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Title 和歌山県田辺湾でスジイルカの集団座礁 Author(s)
Title Author(s) Citation Issue Date 和歌山県田辺湾でスジイルカの集団座礁 山口, 一夫; 久保田, 信 南紀生物 (2013), 55(2): 141-141 2013-12 URL http://hdl.handle.net/2433/188348 Right © 南紀生物同好会 Type Article Textversion publisher Kyoto University 南紀生物, 5 5( 2 ) :1 41 .2 0 1 3 140 博 物 館 の 石 田 惣 氏,ならびに図作成にご、協力い ただい 認された。 本報告で確認された生息場所は,いずれも狭い範囲に た,いであ株式会社の田頭亮臣氏に厚くお礼申し上げる 。 和歌山県田辺湾でスジイルカの集団座礁 限定されており,生息個体数は少なかった。今川や勝間 引用文献 田川では,大規模な出水等により生息場所の消失も起こり うる状況と考えられた。また,大井川 港臨港南公園内水 路は 2009年に出来たばかりであり,今後も底質環境が 安定 して維持されるかどうかについては不明である 。 朝倉 彰 ・森上 山 口 一 夫 *・久保田信** 需. 2007:千葉県河口域のカニ類.海 4 ), 3 5 5 3 6 5 . 洋と生物, 29( KazuoYAMAGUCH IandS h i nKUBOTA:Masss t r a n d i n go fS t e n e l l acoeruleoal b ai nTanabeBay , 逸見泰久. 2012: ヒメヤマトオサガニ • i n 日本ベントス WakayamaP r e f e c t u r e, J a p a n 学会編.干潟の絶滅危倶動物図鑑一海岸ベントスの 分布記録について 本種の分布概要が初めて明らかにされた際の分布東限 0 1 2 . 東海大学出版会,神奈川. レッドデータブョ ツ ク , 2 伊藤寿茂・根本 車 .2 012:相模川河口域で観察された は和歌 山県であった(和田, 1 9 9 1) 。その後,上野 ( 2 0 0 7 ) カニ類一特にタイワンヒライソモドキ P t y c h o g n a t h u s により三重県から報告され,さらに今回は静岡県で確認さ i s h i iS AKAI, 1 9 3 9( モクズガニ科)の初記録とコメツ 7種が田辺市新文里港・新文里港から内之浦にかけての れた。 l o b o s a (DEHAAN, 1 8 3 5 ) (コメ キ ガ ニ Scopimerag 田辺湾奥の東側へ 7例,漂着 ・座 礁 ・迷入した (久保田 ・ 3 3), ツキガ ニ科)の再記録 一.神奈川自然誌資料, ( 012) 。 これらの記録中,集団座礁の例はな 山口・ 岸 田 , 2 静岡県での干潟生物相の既往調査記録としては,これ 0 0 7 ) や伊豆半島(田中ほか まで浜名湖 ( 西川・木村, 2 45-5 3 . t e n e l l ac o e r u l e o al baの い点今回,生きたスジイルカ S 2004;村瀬・柚原, 2012 ) の報告があるものの,これら 工藤孝浩・ 山田 陽治. 2000:三浦半島,江奈湾干潟にお の調査においてヒメヤマトオサガニは確認されていな けるハクセンシオマネキの出現.神奈川自然誌資料, い。一方,本調査でヒメヤマトオサガニが確認された 3ヶ ( 21 ),69-72. 所については底生生物相に関する既往の調査記録がない 村 瀬 敦宣 ・柚 原 1 9 9 2年 4月から 2012年 2月までの 20年間にクジラ類 剛. 2 012:伊豆半島南部大賀茂 川河 口 複数個体が次々と数時間の内に集団座礁し田辺湾ではこ のような現象の初例となったので報告する 。 2 0 1 3年 3月 1 4日午前 1 0時 過 ぎ 通 行 中 の ド ラ イ バー から「和歌山県田辺市新庄町滝内の内之浦に複数のイル (本調査では浜名湖流入河川で本種を確認しているが,西 干潟 における希少貝類フトヘナタリの生息状況.日 カが迷い込んでいる」との連絡が会社を通じて山口に入っ 川・ 木 村 ( 2 0 0 7 ) では浜名湖の中州のみで調査を実施し 本生物地理学会会報, 67 ,2 61-264 た。午前 1 0時半頃に現場に到着すると,岸から 2 0 3 0m ており,厳密には同一地点における調査記録ではない)。 これらのことから,ヒメヤマトオサガニが徐々に分布東 西川輝昭・木村妙子. 2007:浜名湖 (いかり瀬干潟).i n 飯島明子編.第 7回自然環境保全基礎調査浅海域生 沖合付近を 1個体のイルカが遊泳していた。 そのイルカ は だ ん だ ん と 接 岸 し 岸 か ら 数 mの所まで来てくるくる 限を拡大させてきたのか,あるいは,かねてから静岡 7 6 0 . 環境省自 態系調査(干潟調査)業務報告書, 5 と回り始め,午前 1 1時前に新川河口近くの浅瀬で座礁した。 県内に小規模に分布していたにもかかわらず;それらの 然環境局生物多様性センタ ー , 富士吉田. このスジイルカは何度もひれをばたつかせた杭この 生息地が未調査で、あったために確認されていなかったの かについて,本調査結果のみから断定することはでき ない。 