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2016/11/25「トランプ大統領と100日蜜月」「CLMの

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2016/11/25「トランプ大統領と100日蜜月」「CLMの
BTMU Global Business Insight
Asia & Oceania
November 25, 2016
Ⅰ.トランプ大統領と「100 日蜜月」:ドル高の持続性について考える
…
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…
12
…
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公益財団法人 国際通貨研究所 経済調査部 上席研究員 武田 紀久子
Ⅱ.CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)の労働法比較(2)
−各論について−
JBL メコングループ代表 藪本 雄登
Ⅲ.ミャンマー拠点
経理体制構築の勘所
SCS 国際会計事務所(ミャンマー) 代表取締役 公認会計士 洞 大輔
Ⅳ.ベトナムの会計・税務の留意点「移転価格税制」−課税対象と文書化−
フェアコンサルティング ベトナム ゼネラル・ダイレクター 讃岐 修治
Ⅴ.自動車業界レビュー(インドネシア、インド)
【インドネシア】2016 年 10 月の販売(出荷ベース、速報値)は 7 カ月連続の前年超え。
前月比は 2 カ月連続のマイナス。
【インド】2016 年 10 月の乗用車販売は 16 カ月連続前年超え、前月比もプラスを維持。
引き続き SUV 需要が寄与。
・本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。
本資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合、弊行がそれらの取引を応諾したこと、またそれらの取引の実
行を推奨することを意味するものではなく、それらの取引の妥当性や、適法性等について保証するものでもありません。
・本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません。
・本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性、信頼性、完全性を保証するものではあり
ません。最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします。本資料に基づく投資決定、経営上の判断、その他
全ての行為によって如何なる損害を受けた場合にも、弊行ならびに原資料提供者は一切の責任を負いません。実際の適用に
つきましては、別途、公認会計士、税理士、弁護士にご確認いただきますようお願いいたします。
・本資料の知的財産権は全て原資料提供者または株式会社三菱東京 UFJ 銀行に帰属します。本資料の本文の一部または全部
について、第三者への開示および、複製、販売、その他如何なる方法においても、第三者への提供を禁じます。
・本資料の内容は予告なく変更される場合があります。
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Ⅰ.トランプ大統領と「100 日蜜月」:ドル高の持続性について考える
<新大統領と「100 日蜜月」>
周知の通り、米国政治には「100 日の蜜月期間」と呼ばれる紳士協定がある。就任(或いは当選)後 100
日程度は与野党・メディアともに新大統領に対するあからさまな批判や評価を避け、むしろ政策推進を援護
する。比較的支持率が高い就任直後の勢いに乗じて重要法案等が多数成立することを温かく見守る「歓迎ム
ードの持続期間」を指す表現だ。二大政党制の下で 8 年毎の政権交代がほぼ常態化し、新政権の機能が軌道
に乗るまでにはある程度の時間的猶予が必要なことを国民ともども理解している米国ならではの慣習であ
ろう。異例尽くし、などという生易しい表現では全く足りない驚天動地のトランプ大統領誕生劇であったが、
選挙後約 1 週間の金融市場の反応を見る限り、少なくともこの「100 日蜜月」の伝統は、定石通りに守られ
ているように見受けられる。
<金融市場は「トランプ・リフレ」を好感>
現在、米金融市場で急激な「株高・金利上昇・ドル高円安」が進行している背景は、新政権下で「財政刺
激と金融引き締めのポリシー・ミックス」が採用されることへの期待に他ならない(トランプ氏の公約につ
いては末尾掲載の図表 2 ご参照)
。即ち、大規模な「減税・インフラ投資・規制緩和」のリフレ政策を受け
て、米国経済が近い将来、高成長・高インフレに向かうことを所与に、その過程で期待される株価上昇とと
もに、「財政赤字拡大→期待インフレ上昇→米長期金利上昇(Fed による利上げ加速)→ドル高」を一気に
織り込みに行っているのが今の市場の反応だ。セクター毎に騰落ありつつも、エネルギーや薬品、金融等の
