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科目「課題研究」におけるエアブラシ塗装の動画教材開発

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科目「課題研究」におけるエアブラシ塗装の動画教材開発
沖縄県立総合教育センター 前期長期研修員
第 52 集
研究集録
2012 年 9 月
〈マルチメディア・ネットワーク〉
科目「課題研究」におけるエアブラシ塗装の動画教材開発
-作品製作に主体的に取り組む態度の育成-
沖縄県立那覇工業高等学校教諭
Ⅰ
永
井
賢
■
テーマ設定の理由
高等学校学習指導要領では「基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して課題
を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむとともに,主体的に学習に取り
組む態度を養い,個性を生かす教育の充実に努めなければならない」*1 とある。また本県では平成 24 年1
月に示された学校教育における指導の努力点において「目標や目的・ねらいの達成に向けて考えを深める
指導方法等の工夫・改善を図るとともに,幼児児童生徒が課題を主体的に選択し,学ぶ意欲を向上させる
ことが必要である」*2 と明記され,課題に主体的に取り組む態度の育成を推進している。
今回の研究で対象となる生徒は,本校自動車科3年生で「課題研究」エアブラシ塗装班8名である。自
動車科の最終目標は国家資格の3級自動車整備士の資格取得であるが,整備士の“修理”という職種上,
展示作品となるものづくりに取り組む機会が少ない事から,実習内で作品製作に主体的に取り組む態度の
育成が課題であった。また,高等学校学習指導要領解説工業編の中では,
「PISA調査など各種の調査か
らは,我が国の児童生徒については,
(中略)読解力で成績分布の分散が拡大しており,その背景には家庭
での学習時間などの学習意欲,学習習慣,生活習慣に課題」*3 とされ,学習意欲の低下が示されている。
本校生徒も定期考査学力点の結果などから学習意欲の低下は否めないが,今回の研究対象生徒8名は学習
意欲が全く無い訳ではなく,特に学科の授業や実習には高い関心を持っている。しかし,これまでの作品
製作では,生徒は教師の指示通りに作業を行っており,作品製作に主体的に取り組むための指導の工夫が
不十分であった。そこで今回エアブラシ塗装を科目「課題研究」に取り入れ,生徒の高い関心が作品製作
に生かされるよう,指導の工夫に取り組むこととした。
一方,わかる授業を実現し,確かな学力を身につけさせ,生きる力を育成する教育を目指す今日,IC
Tを活用した授業の効果等の調査結果報告書によると「児童生徒の意識調査の結果を分析した結果からは
関心・意欲,知識・理解,思考・表現という観点で評価した学力がICT活用によって高くなっている」
*4
とされ,本県の学校教育における指導の努力点においても,ICTを活用した教育の情報化を推進する
ことが示されている。*2 エアブラシ塗装は3年実習で行われる自動車板金塗装と酷似した分野であるが,
細かく独自な作業や取扱いが多く,全国的にも学校や民間企業で取り扱う事業所は稀で,教育用教材とし
ての図書や視聴覚教材がほとんどないのが現状である。よって本研究においては「基本塗装方法」や「機
器の取扱い」から「応用塗装技術」までの動画を撮影し,生徒の学習の手引きおよび職員間の引き継ぎに
使用できる動画教材を製作する。生徒がこの動画教材を使用し自ら学ぶことで,作品製作に主体的に取り
組む態度が育成されることを目標に本テーマを設定した。
〈研究仮説〉
科目「課題研究」塗装班の実習においてエアブラシ塗装の動画教材を活用し,基本技術から作品製作ま
での技術を自ら学ぶことで,自分の取り組むべき技術的課題が明確になり,自ら課題を見つけ,作品製作