その一方で,本州太平洋沿岸におけるカニ類の分布に 関する近年の報告をみると, トゲアシヒライソガニモド a r a p y x i d o g n a t h u sd e i αn i r a (DEMAN), タイワンヒラ キP t y c h o g n a t h u si s h i iS A K A I, シ オ マ ネ キ Ucα イソモドキ P αr c u a t a( DEHAAN ),ハクセンシオマネキ Ucal a c t e a( DE 田中宏典・柴垣和弘・池津広 美 ・金津礼雄・和田恵次. 2004:伊豆半 島 青野川で出現したシオマネキ類 2 )0 1 1時 1 5分頃,大きく水 しぶきを上げて暴れ た( 図1 種について日本ベントス学会誌, 59,8 -12. た後,体を斜めにしてくちばしを海中につけたまま動か 上 野 淳一.2007:三重 県 未 記 録 種 ヒ メ ヤ マ ト オ サ ガ ニ なくなった。 その直後に田辺市職員がウエットスーツを着 Macrophthal l 1 1u sb a n z a iな ら び に 熊 野 灘 沿 岸 河 口 域 て到着しそのイルカに近づき,座礁後約 30分を経過し に生息するカニ類数種. 三重動物学会会報, ( 30),4 1時半頃,死亡を確認した。 その直後に県職員が体を た1 -5 . 調べ, WADA,K .1 9 7 8 :Twof o r m so fM αc r o p h t h a l l 1 1u sj a p o n i c u s HAAN) とい った,かつて紀伊半島以西が分布域とされて DEHAAN ( C r u s t a c e a :B r a c h y u r a ) .Publ .S e t oMar いた多くの沿岸性のカニ類が,伊豆半島から房総半島な B i o. lL a b . .2 4 .327 3 4 0 . どの, より東側の地域において新たに確認される 事例 が 相次いでいる(工藤 ・山 田 , 2000;田中ほか, 2004;朝 和田恵次. 1 9 9 1:ヤマトオサガニ同胞種 2種の生物地理. 3( 6 ),4 4 2 4 4 7 . 海洋と生物, 1 1 全長約 2 . 5mで 歯 が ぼ ろ ぼ ろ な の で 老 体 と み ら れ,老衰の可能性もある」とのことで、あった。 「イルカ 3個体が打 ち上がっている」との連絡が会社を通じて山口に入った。 椿 で の l例 1個体の記録がある(岸田・田名瀬 ・久保田, それらはいずれもスジイルカの新鮮な個体ばかりで(図 2005) 。 一一一一一. 1 996:7) 節足動物 • i n花輪伸 一 ・佐久間 浩 まえると,ヒメヤマトオサガニついても分布東限が拡大 子編. 日本における干潟海岸 と そ こ に 生 息 す る 底 員の調べ では, した結果,新たに静岡県で生息する ようになった可能性 a p a nサイエンスレポート, 生生物の現状.WWFJ まだ若いj とのことであった。 これら計 4個体のスジイ が高いものと推察される。 3,74 7 9 . (財)世界自然保護基金 日本委員会,東京 ルカの死体は田辺市がごみとして処理した。 三重県におけるヒメヤマトオサガニの文献情報をお 教えいただいた元東海大学大学院海洋学研究科の上野淳 一氏,標本の登録 ・管理にご協力頂いた大阪市立自然史 図 3 和歌山県みなべ町埴田の二子の浜で 座礁したスジイルカ 続いて 同 日の午後 2時半頃,上記地点より南西方向に 約 200m離れたローソン前の海岸に 倉 ・森上, 2007;伊藤・根本, 2 0 1 2 )。 これらの状況を踏 謝 辞 図1 ,2 和歌山県に所在する田辺湾の奥部 で座礁前後のスジイルカ 時は干潮時でもありその場所から脱出移動ができなかっ 2 ),上記の個体に引き続き死亡したと推察される。県職 引用文献 1 全長 2 . 3m が最長で,その中の 1個体は 岸田拓士・田名瀬英朋・久保田 信 2005:和歌山 t e n e l l a 県白浜町椿の海岸に漂着したスジイルカ S WADA,K. & SAKAI,K. 1989:A new species of なお,その 4日後,上記の場所から約 8kmほど離れ Macrophthal l 1 1ω closel yr e l a t e dt oM.j 旬o n i c u s( DE た み な べ町埴田の二子の浜に 1個体のスジイルカが死亡 HAAN) (Crustacea:Decapoda:Ocypodidae) 漂着した(図 3 )。 この個体も上記の集団の 一員かも しれ に最近の 20年間に漂着・座礁・迷入したクジラ類 ( 晴 S e n c k e n b e r g i a n aMari , . t 20,1 3 11 4 6 . ない。 なお,スジイルカの座礁は田辺湾近郊では白浜町 1 ),79-80 乳類).南紀生物, 54( c o e r u l e o a l b a .南紀生物, 48( 1 ) , 3 0 . 久保田 信 ・山口一夫 ・岸田拓士. 2 012:和歌山県田辺湾 〒6 46-8660和歌 山県田辺市秋津町 1 0 0 紀伊民報編集局報道部 日 干6 492 2 1 1 和歌 山県西牟婁郡白浜町 459 京都大学フィ ールド科学教育研究センタ一瀬戸臨海実験所