規制緩和業種、或いはインフラ関連業種などに牽引され、米主要株価指数は連日の最高値更新。他方、堅調
な株価以上に目を見張る状況にあるのが、米長期金利の上昇だ。これまでは、グローバルな長期停滞を反映
し一種諦念ともいえる「超低金利の長期化見通し」が浸透していただけに、米 10 年債利回りは約 1 週間で
約 50bp も上昇するなど、超低金利からの反転上昇の速度と幅は、マグニチュードの非常に大きなものにな
っている。
<金利差拡大でドル高円安が進行>
ドル円相場でドル高円安が急進行した背景は、専ら、この米長期金利の上昇に連れた「金利差要因」にあ
る。そもそも、市場では「仮にトランプ氏当選となればリスク回避で円高」との予想が大勢であったため、
9 日の海外市場で始まったドル高円安進行を当初はやや意外感をもって受け止めたはずだ。しかし「100 日
蜜月」効果か、未だ公式情報が皆無と言って良い「トランプ政権の経済政策」を 1980 年代のレーガノミク
スの成功に準える論調まで出回るようになり、「ドル高は意外」から「ドル高で当然」へ、市場心理は変わ
りつつある。また、為替市場参加者の多くは、市場が大きく動意付くことそのものを商機到来として歓迎す
る傾向が強い。何であれ商機のあるトレンドには水を差さず、ともあれ流れについて行くという彼らのこう
した投資行動も、
「トランプ・リフレ」期待のドル先高観を助長していよう。
<対円ドル高の持続期間はせいぜい「100 日蜜月」?>
もっとも筆者は、以下 3 つの理由から、対円でのドル高基調の持続力と上昇幅については、慎重に見るべ
きだと考えている。確かに、一旦走り出した相場は「100 日蜜月」程度は持続するかもしれない。しかし、
少なくとも対円でのドル高地合いがこの先長期化するという信頼感は、定着しにくいように思われる。
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1 点目は、財政規律の棄損である。未だ確かな情報に乏しいが、トランプ氏の公約を前提にすれば、法人
税の最高税率引き下げ(35%→15%)を初めとする大型減税やインフラ投資、そして、
「Make America Great
Again」の軍事予算拡大など、新政権下では財政規律の弛緩が必至となっている。これらは理念的には共和
党の伝統的スタンスである「財政均衡=小さな政府」と相容れないため、どこまで実現可能か未知数ではあ
るが、少なくとも法人減税を含む税制改革やインフラ投資策等は共和党主流派・保守派も合意しており、赤
字拡大は避けられそうにない。下図(図表 1)で示す通り、ドル相場と財政収支には長い目で見て「赤字拡
大でドル安・赤字改善でドル高」という傾向が見て取れる。財政収支悪化とドル高の同時進行には限界があ
る、考えて良いだろう。
【図表 1】 <米財政収支とドル実効相場>
(円)
2 点目は、インフレが通貨価値に与える示唆=購買力平価理論である。今のロジックは、財政支出拡大→
期待インフレ上昇→米長期金利上昇→利上げ加速→ドル高にあるが、その先の展開について思考停止してい
る。インフレ加速が、最終的・本質的な意味でその国の通貨に与える影響は、上昇(増価)ではなく下落(減
価)である。購買力平価理論に立ち返れば、インフレ圧力が高まる米国の通貨ドルは、一定のタイムラグは
あるものの、下落(減価)していくことになる。
3 点目は、トランプ氏の唱える貿易保護主義への傾斜である。米当局が保護主義を追求することと、市場
力学に基づく自国通貨高を受け入れ続けることは両立しないだろう。もとより、オバマ政権下で昨年「貿易
円滑化・貿易執行法」が施行され、米財務省はこれを受け為替操作国認定のための「監視国リスト」の公表
を今年 4 月に開始している。先月 10 月に発表された最新版では 6 カ国が「監視リスト」入り。この 6 カ国
中、相対的に大きな経済規模と対米貿易黒字を抱える国は、中国、ドイツ、日本の 3 カ国となっている。ト
ランプ氏は中国を早々に為替操作国として認定すると発言しているが、それも含め、この 3 カ国の通貨に対
するドル高進行を、新政権が長い期間に渡って受け入れる可能性は低い、と考える。
ドル高が米国経済に与える悪影響について明言している米国の公人は、何もトランプ氏だけではない。米
FRB は今年前半の経済活動が下振れた理由として「新興国経済の調整」と「ドル高の影響」の 2 点を挙げ、
FOMC 声明等の公式文書で繰り返し指摘している。Fed 要人というよりも国際金融界の重鎮と言って良いフ
ィッシャー副議長は 10%のドル高で「3 年後の米 GDP が 1.5%下押しされる」等の試算結果を講演で発表し
ている。ドル高が更に大幅、且つ、急激に進行すれば、米金融当局が警戒を強め、利上げスタンスは更に緩
やかなものへ修正されるだろう。現在のドル高は「Fed による利上げ加速観測=米ドル金利の先高観」と「新
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興国からの逃避マネー流入」が相乗した結果であるが、大幅なドル高進行そのものが、Fed の利上げ判断を
鈍らせる可能性は高い。
<トランプ・リスクからトランプ・チャンスへ>