に主体的に取り組む態度が育成されるであろう。
(引用文献)
*1
文部科学省 2009 『高等学校学習指導要領』
*2
沖縄県 2012 『学校教育における指導の努力点』
*3
文部科学省 2010 『高等学校学習指導要領解説工業編』
*4
コンピュータ教育開発センター 2008 『ICTを活用した授業の効果等の調査結果報告書』
Ⅱ
研究内容
1 器材準備
(1) 写真1:0.3mm ノズル塗装スプレーガン(以降ハンドピースとする)
(2) 写真2:エアコンプレッサ,ジョイント・配管,設定空気圧2kg/cm2
-1-
(3) 写真2:作業場,照明・カメラの配置
(4) 写真3:油性ラッカー塗料,ラッカーシンナー,ラッカークリア,硬化剤
(5) 写真4:塗料ボトルに各色(赤・青・黄・白・黒・緑)とシンナーを1:1で調合準備
写真1
ハンドピース
写真2 作業場
写真3
油性ラッカー塗料
写真4
塗料ボトル
2 教材製作のための技術習得
(1) 写真5:基本ストローク習得のための基礎練習
(2) 教材製作にかかる技術習得のための風景画練習
(3) 写真6:応用技術習得のためのデザインペイント練習
有名ペインターの絵をモチーフにアレンジ゙しています
写真5
基礎練習
写真6
デザインペイント練習
3 教材作成
(1) 塗装方法の動画撮影
ハンドピース器材の取り扱いから,塗料の種類や濃度の説明,塗装の失敗例や対処方法,基本塗
装技術や応用技術の紹介,
基本塗装技術の総まとめとなる風景画の塗装手順などを動画撮影した(写
真7・8)
。
(2) 動画教材制作
① 動画素材の編集(写真9)
動画編集ソフト(Adobe Premiere Pro CS5.5)を用い,映像を編集する際に留意した点。
ア 生徒に理解させたい重要な部分をテロップで説明書きを加えた。
イ 生徒が飽きないように不必要な部分をカットまたは倍速加工した。
ウ ノートパソコンでの使用を想定し,加工後の動画書き出しはWMV形式とした。
② 編集した動画をリンクさせた動画教材の作成(写真 10)
フリーソフト(HeTeMuLu Creator)を用いHTMLファイルを作成する際に留意した点。
ア 動画表示画面・メインメニュー画面・サブメニュー画面の3画面構成とした。
イ 動画表示・メイン・サブ画面の比率は動画が大きく見られるように8:1:1とした。
ウ 一度視聴したメニューはフォントカラーを変更し,区別できるようにした。
エ 動画教材の構成図は図1に示す。
メイン
サブ
動画表示画面
写真7
器材取扱い
写真8
基本塗装(曲線)
写真9
-2-
動画編集ソフト
写真 10 動画教材
メインメニュー
サブメニュー
作業場所
ハンドピース
コンプレッサ
器材
作業圧
水性塗料
エアホースとジョイント
塗料ボトル
塗料の種類
シンナー
薄すぎる塗料
塗料の濃度
塗料説明
濃すぎる塗料
うがいと色の交換
作業後の手入れ
ハンドピース分解
ハンドピース組立
ハンドピースの手入れ
トップページ
ニードルカバーの汚れ
ニードル先端の汚れ
ハンドピースの不具合
ノズルの詰り
基本塗装
風景画
カラー塗装基本
メインレバーの戻り不良
点
点(ズーム)
曲線
ジグザグ
境界
振りかけ
風景画
風景画 1.5 倍速
色光の3原色
色料の3原色
気泡
フラッシュ
いるか
和風柄
直線
跳ね
完 成
目
カラー塗装応用
図1
動画教材の構成図
4 実態調査アンケート
(1) 目的
アンケート調査によりエアブラシ塗装班生徒8名の実態を把握し,授業設計や研究仮説検証の基
礎資料とする。
(2) 対象および実施期日
沖縄県立那覇工業高等学校 自動車科3年3組 課題研究エアブラシ塗装班男子8名
平成 24 年5月8日(火)
-3-
(3) 結果と考察
課題研究への学習意欲を調べるため「エアブラシ塗
装の授業に興味はありますか」と質問した結果は図2
となり,この結果から生徒のエアブラシ塗装実習への
