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ハイレベル - LEC東京リーガルマインド
試験 土地家屋調査士 ハイレベル 精撰問題集 1 ハイレベルな良問を厳選! LECが本試験を徹底分析して 作成したオリジナル問題集 最新情報はLEC土地家屋調査士サイトで www.lec-jp.com/chousashi/ 編著 はしがき 土地家屋調査士試験の学習範囲は決して広くはありません。1年程度の学習をすれば,必 要な知識を身につけることは可能です。しかし,知識だけでは,この試験に合格することは できません。合格をするためには,知識に加えて,時間内に答案を完成させなければなりま せん。そのためには,過去にどんな出題形式があったかを知り,多くの問題をこなしていく 事で「実践力」と「正確性」を鍛錬する必要があります。 土地家屋調査士試験問題が難化傾向にあるなか,過去に出題実績のある論点を習得してい なければならないのは当然のこととして,それだけでは確実には合格点に達することはでき ません。土地家屋調査士試験に必要な学習をひととおり終了した方で,過去問未出の応用論 点問題・予想論点問題に多く触れ,本試験で好成績をとりたいと考えている方々に向けて発 刊した問題集が本書「ハイレベル精撰問題集」です。本書を活用する事によって,出題可能 性のある新たな知識を習得して,近年,難化傾向にある土地家屋調査士試験対策を万全なも のとして頂く武器の一つとして役立てて頂きたい。 本書の特長 本書は,本試験と同様の択一20問・書式2問からなる出題形式をとっており,過去問理 論にプラスして,出題可能性の高い未出題論点や求積解法についても出題しています。択一 については, 「逃げ切り点」を取るための知識を身につけることができ,書式問題について は,本試験プラスαのボリュームで出題し,毎回の答案作成を通じ,本試験で緊張せずに実 力を発揮するためのハートを作り,解答テクニックにさらに磨きをかけることができます。 さらに,実践力を強化するために,書式問題の解答の際の答案用紙は,LECの土地家屋 調査士トップページより後記URLにアクセスすると「無料」でダウンロードできる画期的 な仕組みになっています。本書を有効に活用し,短期合格を果たされることを祈念申し上げ ます。 <LEC土地家屋調査士トップページ> http://www.lec-jp.com/chousashi/ <書式答案用紙のダウンロード先URL> http://www.lec-jp.com/chousashi/book/touan.html 2013 年 12 月吉日 株式会社 東京リーガルマインド LEC総合研究所 土地家屋調査士試験部 (解説文中の条文,判例,先例の略号について) ※条文略号 不動産登記法第34条第1項第1号 ……(34Ⅰ①) 不動産登記令第7条第1項第1号 ……(令 7Ⅰ①) 不動産登記規則第34条第1項第1号 ……(規 34Ⅰ①) 不動産登記事務取扱手続準則第67条第1項第1号 ……(準 67Ⅰ①) 民法第13条第1項第1号 ……(民 13Ⅰ①) 建物の区分所有等に関する法律第2条第1項 ……(区分 2Ⅰ) 借地借家法第10条第1項 ……(借地借家 10Ⅰ) 登録免許税法第31条第3項 ……(登税法 31Ⅲ) 登録免許税法別表第一の一の(十三)のイ ……(登税法別表第一・一・(十三)イ) 登記手数料令第3条第1項 ……(手数料令 3Ⅰ) 土地家屋調査士法第2条 ……(土 2) 土地家屋調査士法施行令第2条 ……(土施行令 2) 土地家屋調査士法施行規則第17条 ……(土規 17) 日本土地家屋調査士会連合会会則第4条 ……(会 4) ※条文を連記する場合 不動産登記法第51条第1項,同法第30条 ……(51Ⅰ・30) 法律が同じ場合はナカグロで表記 民法第423条第1項,不動産登記法第59条第7号 ……(民 423Ⅰ,59⑦) 法律が異なる場合はカンマで表記 ※先例略号 昭和39年8月2日民事甲第285号民事局長通達 ……(昭 39.8.2 第 285 号) 昭和59年9月4日民事三第812号民事局長通達 ……(昭 59.9.4 第 812 号) ※判例略号 昭和7年5月9日の大審院の判例 ……(大審院判例昭 7.5.9) 昭和42年8月25日の最高裁判所の判例 ……(最高裁判例昭 42.8.25) LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 1 <ハイレベル精撰問題集 体系番号表> ※数字は問題番号を示します。 