金融市場では、トランプ氏とその選挙公約に対し、選挙前は否定的・懐疑的な評価ばかりであったが、結
果判明後は手のひらを返したような好意的な解釈が増えている。勝利受諾スピーチが穏当な内容であった安
心感や、不動産王としてのビジネス経歴に鑑みて、過激路線が軌道修正されるとの期待もあろう。また「景
気は気から」で、トランプ氏というトリックスターの登場で、グローバルな「長期停滞」が打破される芽が
あるならば、是非それに乗ろうという発想も理解できなくはない。更に、どの国であれ、政治的なレジーム・
チェンジを格好の「商売のネタ」にしているマクロ系ファンドなどが、暫くは「株高・金利上昇・ドル高」
の流れに提灯を付ける相場地合いも続こう。
しかし、筆者が一番懸念するのは、減税・インフラ投資等の財政支出策のみならず、輸入関税引き上げや
移民労働者排斥などの保護主義政策も含め、トランプ氏の主要経済政策のマクロ的帰結が米国内のインフレ
上昇にある、という点だ。インフレは、
「トランプ大統領誕生」の原動力となったいわゆる低所得の白人層
に象徴される「グローバル化から置き去りにされた人々」を、更に窮乏化させる。これにドル安が加われば、
国内のインフレ圧力は一層強まり、結果的に格差も更に拡大する。他方、
「America First=米国第一主義」
の下で推進される通商政策は、メキシコのみならず、中国等主要貿易相手国の輸出減速を通じて、グローバ
ル全般の経済活動へ逆風となる。選挙後の楽観相場を英字メディアが“Trump party”と呼んでいるが、い
っときの宴に過ぎない party であるならば、
「100 日蜜月」を待たずにお開きになる場面が意外に早く来るか
もしれない。いずれにしても、トランプ・リスクがトランプ・チャンスに変わったと確信するには、まだま
だ情報も時間も必要に思われる。
【図表 2】 <トランプ氏公約:最初の 100 日で立法化を目指す政策>
記事提供:公益財団法人 国際通貨研究所 経済調査部
上席研究員 武田 紀久子
(2016 年 11 月 17 日作成)
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Ⅱ.CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)の労働法比較(2)
−各論について−
(前回のレポートは、以下の URL をクリックして本文をご参照ください。
)
http://www.bk.mufg.jp/report/insasean/AW20160916.pdf
新しい投資先として、注目される CLM(カンボジア、ラオス、ミャンマー)ですが、労務に対する考え
方は、近隣国であっても国毎に異なります。今回は CLM の労働関連法規を比較し、労務の各論を踏まえた、
実務上の留意点をご紹介致します。
【CLM 労務特徴一覧】
カンボジア
最大就業時間
ラオス
ミャンマー
8 時間/日
8 時間/日
業種ごとに異なる規制(原則 1 日 8
48 時間/週
48 時間/週
時間以内または 1 週間 48 時間以内
休憩は、60 分以上
(工場は原則 44 時間まで))
最低限の週休
週1日
週1日
週1日
祝日
28 日(2016 年度)
10 日(2016 年度)
16 日(2016 年度)
振替休日がないため、年によって変動
残業時の給与
通常:150%
通常:150%
割増率
休日・夜間:200%
夜間:200 %
祝日:100%
休日、祝日:250 %
平均賃金の 2 倍以上
休日、祝日かつ夜間:
300-350 %
130%
115%
平均賃金の 2 倍以上
1 か月-3 か月
30-60 日
法令上の定めなし
(職種によって異なる)
試用期間中は、正規雇用
但し、労働者管理局のサンプルに 3
時の 90%分の支払義務
か月を超えない旨規定されている
年間 18 日
年間 15 日
年間 10 日
(勤続 12 か月以上の労働
(勤続 12 か月以上の労
(勤続 12 か月以上、かつ、各月 20 日
者が利用可)
働者に適用)
以上勤務した労働者に対して適用)
解雇事由
正当な理由が必要
正当な理由が必要
正当な理由が必要
就業規則の登
従業員数が 8 名以上の場 従業員雇用時に登録が
録
合には必要
夜間労働時の
給与割増率
試用期間
有給休暇
不要
必要
7 名以下の場合は任意
社会保険登録
従業員数が 8 名以上の場 従業員雇用時に登録が
従業員数が 5 名以上(毎月納付が必
合のみ(毎月納付が必要) 必要(毎月納付が必要) 要)
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1.カンボジア労務の留意点
(1) 祝日数
上記の表の通り、カンボジアの祝日数は、ラオス・ミャンマーと比較して、もっとも多くなっています。
毎年の祝日スケジュールは、毎年 10 月頃に発表されますが、特に製造業にとっては、翌年の祝日を考慮し
たスケジュールの管理、調整が必要となります。
カンボジアでは、近隣国と比較して、祝日が多いため、製造業以外の業種であっても、土曜日に勤務する
会社が多いのが実態となっています。
(2) 有給休暇
ア 有給日数