興味関心度はかなり高く,学習意欲も高いことが考察
できる。
次に課題研究授業も5回目に入り,現時点での課題
への主体的な取り組みについて考察するため「エアブ
ラシ塗装実習で最終的に描きたい作品は考えています
か」と質問した結果は図3となり。この問いで「考え
ている」と答えた生徒は1名のみで,ほとんどの生徒
が課題への主体性が乏しいことが考察できる。
さらに「エアブラシ塗装実習で具体的にやってみた
い事はありますか」と質問した結果は表1となり,具
体的な絵柄や塗装対象物を挙げた生徒は2名で,残り
6名は「色々な絵を描きたい」
「綺麗にできるようにす
る」や無回答であり,教師側から課題を与えてもらう
という受動的な態度が推察される回答であった。
これらの質問から大半の生徒が作品製作への主体的
な取り組みが乏しく,教師の指示通りにのみ行動し,
生徒の高い関心が主体的な行動や思考に生かされてい
ない現状が推察できた。よって検証授業では動画教材
を使用し,生徒の技術的課題が明確になるようにする
ことで,生徒の高い関心が作品製作に主体的に取り組
む態度に向かうように取り組むこととする。
Ⅲ
指導の実際
問 エアブラシの授業に興味はありますか
とてもある
6名
とてもある
少しある
図2
少しある
2名
あまりない
ぜんぜんない
事前アンケート結果1
問 最終的に描きたい作品は考えていますか
ほとんど
考えていない
4名
考えている
少し考えている
全く
考えていない
3名
ほとんど考えていない
全く考えていない
図3
事前アンケート結果2
表1
事前アンケート結果3
問 塗装実習でやってみたい事はありますか
ヘルメットに塗装する
龍を描いてみたい
色々な絵を描きたい
私物を自分でできるようになりたい
綺麗にできるようにする
ある
考えていない
ない
1 検証授業
(1) 実施日時:平成24年7月10日 4~6校時
(2) 対象学科:沖縄県立那覇工業高等学校 自動車科 3年3組
(3) 対象授業:課題研究(エアブラシ塗装班 男子生徒8名)
2 単元目標
(1) 動画教材を視聴することで自分の技術的課題を把握し,塗料とシンナーの調合およびハンドピー
スの調整・管理を自ら行う。
(2) ワークシートにより基本ストローク習得し,風景画課題を製作する。
3 単元設定の理由
(1) 教材観
エアブラシ塗装実習を課題研究の授業で取り組み3か月になるが,今回の授業で初めて作品らし
い作品を創り上げる授業となる。フリーハンドで単一色の風景画を描くことを実習課題とするが,
フリーハンドで絵を描くには,塗装の基本ストロークが出来ていないと綺麗に描けない。検証授業
前に基本ストロークの動画教材で事前授業を一度行なってきたが,ほとんどの生徒がまだ基本スト
ロークをマスターしていない状況であった。基本ストロークには点・直線・曲線・ジグザグ・グラ
デーション・境界・振りかけ・跳ねの8種類あるが,今回課題として予定している風景画には,す
べてのストロークが含まれているので,基本技術の上達にはもっとも適しており,生徒自身も基本
ストロークの習得度を実感しやすい課題である。
基本ストロークおよび風景画の塗装方法を動画教材で学び,作業しながら動画教材を繰り返し確
認することで,基本ストロークの習得と風景画の完成を目指す。
(2) 生徒観
3年3組自動車科男子のみ 38 名のクラスである。クラス全体の雰囲気としては朝の遅刻やおしゃ
べりが絶えないが,明るく活気があり協調性のあるクラスである。そのうちエアブラシ塗装班の生
-4-
徒は8名であるが,事前アンケートではエアブラシ塗装への興味は高く,これまでの実習ではアン
ケート結果の通り熱心に実習に取り組んでいる。反面興味が薄れると極端に取り組みが鈍くなり,
やる気にムラが見られる。よって3時間の授業では,いかに興味を持続させ生徒が自ら技術的課題
を見つけ,製作に取り組めるかが課題である。そのためワークシートでは基本ストロークのみを行