Ⅰ民法 ① Ⅰ-1 総則 1,3 Ⅰ-2 物権 2 Ⅰ-3 債権 Ⅰ-4 親族・相続 Ⅱ表示に関する登記総論 ① Ⅱ-1 表示に関する登記の特徴 Ⅱ-2 登記の対象となる不動産 Ⅱ-3 管轄 Ⅱ-4 登記情報の保存と公開 Ⅱ-5 地図と建物所在図 Ⅱ-6 申請人 Ⅱ-7 却下と取下 Ⅱ-8 添付図面 8 Ⅱ-9 登記識別情報 9 Ⅱ-10 図面,登記識別情報以外の添付 10 ② ③ ④ ⑤ ② ③ ④ ⑤ ② ③ ④ ⑤ ② ③ ④ ⑤ 4 5 6 情報 Ⅱ-11 登録免許税 Ⅱ-12 審査請求 Ⅱ-13 その他 11 7,19 Ⅲ表示に関する登記各論(土地) ① Ⅲ-1 Ⅲ-1-① 地番と地番区域 登記事 Ⅲ-1-② 地目 項 Ⅲ-1-③ 地積 Ⅲ-2 Ⅲ-2-① 報告的登記 13 各種の Ⅲ-2-② 創設的登記 14,15 登記 Ⅲ-2-③ 総合 12 Ⅳ表示に関する登記各論(建物) ① Ⅳ-1 Ⅳ-1-① 所在 登記事 Ⅳ-1-② 家屋番号 項 Ⅳ-1-③ 種類,構造及び床面 16 積 Ⅳ-1-④ 附属建物に関する 登記事項 2 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① Ⅳ-1-⑤ 区分建物の登記事 項 Ⅳ-2 Ⅳ-2-① 報告的登記 各種の Ⅳ-2-② 創設的登記 登記 Ⅳ-2-③ (団地)共用部分で ある旨の登記 Ⅳ-2-④ 総合 17 Ⅴその他の表示に関する登記の論点 Ⅴ-1 所有者に関する登記 Ⅴ-2 区分所有法等関連法規 Ⅴ-3 総合 Ⅵ筆界特定 Ⅵ-1 筆界特定の申請 Ⅵ-2 筆界の調査 Ⅵ-3 その他 Ⅶ土地家屋調査士法 Ⅶ-1 資格と登録 Ⅶ-2 業務 Ⅶ-3 調査士法人 Ⅶ-4 懲戒処分 Ⅶ-5 調査士会と連合会 Ⅶ-6 協会 Ⅶ-7 罰則等 Ⅶ-8 総合 LEC東京リーガルマインド ① ② ③ ④ ⑤ ① ② ③ ④ ⑤ ② ③ ④ ⑤ 18 ① 20 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 3 第1問 次の対話は,成年被後見人又は被保佐人に関する教授と学生との間の対話である。 教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,正しいものの組合せは, 後記1から5までのうちどれか。 教授: 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況となった者は,本人が自 ら後見開始の審判を請求することはできますか。 学生:ア 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況となった者は,行為能 力が制限された者とみなされますので,自ら後見開始の審判を請求すること はできません。 教授: では,成年被後見人がした法律行為であっても,取り消すことができない法 律行為はありますか。 学生:イ 日用品の購入その他日常生活に関する行為については,成年被後見人がし た法律行為であっても,そのことを理由に取り消すことができないとされて います。 教授: では,被保佐人が,保佐人の同意を得ないで自己の所有する土地を他に売却 した場合には,その土地が善意の第三者に転売された後であっても,当該売買 契約を取り消すことができますか。 学生:ウ 被保佐人は,土地が善意の第三者に転売された後であっても,当該売買契 約を取り消すことができます。 教授: 次に,成年後見人又は保佐人が追認した行為について,成年被後見人又は被 保佐人は取り消すことができますか。 学生 :エ 成年被後見人は, 成年後見人が追認した行為を取り消すことができますが, 被保佐人は,保佐人が追認した行為を取り消すことはできません。 教授: 最後に,家庭裁判所が,後見開始の審判又は保佐開始の審判をするときは, 常に成年後見人又は保佐人を選任しなければなりませんか。 学生:オ 家庭裁判所は,後見開始の審判をするときには職権で成年後見人を選任し なければなりませんが,保佐開始の審判をするときには保佐人を選任しなく てもよい場合があります。 1 アイ 2 アエ 3 イウ 4 ウオ 5 エオ 【第1問】正解3 <出題範囲;民法・総則 体系番号;Ⅰ-1> ア 誤 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については,家庭裁判 所は,本人,配偶者,四親等内の親族,未成年後見人,未成年後見監督人,保佐人, 保佐監督人,補助人,補助監督人又は検察官の請求により,後見開始の審判をするこ とができる(民 7) 。したがって,精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況 にある者は,本人自ら後見開始の審判を請求することができる。 イ 正 成年被後見人の法律行為は,取り消すことができる(民 9 本文) 。ただし,日用品 の購入その他日常生活に関する行為については,この限りではない(同但書)。