祝日同様、有給休暇についても、ラオス・ミャンマーと比較して、若干多い日数が設定されてい
ます。年次有給休暇の付与数は、勤続 4 年目に 19 日、勤続 7 年目に 20 日と 3 年毎に 1 日の割合で
増加するので、この点についても注意が必要です。
イ 有給の持ち越し
有給は、最大、年間の有給日数から 12 日を差し引いた日数が、以後 3 年間に渡って持ち越され
ます。但し、労働仲裁委員会は、上記取扱いは、労働者が自由に有給を利用できる状況にあること
を前提としており、労働者が実際に有給を利用することができない状況にある場合については、上
記規定の適用を受けることなく、残存有給日数がそのまま持ち越されることになる旨判断している
ため(2004 年 27 号事件、2009 年 40 号事件、2012 年 89 号事件)
、注意が必要です。
また、解雇時には残存有給を買い取る必要があるため、有給管理を慎重に行う必要があります。
ウ 有給の買取りに関する合意・協約
労働法は、労働契約期間中の有給の放棄・免除に関する合意・協約は無効と規定していることか
ら、契約期間中の有給の買取りは無効とされています。
この点、特に多くの従業員数を抱える製造業等では、有給管理に伴う煩雑さを避けるなどの目的
で、月次や年次での有給の買取りが行われることがあります。しかしながら、上述の通り、有給買
取りの効力が争われた場合には、上記規定に基づいて、買取りの合意は無効であると判断される可
能性が高いことから、有給の買取りには十分な注意を要します。
(3) その他の留意点
ここ数年のカンボジアにおいて見られる製造業でのストライキや暴動等は、主に、使用者側の労務上のコ
ンプライアンスの不遵守が原因となっているケースが多いというのが現状です。労務における紛争を事前に
回避するためには、現地法の専門家の指導を受けながら、盤石の体制を構築することが重要だと考えます。
また、カンボジアでは、企業が実施すべき事項が非常に多いのが特徴となっています。例えば、大規模な
工場・事業所内における医師の常駐・デイケアセンターの設置等に加え、労働者代表の選任や就業規則の登
録、雇用者カード、健康診断の実施等が求められています。
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2.ラオス労務の留意点
(1) 祝日数
上記表からは、カンボジアやミャンマーと比較して祝日が少ないように感じますが、ラオスでは、政府が
公式に認めた祝日(10 日間)以外にラオスの伝統行事に基づく祭日があります。後者については、雇用者と
労働者双方の合意により祝日として取り扱うことができる旨が、法律で認められています。
(2) 残業
ラオスでは残業という概念はほとんど浸透しておりません。したがって、残業を命じるときは、必ず事前
に労働者の合意を得る必要があります。また、1 か月 45 時間以上の残業を命じる場合は、事前に労働管理局
の承認を得る必要があります(労働法 53 条 4 項)
。
(3) 有給休暇
ラオスでは、社会通念上、有給休暇は使い切ることを前提としているため、労働者の都合により、有給休
暇を消化できなかった場合については、労働法では規定されていません。未消化有給休暇の繰越の可否、買
取りの可否等については、労働契約の中で詳細に規定し、労働者の合意を得る必要があります。
(4) その他留意点
ラオスにおいても、労働者による不正は散見されますが、労働者側の不正が明らかであり、証拠が十分に
揃っている場合であっても、労働法 88 条に基づき、労働者は事業主から給与あるいは賃金全額を受け取る
権利がありますので、留意する必要があります。
3.ミャンマー労務の留意点
(1) 祝日数
ミャンマーでは、祝日は政府の通知により規定されます。ヒンドゥー教・イスラム教の祭日は直前に発表
されるため、急遽祝日となる日があります。祝日が週の休日と重なった場合であっても振替休日を与える義
務はないため、毎年の祝日数が変動することが特徴です。
(2) 有給休暇
未消化有給休暇は雇用者と従業員が合意した場合には、3 年を越えない範囲での持ち越しが認められます。
退職・解雇・死亡した場合で未消化有給休暇がある場合、雇用者は従業員の平均日給額(退職・解雇・死亡
の直前 30 日間の平均)を支払う必要があります。
(3) 雇用契約書
雇用者は、雇用開始後 30 日以内に従業員と雇用契約を締結し、管轄の労働局に届け出る必要があります
(実務上従業員数が 5 名以上の雇用者のみ提出義務あり)。法律で、雇用契約書に記載が必要な事項が定め
られており、労働・雇用・社会福祉省が雇用契約書のサンプルを公表しています。然しながら、このサンプ
ルは工場での労働者を想定しており、サービス業等に従事する従業員には、そぐわない箇所があることから、
実務上、労働局に対して修正したサンプルを提出すると、審査能力の乏しい担当官によっては、登録が進ま
ないといった事例が発生しています。
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(4) その他留意点
労働法分野に関する基本法が存在せず、個別法によって規制されています。そのため、規制内容を確認す