い,その後の風景画製作は主体的に動画教材で学び,課題に取り組むよう授業を進める。
(3) 指導観
エアブラシ塗装は自動車板金塗装の応用であり,板金塗装については2年の自動車工学2で塗装
の基礎を学び,さらに半数の生徒が3年実習板金塗装で実技を体験している。しかし大半の生徒が
塗装について詳しく理解しておらず,塗装に関する知識の習得が十分ではない。事前アンケートに
おいても「塗装とはどういうものか説明できますか」の問いに「少しはできる:5名」
「ほとんど出
来ない:3名」と答えている。今回の研究テーマが「作品製作に主体的に取り組む態度の育成」で
あることから,教師の動きとしては極力基本的な技術指導にとどめ,生徒が作品製作に主体的に取
り組むよう動画教材により間接的にサポートする。
4 指導計画(1学期)
週
時
間
1
3
前年度の課題研究取り組み内容紹介
今年度の取り組み決定
昨年度の取り組みを紹介する。
希望アンケートをとる。
2
3
エアブラシ塗装の概要説明
インターネットによる調べ学習
自動車板金塗装との違いを調べる。
必要道具などについて調べる。
3
3
ハンドピースの構造説明,分解・整備
作業場の環境について
ハンドピースの手入れ方法を学ぶ
1名ずつ分解・整備を体験する。
怪我のないように
する。
4
3
塗装器具一式の設置・設営
作業空気圧の調整・水性塗料の取扱い
生徒自身で作業場を設置できるようにす
る。水性塗料の薄め具合を学ぶ
危険物の事前除去
5
3
水性塗料によるマスキングを使った
立体物の塗装(三角・四角・立方体)
マスキングの方法
課題以外も自由に
描かせる。
6
1
水性塗料によるマスキングを使った
立体物の塗装( 丸 )
グラデーションの方法
課題以外も自由に
描かせる。
7
3
塗料の種類・シンナーの取扱い
油性(ラッカー)塗料の取扱い
油性塗料の取扱いおよび危険性を学ぶ。
油性塗料試し塗り。
換気に十分注意す
る。
8
3
動画教材による
基本ストロークの学習
基本ストローク(点・直線・曲線・エッジ
・ジグザグ等)の学習
動画教材を事前に
準備する。
9
3
基本ストロークの練習(点・直線・曲
線・エッジ・ふりかけ)
基本ストロークの反復練習。
作品製作に向け反
復練習を行う
1
動画教材による基本ストロークの復習
(点・直線・曲線・エッジ)
基本ストロークをワークシートに従い塗
装する。
1
動画教材による風景画の練習
基本ストロークの重要性を再認識する。
1
風景画の仕上げ
仕上った生徒は次の応用技術を学ぶ
検証授業後のアンケートを実施
主体的に動画教材で学ぶことを目標とす
る。
3
風景画のクリア仕上げ
動画教材による応用技術の取り組み
クリア塗装の手順を学ぶ。応用技術(泡・ 夏休みに備え,十分
フラッシュ等)に取り組む。
に清掃する
10
11
学習内容
学習目標
-5-
備考
昨年の発表資料を
使用する。
作業中スクリーン
が見えるようにす
る。
生徒の自主性を重
視する。
5 本時の学習指導案
(1) 指導目標
動画教材で基本ストローク技術を再確認し,ワークシートにより基本ストロークの点・直線・曲
線・エッジ・シュートそれぞれを練習し,その技術の集大成となる風景画を動画教材を参考に仕上
げることで,主体的に課題に取り組む態度を育成する。
(2) 行動目標
ワークシート課題により基本ストロークを習得し,課題を自ら主体的に取り組むことができる。
(3) 下位行動目標
① ワークシート課題により基本ストロークを練習する。
②R 塗料とシンナーの調合割合による塗装の違いを再確認する。
③R 下地準備工程を再確認する。
④ 風景画製作を動画教材から学習し仕上げる。
(4) 形成関係図
G ← ④ ← ③R ← ②R ← ①
(5) 本時の評価規準
具体的な評価規準
評価項目
【関心・意欲・態度】
A
十分満足できる
B
おおむね満足できる
C
支援の具体的方法
課題製作を自ら考え行動
