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<きのこ> キノコバエの生態と防除

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<きのこ> キノコバエの生態と防除
<きのこ>
[作物別技術情報9月]
秋の訪れとともに本格的なきのこシーズンを迎えます。
今月は、最近特に増加傾向にあるキノコバエ(害虫)の生態や防止対策と異物混入防止対策のポイ
ントを紹介します。
キノコバエの生態と防除
一般にキノコバエと総称されていますが、きのこ栽培に被害
を及ぼすハエには、クロバネキノコバエ科(ツクリタケクロバ
ネキノコバエ、チバクロバネキノコバエ、チビクロバネキノコ
バエ)
、タマバエ科(スペイヤーキノコバエ)
、キノコバエ科(ト
ビモンナミキノコバエ、イシハラナミキノコバエ)など、多く
の種類が知られています。これらのハエの仲間は、栽培室に侵
クロバネキノコバエ科の種類
入して菌床に産卵し、孵化した幼虫が子実体(きのこ)や菌糸を食すとともに、害菌汚染を引き起こ
します。また、万が一 子実体中の幼虫に気づかずに出荷した場合には、消費者の信用を損なうこと
につながります。
近年は冬季の温度が高めに推移することが多く生息期間が拡大していることから、被害が増加傾向
にあります。また、ブナシメジ等、栽培中に光照射を行う種類では、室外へ漏れる光に誘われて侵入
することもあります。
キノコバエの体長は種類によって異なりますが、クロバネキノコバエ科の種類では成虫の体長が3
~4mm程度と非常に小さいため、キャップの隙間から侵入することができます。
卵~幼虫~成虫に至るまでの一世代は、条件が良ければ20日前後と短く、ブナシメジなど培養期
間の長いきのこでは、発見が遅れ世代交代が繰り返されると、大量発生・大被害につながる恐れがあ
ります。
キノコバエは、ドアの開閉の他、栽培室に生じた隙間、菌かき作業などの機会を通じて侵入すると
考えられます。ドアの開閉や菌かきは、きのこ栽培を行う上で欠くことのできない管理であるため、
栽培室への侵入を防ぐためには、まずは施設内への侵入を阻止することが重要となります。具体的な
侵入防止対策としては、侵入する恐れのある箇所を網目の細かいネット(寒冷紗)で覆う方法や施設の
入口に粘着シートを設置する方法などが考えられます。光が漏れる箇所では特に注意が必要です。
また、施設内や施設周辺を清潔にするとともに、廃培
地を速やかに処分して、できるだけキノコバエの餌であ
る菌床やきのこを放置しないようにすることも重要で
す。
栽培室内に侵入してしまった場合には、辛抱強く成虫
の捕殺に努めます。近年は、光を利用して誘引するタイ
プの捕虫器が数多く市販されており、それらや粘着シー
トなどを組み合わせて、粘り強く成虫の密度を低下させ
通気口を覆って侵入防止を図る
ることが必要になります。捕虫器などを設置する場合は、キノコバエが生息しやすい場所、すなわち、
クーラーや換気扇の風が直接当たる場所を避け、やや低い位置に設置することが効果的です。
異物混入防止対策
きのこの商品クレームで最も多いのは「毛髪混入」です。日頃から安全・安心なきのこ生産に努力
していても「髪の毛1本」の混入できのこに対するイメージがダウンしてしまいます。消費者の目線
に立った的確な対応が必要です。作業者は生産工程を通じて清潔な作業服・靴を着用するほか、髪の
毛が落ちないように帽子をかぶるなど、きちんとした身支度で作業を行いましょう。
また、接種や掻き出しなど、作業によっては専用の作業服・靴を使用するとともに、粉塵や異物を
吸引しないようにマスクを着用する必要があります。こうした点は、安全・安心なきのこ生産ととも
に、害菌の発生防止にもつながります。
安全・安心に留意して生産したきのこは、消費者が安全・安心と感じてこそ意味がありますが、残
念ながら出荷物に対する消費者からのクレームは未だに後を絶ちません。クレームの大半は異物混入
によるもので、包装作業中に混入する場合と生育中にきのこへ付着する場合が考えられます。
包装作業を行う場合は、髪の毛の落下を防止するためヘアーネットや帽子を着用するとともに、作
業台を整理整頓し、虫が作業室に侵入しないようドアや窓の開閉に注意しましょう。
異物の中でもガラス片など「消費者に健康被害を及ぼす可能性がある危険な異物」の混入はあって
はならず、そのような異物混入を招く危険性がある事故は「重大事故」と位置付けられています。そ
れら「重大事故」の発生防止対策の主なポイントは以下のとおりです。
1 飛散リスクの小さい照明器具への更新
飛散防止型蛍光管及び飛散防止ケース、LED照明器具の導入 など
2 栽培照明破損防止のための事前点検
蛍光管の固定状況や器具の腐食等の確認、落下する危険性の点検 など
3 ドア・窓ガラス破損防止のための事前対策
ドアガラスへの飛散防止フィルムの貼付、ガラスの代わりに樹脂ボードを利用
落雪で窓ガラス破損の恐れが危惧される場合の対策 など
4 作業にともなう注意事項
高圧洗浄機(圧力水が出るために手元が狂い易い)
、ホウキなど柄の長い用具(接触し易い)
蛍光管の交換は原則としてきのこ栽培がないときに補助者といっしょに行う。
(きのこ栽培時に交換しなければならない場合は、きのこへ清潔なシートを被せて行う。
)
5 その他重大事故に関する注意事項
栽培室、荷造り室などに設置されている換気扇等の羽根が、老朽化により破損して飛び散るこ
とがある。古い機器については、錆・腐食の程度を確認し、早めに更新する。
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