る場合には、該当する個別法を発見しなければなりません。また、時には複数の法律が適用されるケースも
あり、体系的に理解することが難しい法制度となっています。
記事提供:JBL メコングループ代表 藪本雄登
メコン地域で現地の法律実務経験を有し、メコン法務全般に対応する。メコン地域の法務に関する知識と現地での
実務経験をもとに、メコン地域への進出戦略の策定、進出時のリーガルフォロー、紛争発生時の対応等を執り行う。
JBL メコングループ:メコン地域に特化した日系法律事務所。タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーを中心に
日系公的機関や日系大手企業の法務顧問として業務支援を執り行う。
(2016 年 10 月 9 日作成)
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Ⅲ.ミャンマー拠点
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経理体制構築の勘所
【はじめに】
2011 年の民政化後、多くの日系企業がミャンマーに進出し、また 2016 年の新政権発足を受けて更なる進
出の増加が見込まれている。
進出当初のミャンマー拠点の規模は日本親会社と比較して小さいために、日本からの現地駐在員が、営業
活動、総務・人事、経理・財務、本社からの出張者対応等、広範な業務に関する責任を有することになる。
つまり、現地駐在員は日本親会社で経験していない業務に関しても専門性を身に着け、適切にマネジメン
トすることが求められている。
本稿では、駐在員の業務の中でも多くの企業を悩ませている経理体制構築について、日系企業に共通する
典型的なパターンをみていきたい。
【なぜ経理が上手くいかないのか】
ミャンマーにおいて、適切な経理体制が構築出来ていない企業は間々見受けられるが、その主な原因は、
優秀な現地会計人材の絶対数の不足と日本親会社による関与の不足であると考えられる。
ミャンマーに新規で進出する企業の一人目の現地駐在員として選抜されるのは、経理畑出身ということは
少なく、営業や技術部門出身者となることが通常である。管理体制を構築する以前に、ビジネスを立ち上げ
るという観点からすると当然の人選だといえ、経理業務は現地で採用したローカルスタッフに任せ、駐在員
はビジネスの立ち上げに奔走することになる。
ここで問題なのは、経理を任せたはずのローカルスタッフが、「思ったほど経理が出来ない」という現実
である。経理経験のない駐在員が、優秀な会計人材の絶対数が少ないミャンマーにおいて、経理を任せられ
るレベルの人材を選び分けることは難しく、多くの場合、経理業務の重要性、難易度を現実よりも低く見積
り、あるいは、候補者の実力を実際よりも高く評価することとなる。その結果、経理担当として一定レベル
以上の能力がない者に経理を任せ、親会社への報告はおろか、駐在員自身も自分が責任を有するミャンマー
拠点の数字を正しく把握出来ていない事態が生じる。
各部門が適切な専門性を持ち、業務を遂行している日本親会社からすると、想像し難い状態であるが、ひ
とりの駐在員に広範な業務遂行が求められる現地拠点では、現実にこのような例は多く見られる。
【経理体制の構築に何が必要なのか】
では、適切な経理体制の構築には何が必要なのか。上述した「優秀な現地会計人材の絶対数の不足」は各
企業の取り組みによって短期的に改善出来ることではないため、ここではそれを所与の条件として、各企業
で実施可能な取り組みを述べていきたい。
1.採用プロセスでの取り組み
・ミャンマー会計人材の特徴を知る
ミャンマーでは 2011 年の民政化以前は、外国からの投資は限られたものであった。
そのため、透明性のある企業会計は発達せず、各企業の経理担当者は現金主義に基づく経理を行って
いることが多く見られた。通常、経理経験は長ければ長いほど熟練するものであるが、それは「正しい
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経験」を積んでいることが前提となる。つまり、民政化以前に経理担当者として長くキャリアを積んで
きた者の中には、国際的には通用しない「ミャンマー実務」の熟練者が少なからず存在するため、経験
年数の長さは必ずしも良い人材を選抜する際の基準とはならない。
また、会計関係の資格の有無も参考程度とするにとどめ、有資格者を過大評価しないよう留意するこ
とが肝要である。資格を有していても上述したように「正しい経験」を積んでいなければ戦力とは成り
得ない。例えば、LCCI や ACCA といった資格を取得している、あるいは会計ソフトウェアの使い方を
学ぶスクールに通っている(ミャンマーでは MYOB という会計ソフトウェアが広く使われている)者
でも、実務において国際会計基準どころか、現金主義会計を手書きの帳簿で行っていれば、それがその
者にとっての「経理実務」として定着し、採用後に、期待値と実力の差に愕然とすることになる。資格
の有無ではなく、自社で求める業務内容・業務レベルの実務経験を有しているか、つまり、職務経歴の
詳細な検討が重要となる。