教師のアドバイスで行動
次の取り組みを,自ら考えさ
し,自らのアイディアをプ
せる問いかけをする。
することが出来る。
ア.課題製作に主体的に取
評価方法
行動観察
ラスして取り組んでいる。
組む態度が見られる。
課題を丁寧に仕上げ,未習
シンナーの調合を繰り返し
動画教材を活用し,技術的な
得の技術を動画教材を使
試し,課題を丁寧に描こう
課題を理解させ,興味関心を
用し自ら学んでいる。
としている。
引き出す。
【思考・判断・表現】
課題以外に自らのアイデ
課題通りであるが,動画教
必要な技術の動画教材を見
ウ.動画教材を観て,自ら
ィアでアレンジしたり,課
材を観て,本人の現在の技
せて,考えを引き出すような
ワークシート
題に取り組む。
術で丁寧に仕上げようとし
発問をする。
課題作成
イ.意欲的に課題に取り組
んでいる。
のアイディアや工夫で
取り組んでいる。
課題完成
行動観察
ている。
【技 能】
エ.基本ストロークを身に
付け,自由に塗装する
ことができる。
【知識・理解】
オ.塗料やハンドピースの
調整・管理,塗装の特
徴を理解している。
線のフェードイン・フェー
基本ストロークを完全には
課題に繰り返し取組ませる,
ワークシート
ドアウトが思い通りに描
身に付けてないが,課題を
もしくは,あえて応用技術に
行動観察
け,風景画を丁寧に描いて
丁寧に仕上げようと努力し
取り組ませ,基本技術の重要
課題完成
いる。
ている。
性に気付かせる。
塗料とシンナーを適切に
塗料とシンナーの調合は,
動画教材の塗料の濃度を視
調合でき,ハンドピースの
あまり上手く出来ていない
聴させることで,技術的課題
不具合も自ら対処できる。
が,調合を繰り返し試し塗
を理解させる。
行動観察
装している。
(6) 本時の展開(140分)
学習
展開
導入
20 分
生徒の活動
教師の活動
指導上の留意点
号令・出席確認
全体集合
元気よく挨拶
連絡事項・安全注意
静かに話を聞く
おしゃべりがあれば
工場へ移動
工場へ移動
注意する
項目
ア
本時の作業目標を発表
作業目標を工場に掲示
評価
作業目標を理解する
目標①:ワークシートの仕上げ
生徒の目の前で作業
目標を掲示する
目標②:風景画の仕上げ
課題を全て終了した生徒は,応用技術に
挑戦する
課題終了した生徒は,
応用技術に挑戦する
-6-
動画教材による基本ストロークを上映し, プロジェクタで映し出された
ワークシート(基本ストローク)の仕上げ
動画教材を全員で観てワーク
上映準備に時間をかけ
ない。
エ
オ
シートに取り組む(写真11)
展開1
30分
展開2
70分
まとめ
20分
留意点
基本ストロークの習得が出来ていない生
基本ストロークの習得が出来
基本ストロークが習得
徒は2枚目もしくは別紙に練習
ていない生徒は再度動画教材
できていない生徒への
で学習
対応。
ワークシート回収
ワークシート完成(図4)
風景画製作準備のための下地塗装を説明
下地処理の再確認
し,予め準備したボンデ板を使用するよう
風景画の視聴が終わっている
伝える。
生徒は風景画の製作に入る。
動画教材による風景画を上映する。
製作をしながら,動画教材での
プラサフ*を行う理由
を質問し再確認する。
油性塗料を扱うので目
のケガに十分注意する
応用技術の視聴および
イ
風景画をリピート再生し,生徒がいつでも
再学習。(写真12)
風景画への塗装は生徒
ウ
再確認できるようにする。
応用技術は白紙などに練習を
の自主的な取り組みを
風景画が仕上がった生徒は動画教材で次
行い,自信が持てたら応用塗装
促す。
の応用技術を学ぶ。
に取り組む。
作品の回収,次週の予告
作業の終了
次週は作品にクリア仕
事後アンケート配布
次週の確認
上げを行う。
片付け・ハンドピースの洗浄
アンケートの記入
の指示
片付け・ハンドピースの洗浄
自主的な片付けを
集合・号令終了
身なりを整え号令終了
促す。
ア
