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3 - 経済産業省

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3 - 経済産業省
第3章
中国における現在のリサイクル実態調査
第 2 章で述べたように廃家電品の多くは、回収業者や小売店に渡った後、中古市場
(修理後の再販含む)と資源回収市場と大きく分けて2つの流れがある。その割合は
9対1で中古市場が圧倒的に支配しているものと想定されている。これらのルートに
介在している業者の多くは、下写真のような多数の個人経営者らによって営まれてい
る。中国はこの現実を直視しつつ、今後、組織的な回収を行おうとしている。両者の
ギャップを具体的に埋める方法が、年末まで検討されるものと思われる。
廃家電・PC等の売買商人
廃家電・PC等の売買商人
民家軒先の基板用IC売場
3.1
中国某所リサイクル施設調査(中国・大都市)
中国の 1000 万規模の大都市で2002年より廃工業製品のリサイクル事業を営
むA社を訪問し、リサイクル実態を調査した。A社は元々、市の政府機関(環境局筋)
から独立した民間企業で、現在、主にFAX、PC、デジタルカメラ等の廃工業製品
(製造時の廃棄品)のリサイクル事業を行っている。廃棄物を取扱う上での許可品目
は医療、廃油、蛍光灯などの危険物も取扱範囲に入れており、更にISO14001、
及びISO9001を取得し、徹底した管理を行っている。
リサイクル工場としては、敷地約7000㎡の中内の倉庫の一部にPCなどの手分
解ライン(写真3-1、2)を2ライン新設し、現在、20 名程度で分解作業を実施し
ている。
訪問後にこのような設備に改善され、現在は下記の写真の状況で運営されている。
現在の処理品は生産工場からの規格外品であったが、法律が実施されれば、将来的に
は一般家庭からの使用済みPCと家電品を事業範囲に入れる構想を検討中である。
写真 3-1 PC手分解ライン
写真 3-2 基板手分解作業台
既存倉庫の中で手狭な作業にも思えるが、ライン(作業台)は、日本のような近代
的な設備が導入されている。写真3-1 のパレット方式は東京エコリサイクルを参考
にしたものと思われる。作業環境(作業負荷軽減、粉塵対策など)にも日本以上に配
慮されている。これらの指導は上海第 2 工業大学の王教授によるものである。
A社の経営基盤(収入源)は、各メーカーからの委託費(一部、買取もある)と有
価物の売却費である。逆有償で受託している点が、日本の産廃処理と同じである。有
価物については、素材として売却するものと、部品として再利用(リユース)するも
のがあり、そのため、分解作業は製品を製造する時のように慎重、且つ丁寧なもので
あった。(写真 3-3∼10 は分解後の製品)
リユース品
有価物︵廃棄物︶
写真 3-3 カメラ液晶
写真 3-4 FAXモーター
写真 3-5 PCファン
写真 3-6 PC液晶
写真 3-7 PC基板
写真 3-8 回路配線
写真 3-9 基板ボード
写真 3-10 基板雑物
上記写真のように再利用できる部品、または素材に近いところまでの分解・回収
を行い、経済性も両立させている模範的な例である。
A社は、将来は家電リサイクルも手がける計画である。仮りに使用済み家電品を
手がけることができない場合でも、周辺地域の日系企業(製造工場)の工場からの
廃工業製品の排出量が増えるため、今後もの事業は順調に拡大していくものと予想
された。経営者も環境問題を前向きに捕らえる姿勢がうかがえた。
3.2
中国某所リサイクル施設調査(基板の町)
廃家電品等の回収業者と資源回収業者とが共存共栄していると言われている中
国南東部の小さな農村部を調査した。元々は農村地だが、洪水などの自然災害が多
かったため、本業(農業)だけでなく、廃棄物から有価物を取り出し売買するとい
う、「循環経済」を支える仕事が増えてきたとされている。
ここは前節とは別次元の手法で徹底分解(リサイクル)していることが特徴であ
る。人口3万人程度の小さな町だが、一歩この町に入ると道路に面した家の軒先や
小さなヤードの中で、テレビやPC等を分解し、電子部品の販売も行われていた。
今では中国国内有数の廃電子機器の集積、及び部品再販の拠点となっている。こ
こで多く見かけたのは廃電子機器の中でもプリント基板が多く使われているPC、