した がって,成年被後見人がした法律行為のうち,日用品の購入その他日常生活に関する 行為は,成年被後見人の法律行為であることを理由に取り消すことができない。 4 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① ウ 正 被保佐人が保佐人の同意を得ずに不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を 目的とする行為をした場合には,被保佐人及び保佐人のいずれもが,その契約を取り 消すことができる(民 13Ⅰ③Ⅳ・120Ⅰ)。また,取り消された行為は,初めから無 効であったものとみなされる(民 121 本文)。したがって,被保佐人所有の土地の売 買について,売主である被保佐人が,保佐人の同意を得ていないことを理由に売買契 約を取り消したときは,当該土地の所有権は被保佐人に復帰する。この場合において, 買主が当該土地を第三者に転売していたときは,被保佐人は,その第三者に対し,当 該土地の所有権の復帰を対抗することができるか否かが問題となる。被保佐人も含め, 制限行為能力者であることを理由とする法律行為の取消しについては,民法上,第三 者に対し,特に取消しを主張できないとする第三者保護規定はないので,売買契約を 取り消した制限行為能力者は,第三者の善意・悪意に関係なく,土地の所有権の復帰 を第三者に対抗することができる。したがって,本肢の場合,被保佐人は,土地が善 意の第三者に転売された後であっても,売買契約を取り消すことができる。 誤 成年後見人は,成年被後見人の法律行為をその法定代理人として取り消すことがで き,保佐人は,被保佐人の法律行為につき同意をすることができる者として取り消す エ ことができる(民 120Ⅰ) 。また,成年後見人及び保佐人は,追認権も有しており,取 り消すことができる行為を成年後見人又は保佐人が追認したときは,成年被後見人又 オ は被保佐人の法律行為は確定的に有効なものとなり,以後,取り消すことができない (民 122 本文)。 誤 家庭裁判所は,後見開始の審判をするときは,職権で,成年後見人を選任する(民 8・843Ⅰ) 。同様に,家庭裁判所は,保佐開始の審判をするときは,職権で,保佐人 を選任する(民 12・876 の 2Ⅰ) 。したがって,家庭裁判所は,保佐開始の審判をす るときは,職権で,保佐人を選任しなければならない。なお,成年後見人又は保佐人 として選任される者は,自然人に限られず,法人であっても差し支えないものとされ ている(民 843Ⅳ・876 の 2Ⅱ) 。 以上から,正しいものはイウであり,正解は3である。 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 5 第2問 物権に関する次のアからオまでの記述のうち,民法及び判例の趣旨に照らし誤って いるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。 ア 地上の上下の範囲を定めてこれに地上権を設定するにあたって,その地上権の行 使のために,その土地の上に建物を建築しない旨の制限を加えることはできない。 イ 土地の永小作権者が永小作権に基づいて米の苗や野菜などの作物を土地に付属さ せた場合には,それらの作物の所有権は,永小作権者に帰属する。 ウ 所有権の登記名義人が甲及び乙の共有の土地について,当該土地の甲の持分のみ を目的として,抵当権を設定することができる。 エ 甲地の所有者Aと乙地の所有者Bは,乙地を承役地として,Aが乙地において植 物を植栽することを目的とした地役権を設定することができる。 オ 抵当権は,不動産の所有権,地上権,永小作権を目的として設定することができ る。 1 アイ 2 アエ 3 イウ 4 ウオ 5 エオ 【第2問】正解2 <出題範囲;民法・物権 体系番号;Ⅰ-2> ア 誤 地上の上下の範囲を定めてこれに地上権を設定することができる(民 269 の 2Ⅰ前 段)。この場合に,設定行為をもって,地上権の行使のために土地の使用に制限を加 えることができる(同後段)。したがって,土地の上に建物を建築しない旨の制限を 加えることもできる。 イ ウ エ オ 6 正 立木,樹木,農作物が他の者が所有する土地に付合すると,これらの物は,原則と して,土地の所有者に帰属する(民 242 本文)。ただし,権原に基づいて付属させた 場合には,付合は生じることがなく,これらの物の所有権は,付属させた者に留保さ れる(同但書,最高裁判例昭 31.6.19) 。ここにいう「権原」とは,他人の不動産に動 産を付属させて,その不動産を利用する権利のことをいい,具体的には,地上権,永 小作権,賃借権等の権利がこれに該当する。 