(1) 生徒の自主性を尊重し,展開予想以外の良い行動は認める。
(2) 生徒のアイディアを重視し,主体的に作品製作に取り組めるよう支援する。
*プライマー・サフェイサーの略,塗装素材(下地)と上塗との付着性を確保し,塗装面の細かな傷を埋
めて,滑らかに整える塗料である。
(7) 授業風景と生徒作品
写真 11 製作風景
基本ストロークが
未習得な生徒の作品
図4
写真 12 動画教材での学習
基本ストロークを
習得した生徒の作品
ワークシート生徒作品
6 仮説の検証
科目「課題研究」において,生徒が自ら考え自ら課題に取り組む事ができる動画教材を作成し,
授業を工夫したことで,作品製作に主体的に取り組む態度が育成できたかを事前事後のアンケート
や検証授業当日の感想から分析・検証する。
-7-
(1) 事前事後アンケート
問 提出課題の作成で塗料の調合など自分なりの工夫を施したか
検証授業前の実態調査と検証授業後に行った
C君
A君 B君
アンケートから仮説を検証する。
とても工夫した
検証
① 生徒の技術的課題への主体性を検証するた
2人
4人
2人
0
前
工夫した
め「提出課題の作成で塗料の調合など自分な
りの工夫を施したか」の質問結果を図5に表
少しだけ工夫した
す。検証授業前アンケートで「工夫したこと 検証 0
6人
2人
0
後
はない」と答えた生徒2名は検証授業後には
工夫したことはない
A君
B君 C君
「工夫した」と「少し工夫した」へ変化し,
0%
25%
50%
75%
100%
8名中7名が技術的課題への主体性が向上し
図5 事前事後アンケート①
たことが確認できた。
② 次に教材の有効性を検証するため,提出課
問 エアブラシ塗装実習で達成感を感じることはできたか
題への工夫が達成感に繋がったかを質問した
A君 B君 C君
結果を図6に表す。前問①の検証後で「工夫
とても感じた
検証
4人
4人
0
した」と答えた生徒6名はこの質問では「と 前 0
少し感じた
ても達成感を感じた」など上位に位置してい
る。さらに前問で変化のなかった生徒1名は
あまり感じられなかった
この問いでも1人だけ「あまり達成感を感じ 検証
1人
3人
4人
0
後
全く感じられなかった
られなかった」から変化が無いが,当該生徒
A君 B君
C君
は検証授業当日欠席している。
0%
25%
50%
75%
100%
この①と②アンケート分析から,検証授業
図6 事前事後アンケート②
当日に欠席した生徒は「工夫・達成感」共に
変化していないが,検証授業を受けた生徒7
問 描きたい「図柄」と「塗装対象物」は決まっているか
名はどちらも向上している。よって動画教材
A君
B君 C君
「図柄」と「対象物」は決
を使用することで技術的課題への主体性が向 検証
まっている。
1人
4人
3人
上し,達成感が得られたことが確認できた。 前
「図柄」もしくは「対象物」
のどちらかが決まっている。
③ 前問までに,技術的課題への主体性が向上
し達成感が得られたことが確認できたので,
「図柄」もしくは「対象物」
検証
は何となく決まっている。
1人
5人
2人
0
この変化が「作品製作に主体的に取り組む態 後
「図柄」も「対象物」も決
度の育成」に繋がっているかを分析する。ま
A君
B君 C君
まっていない。
ず課題に取り組む態度を調べるため「あなた
0%
25%
50%
75%
100%
がエアブラシ塗装で最終的に仕上げたい『図
図7 事前事後アンケート③
柄』と『塗装対象物』は決まっていますか」
の質問結果を図7に表す。検証前後の結果か
問 次回の実習で何に取り組めばよいか具体的に考えられるか
ら8名中6名の生徒が自ら取り組む課題を決
A君
B君 C君
何をするか明確に考えて
定していることが分かる。何を作りたいのか
いる。
検証
3人 0
4人
1人
決定できていない生徒も2名おり,このうち 前
考えてはいるが明確では
ない。
1名は検証授業を受けていない生徒である。
