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表面マイクロ波を用いた信号と電力の同時伝送法 - Shinoda
社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE 表面マイクロ波を用いた信号と電力の同時伝送法 板井 裕人 1 張 兵2 篠田 裕之 3 株式会社セルクロス 〒113-8656 東京都文京区弥生 2-11-16-9-722 独立行政法人情報通信研究機構 〒619-0289 京都府相楽郡精華町光台 3-5 1 2 3 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻 〒113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1 E-mail: 1 [email protected], 2 [email protected], 3 [email protected] あらまし 多数のユビキタスセンサを実装するための新しい物理層として,近年二次元通信が提案されている. 導電体-絶縁体-導電性メッシュの 3 層構造をもつ表面に素子が近接し,表面を伝搬するマイクロ波によって信号 伝送を行う.本研究では,このような表面に近接し,高効率のマイクロ波電力取得を行う電極アレイを提案し,実 験的検証を行った. キーワード ユビキタスセンサ,センサネットワーク,二次元通信,マイクロ波電力伝送 Method of Simultaneous Signal-Power Transmission Using Surface Microwave Hiroto ITAI 1, Bing ZHANG 2, and Hiroyuki SHINODA 3 1 Cellcross Corporation, 2-11-16 Yayoi, Bunkyo-ku, Tokyo, 113-8656 Japan 2 National Institute of Information and Communication Technology, 3-5 Hikaridai, Seika-cho, Soraku-gun, Kyoto, 619-0289 Japan 3 Graduate School of Information Science and Technology, The University of Tokyo, 7-3-1, Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo, 113-0033, Japan 1 E-mail: [email protected], 2 [email protected], 3 [email protected] Abstract Two Dimensional Communication is a new physical form of communication that enables us to mount many ubiquitous devices in rooms and on clothes. The devices transmit/receive signals by microwaves traveling along the table or floor surfaces that have a simple three layer structure. The three layers are composed of a conductive sheet, an insulating sheet, and a conductive mesh. In this paper, we propose electrode array to absorb microwave power from the three-layer sheet and confirm the efficiency by experiments. Keyword Ubiquitous sensor, sensor network, two dimensional communication, microwave power transmission 1. はじめに が提案されている.この技術は,導電体-絶縁体-導 ユビキタス社会の進展に伴い,身の回りの多くの機 電性メッシュの3層からなる二次元通信シート上に置 器や物がネットワークに接続され,便利に活用される かれたセンサ素子に対してマイクロ波を用いて電力を ようになってきている.中でも分布するセンサ間を 供給し,同時に情報通信も行なうものである. ネットワーク化したものは,センサネットワークと呼 本研究では,このような二次元通信シートの表面に ばれ,集中型の計測装置では得られない緻密な分布情 近接し,高効率のマイクロ波電力取得を行う電極アレ 報 を 得 る 方 法 と し て 期 待 さ れ て い る [1].