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ベネズエラの最新動向(3 月 1 日~3 月 31 日)

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ベネズエラの最新動向(3 月 1 日~3 月 31 日)
国際協力銀行
ニューヨーク駐在員事務所
2012 年 4 月 5 日
ベネズエラの最新動向(3 月 1 日~3 月 31 日)
I.
1.
政治・経済
チャベス大統領の手術後の経過

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
2 月 27 日、チャベス大統領はキューバで骨髄付近の腫瘍摘出の再手術 1 を受け、手術後の検査結
果で、これが悪性癌腫瘍であったことが判明。癌性腫瘍の周辺器官への転移の可能性は否定した
ものの、今後放射線治療を受ける必要があると発表した。
ベネズエラ政府は、チャベス大統領がキューバ滞在中、国営放送局の特別番組を通じて、チャベス
大統領が家族と散歩する映像を放映する等、順調に回復していることをアピール。キューバを訪問
したコロンビアのサントス大統領との会談の様子も放映された 2 。
3 月 16 日、チャベス大統領はラウール・カストロ国家評議会議長にハバナ空港で見送られて、21 日
ぶりにベネズエラへ帰国。帰国後に 30 分間の演説を行い、「10 月 7 日の次期大統領選挙に必ず
勝利する」と宣言し、出馬断念との観測を否定。また、キューバ滞在中も職務を遂行したことを強調
した 3 。しかし、演説では手術の詳細は明らかにされず、チャベス大統領の病状悪化により投票日が
延期されるとの観測も聞かれるなか、与党PSUVは、次期大統領選挙は予定どおり 10 月 7 日に実
施されると発表した。
3 月 24 日、チャベス大統領は腫瘍摘出手術後の放射線治療を受けるためキューバを再訪問。1 回
目の治療セッションが 3 月 29 日に終了し、ベネズエラに一時帰国するも、その 2 日後の 3 月 31 日
には 2 回目の治療セッションを受けるために再びキューバへ出発した。チャベス大統領は少なくとも
計 5 回の治療セッションを受ける必要があるとされており、治療が長引けば選挙活動への影響が懸
念される。
世論調査では、チャベス大統領が依然として優勢を維持しているが、癌の再発が不安材料となって
おり、後継者議論 4 が再燃している。アナリストは、仮にチャベス大統領が出馬を断念し、代替候補
が擁立された場合、野党カプリレス候補(ミランダ州知事)が有利になるとの見解を示唆。ベネズエ
ラで初めて予備選挙により、野党統一候補に選出されたカプリレス氏への注目度は高く、チャベス
大統領が順調に回復したとしても、接戦となるとの見方が強い。
1
チャベス大統領は、昨年 6 月 8 日~7 月 4 日にキューバ滞在した際、2 度の摘出手術を受けており、今回が 3 度目の
手術。
2
サントス大統領は、キューバの米州首脳会議への参加問題について話し合うために、キューバを訪問。
3
アナリストは、チャベス大統領がベネズエラを長期不在となったにもかかわらず、大統領権限を Jaua 副大統領に委
ねなかったことについて、大統領選挙を見据えて「一時も政権を離れていない」ことを強調するためだったと指摘。
4
主要後継者候補は以下のとおり。Nicolas Maduro Moros: 49 歳、現外務大臣、元国会議長。Elias Jaua Milano: 42 歳、
現副大統領、元経済大臣、元農業大臣。Adan Chavez Farias: 58 歳、現Barinas州知事、チャベス大統領の兄。Diosdado
Cabello Rondon: 48 歳、現国会議長、元Miranda州知事、元公共事業大臣。Henry Rangel Silva: 51 歳、現防衛大臣、ベ
ネズエラ軍の最高指揮官の一人。Rafael Ramírez Carreño: 現エネルギー大臣、PDVSA総裁。
1
2.
野党選挙活動に対する犯罪が多発
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3.
与党PSUV、政府批判のMonagas州Briceno知事を党から追放