考えてはいるが,先生に
④ 次に作品製作に取り組む態度の意識の変容
指示もらいたい。
検証
を調べるため「次回の実習で何に取り組めば
4人
2人 2人 0
後
考えてはなく,先生に指
よいか具体的に考えられるか」の質問結果を
示もらいたい。
A君
B君 C君
図8に表す。この問いでも前問と同じく8名
0%
25%
50%
75%
100%
中6名の生徒に意識の変容が見られたが,2
図8 事前事後アンケート④
名の生徒には変化が見られなかった。
この③と④から8名中6名の生徒が,課題
を自ら考える姿勢が向上し,その取り組みを具体的に取り組むための意識の変容も表れているこ
とから,作品製作に主体的に取り組む態度が育成されたと分析できる。しかし,検証授業を受け
たが自己評価では変化が見られなかった生徒1名について,次の検証授業当日に行った記述式の
感想から変化を分析する。
-8-
(2) 検証授業当日の感想
検証授業直後に行った記述式のアンケートから,
「作品製作に主体的に取り組む態度」が育成され
たかを検証する。
① 検証授業の感想
A君
自分がどうやっていいかわからんくて,ビデオを見たらとても分かりやすくて良かった。
B君
人が沢山いていつもより上手に描こうと思ったけど基本技術ができなくて上手に描けなかった。もっ
と練習して上手になりたいと思った。
他生徒
難しい所とかもビデオを見ていると,なんとなくコツをつかめてきて,やりやすかった。
他生徒
基本のストロークがどこができてないかが分かった。
B君は上手に描けなかった「気づき」から次の技術的課題が生まれている。A君は動画教材に
より理解が深まっていることが分かる。これらの感想から動画教材を用いたことで,生徒が取り
組むべき技術的な課題が明確になり,次の目標が明確になっていることが分かる。
② これまでの自分,これからの自分
A君
先生に言われてからやってた。自分でやること探して行動する。
B君
あまり自分から練習しようとしていなかった。もっと技術を磨いて練習してもっと上手になりたい。
他生徒
何回も休憩して遊んだりしていた。今日の授業で楽しみを覚えたので上手くなって好きな絵を描ける
ようになりたい。
他生徒
自分から進んで行動してなかった。進んで練習をたくさんやって上手になりたいと思う。
B君はこれまでの自分が主体的に取り組もうとしていなかったことを記入し,今後の目標に自
ら取り組もうとする態度が記載されている。
B君は事前事後アンケートの③と④では変化が見られなかったが,これらの感想から,技術的
な「気づき」が与えられ「上手になりたい」という主体的に取り組む意識の変化があることが判
った。他生徒も同様に今後の目標が記載されていることから,B君を含めた7名の生徒が,作品
製作に主体的に取り組む態度が育成された。
Ⅳ
成果と課題
1 成果
(1) 科目「課題研究」エアブラシ塗装班において動画教材を用いることで,生徒が取り組むべき技術
的課題が明確になり,主体的に取り組む態度が育成された。
(2) 他の先生方も動画教材の使用に興味を持ってくれた。
(3) 動画教材を作成するための編集ソフト等に関する知識と技術の習得ができた。
2 課題
(1) 動画教材のコンテンツの追加と使いやすさを追求した教材の改良が必要。
(2) 主体的に取り組む態度が乏しかった生徒の分析と指導方法の改善が必要。
(3) 実習の項目として追加することができないか,学科内での検討が必要。
(4) 作品発表の場をどのように設けるか検討が必要。
〈主な参考文献〉
ジョアンボートルズ著 2009 『プロが教えるエアブラシペイントテクニック』 タッククリエイティブ
ボデーショップレポート編 2005 『カスタムペイントパラダイス』 リペアテック
マイケル・リーク著 1994 『エアブラシの技法百科』 ㈱グラフィック社
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