さらに、前職の給与が必ずしもその候補者の実力を表しているとは限らないという点も留意が必要で
ある。会計人材の不足に起因する需給バランスにより、職務年数の長さや有資格者というだけで実力以
上の評価を受け、高給で採用されている者が存在するからである。
・面接の難しさを知る
誰しも自らが未経験の分野において適切な人材を一時間足らずの面接で選抜することは難しい。特に
ミャンマーにおいては、上述したような人材の特徴から、職務経歴を詳細に検討し具体的な業務レベル
の知識・経験を見極めなければならないため、経理経験がない現地駐在員が、適切な人選をすることは
極めて難しいと言わざるを得ない。候補者本人が言う「経理が出来る、経験がある」ということと、日
本企業が求めている「経理が出来る、経験がある」というレベルに大きな乖離があり、それを面接官で
ある駐在員が見極めることが難しいのである。面接においては、知識面については日本親会社の経理部
のアドバイスを求める、現地人材の特徴については現地の専門家から情報収集をする等の事前準備は必
須である。加えて、日本親会社の経理部から面接官として適切な者を招集するといったことも検討すべ
きである。
2.教育プロセスでの取り組み
・立ち上げ期には、日本親会社経理部による関与度合いを高める
即戦力となる優秀な会計人材は既にそれなりの良い条件で職を得ているのが通常であり、必ずしもタ
イミングよく適任者が見つかるとは限らない。その場合、基礎レベルの知識と経験がある候補者を採用
し、自前で根気よく教育することになる。教育に関しても、採用と同じく経理経験がない現地駐在員が
行うことは困難であるため、日本親会社経理部の関与が望まれる。
特に立ち上げ期においては、社内ルールや基本的な経理手順の整備、会計システムの導入等を、現地
経理スタッフのレベル感を見極め教育しつつ、効率的に進める必要があり、少なくとも 3 ヶ月~6 ヶ月
は短期出張の形で中堅レベル以上(経理業務の全体感を理解し、プロジェクトマネジメントが出来るレ
ベル)の経理担当者が関与することが望ましい。但し、社内ルール、経理手順の整備、会計システムの
導入のいずれについても日本のやり方をそのままスライド出来るわけではないため、助っ人である日本
親会社経理担当者には、ミャンマーの商慣習を理解した上で、自社が許容できる適切な管理レベルを維
持するという柔軟性が求められる。
(例えば、ミャンマーにおいては、金融インフラの発達が不十分で、
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いまだに商取引において現金決済が多く見られる。このような状況において、自動振替やインターネッ
トバンキングでの振込みを前提とした日本親会社の業務手順書を翻訳して使おうとしても、全く実態に
そぐわない。
)
3.社内リソースでは限界がある場合の取り組み
・専門家の利用を検討する
不足しているリソースを専門家の利用によって補うことも必要である。ミャンマーにおいても、地場
の会計事務所、日系の会計事務所など、多くの専門家がおり、駐在員の会計知識と語学力、ローカルス
タッフとの相性等を考慮して適切な専門家を利用したい。但し、あくまでも外部者であるので、専門家
を利用すれば、日本親会社経理部や現地駐在員が経理に関して全く理解しなくてもよいということでは
なく、適切な管理監督責任を遂行すべきことは言うまでもない。
【まとめ】
拠点開設から数年を経ると、今まで非連結子会社としていた現地拠点が連結範囲に含まれるということも
現実的になり、日本親会社への報告の質、量はもとより、日本親会社の監査人(監査法人)の監査の対象範
囲となることによって、より高度な対応が求められることになる。この段階で経理体制が安定していないと
日本親会社の連結財務諸表の決算・監査にも影響が出てしまうため、拠点立ち上げ期からこの段階を見据え
て日本親会社の関与の下、計画的に体制構築を進めていきたい。
記事提供:SCS 国際会計事務所(ミャンマー) 代表取締役 公認会計士 洞 大輔
大手監査法人及び中堅監査法人にて監査、企業価値評価、財務デューデリジェンス、IFRS 導入支援等に従事。
2013 年 SCS Global 参画と同時にミャンマーを担当。進出検討中の企業及び既進出企業に対する、会社設立、
会計・税務・労務・法務関連のコンサルティング実績は 100 社を超える。
(2016 年 10 月 12 日作成)
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Ⅳ.ベトナムの会計・税務の留意点「移転価格税制」−課税対象と文書化−
【日系ベトナム法人の方からのお問合せ】
弊社は日本法人 A 社を親会社とするベトナム法人です。A 社はタイにも子会社(B 社)を有しており、弊
社は B 社から部品を調達して組み立てた完成品を A 社に輸出する、輸出加工企業です。現在開業準備中で
すが、既に B 社から部品を輸入しており、間もなく生産を開始する見込みです。
ベトナムでも移転価格税制があると聞き、対応策を検討するよう親会社からも指導されているのですが、
まずは課税対象や必要な書類の概要を教えてもらえませんか?
