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少年非行を防ぐ家庭教育 - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ

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少年非行を防ぐ家庭教育 - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
少年非行を防ぐ家庭教育
Author(s)
水田, 善次郎
Citation
教育実践研究指導センター年報, No.3, pp.10-14; 1990
Issue Date
1990-02-28
URL
http://hdl.handle.net/10069/25864
Right
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http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
少年非行を防ぐ家庭教育
教育心理
水田善次郎
1.非行の実態
戦後日本の少年非行には,図1が示すように3つの波があるといわれる。第1の波は昭和26年
を頂点とするもので,戦後の混乱と貧困がその背景として考えられる。第2の波は昭和39年を頂
点とする比較的なだらかなものである。この時期の日本は経済的に急成長をとげ,管理社会・学
歴社会へと成熟していく大きな転機にあった。そこで,この新しい社会に適応し得ない,あるい
は適応することを快Lとしない者の反抗と攻撃性が非行の背景をなしていたように思われる。
現在は第3の波であり,その波は昭和58・59年をピークにし,わずかながら減少しつゝある。
その非行の特徴は,次に掲げる通りで,「一般化」してきているといえる。
① 今までになく高い波である。
② 年少少年が増加している。
③ 普通一般の少年少女である。(両親が揃っている家庭,経済的にも中流家庭,本人の資質も
図1主要刑法犯少年の人員及び人口比の推移(昭和24∼61年)
(警察庁少年課の資料による)
補 導 人 員
(注1)人口比とは、同年齢層の人口1,000人当たりの補導人員をいう。
(注2)主要刑法犯とは、刑法犯のうち凶悪犯(殺人、強盗、放火、強姦)、
粗暴犯(暴行、傷害、脅迫、恐喝)、窃盗、知能犯(詐欺、描領)
及び風俗犯(賭博、わいせつ)をいう。
補導人員
人口比
2
2
オイルショック
3
東京オリンピック
神武景気 岩戸景気 オリンピック景気
3
3
:
2
2
がまんさせる
耐えさせる教育
¥
2
7
2
:
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2
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:
2
2
2
2
3
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3
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3
3
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3
2
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2
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2
2
:
9
朝魚種嬉し
行政改革
第二次オイルショック
家庭内・校内暴力
与える教育
馳巳.矧ぎ国紛争
いじめ
女子の家出が男子を上回る
下段の資料は筆者が付加したもの
−10−
取りたてる問題がない)
④
凶悪犯,粗暴犯,暴力犯が大幅に減少し,非行の 8割が窃盗で,その 3分の lは万引きで
ある。
⑤ 共犯率が高い。しかし,技術・勇気を要するものは少ない。
したがって,的確な指導を加えることによって非行からの回復も早いとされている D
2.非行少年と家庭
このような子どもの非行を防止するためには,どのように対処すればよいのか。家庭,学校,
地域は非行の防波堤としての大きな役割が期待されている。そこで,ここでは家庭に焦点を合わ
せてみたい。
現代型非行では,家族の形態、や構造上の欠損もさることながら,家族機能に何らかの障害があ
る家庭から非行少年を出している例が多いといわれる。親子関係における親の養育態度に誤ちが
あり,また父母が相互に果たさなければならない役割の歯車がかみ合わず,有機的に機能してい
ない。このような状況の下で歪みがでていることが指摘できょう。
3.家庭を集団活動の場に
家庭は子どもにとって最初の集団活動の場である o ところが,現代は家族のメンバーがバラバ