正 抵当権とは,債権者が,債権を担保するために,債務者又は第三者から占有を移さ ず提供された不動産,地上権又は永小作権につき,他の債権者に先立って自己の債権 の弁済を受けることのできる担保物権である(民 369)。抵当権は,目的物の交換価値 のみを支配し,使用収益を設定者にとどめるという特質を有するので,優先弁済的効 力はあるが,使用価値を支配しない以上,質権や留置権と異なり留置的効力はない。 したがって,土地が共有の場合には,各共有者の持分のみを目的として抵当権を設定 することができる。 地役権は, 他人の土地を自己の土地の便益に供する権利とされている(民 280 本文)。 すなわち,地役権は要役地(本肢における甲地)の利用価値を高めるものでなければ ならず,植物の植栽を目的とするような,要役地の所有者個人の利用のための地役権 は設定することができない。 正 民法上,抵当権は不動産の所有権,地上権及び永小作権を目的として設定すること ができる(民 369ⅠⅡ) 。なお,各種の特別法によって,登記や登録といった抵当権の 公示手段があるものにもその対象が広げられている。例えば,立木(立木法) ,自動車 誤 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① (自動車抵当法) ,航空機(航空機抵当法)などがある。 以上から,誤っているものはアエであり,正解は2である。 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 7 第3問 時効に関する次の1から5までの記述のうち,民法及び判例の趣旨に照らし正しい ものはどれか。 1 他人の建物であることを過失なく知らずに,所有の意思をもって建物の占有を開 始した者が,他人によってその占有を奪われたときであっても,所有権の取得時効 は中断しない。 2 時効は,停止事由が終了したときから新たな時効期間が進行を開始し,中断事由 が終了したときは中断前の時効が再び進行する。 3 取得時効が成立するためには,他人の物を占有することが必要であり,自己の所 有物を占有しても,その占有者は,所有権を時効取得しない。 4 債権の消滅時効が完成した後,債務者が債務の承認をした場合において,債務者 が消滅時効完成の事実を知らなかったときであっても,債務者は時効の援用をする ことができない。 5 Aが,B所有の甲土地を自己の所有であると過失なく信じて,平穏かつ公然と 7 年間占有した後,甲土地がB所有であることを知っているCに譲渡し,Cが 13 年 間引き続き占有したときは,Cは,甲土地の所有権について,10 年間の占有による 取得時効の成立を主張することはできない。 【第3問】正解4 <出題範囲;民法・総則 体系番号;Ⅰ-1> 1 誤 所有権の取得時効は,占有者が任意にその占有を中止し,又は他人によってその占 有を奪われたときは,中断する(民 164) 。 2 誤 時効が完成するには,一定の事実状態が一定期間継続することが必要であり,途中 でその事実状態の継続を妨げる何らかの障害が発生したときは,時効の完成も妨げら れる。このような時効障害事由として,民法は中断と停止を定めている。時効の中断 とは,それまでに経過した時効期間の進行を無意味なものとし,振出に戻すことをい い,時効の基礎である事実状態と相容れない事実があると時効は中断する。この事実 を中断事由という(民 147・149~156 参照) 。中断事由が終了した時から,時効は再 び進行を始めるが(民 157Ⅰ) ,時効期間は新たに計算し直される。一方,時効の停止 とは,時効の完成間際に,時効の中断を困難にする一定の事由(停止事由;民 158~ 161 参照)が存在ないし発生した場合に,時効によって不利益を受ける者を保護する ために,ある一定期間時効の完成を遅らせることをいう。時効が停止した場合には, 時効の完成が一定期間猶予されるだけであり,それまでの時効期間の経過は無意味な ものとはならず,時効の停止事由が終了した時から,停止前の時効が再び進行する。 本肢は停止事由と中断事由の説明が逆になっており,誤りである。 3 誤 所有権の取得時効を定めた民法第 162 条は,その対象を「他人の物」としているが, 判例は「自己の物」についての時効取得を認めている(最高裁判例昭 42.7.21)。この 判例は,二重譲渡の場合に登記を備えていなかった者が,売買契約により取得した所 有権に基づいて占有を継続したことを理由に取得時効の成立を認めている。 4 正 債権は,10 年間行使しないときは,消滅する(民 167Ⅰ) 。