以下、ベトナムにおける移転価格税制での課税対象と、文書の作成や提出もしくは保管が必要とされるも
のについて、その概要を解説します。
1.移転価格税制での課税対象
ベトナムの移転価格税制は、親子関係もしくは同一グループ内、あるいはその他一定の特別な関係にある
企業との間で取引を行う場合に、当該取引につき取引当事者である関連者に対して課税されます。ベトナム
の移転価格税制に関するガイドラインは Circular 66(2010 年 4 月公布)であり、関連者の範囲が他の多く
の国で定められているものよりも広範囲なのが特徴です。
具体的には、資本や取引などによる支配関係が認められるとする支配比率の基準を 50%超か 50%以上と規
定する国が一般的には多いのですが、ベトナムにおいては 20%以上とされています。また、資本関係がなく
とも一定の仕入先、顧客、融資関係のある者も関連者に含まれます。加えて、対象が国外関連者間取引のみ
ならず国内の関連者間取引にも及びます。
ここで関連者とは、具体的に次の関係にあるベトナム法人をいいます。
・ 一方の当事者が他方の当事者の 20%以上の持分を直接または間接に保有する関係
・ 共通の第三者によってその持分の 20%以上を直接または間接に保有される関係
・ 双方が、第三者の持分の 20%以上を直接または間接に保有する関係
・ 一方の当事者が他方の当事者の最大株主で、10%以上の持分または資産を保有している関係
・ 資本の 20%以上、または中長期債務の 50%以上を貸付または債務保証している関係
・ 過半数の取締役または監査役の派遣、または財務や経営について意思決定権を有する者を派遣して
いる関係
・ 過半数の取締役の派遣、または財務や経営について意思決定権を有する者が兼務している関係
・ 同族関係者によって人事、または財務や経営が支配されている関係
・ 親会社とその恒久的施設、または国外に共通の組織または個人を有する恒久的施設である関係
・ 製品原価の 50%以上を無形財産や知的財産権の使用料として支払っている関係
・ 50%以上の仕入れ先、または販売先である関係
・ 業務提携契約を締結している関係
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2.文書化
(1) 申告書
移転価格税制上、関連者間取引を行う法人は、定められた様式による報告書(Form GCN-01/QLT)を
年次の法人税確定申告書に添付して、申告書提出期限までにその詳細な情報をベトナム税務当局へ報告する
必要があります。
(2) 取引価格算定に関する文書
また、同様にこの法人は取引価格の算定根拠を証明する書類を整備し、ベトナム税務総局から要求を受け
た場合には、その時点から 30 日以内にベトナム税務当局にそれらの書類を提示することが求められていま
す(合理的な理由がある場合には、さらに 30 日の猶予が認められています)
。
これらの書類には、次のような情報をベトナム語で記載していなければなりません。
1) 法人と関連者に関する概略情報
・ 法人と関連者の関係についての説明
・ 関連者間での成長戦略や管理・支配に関する最新情報
・ 成長計画、事業戦略、投資、販売・生産計画に関する情報
・ 組織図、企業および関連者の果たす機能に関する説明
2) 法人の取引情報
・ 取引チャートや取引の説明
・ 製品の特性や仕様に関する説明
・ 関連者取引の契約交渉から締結までの一連の経緯説明
・ 関連者間取引が行われた際の経済状況に関する説明
3) 市場価格の算定方法に関する情報
・ 価格決定方針、価格の管理・承認過程、製品別価格表
・ 関連者間取引において法人が最適な価格算定方法を選択適用していることの説明
・ 価格算定方法の選択適用に関するその他説明
3.その他の留意点
ベトナムにおいて、2014 年に事前確認制度(Advance Pricing Arrangement:APA)が導入され、APA
申請のガイドラインとなる Circular 201 では以下の項目が、その主な目的として挙げられています。
・ 税務行政の効率化
・ 企業のコンプライアンスコストの削減
・ 事業内容およびその性質に基づく、法人税の観点からの適切な利益を反映した関連者間取引に
おける独立企業間価格の算定
・ 国際的二重課税および租税回避の防止
・ 関連者間取引の独立企業間価格の算定に関連する係争またはリスクの軽減
ベトナムにおいて現時点では APA の申請は活発に行われている状況にはありませんが、ベトナムで事業
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を行うグローバル企業にとっては税務リスク管理上有意義な制度と考えられ、今後の実務上の進展が期待さ
れるところです。
記事提供:フェアコンサルティング ベトナム ゼネラル・ダイレクター 讃岐 修治
フェアコンサルティンググループは、海外進出、現地法人の管理など国際税務や移転価格税制、
クロスボーダーM&A などの国際業務に特化した会計系コンサルティングファーム。
(2016 年 9 月 16 日作成)
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Ⅴ.自動車業界レビュー(インドネシア、インド)
「インドネシア」
、
「インド」の自動車業界の動向を記載します。
【インドネシア】
2016 年 10 月の販売(出荷ベース、速報値)は 7 カ月連続の前年超え。前月比は 2 カ月連続のマイナス。
・インドネシア自動車製造業者協会(GAIKINDO)がまとめた 10 月の新車販売台数(出荷ベース、速報値)
は前年比+2.3%の 9 万 500 台と 7 カ月連続の前年超えとなったが、前月比▲2.9%と 2 カ月連続の前月割れ
となるなど、減速感も見え始めている。
・原油価格持ち直しの兆しや政府の「ローコスト・アンド・グリーン・カー(LCGC)」政策(注 1)適合車
の販売増加などプラス材料はあるものの、米国大統領選挙の結果や、それに伴う急速なルピア安進行など、
厳しい外部環境を踏まえ、同協会(GAIKINDO)は 2016 年通年の販売台数見込みについて「目標