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4.
3 月 19 日、チャベス大統領は、政府警察がカプリレス候補に対する殺害計画を摘発したと発表。全
てのベネズエラ国民に安全を提供することは政府の任務とし、ベネズエラ諜報当局が既にカプリレ
ス陣営へ情報提供をしたとコメント。また、政府関係者の殺害計画への関与を否定した。これに対し
て、カプリレス陣営は、政府側から情報提供は受けていないとし、情報の開示を要求 5 。また、殺害
計画は犯罪であるとして、検察庁にケースを提出するよう求めた。
3 月 4 日には、カプリレス陣営によるカラカス市内での選挙活動中に、選挙活動に参加していた野
党議員の息子が、チャベス派とみられる暴力グループに銃撃され怪我をする事件が発生。政府は、
事件の捜査を約束するも、進展はみられていない。
アナリストは、野党選挙活動に対する犯罪行為を抑制することは政府にとって重要な課題であり、
今後も事件が多発するようであれば、大統領選挙に向けチャベス政権の懸念材料になると指摘して
いる。
3 月 15 日、与党PSUVは、PDVSAの原油流出事故において政府の対応を批判したMonagas州の
Briceno知事(PSUV党所属)に対して 6 、停職処分を下した。これに対して、Briceno州知事は、自身
の正当性を主張し、政府への批判を継続。
与党 PSUV は、与党内での対立が表面化するなか、Briceno 州知事を PSUV 党から除名することを
決定。チャベス大統領も PSUV の決定を支持した。2004 年から Monagas 州知事を務めている
Briceno 氏は、2010 年に同州選出の議員となった Cabello 氏(PSUV 副代表、国会議長)と、同州の
統治権限を巡って、これまでも内部対立していた。
アナリストは、Briceno州知事が与党PSUVを追放されたことで、Briceno知事の支持者がカプリレス
野党候補の支持に回る可能性があると指摘 7 。治療中のチャベス大統領は、国営放送局を通じて、
Monagas州の与党支持者に結束を高めるよう求めた。
地場調査会社、3 月時点の大統領選挙の支持率の調査結果を発表
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
ベネズエラの地場調査会社各社が 3 月に発表した大統領選挙の支持率の調査結果によると、いず
れもチャベス大統領がカプリレス野党候補に対し優勢を維持している。
ベネズエラで最も信頼の高い地場調査会社とされる Datanálisis によると、チャベス大統領とカプリレ
ス候補の支持率はともに前月から低下、一方で「どちらに投票するか決めていない」(未決定)との
回答が大幅に上昇した。今後は未決定の票をどのように取り込むかが課題になるとしており、チャ
ベス大統領の勝利は確実ではないとの見解を示している。
地場調査会社 Consultores 21 においては、チャベス大統領の支持率が 46%に対し、カプリレス候
補が 45%との結果を発表。同社の調査は野党寄りであるとの批判は聞かれるものの、実質引き分
5
ベネズエラ政府は、犯人の情報を明らかにしていない。
Briceno 州知事は、政府が飲料用水処理施設を早期に再稼動することに対して、汚染水が混入していることを理由に
反対。
7
Monagas 州での Briceno 氏に対する支持は厚く、2008 年に実施された地方選挙では、得票率 64.86%と他候補を圧倒
して Monagas 州知事に再選。選挙管理委員会(CNE)によると、Monagas 州の有権者数は 2012 年 2 月時点で 55.2 万
人。
6
2
けになるとの調査結果が公表され、大統領選挙が接戦になるとの見方は主流になっている。地場調
査会社各社が 3 月に発表した支持率の調査結果は、下記のとおり:
地場調査会社
3 月の各地場調査会社による大統領選挙の支持率
チャベス大統領
カプリレス候補
未決定
支持率
支持率
Datanálisis
44.7%
31.4%
25.0%
Consultores 21
46.0%
45.0%
9.0%
GIS XXI
54.8%
22.2%
18.0%
Consultores 30-11
57.0%
27.4%
9.8%
Hinterlaces
52.0%
34.0%
N/A
IVAD
56.5%
26.6%
N/A
調査実施期間
2 月 29 日~
3月7日
3 月 6 日~
3 月 13 日
2 月 29 日~
3月5日
3 月 25~
3 月 28 日
2 月 24 日~
3月1日
3 月 6 日~
3 月 12 日
出所:各地場調査会社、各報道等
II.
1.
外交
シリアへの燃料提供で、米国政府による懲罰的措置の可能性も




ベネズエラ政府が国際的制裁を受けているシリア政府に対し燃料を提供している問題について、ア
ナリストは、米国政府がベネズエラ政府に対して懲罰的措置をとる可能性があると指摘。人道的支
援として燃料等をシリアへ輸送することは懲罰対象とはならないが、米財務省がブラックリストに指
定するシリア国営企業Sytrolと取引を行っていることが疑われている 8 。
シリア政府がベネズエラからディーゼル燃料を受け取っていることは確認されており、PDVSA は仲
介企業を通じて Sytrol と取引を行っているとみられる。この不正取引が確認されれば、米国政府は
PDVSA の米金融機関へのアクセスを制限する等の制裁をとる可能性もあるとの指摘もある。
ただ、米国にとってベネズエラは主要な原油輸入先(全体の 8%)のひとつであり、国内のガソリン
価格が 1 ガロン 4 ドルの水準で高止まりするなか、対ベネズエラの制裁には踏み切れないのでは
ないかとの見方もある。
ラミレス・エネルギー大臣は、当該問題について「米国政府の制裁は怖くはない」とコメント、今後も
シリア政府が必要とすればディーゼル燃料の供給を継続すると強気な姿勢を示した。ベネズエラ政
府の強気姿勢の背景には、昨年、米国政府がPDVSAに対して部分的な経済制裁 9 を科したものの、
ベネズエラの米国向け原油輸出量に大きな影響は出なかったことが挙げられる。
8
米国政府によると、ブラックリストの企業と取引を行う海外企業は同じく制裁対象となり、シリアでは Sytrol の他
に、Syrian Petroleum Corp と Syrian Company for Oil Transport (SCOT)がブラックリストに載っている。
9
PDVSA がイランへ原油を輸出したことに対する制裁として、米政府契約への入札、米国輸出入銀行からの資金受理、
輸出ライセンスの取得が禁止された。
3
2.
ベネズエラ、キューバ不参加も米州首脳会議への参加を決定