債務者が,完成した消 滅時効の効果により債務を免れるには,時効の援用をしなければならないが,時効の 中断事由である債務の承認(民 147③)をした場合には,債権者としては,もはや時 8 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 効の援用をしない趣旨であると信頼するのが通常だから,たとえ債務者が時効完成の 事実を知らなかったとしても,いったん債務の承認をしてしまったら,消滅時効を援 用することは許されないとされている(最高裁判例昭 41.4.20)。 5 誤 占有の承継があった場合には,承継した者は,自己固有の占有のみを主張できるの はもちろん,前主の占有を併せて主張することができる(民 187Ⅰ) 。よって,本肢の 場合,Cは,前主のAの 7 年間の占有と併せて,20 年の取得時効の成立を主張するこ とができる。さらに,判例は,所有権の取得時効の占有者の善意・無過失は,最初の 占有者について,その占有開始の時点において判定すれば足りるとして,Aの 7 年の 占有とCの 3 年の占有を併せて,Cは,10 年間の占有による取得時効の成立を主張す ることができるとしている(最高裁判例昭 53.3.6) 。 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 9 第4問 不動産の表示に関する登記の申請義務と登記官の職権による登記の可否に関する 次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちど れか。 ア 主である建物を居宅,附属建物を車庫として登記した建物について,附属建物の 全部を賃貸借契約により他人に利用させている場合における建物の分割の登記は, 当事者に申請義務はなく,登記官は職権で登記できない。 イ 区分建物の表題登記がされた後に,その属する一棟の建物の敷地について所有権 の移転の登記がされたことにより敷地権が生じた場合における敷地権を表示する区 分建物の表題部の変更の登記は,当事者に申請義務があり,登記官は職権で登記で きる。 ウ 一棟の建物の所在地番の一部に遺漏があった場合における一棟の建物の表題部に 関する更正の登記は,当事者に申請義務はなく,登記官は職権で登記できない。 エ 共用部分である旨の登記がある区分建物について共用部分である旨を定めた規約 を廃止した場合における区分建物の表題登記は,当事者に申請義務はないが,登記 官は職権で登記できる。 オ 土地の表題部所有者である共有者の持分が登記された当初から誤っている場合に おいてする表題部所有者の持分の更正の登記は,当事者に申請義務があり,登記官 は職権で登記できる。 1 アイ 2 アエ 3 イウ 4 ウオ 5 エオ 【第4問】正解1 <出題範囲;登記総論・表示に関する登記の特徴 体系番号;Ⅱ-1> ア 正 建物の分割の登記は,表題部所有者又は所有権の登記名義人が申請することができ イ ウ るが,当事者の意思に基づく登記であり,申請義務はない(54Ⅰ①)。また,申請が あったこと以外に建物の分割の登記をする規定は存在せず,すなわち,登記官が職権 ですることはできない。したがって,当該登記については,当事者に申請義務はなく, 登記官は職権で登記できないため,本肢は正しい。 正 区分建物表題登記がされた後に,区分所有者がその属する一棟の建物の敷地につい て敷地利用権の登記を備えたときは,当該敷地利用権は後発的に敷地権となる。表題 登記がある区分建物について,後発的に敷地権が生じた場合には,表題部所有者又は 所有権の登記名義人は,一月以内に,当該敷地権を表示する区分建物の表題部の変更 の登記を申請しなければならない(51Ⅰ) 。当該登記は不動産の表示に関する登記で あり,報告的登記にあたるので,登記官が職権ですることができる(28) 。したがっ て,当該登記については,当事者に申請義務があり,登記官は職権で登記できるため, 本肢は正しい。 誤 建物の所在地番(区分建物にあっては,当該建物が属する一棟の建物の所在地番) の一部に遺漏があることを発見した場合には,当該建物の表題部所有者又は所有権の 登記名義人は,建物の表題部の更正の登記を申請することができるが,申請義務は課 せられていない(53Ⅰ)。一方,建物の表題部の更正の登記は,不動産の表示に関す る登記であり,報告的登記にあたるので,登記官が職権ですることができる(28)。 10 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① エ したがって,当該登記については,当事者に申請義務はないが,登記官は職権で登記 できるため,本肢は誤りである。 誤 共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨を定めた規約を廃 止した場合には,当該建物の所有者は,当該規約の廃止の日から一月以内に,当該建 物の表題登記を申請しなければならない(58Ⅵ)。