ラで集団を成立させていない家庭が多いように思われる。家庭が本来の機能を発揮するには家庭
が集団を成立させなければならない。集団が成立するためには,① 2人以上の人がいること D 夫
婦 2人の聞に子どもが恵まれ
3人になり 4人になる。②それらの人々の間に一定の関係がある
こと。何十人いても,それらの人々の間に一定の関係がなければ烏合の衆と同じである。父や母
は子どもを愛し保護する。子どもは愛するあたたかい心に包まれる o また,子どもは成長するに
伴い,家庭の一員として何らかの役割を受け持つようになる D ③お互いに利益を得ていること。
親と子は共に成長するという利益を得る。つまり,親子共に明るく楽しい平和な家庭づくりの立
派な目的がある。
この 3つの条件が整ってはじめて,家族は集団となり,家族の一人ひとりが力を合わせて集団
の目的に向って動き出すのである。その結果,親子が一緒にやれて楽しかったとか,母の帰りが
遅かった時ごはんをたいてあげて感謝されたとか,勉強がはかどらずいらいらしていると父が私
の好きな野球の話をしてくれたとか,妹の運動会で夢中になって応援していたなど,家族を共有
快感覚,集団所属感,仲間意識,依存感を求められる場として体験するのである。このような,
頼れる場,支えるられる場をもつことによって子どもは外に向って飛び出し,友達と四つに組ん
だかかわりをもち,社交性,社会性を発達させていくのである o
4.男の子は男の,女の子は女のモデルを欲している
昔から「子は親の鏡」と言われている。「親に似ぬ子は鬼子」とも言われているが,子どもは親
-11-
に似ることによって性格を伸ばしていくものである。子が親に似る働きを「同一視」と言う。子
どもの健全な成長,健全な性格形成に親子関係ほど重大で決定的で共通的なものはないと思う o
したがって,不健全な子どもでも正しい親子関係を結び直すことによって救われるのである。
子どもが親を尊敬し,信頼し,親子関係が愛情をもって結ぼれている時には,子どもは自然に親
の態度,考え方,やり方を覚え,真似し,身につけていくものである。
現代は母性が肥大し,父性が萎縮した社会であり,そうした家庭の機能の中で人格形成を余儀
なくされているのである。
図 2のように,母性とは子どもをどこまでも
図 2 母性と父性の関係
保護し,愛し,許し,子どもの生命力をはぐく
み育てることである。父性とは子どもに善悪の
別を教え,理想、と方向を示し,行動と欲望を制
善悪の別、行動
と欲望を制御す
ることを教え
子
社ど
I.
.
.
. _.
. .I /
¥
(
'
会も
│苦痛や困難に出 I"
のは
│会ってもひるま│ 性
中、
l
ず、それを克服
へ ¥ │していくことを
¥│示す。
どこまでも、愛し、許し、保護して
生命力をはぐくみ育てる
骨ー母
性一→
御することを教える。ときに,苦痛や困難に出
会ってもひるまずに,これを克服していくこと
を示すことである。
昔は一般的に父親が父性を,母親が母性を担
当して,お互いの役割を十分に発揮していたよ
うに思う o また,父親が出征し不在の時は母親
が一人で両性をバランスよく発揮したものであ
る
。
現代は男女同権の社会だから,どちらがどれ
を担当してもよいと思うが,男女は同質でないのでお互いの特質を発揮するとすれば,自ずから
父親が父性を母親が母性を担当された方がよいと思う。
父性と母性のバランスのとれた家庭で育つ子どもは,愛されているという自信と自負とを持ち,
叱責に対しでもその背後にある愛情を感じとり,素直に親の教えに従うのである。そこで,子ど
もは強く,たくまししそしてやさしく,いたわりの気持ちを学び受け入れて,
r
気はやさしくて
力もち」という生活力に満ちた,望ましい性格を築き上げていくのである。
ところが,父親の多くのものは,教育は母親まかせにしている o そこで,父親を家庭教育の場
に如何に戻すかは,正に母親の英知にかかっているのである。
「お父さん,たまには子どもを叱ってくだいよ Jこれでは父親は遠ざかっても戻っては来ない。
損なことは誰でもしたくないからである。そこで,折にふれ子どもの成長を取り上げ報告するこ
とである。すると,忙しい父親でも立派に成長しているわが子と共通の生活をしてみたい,父親
が素直な目で見た社会の出来事を話してみたいと思うようになる o さらに,父親との接触を子ど
もが大変喜んでいたことを報告する。このような母親の心配りによって,父親は子どもとのふれ
合いを密にしていくものと思う。
どうしても父親を家庭教育に参加させることができなければ,母親が母性と父性の両方を発揮
-12-
するようにすることである。
5.子どもの自立を励まそう
親の方で望ましい環境を整え,期待するような子どもに育てようとしても,子どもが少しもつ
いてきてくれないことがある。すると,親の方では当て外れや不満ゃあせりを感じることになる。