携帯電話、テレビ、パチンコ台(写真 3-11、12)などで、これら廃製品の中から
大きなものでは筐体、小さなものでは数ミリレベルのICチップに至るまで実に根
気よく分解・回収(採取)されていた。
写真 3-11 テレビ分解
写真 3-12 PC他分解
この地域で、携帯電話を対象に徹底手分解(リサイクル)しているB社に調査依
頼を行い協力を得た。B社は1988年(約18年前)以降、廃電子機器の中から
有価部品を取り出し、同時に再販する業務を営んできた。現在は国内外から廃棄さ
れた携帯電話を購入し、50名程度でそれぞれの役割の中、基板中の再利用可能部
品を一つ一つ丁寧に取り出していた。
労働者の大半は10代の若者で、特に女性の姿が多く見られた。基板回路から
IC等の各種の部品を回収し(写真 3-13,14)、更に回収した数ミリ単位のICを
それぞれの型式や品番などに仕分けする(写真 3-15,16)。作業台の上で手際よく
分別される状況は日本では真似のできない方法である。
写真 3-13 アンテナ接点の回収
写真 3-14 部品の取り外し
写真 3-15 ICの型式別仕分け
写真 3-16 仕分け後の部品類
これら廃携帯電話は、日本や韓国、マレーシアなどの東アジアを中心に輸入さ
れてくるものが多いようだが、一部、同国浙江省方面からも入荷(売りに来る)
している。B社のオーナーも「本来捨てられる物をここに集めて部品を再販する
と云う環境保護的ビジネスでは、中国国内でも最大の市場(マーケット)だ」と
自負していた。
極限までの精密な分解は、部品のリユースには有効で、
「もったいない」思想が
息づいているといえる。仕分けされた電子部品については、写真 3-17、18 のよ
うに、この作業場の片隅に整然と陳列してある。また、ここまで徹底して分解・
回収することで、筐体のプラスチックなども有価物として出荷でき、それに伴い
ゴミ(不要部品)も殆ど発生しないと云うメリットも生まれる。他の企業は陳列
棚もなく、麻袋に電子部品を入れたまま、店頭に出しているところも見受けられ
た。今後の課題は、3.1 章で紹介したA社の例などをお手本にして、作業環境を改
善してゆくことであろう。
写真 3-17 再利用部品の陳列
写真 3-18 プラ筐体の陳列
その他、通常、破砕機やシュレッダーに投入すると粉塵などのゴミ扱いになって
しまう極薄のプラスチック素材(写真 3-19 携帯電話のプッシュボタン部品)まで
回収し、販売している。写真 3-20 ではB社全域の作業状況把握とセキュリティを
考慮したモニタリング装置もあり、管理面でも充実していた。長年のノウハウと組
織的な運営が強みである。
写真 3-19 プラ部品の陳列
写真 3-20 モニタリング装置
3.3
中国某所リサイクル施設調査(金属スクラップの町)
3.3.1
現業の調査
次に金属スクラップの町とも言われる浙江省台州市のC社を調査した。C社は日
本の廃家電リサイクル工場から購入したモータ類を分解しリサイクルしている。C
社は日本法人が株の60%を有する企業で、主にアジア圏、欧州の一部などからも
金属原料としてスクラップを輸入し、鉄、銅、アルミニウム、プラスチックなどの
素材に分解・仕分けする企業である。
従来の方法は写真 3-22∼24 に示すように、他の地域と変わらぬ手分解であっ
た。しかし、このC社の考えは他のスクラップ分解業者とは異なり、従来の方法で
は環境、及び労働者に対する人体への影響が生じかねないことを危惧し、同時に日
本の委託先からこの改善を要請されて、日本方式を自ら進んで建設した例である。
写真 3-21 左は従来の建屋、右側が新たに建設された日本式のリサイクル工場で
ある。従来は屋根だけの工場であったが、壁で仕切り独立の建屋とし、他のスクラ
ップの混入を防いでいる。
写真 3-21 C社再資源化工場
写真 3-23 従来のスクラップ
写真 3-22 スクラップの分解・選別
写真 3-24 スクラップの分解・選別
写真 3-25 は日本式再資源化工場である。内部には写真 3-26 に示すような専用
のラインが配置されている。写真 3-27 はモータコアから銅線を引き抜く機械装置
である。自動装置ではないが、作業員が効率よく銅線を回収できていた。回収され
た銅線とステータを写真 3-28,29 に示す。廃棄物も発生せず、良質の素材が回収