こ の 実 現 方 法 イを提案し,実験的検証を行った.また情報通信用の としてこれまでは,センサノード間を一つずつ配線で コネクタについても新規な構造のものを提案した. 繋ぐか,無線で繋ぐことが想定されてきた.しかし情 報を授受するセンサノードの数が増えるにつれ,配線 は室内の美観や機能を損なう厄介者となる.一方無線 2. 二次元通信近接コネクション マイクロ波を用いた二次元通信の物理形態として, を用いた場合には,各端末への電力供給や,混信が問 文 献 [2]で は 4 種 類 の 方 法 が 示 さ れ て い る .本 論 文 で は 題となることが指摘され始めている. それらのうちで,導電体-絶縁体-導電メッシュから こ の 解 決 方 法 の ひ と つ と し て ,近 年 ,二 次 元 通 信 [2] なる3層構造の二次元通信シートを用いることを前提 とする.その場合,二次元通信シート上に配置したセ 力供給装置から信号用近接コネクタ(信号伝送用コネ ンサ素子は,通信シートに対して非接触で電磁波の授 ク タ と 共 通 の 構 造 の も の を 用 い る ) を 介 し て 2.4 GHz 受を行い,情報通信や電力供給を実現できる.このよ 帯のマイクロ波を二次元通信シートに放射し,二次元 うな近接結合を実現する方法としては,これまでに文 通信シート上に置かれた電力取得用電極アレイにより 献 [3]に 示 さ れ る よ う な デ バ イ ス が 提 案 さ れ て い る .こ マイクロ波電力を取得する.このようにして得られた の コ ネ ク タ は ,単 体 で フ リ ス の 伝 送 効 率 限 界 [2]に 近 い 電力を用いて二次元通信シート上に置かれたスピーカ, 電力伝送を実現するが,それらを複数配置して電力吸 キ ー ボ ー ド ,マ ウ ス を 駆 動 す る .ま た ,PC と 接 続 さ れ 収量を拡張するために適した構造とはなっていなかっ た 信 号 用 近 接 コ ネ ク タ を 介 し て 2.4 GHz 帯 の 信 号 の 授 た.そこで本研究では電力供給に目的を限定したアレ 受 を 行 い ,ス ピ ー カ か ら の 音 声 信 号 出 力 ,キ ー ボ ー ド , イ型の近接コネクタ(電力取得用電極アレイ)を提案 マ ウ ス を 用 い た PC 操 作 を 行 な う . Bluetooth 機 器 を 流 し,試作を行なった.アレイの個々のユニットが吸収 用した試作システムにおいて,これらが良好に動作す す る 電 力 量 は 文 献 [3]の も の に 比 べ て 小 さ い が ,そ れ ら ることが確認された.以下では,本システムを構成す の出力を整流後加算することで,アレイの大きさに応 る各要素について述べる. じた電力を安定に取得することができる. ま た , 文 献 [3]に お い て は , 18 cm 角 の 通 信 シ ー ト に おける基礎実験結果が示されていたのみであったが, 2.2. 二次元通信におけるマイクロ波伝送媒体 本研究では,マイクロ波伝送媒体として,導電体- 本 研 究 で は 卓 上 を 覆 う 200 mm× 600 mm の 通 信 シ ー 絶縁体-導電メッシュの 3 層構造からなる二次元通信 ト が 試 作 さ れ て い る .さ ら に 文 献 [3]の も の に 比 べ て 厚 シートを用いる.図 2 に実験で使用した二次元通信 みの薄い信号用近接コネクタが設計・試作されている シートを示す.誘電体を均一良導体とメッシュ構造の ので,それらの構造,実験結果もあわせて報告する. 良 導 体 と で 挟 ん だ 構 造 を し て お り , 縦 横 が 2000 mm× 通 信 用 近 接 コネクタ 電力供給装置 600 mm, 厚 さ は 2 mm で あ る . ま た メ ッ シ ュ 構 造 の 周 PC スピーカ 期 は 7 mm,メ ッ シ ュ 線 幅 は 1 mm,誘 電 体 に は ポ リ マ ー の発泡体を用いている. キー ボード マウス 二 次 元 通 信シ ート (a) 実 験 シ ス テ ム の 概 観 (a) 二 次 元 通 信 シ ー ト の 全 景 導電体 (b) 実 験 シ ス テ ム 構 成 絶縁体 (b) 二 次 元 通 信 シ ー ト の 断 面 上面 底面 (c)ス ピ ー カ 用 に 試 作 し た 電 力 取 得 用 電 極 ア レ イ と 信号用近接コネクタ 図 1 実験システム 2.1. 二 次 元 通 信 における信 号 と電 力 の同 時 伝 送 実験システム構成 本 研 究 に お け る 実 証 実 験 シ ス テ ム を 図 1に 示 す . 