III.
1.
4 月 14・15 日にコロンビア北部のカルタヘナで開催される米州首脳会議 10 へのキューバの参加を巡
って、「政治的・民主的改善がみられない」と反対を主張する米国と、ラテンアメリカの地域統合を訴
える米州ボリバル同盟(ALBA) 11 が対立。2 月に開催されたALBA首脳会議では、エクアドルのコレ
ア大統領が、キューバが招待されない場合は、ALBA全体で米州首脳会議への参加をボイコットす
るべきとの強硬姿勢をみせた。
3 月 7 日、議長国コロンビアのサントス大統領は、問題を解決するために直接キューバを訪問、ラウ
ル・カストロ国家評議会議長とキューバで静養中のチャベス大統領と会談した。会談でサントス大統
領は、キューバ出席の可否は議長国の一存では決定できず、今回は参加国全体の合意を得ること
ができなかったと説明。これに対してカストロ議長は理解を示し、チャベス大統領もベネズエラの参
加を表明した。サントス大統領は、キューバの参加を巡っては、米州首脳会議で再度討論するとコメ
ントした。
一方、コレア大統領は強硬姿勢を崩さず、エクアドルは米州首脳会議に参加しないと正式に発表。
キューバが参加できなければ、今後もエクアドルの参加はないと主張した 12 。コロンビア外務省は、
エクアドルを除く 33 カ国全ての参加を確認、地域内の対立を回避したサントス大統領の外交力が
評価された。
石油その他の資源セクター
Chevronの融資を受けて、Petroboscanの原油生産量を拡大へ


PDVSAと米ChevronのJ/VであるPetroboscan 13 が、Chevron本社から 20 億ドルの融資を受けて、原
油生産量の拡大を目指すと関係筋が伝えた。Petroboscanでの原油生産量は、11.5 万バレル/日と
なる見込み。
2009 年以降、ベネズエラ西部では投資不足 14 により原油開発が遅れており、原油生産量が落ち込
んでいる。ベネズエラ政府は、PDVSAとJ/Vで提携しているRepsol、BP、Shell、Petrobras等の民間
企業に対し、原油生産の開発プロジェクトへ融資を拡大するよう働き掛けており、140 億ドルの融資
受け入れを目指している。
10
キューバを除いた米州 34 カ国が地域統合や安全保障等について議論を交わす首脳会議。キューバは 1962 年に、米
国の圧力により米州 35 カ国が加盟する米州機構(OAS)から脱退した。
11
ALBA は、反米・左派的な中南米諸国 8 カ国が加盟する国際組織。加盟国は、アンティグア・バーブーダ、ボリビ
ア、キューバ、ドミニカ国、エクアドル、ニカラグア、セントビンセント・グレナディーン、ベネズエラ。
12
但し、コレア大統領は、友好国コロンビアに問題を引き起こす意図はなく、招待してくれたサントス大統領に感謝
するとコメント。
13
Petroboscan の出資比率は、PDVSA が 60%に対し、Chevron が 40%。
14
PDVSA が提携する J/V は 2009 年以降、PDVSA からの配当金支払の遅れにより、資金繰りに苦しんでいるほか、高
い税金が重くのしかかったこともあり、資金不足に陥っている。
4
2.
PDVSA、2009 年に国営化したWilproの資産を買収合意



3 月 24 日、PDVSA は、2009 年の国営化による補償額支払いの問題で、子会社の PDVSA Gas が
米 Wilpro El Furrial と Wilpro PIGAP II の資産を 4.2 億ドルで買取ることで合意したと発表。PDVSA
は、買収額のうち 40%を現金で支払い、残りは今後 4 年間で均等払いする。
Wilpro事業の親会社であるWilliams(本社:オクラホマ州)とExterran(本社:テキサス州)は、投資紛
争解決国際センター(ICSID)への提訴手続き 15 を撤回し、PDVSAとの資産接収にかかる補償額の
問題が解決へ向かった。
今回の合意により、ベネズエラ政府が補償額支払い問題を友好的に解決する意思があることが示
された。
以上
15
Williams と Exterran が ICSID へ提示していた補償額は 12 億ドル。
本レポートは発表時の最新情報に基づいて作成されておりますが、情報の正確性又は完全性を保証するものではあり
ません。また、レポートの内容は今後予告なしに変更されることがあります。予めご了承下さい。
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