い る 。同 指 標 が ,2006 年 に 2.041,
2007 年 に 1.485, 2008 年 に 1.182, 2009 年 に 0.892 と 初 め て 1 を 下 回 っ た が , 毎 年 の 死 亡 人 数 は 依
然 2000 人 を 超 え て お り , 社 会 不 安 要 素 と し て 注 目 さ れ て い る 。
10
購 置 税 の 減 税 効 果 に つ い て , 1600cc 以 下 最 も 売 れ て い る 10 万 元 = 130 万 円 製 品 で 計 算 す る と ,
10 万 元 ÷( 1+17%) ×5%= 4272 元 の 余 剰 金 に な る 。
11
50 億 元 の 財 政 資 金 を 投 入 し て , 農 村 へ 自 動 車 を 普 及 さ せ る た め に , 農 民 を 対 象 に , 農 用 車 を 廃
車 す れ ば , 3 輪 タ イ プ が 2000 元 /台 , 4 輪 タ イ プ が 3000 元 の ス ク ラ ッ プ ・ イ ン セ ン テ ィ ブ が 交 付 さ
れ る ほ か , 軽 ト ラ ッ ク を 買 い 換 え る 際 に , 販 売 価 格 の 10%, 最 高 5000 元 ま で あ わ せ て 補 助 す る 。
別 途 , 1300cc 以 下 の 乗 貨 両 用 車 ( COPV: Crossover Passenger Vehicle) を 新 規 購 入 す る 場 合 は , 販 売
価 格 の 10%, 最 高 5000 元 ま で の 補 助 金 が 交 付 さ れ る 。
12
排気基準が国Ⅰに満たさないガソリン車と国Ⅲを満たさないディーゼル車を対象とするスクラ
ッ プ ・ イ ン セ ン テ ィ ブ 。 車 種 と 年 式 の よ っ て , 3000~ 5000 元 の 補 助 金 が 交 付 さ れ る 。
13
科 技 部 主 導 の 下 ,北 京 ,上 海 ,重 慶 ,長 春 ,大 連 ,杭 州 ,済 南 ,武 漢 ,深 セ ン ,合 肥 ,長 沙 ,昆
明 , 南 昌 と い っ た 13 都 市 に お い て , バ ス , タ ク シ ー , 清 掃 , 公 務 と 郵 政 な ど の 公 共 サ ー ビ ス 部 門
の 車 両 購 入 を 対 象 に , 各 都 市 で は 1000 台 規 模 の エ コ カ ー ( HEV, EV と FC) と イ ン フ ラ の 実 験 的
運 行 を 促 進 す る プ ロ ジ ェ ク ト で あ る 。乗 用 車 と 軽 型 商 用 車 で は ,HEV,EV と FC の 最 高 補 助 金 額 は
そ れ ぞ れ , 5 万 元 , 6 万 元 と 25 万 元 に な っ て お り , バ ス の 場 合 は , そ れ ぞ れ 最 高 42 万 元 , 50 万 元
と 60 万 元 ま で 補 助 す る 。
14
第二次モデル都市として,天津,海口,鄭州,アモイ,蘇州,唐山,広州が追加認定された。
15
上 海 に VW と GM, 長 春 に ト ヨ タ の 関 連 合 弁 企 業 は あ る も の の ,「 新 エ ネ 車 」 に 適 用 で き る 商 品
がなく,チャンスは同地に立地する上海汽車と第一汽車に与えたと理解できよう。蛇足であるが,
ト ヨ タ の PHEV 製 品 の プ リ ュ ー ス が 「 省 エ ネ 車 」 に 分 類 さ れ た た め ,「 新 エ ネ 車 」 の 適 用 が で き な
か っ た 。こ の 点 は 日 中 間 の 次 世 代 自 動 車 に 対 す る 理 解 の 最 大 な 相 違 と い え よ う 。日 本 で は ハ イ ブ リ
ッ ド を 主 軸 に 据 え て 進 化 を 見 守 る 姿 勢 に 対 し て ,中 国 は い ち 早 く エ ン ジ ン 中 心 の ハ イ ブ リ ッ ド を 通
り 抜 け , モ ー タ ー 中 心 と す る 車 両 ( PHEV, EV) を 次 世 代 自 動 車 に 据 え た の で あ る 。
16
中 国 に お い て 正 式 な 定 義 が 存 在 し な い た め ,本 稿 で 言 及 さ れ て い る 低 速 電 気 自 動 車 は 主 に ,最 高
速 度 が 70Km/h 以 下 ,航 続 距 離 が 150Km 以 下 ,重 量 が 1 ト ン 前 後 の 電 気 で 駆 動 さ れ る 軽 車 両 の こ と
をさす。
17
こ こ で の 記 述 は 主 に , 2009 年 8 月 , 2010 年 8 月 に 宝 雅 汽 車 に 対 す る イ ン タ ビ ュ ー 内 容 に 依 拠 す
る。文責はもちろん筆者にある。
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NEV 車 両 は , 米 国 で は , 低 速 走 行 車 両 ( Low-Speed Vehicles) の 電 動 駆 動 バ ー ジ ョ ン と し て , 定
義 さ れ て い る 。 つ ま り , 四 輪 着 地 動 力 付 き 車 両 で , 最 低 32Km/h 以 上 , 最 高 40Km/h 以 下 で 走 行 可
能 な 総 重 量 1361Kg 以 下 の 車 両 を さ す 。 詳 細 は “NATIONAL HIGHWAY TRAFFIC SAFETY
ADMINISTRATION LABORATORY TEST PROCEDURE FOR FMVSS 500, Low-Speed Vehicles” U.S.
DEPARTMENT OF TRANSPORTATION,に 参 照 。
(http://www.nhtsa.gov/DOT/NHTSA/Vehicle%20Safety/Test%20Procedures/Associated%20Files/TP-500-0
2.pdf)
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中 国 の 農 村 地 域 に は ,専 用 規 格 と し て 大 量 に 存 在 し た オ ー ト 三 輪 ,な い し 軽 ト ラ ッ ク に 代 表 さ れ
る「 農 用 車 」と い う 自 動 車 と は 異 な る 交 通 手 段 が 存 在 す る 。し か し ,農 用 車 は ,オ ー ト バ イ と 同 様 ,
都 市 部 に お け る 走 行 が 規 制 さ れ て い る た め , 近 年 で は , 農 民 の 都 市 出 入 り に 関 し て ,交 通 手 段 の 未
発達と欠如が顕在化している。
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