電 図 2 二次元通信シートの概観 2.3. 信号用近接コネクタ 今 回 の 実 験 で は , 無 線 LAN で 使 用 さ れ て い る 2.4 GHz 帯 で の 使 用 を 前 提 に 信 号 用 近 接 コ ネ ク タ を 試 作 し た .こ の コ ネ ク タ は ,信 号 の 送 受 信 だ け で な く 通 信 シ ー ト へ の 電 力 供 給 に も 用 い ら れ る . 図 3に 信 号 用 近 接 コ ネ ク タ の 構 造 お よ び 写 真 を 示 す . 本 実 験 で は , a = 60 mm,b = 40 mm,c = 3.2 mm と し た .図 4 に 二 次 元 通 本 実 験 で は ,2 cm 角 の 電 極 を ア レ イ 状 に 複 数 配 置 し 信シート上での信号用近接コネクタのリターンロスと た .2 つ の 電 極 間 に 整 流 回 路 を 接 続 し た も の を 1 ユ ニ ッ VSWR を 示 す . ト と す る .そ の ユ ニ ッ ト を 複 数 並 列 接 続 し ,図 5 に 示 す よ う な 5×5 の 電 極 ア レ イ を 試 作 し た .電 極 ア レ イ の 出力端子に抵抗を接続し,両端に発生する電圧を測定 し て 抵 抗 で 消 費 さ れ る 電 力 を 計 算 し た と こ ろ , 図 6の よ う な 結 果 が 得 ら れ た .こ の 結 果 か ら 10W の 供 給 電 力 に 対 し て 最 大 216mW を 取 得 で き る こ と が 分 か っ た . こ こ で , 図 6に お け る 測 定 は , 電 力 供 給 用 近 接 コ ネ ク タ と 電 力 取 得 用 電 極 ア レ イ を 40cm 離 し た 位 置 で 行 っ た. (a) 上 面 図 (b) 底 面 図 (a) 電 極 ア レ イ の 上 面 図 5 (c) 断 面 図 (b) 電 極 ア レ イ の 底 面 試作した電力取得用電極アレイ 250 (d) 試 作 し た 近 接 コ ネ ク タ (e) 試 作 し た 近 接 コ ネ ク タ の上面 の底面 図 3 試作した信号用近接コネクタ 消費電力 [mW] 200 150 100 50 0 0 500 1000 1500 抵抗値 [Ω] 図 6 電力取得電極アレイでの消費電力と 負荷抵抗値の関係 3. おわりに (a) リ タ ー ン ロ ス 図 4 (b) VSWR 信号用近接コネクタの特性 2.4. 電力取得用電極アレイ これまでにも二次元通信を用いた電力伝送が検討 さ れ て い る が [3],先 行 研 究 に お い て は 電 力 供 給 側 も 電 力取得側も同一構造の共振型近接コネクタが用いられ ていた.一方,本研究で提案を行う電力取得用電極ア レイは,特定の周波数において共振を起こさない非共 振型の近接コネクタを多数配列したものである.各ア レイからの電力は整流後に加算され、全体として多く の電力を得る. 本 研 究 で は 二 次 元 通 信 シ ー ト の 表 面 に 近 接 し ,信 号 伝 送を行うための信号用近接コネクタと,高効率のマイ クロ波電力取得を行う電極アレイを提案し,実験的検 証 を 行 っ た .2000 mm×600 mm の 通 信 シ ー ト に 対 し て 10 W を 投 入 し た 実 験 に お い て , 今 回 試 作 し た 電 極 ア レ イ で は , 最 大 216 mW の 消 費 電 力 が 取 得 で き る こ と が明らかになった. 本 研 究 で は 各 電 極 の 一 辺 を 2 cm 角 と し て 試 作 を 行 っ たが,電極サイズを変化させることによる取得電力の 変化を確認することは今後の課題である. 文 献 [1] 安 藤 繁 , 田 村 陽 介 , 戸 辺 義 人 , 南 正 輝 ,“ セ ン サ ネ ッ ト ワ ー ク 技 術 ”, 東 京 電 機 大 学 出 版 , 2005 [2] 篠 田 裕 之 ,“ 素 材 表 面 に 形 成 す る 高 速 セ ン サ ネ ッ ト ワ ー ク ”,計 測 と 制 御 ,vol.46,no.2,pp.98-103, 2007 [3] Naoshi Yamahira, Yasutoshi Makino, Hiroto Itai and Hiroyuki Shinoda, “ Proximity Connection in Two-Dimensional Signal Transmission ” , Proc. SICE-ICASE Int. Joint Conf. 2006, Oct., Busan, Korea, pp.2735-2740, 2006.