反対に,子どもは自分で勝手にいろいろのことを覚えて来るので,親は教えることは少しも覚え
ようとしないと怒り嘆くこともある。このような食い違いが生ずるのは,親が子どもの成長する
力を理解していないためである。子どもは自分自身が成長する力を内にもっており,自分の歩み
を自分で進めていこうとするものである。
子どもは成長する自力と外部からの教育とがうまく噛み合った時に,はじめてすくすくと明朗
に,強く正しく成長するのである。
そこで,親は子どもの自立(独立)を励ますことである。そのためには子どもの自立の姿を知
らなければならない。
子どもは節目をつけながら,自立(独立)していくものであるが,ここでは表 1が示すように
四つの節目を取り上げることにする。
第 1段階の身辺生活時代は,親に完全に依存していて何も自立していないように見える o けれ
ども「意志の自立」だけは認められる。たとえば,お乳が欲しい時にはちゃんと泣いて自分の気
持ちを伝えているのである。したがって,この時期は子どもの気持ちを先取りしたり,かかわり
過ぎたりしないようにして子どもの意志を十分に表出させることが大切である o そうすることに
よって,活動のエネルギーである「意欲・自発性」を身につけることになるのである。
第 2段階の想像生活時代は何でも自分でやってみたがる時で「行動の自立 j が認められる。し
たがって,たとえ時間かかかっても手を取っても,したがることはつとめてやらせることである。
すると自分のことは自分でするという自力で要求を満たす「自主性Jを身につけていくのである。
第 3段階の知識生活時代は仲間(親きょうだい,友達)との生活をしたがる。つまり,
I
生活の
自立」が目立つ時期である。したがって,この時期は友達との生活の場を与え,みんなに心配や
表 1 自立心の指導
発達段階
励ま
大人扱いし,
1
4,5
歳 -24,5
歳
精神生活時代精神の自立 自覚させる
8, 9歳 -13, 4歳
仲間を与え
知識生活時代生活の自立 干渉しない
3, 4歳 -7, 8歳
想像生活時代行動の自立
し
自立心
一一歩
一ー診
したカまることは
つとめてやらせる→
0歳 -2, 3歳
意志を十分に
身辺生活時代意志の自立 表出させる
-13-
一ー参
迷惑をかけないよう努力させる。そうすることによって「自律性」を身につけることになるので
ある。自律性の身についていない子どもは孤立するか,他人のいいなりになり危険である。仲間
との遊びを通じて友達と仲良くしたりけんかをしたりしているうちに社交性・社会性を身につけ
る。したがって,自律性は愛情を与えても干渉しないことがよく伸びると言われる。
第 4段階の精神生活時代はすべてを自分で判断し,実行に移したがるように「精神の自立」が
著しいときである。そこで,この時期は大人扱い(大人の一員として受けいれる)し,自覚させ
ることによって自分で判断し行動できる自決性を身につけることになる。
子どもはこのように自発性・自主性・自律性・自決性の順で自立心を身につけることによって,
誘惑に負けないで,たとえ負けても自浄しながら社会人として巣立つていくのである o
自発性(活動のエネルギー)のない無気力な子どもが自主性あふれる活動をはじめるわけがな
い。自主的に仲間を求める子どもであってはじめて,自制心を働かせてでも協力し合おうとし,
自律性(気力を出せばいいというものではなく,状況に応じてコントロールする性質)を身につ
ける o そして,社会的判断力が身について,はじめて適切に物事を判断して処理していく自決性
(自分をよく知り,他人とのかかわり方を身につける)を発揮できるのである。
参考文献
①福島章思春期の非行青年心理
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O
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6
5 P
. 2"
'1
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9
8
7
②麦島文夫遊び型(初発型)非行その後青年心理
③福島章青年期のカルテ新曜社
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9
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6
0 1
9
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1
④新村豊家庭教育心理学入門繋明書房
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4
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