また,この規定による表題登記を 含み,登記官は,申請をすべき事項で申請のないものを発見した場合は,直ちに職権 でその登記をすることなく,申請の義務がある者に登記の申請を催告する旨が規定さ れている(準 63Ⅰ)。すなわち,不動産の表示に関する登記として登記官が職権です ることができる(28) 。したがって,当該登記については,当事者に申請義務があり, オ 登記官は職権で登記できるため,本肢は誤りである。 誤 不動産の表題部所有者である共有者の持分について登記された当初から誤っている 場合には,当該不動産の共有者は,持分についての更正の登記を申請することができ るが,申請義務は課せられていない(33Ⅲ)。一方,表示に関する登記は,原則とし て登記官が職権ですることができる(28)。表題部所有者である共有者の持分の更正 の登記も不動産の表示に関する登記であるので,登記官が職権ですることができる。 したがって,当該登記については,当事者に申請義務はないが,登記官は職権で登記 できるため,本肢は誤りである。 以上から,正しいものはアイであり,正解は1である。 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 11 第5問 登記所の管轄に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは, 後記1から5までのうちどれか。 ア A登記所の管轄区域内にある甲土地上に新築された建物について表題登記を申請 しないうちに,市町村合併により,甲土地の管轄がB登記所に転属した場合,甲土 地の登記記録がB登記所に移送される前であっても,当該建物の表題登記の申請は, B登記所に申請しなければならない。 イ A登記所の管轄区域内にある甲建物が滅失し,その附属建物である乙建物がB登 記所の管轄区域内にある場合,乙建物を主である建物とする建物の表題部の変更の 登記の申請は,A登記所にしなければならない。 ウ A登記所の管轄区域内にある甲建物及びその附属建物である乙建物のうち,乙建 物をB登記所の管轄区域内にえい行移転した場合,建物の所在の変更の登記の申請 は,A登記所に申請しなければならない。 エ A登記所の管轄区域内にある建物の登記事項証明書の交付の請求は,A登記所に しなければならない。 オ A登記所の管轄区域内に主である建物を,B登記所の管轄区域に附属建物をそれ ぞれ建築した場合,建物の表題登記の申請は,A登記所又はB登記所のうちいずれ かの管轄登記所の指定がされるまで,することができない。 1 アイ 【第5問】正解5 ア 2 アエ 3 イウ 4 ウオ 5 エオ <出題範囲;登記総論・管轄 体系番号;Ⅱ-3> 正 管轄の転属とは,不動産の物理的状況はそのままに,その所在地がある登記所の管 轄区域から他の登記所の管轄区域に移行することをいう。管轄の転属は, 「法務局及び イ ウ 地方法務局の支局及び出張所設置規則」の変更や市町村合併等の行政区画の変更の場 合に生じる。登記された不動産の所在地が甲登記所の管轄から乙登記所の管轄に転属 したときは,甲登記所の登記官は,当該不動産の登記記録を乙登記所に移送するが(規 32Ⅰ),当該移送の手続が未了のときであっても,当該不動産に係る登記の申請は転 属先の登記所にしなければならない。本肢の場合も,新築した建物の所在地の管轄登 記所が既にB登記所であるので, 表題登記の申請は,B登記所にしなければならない。 正 不動産に関する登記事務は,その不動産の所在地を管轄する法務局もしくは地方法 務局もしくはこれらの支局又はこれらの出張所が管轄登記所として取り扱うものとさ れている(6Ⅰ) 。したがって,登記の申請は管轄登記所にしなければならず,管轄登 記所でない登記所に登記を申請したときは,当該申請は却下される(25①)。本肢の 場合にも,建物の表題部の変更の登記は,変更前の管轄登記所であるA登記所に申請 しなければならない。 正 甲登記所の管轄区域内に所在していた主である建物と附属建物のうち,附属建物の みを乙登記所の管轄区域内にえい行移転した場合には,当該建物は,依然として甲登 記所の管轄に属するものとされ,所在の変更の登記は,甲登記所に申請しなければな らないと解されている(準 5 参照,過去問の見解;H13-17・ウ)。したがって,本 肢の場合,A登記所に申請しなければならない。なお,本肢の場合と異なり,甲登記 12 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 所の管轄区域内に所在していた主である建物と附属建物のうち,主である建物のみを 乙登記所の管轄区域内にえい行移転した場合には,所在の変更の登記は,どちらの登 記所に申請しても差し支えないと解されている(準 4Ⅱ参照,過去問の見解;H9-1・ エ オ オ,H18-6・オ) 。 