(前年比+5%)の達成は困難。前年比+4%程度に止まる」との見解を示している。
(注 1)2013 年にインドネシア政府が、自動車市場の拡大と大気汚染問題の解決策として、低燃費・低価格自動車の普及の
ため導入した政策。サイズや燃費(ガソリン 1 リットル当たり 20 キロ以上走行が可能)
、価格、部品現地調達率など一定
基準を満たした自動車に対して奢侈税(10%)免除、法人税 30%減免、製造用工作機械などの輸入関税免除などの優遇を
受けることができる。
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・インドネシア自動車部品工業会(GIAMM)はインドネシア政府に対して、自動車・二輪車用部品、特に
ブレーキ関連部品の国内品質基準(SNI)の対象品目拡大を要請した。
・同会(GIAMM)はこれまで、その多くの部品が SNI 対象外とされてきた「ブレーキ」の安全上の重要性
や廉価で低品質な外国製部品の流入防止を当該要請の背景とした。
・政府は当該要請に対して一定の理解を示しつつも、SNI 制定には認証・検査機関などの整備が必要である
ことを理由に「今後、検討していく」と事実上、回答を保留した。
・インドネシア運輸省は 10 月 1 日より施行したアプリケーションを用いた配車サービスを提供する企業に
対する規制、運輸相令「2016 年第 32 号」について、当局側で把握している対象車両のうち約 90%に当た
る 1 万 4,200 台余りが相令に違反していることを公表した上で、サービス提供各社に対して「警告文」を
送付、制裁措置の準備を進めていることを明らかにした。
・同令では、自家用車での営業に際し、①運転免許証(SIM)の取得、②車両待機場所の確保、③公共交通
車両向け車検(KIR)受検、④車両登録証(STNK)の業者名への名義変更などを義務付けている。
・特に時間を要する④STNK の名義変更については、1 年間の猶予期間を設け 2017 年 10 月 1 日より義務化
される。また、施行後、6 カ月間は違反車両に対し罰則を科さない方針も明らかにしていた。
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【インド】
2016 年 10 月の乗用車販売は 16 カ月連続前年超え、前月比もプラスを維持。引き続き SUV 需要が寄与。
・インド自動車工業会(SIAM)公表の 10 月の乗用車(ユーティリティー・ビークル、バンを含む)販売台
数は前年比+4.5%、前月比+0.8%の 28 万 677 台と 16 カ月連続の前年超え、前月比も 2 カ月連続でプラスを
維持した。
・一般乗用車が前年比+0.5%、前月比▲0.1%の 19 万 5,036 台、バンが前年比▲7.7%、前月比▲7.5%の
1 万 5,097 台と、一般乗用車は辛うじて前年超えを維持したが、いずれも前月比マイナスに転じた。一方、
スポーツタイプ多目的車(SUV)は前年比+21.4%、前月比+5.5%の 7 万 544 台と、引き続き、高い伸びを維
持し、全体を牽引した。モンスーン期の降雨量が平年並みとなり、農業部門の所得増加が消費者心理を改善
させており、
「ディワリ」などの祭事シーズンとも重なり好調な販売が続いた。
・11 月 8 日夕刻政府が発表、翌 9 日より施行された 1,000 ルピー、500 ルピー紙幣の使用停止および新紙幣へ
の切り替え実施による自動車販売への影響については、
「自動車購入者の 8 割以上が自動車ローンを通じて
車両を購入していることから、その影響は軽微」とする向きが多い。
・2017 年 4 月導入予定の全国統一物品・サービス税(GST)税について GST 評議会は、基本税率を 5%(用
品)
、12%、18%、28%(奢侈品)の 4 段階の「セグメント別」方式とした上で、自動車への課税について
は、一部の高級車種を除き一律 28%、高級車種は同基本税率(28%)に一定の租税を上乗せする案(現税
率 52%)で合意、議会に同案を提出した。議会側は GST 導入には同意しているが、4 段階の「セグメント
別」方式とその税率については、インフレ懸念を理由に反対する意向を示しており、両者の合意は流動的。
・農業部門の所得増加を背景にした消費者心理改善や祭事シーズンにより好調な販売が続く一般車種とは対
照的に、高級車種については、GST 税率を巡る不透明感などから消費者の買い控えが起こっており、当初、
二桁成長を見込んでいた 2016 年 4 月~2017 年 3 月の販売台数見込みを一桁成長に下方修正する向きもある。
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・デリー首都圏(NCR)政府は、製造から 15 年超となるディーゼル車の登録抹消手続きに着手した。過去最
悪となっている首都圏の大気汚染対策の一環として NCR 首相や副知事らの会合で決定したもので、約 20 万
台が対象となる見込み。
・登録抹消の他、①NCR を目的地としないトラックの同圏への乗り入れ禁止、②過積載のトラックの NCR へ
の乗り入れ禁止などが追加策として検討されている。
・ディーゼル車による大気汚染については、今年 8 月最高裁判所が、先に NCR 政府が施行した排気量 2,000cc
以上のディーゼル車の新車登録停止措置を、対象車両の小売価格の 1%の環境税(ECC)を課すことを条件
に解除することを決定した経緯がある。
(自動車業界レビューの出所)各国政府・業界団体発表、各種報道
(編集・発行) 三菱東京 UFJ 銀行 国際業務部
(照会先)高垣 恭 北村 広明
(e-mail): [email protected]
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~アンケート実施中~
(回答時間:10 秒。回答期限:2016 年 12 月 8 日)
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