される。写真 3-30 は分解ラインの外側である。安全通路が確保され、壁には換気
扇が設置されている。コンクリート床は油不浸透塗装を施した床である。必要な箇
所には局所換気装置が設置してある。作業者は、制服にマスクと帽子を装着し、き
びきびと作業していた。作業環境への配慮もされており、日本と同等の設備と環境
が構築されていた。
なお、本調査事業の中核である、日本のリサイクル技術の移転(第 4 章に記載)
に関しては、家電の分解をこのC社と共同で行った。
写真 3-25 日本式再資源化工場
写真 3-26 モータ分解ライン
写真 3-27 コアから銅線回収
写真 3-28 銅線
写真 3-29 ステータ
写真 3-30 建屋換気
写真 3-31∼34 は、C社の事務所内にある回収サンプルの展示状況である。整
然と並べられたサンプルには、有価金属の含有率などが記されており、委託者や見
学者などへの情報開示の配慮が感じられた。
写真 3-31 サンプル展示台
写真 3-32 銅線サンプル
写真 3-33 被覆銅線サンプル
写真 3-34 磁石サンプル
C社は、経済性を追求するよりも環境汚染防止と健康維持を重視し、日本並みの
リサイクル環境を実現している。このような企業が先行モデル企業として発展でき
るかどうかは、むしろ委託する企業の姿勢にかかっており、日本企業の積極的な指
導が望まれる。中国としても国内のリサイクル産業を育成するモデルである。
3.3.2
家電リサイクルへの挑戦
C社の幹部は中国版家電リサイクル法施行をにらみ数年前から、このよう取組み
をしてきた。最大の問題は量の確保だと見ている。日本を例に取れば、家電リサイ
クル法施行以前、年間1000万台近い排出量があり、法施行後も最初の1∼2年
を除けば、ほぼ同等の排出量があるが、中国ではリサイクルルートが構築できるか
どうかが課題である。中国の場合、年間2000∼3000万台が排出されても、
リユースという名目で、有価部品だけを取り外し、不要な部品は廃棄される危惧も
ある。このため、リサイクル企業でのリユース買い取りも平行して実施できる法体
系が検討されている。
現在、上海市や浙江省の都市部で発生する廃家電品は、冷蔵庫や洗濯機、テレビ
などで1台、約10∼50元(150∼750円)程度で買取りが行われている。
それが、「中古品」として店頭に並ぶと10倍近い価格で売られていた。その一
例を示すと、次のような価格帯であった。
(1)洗濯機・・・100元/台(約1500円)
(2)冷蔵庫・・・130元/台(約2000円)
※
(3)エアコン・・400∼500元/台(約7000円)
(4)テレビ・・・100元/台(カラー)、20元/台(白黒)
※
家電量販店では新品冷蔵庫は約2000元(約3万円)で販売している。
有価で買い取った中古品と云っても、写真 3-35、36 に示すように日本では製
品としての利用価値は殆どなく、再使用不可能に近いものばかりであった。
写真 3-35 購入した中古家電
写真 3-36 中古テレビ
このような家電品は一見、錆や汚れが目立つだけのようにも感じるが、それ以上
に、洗濯機のモータが既に無くなっているものや、冷蔵庫のコンプレッサーが欠損
しているもの、ブラウン管が割れているテレビまでもあった。これらは、もし修理
されて中古家電品として生まれ変わるとしても、商品としての流通は困難といえる。
従って、中国版家電リサイクル法が施行される場合には、メーカーや政府認定の
家電処理会社或いは政府が、何らかの形で買取り費用を負担するといった仕組みが
有効と思われる。その上でC社のような企業が家電リサイクルに取り組むことは歓
迎できる。
3.4
中国某所リサイクル施設調査(プラスチックの町)
リサイクル施設としては、最後に広東省のD市にあるD社、E市にあるE社、F
市にあるF社を訪問し、実態調査を行った。この広東省は中国の中でも再生プラス
チックの商売(加工・販売など)が盛んな都市が集中しており、日本から発生する
家電 4 品由来のミックスプラスチック(PP,PS、PEなどの混在品)を輸入し、
リサイクル事業を営んでいる企業が多い。
家電4品目で見れば、構成素材の約30%WT(重量比)を占めるプラスチック
は、元は石油が原料である。当然のことながら石油代替燃料としてサーマルリサイ
クルにも使えるが、単に燃焼して処理するよりも、再選別・粉砕などの加工を施し、
ペレット原料に戻すマテリアルリサイクルのほうが優先される。ところが、色も性