誤 登記事項証明書の交付の請求は,法務省令で定める場合を除き,請求に係る不動産 の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる(119 Ⅴ) 。 誤 数個の登記所の管轄区域にまたがって新築された建物の管轄登記所は,法務省令の 定めるところにより,法務大臣又は法務局もしくは地方法務局の長が指定する(6Ⅱ)。 ただし,指定がされるまでの間,その建物の表題登記の申請は,いずれの登記所にも することができると規定されている(6Ⅲ) 。すなわち,あらかじめ管轄登記所の指定 を求める申請をすることは要しない。なお,本肢の場合,主である建物がA登記所の 管轄区域内に,附属建物がB登記所の管轄区域にあるので,両登記所の管轄区域にま たがって建てられているものとして,いずれの登記所に申請しても差し支えないこと になるが,この場合には,主である建物が所在する土地を管轄するA登記所が管轄登 記所となることが明らかであるから,A登記所に申請すべきであるとする見解がある (過去問の見解H9-1-ウ)。 以上から,誤っているものはエオであり,正解は5である。 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 13 第6問 建物の表題登記の申請人に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているもの の組合せは,後記1から5までのうちどれか。 ア 出生前の胎児が未登記不動産を相続した場合には, 「亡何某妻何某胎児」の名義で 表題登記を申請することができる。 イ 地縁に基づいて形成された団体である町内会が,地域的な共同活動を行うために 建物を新築した場合において,当該町内会が地方自治法に基づき地縁による団体と して市町村長の認可を受けたときは,当該町内会を所有者として建物の表題登記の 申請をすることができる。 ウ いわゆる宗教団体が,礼拝の施設である建物を新築した場合において,宗教法人 設立の登記又は一般社団法人の設立の登記をしていないときは,その構成員全員の 共有名義で申請するか,その代表者が肩書きを付して個人名義で申請しなければな らない。 エ 株式会社が破産手続開始の決定を受けた場合には,その代表取締役は,破産管財 人の同意があったことを証する情報を提供しても,会社が破産手続開始の決定前に 新築した建物の表題登記を申請することはできない。 オ 表題登記がない建物を所有する一般社団法人が,解散により清算事務を行ってい る場合には,当該法人はその建物の表題登記を申請することはできず,清算結了後 に所有者となった者が申請しなければならない。 1 アイ 2 アオ 3 イエ 4 ウエ 5 ウオ 【第6問】正解5 <出題範囲;登記総論・申請人 体系番号;Ⅱ-6> ア 正 建物の表題登記の申請適格者は,新築した建物又は表題登記のない建物の所有権を 取得した者である(47Ⅰ)。実体法上,所有権等の権利を取得しうる地位(権利能力 という。 )を認められている者には,自然人と法人がある(民 3Ⅰ,34) 。したがって, 自然人でも法人でもない者は,表題登記をはじめ表示に関する登記の申請人となるこ とはできず,登記記録上に所有者と記録されることもない。自然人は,出生によって 権利能力を取得する(民 3Ⅰ) 。すなわち胎児については,原則として権利能力が認め られていない。しかし例外的に,不法行為による損害賠償の請求,相続・遺贈に関し ては,胎児は生まれたものとみなされるので,これらについては,胎児にも権利能力 が認められている(民 721・886・965) 。したがって,相続又は遺贈により胎児が不 動産を取得した場合であれば,胎児を所有者として登記記録に表示することができる。 この場合において胎児を登記記録に表示するときには「亡何某妻何某胎児」のように イ 記録する(明 31.10.19 第 1406 号参照)。 正 原則として,自治会や町内会等の町又は字の区域その他市町村内の区域に住所を有 する者の地縁に基づいて形成された団体(以下「地縁団体」という。)は,権利能力が 認められていない団体であるから,地縁団体所有の不動産については,団体名義で登 記をすることができず, 代表者等の個人名義で登記をするしかない (昭 23.6.21 第 1897 号,昭 36.7.21 第 625 号)。