状も類似しているミックスプラスチックをマテリアルリサイクルするには、再選別
の工程に手間と労力を要するため、人件費の高い日本では経済的に成立せず、普及
しなかった経緯がある。
下写真 3-37 は家電由来のミックスプラスチックの例であるが、これらを日本国
内で分別することは物理的には可能でも経済的には困難である。
写真 3-37 ミックスプラスチック例
家電由来のプラスチックは比重差などを利用した湿式選別方式、静電気を利用し
た乾式選別方式が知られている。前者は湿度の影響を受けずに安定した性能が期待
できるが水処理に費用がかかる弱点がある。後者は稼動環境中の湿度や粒形の影響
を受けやすい弱点がある。中国で普及している方式は前者である。ミックスプラス
チック中にはウレタンや銅線が極めて微量だが混入しているため、水や比重液に浮
遊するPPにはウレタンが混入し、沈降するPVC(塩ビ)には銅線が混入してし
まうなどの問題がある。それを人海戦術で徹底的に選別するのが中国の方式である。
人件費が安価であり、多くの雇用を生み出す点に着目すれば、中国にとっては資源
循環と雇用創出の相乗効果といえる。
写真 3-38∼43 は、D,E,F社におけるプラスチック類の選別状況である。こ
れらのプラスチックリサイクル企業は、日本企業が出資したり、商社とも良好な関
係が維持されている。このため、経営者が日本を訪問して、家電リサイクル事情も
精通しており、日本の家電リサイクルの成功例を参考にしようと積極的に交流を深
めようとしている。
(1)D社
D社はプラスチック再生企業で 30 年前からこの事業を継続させている。商社を
通じ、日本からテレビ筐体のプラスチックを輸入して再生資源に加工している。同
社は香港に本社を構え、東莞に工場を有する。香港で原料を無税で輸入し、東莞で
手選別・加工。再び香港経由で無税のまま海外企業に売却する。D社の強みは(1)
無税取引、(2)手選別ノウハウ、(3)材料調合ノウハウである。これらの3点セット
で有利な売却条件で販売している。
手選別工程ではテレビプラスチックをHIPS,PP,ABS,POM,ナイロン、
PC,PVCなど 8 種類のプラスチックと、金属と廃棄物の 2 種類、合計 10 種類
に人手で分別している。この組成情報も開示された。選別した素材を調合してペレ
ット化し、高値で売却するノウハウを持っている。このため、日本のミックスプラ
スチックを高値で購入する実力がある。高値購入の理由、強み、分別後材質などを
自ら開示する経営者の姿勢に好感が持てた。
(2)E社
E社は、約 20 万㎡の敷地で、プラスチックだけでなくあらゆる廃棄物を処理し
ている。発電型の焼却設備やコンポスト施設まで有するコンビナートを運営してい
る。E社の特長は経営者の姿勢である。経営者は、今までも行政の補助(助成金な
ど)を一切充てにせず、都市が必要とする種々リサイクル事業に着手し、これらを
成功に導いてきた。その姿勢は、(1)あるべき姿を追求し先ず行政の施策を先取り
して実行する。(2)その結果を出し、行政側が納得して法律や条令に反映させる。
というプロセスを経ている。日本ではでき得ないアグレッシブな姿勢であった。
写真 3-38 D社の選別風景
写真 3-39 D社のペレット工程
写真 3-40 E社の選別風景
写真 3-41 E社の比重選別
写真 3-42 F社の手選別
写真 3-43 F社の手選別
下写真 3-44,45 はペレット製造後、製品に加工したもの。
写真 3-44 ラジオの筐体
写真 3-45 ジューサーの土台
(3)F社
F社はISO14001も取得した、プラスチック専門の資源再生企業である。日
本の家電リサイクル施設からの各種のミックスプラスチックを輸入している。2000
年に日本法人の出資で設立された。月に千トン単位で輸入し、写真 3-42,43 に示す
ように、先ず人手により大きさや色に着目して粗選別する。その後、粉砕機で形状を
揃え、次のプロセスでは沈殿槽の比重分離で浮上プラスチックと沈殿プラスチックを
分けている。微量の金属も含めて 9 種類に分けていて、分別能力は高い。人手による
祖選別と水により比重運分離を組み合わせて、多種混合のミックスプラスチックを効
率よく選別する実力がある。
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