ただし,この地縁団体が,地域的な共同活動のための不 動産又は不動産に関する権利等を保有するため市町村長の認可を受けたときは,その 14 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① ウ 規約に定める目的の範囲内において権利能力を取得するので(地方自治法 260 の 2Ⅰ) , その団体名義で登記をすることができる(平 3.4.2 第 2245 号・2246 号)。 誤 礼拝の施設を備える神社,寺院,教会,修道院その他これに類する団体,及びこれ らの団体を包括する教派,宗派,教団,教会,修道会,司教区その他これらに類する 団体であって,宗教の教義をひろめ,儀式行事を行い,及び信者を教化育成すること を主たる目的とするものを「宗教団体」という(宗教法人法 2)。宗教団体は,そのま までは権利能力が認められていない団体であるが,宗教法人法の規定により,法人と なることができる。これを「宗教法人」という(宗教法人法 4ⅠⅡ)。宗教法人は,所 轄庁から規則の認証を得て,その主たる事務所の所在地に,目的,名称,事務所,代 表者氏名等の事項を登記することによって成立する。すなわち,本肢の場合には,宗 教法人設立の登記又は一般社団法人の設立の登記をしなければ,宗教団体を所有者と して表題登記を申請することができず,代表者個人名義(肩書きを付すことは許され ない)で申請するか,又は構成員全員での共有名義で申請しなければならない(昭 23.6.21 第 1897 号,昭 36.7.21 第 625 号,最高裁判例昭 47.6.2)。本肢は,肩書きを 付すことができるとしているので誤りである。 エ 正 株式会社について破産手続開始の決定(破産法 30)があった場合には,会社は解散 し(会社法 471⑤) ,破産手続開始時の取締役は当然に資格を失う(昭 44.10.24 第 2277 号) 。したがって,本肢の場合,代表取締役から登記を申請することはできない。なお, 会社が破産手続開始の決定(破産法 30)を受けた場合には会社は解散し(会社法 471 ⑤・641⑥等) ,その場合には,会社財産を整理する清算手続が行われ,会社は清算手 続の目的の範囲内で存続し,その手続の終結により消滅する。破産により会社が解散 した場合には,会社財産の清算手続は破産法のもとで行われ,破産手続によって既存 の法律関係が処理される(破産法 34・35) 。破産手続において,破産管財人が選任さ れたときは,破産手続開始の時における会社財産の管理処分権は破産管財人に専属す るので(破産法 74・78) ,当該会社の財産である不動産の登記申請は破産管財人が行 う。 オ 誤 一般社団法人は,定款で定めた存続期間の満了などの解散事由が生じると解散する (一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 148)。しかし,解散後,直ちに消滅す るのではなく,①定款で定めた存続期間の満了,②定款で定めた解散の事由の発生, ③社員総会の決議を事由として解散した場合には,清算(財産関係の整理)が結了す るまでは,社員総会の決議によって,一般社団法人を継続することができる(同法 150)。 当該清算をするために継続された一般社団法人を「清算法人」という。清算法人は, 解散後も清算の目的の範囲内で権利能力を有するので(同法 207),当該一般社団法人 名義で表題登記を申請することができる。 以上から,誤っているものはウオであり,正解は5である。 LEC東京リーガルマインド 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 15 土地家屋調査士試験 ハイレベル精撰問題集① 2014年 1 月10日 第 1 版 第 1 刷発行 編著者●株式会社 東京リーガルマインド LEC総合研究所 土地家屋調査士試験部 発行所●株式会社 東京リーガルマインド 〒164−0001 東京都中野区中野4−11−10 アーバンネット中野ビル ☎03(5913)5011(代 表) ☎03(5913)6336(出版部) ☎048(999)7581(書店様用受注センター) 振 替 00160−8−86652 www.lec-jp.com/ 印刷・製本●秀英堂紙工印刷株式会社 ©2014 TOKYO LEGAL MIND K.K., Printed in Japan ISBN978−4−8449−8327−9 複製・頒布を禁じます。 本書の全部または一部を無断で複製・転載等することは,法律で認められた場合を除き,著作者及び出版 者の権利侵害になりますので,その場合はあらかじめ弊社あてに許諾をお求めください。 なお,本書は個人の方々の学習目的で使用していただくために販売するものです。弊社と競合する営利目 的での使用等は固くお断りいたしております。 落丁・乱丁本は,送料弊社負担にてお取替えいたします。出版部までご連絡ください。 定価 本体1,000円 +税 CD08327