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第5回 IgG4研究会
第5回 IgG4研究会 2011.3.12 世話人 高橋 裕樹 札幌医科大学医学部 内科学第一講座 第5回IgG4研究会 プログラム・抄録集 世話人 高橋 裕樹 (札幌医科大学医学部 内科学第一講座 准教授) 2011年3月12日 土曜日 13時から March 12, 2011 ルネッサンスサッポロホテル SAPPORO, JAPAN ごあいさつ このたび「第5回IgG4研究会」を札幌で開催させて 頂くこととなり、大変光栄に思っております。会を始め るにあたり、一言、ご挨拶申し上げます。 IgG4関連疾患は世界に先駆けて本邦において着目さ れた、自己免疫性膵炎やミクリッツ病を包含する新たな 疾患概念です。もちろん個別の疾患やIgG4関連疾患に 関しては関連学会や厚生労働省の研究班において精力的 に検討が進んでおります。一方、ざっくばらんに、腹を 割って「IgG4」に関わるいろいろなことを、専門領域 を超えて話し合おうといった趣旨で立ち上がったのが本会ですので、皆様も ノーガードで、好奇心丸出しで参加して頂けたらと思います。その意味で本 会の醍醐味は一般演題ということになろうかと思いますが、思いの外、演題 が集まり、十分なデスカッションがとれなかったことが心残りです。しかし ながら、もうひとつの 売り である懇親会がありますので、こちらを十二分 に利用して熱い議論を行って頂けたらと思います。 また手前味噌になりますが、当初、ミクリッツ病に関しては北海道からの 報告が多く、北海道の風土病?では、といったご指摘を受けましたが、一方、 IgG4関連疾患全体に関しては、まだまだ北海道の臨床医に浸透していると は言い難い状況です。そこでIgG4関連疾患に携わる著明な先生たちが札幌 に集まることを利用し、北海道におけるIgG4関連疾患の認知度の向上にも 役立たせて頂こうと思い、教育講演を企画しました。もちろん現在、いろい ろと錯綜しつつある本疾患に関する知識の整理にもなることと思いますので、 お楽しみ頂けたらと思います。 なお、本研究会とは独立した講演会ではありますが、会に先立ちまして同 ホテルで12時から「北海道臨床免疫セミナー」を予定しております。日本 シェーグレン症候群学会理事長の住田孝之教授に「シェーグレン症候群 vs IgG4関連疾患」という大変興味深いタイトルで、お話を拝聴することと なっておりますので、是非ご出席頂けたらと思います。 最後になりましたが、本会の開催にあたり、学術振興助成金、および伊藤 医薬学術交流財団助成金を賜りました。この場を借りて深謝申し上げます。 2011年3月 第5回IgG4研究会 当番世話人 札幌医科大学医学部内科学第一講座 高橋 裕樹 ー1ー 3月12日(土) 地下1階 12:00 ルネッサンスボール ルーム Ⅰ ルネッサンスボール ルーム Ⅱ (札幌臨床免疫セミナー) 13:00 14:00 開会挨拶 一般演題Ⅰ 一般演題Ⅱ 15:00 一般演題Ⅲ 16:00 休憩 17:00 教育講演 18:00 閉会挨拶 19:00 懇親会 20:00 会場配置図 地下1階 ー2ー 会場への交通案内 ルネッサンスサッポロホテル RENAISSANCE SAPPORO HOTEL 〒062-0904 札幌市豊平区豊平4条1丁目11 代表電話 011-821-1111 ファックス 011-842-6191 ■新千歳空港からのアクセス(空港連絡バスで) 北海道中央バス/北都交通により、新千歳空港から札幌都心ゆきバスがご利用になれます。 新千歳空港バス乗り場24番からご乗車ください。しかし『中島公園経由』はルネッサンス サッポロホテル前には停まりませんのでご注意ください。約15 30分間隔で運行されてい ます。 ー3ー ■新千歳空港からのアクセス(JR北海道で) 空港地下1階から、JR北海道(快速エアポート)がご利用になれます。札幌駅まで約40分、 15分間隔で運行されています。 ■札幌駅からのアクセス JR札幌駅から、タクシーで会場まで約10分で到着致します。地下鉄をご利用の場合、札幌 市営地下鉄南北線さっぽろ駅でご乗車頂き、すすきの駅でお降り下さい。すすきの駅3番出 口から国道36号線沿いに東方向にお進みください。徒歩15分で会場につきます。 詳しくは、ルネッサンスサッポロホテルのホームページをご覧下さい。 ー4ー 参加者へのお知らせ 1. 参加者のみなさまへ 3月中旬の札幌の天候は、本州に比べるとまだとても寒い(真冬並み)です。 昨年の3月平均気温は0.1℃です(最低気温3.5℃、最高気温3.5℃)。防寒具の 準備を忘れないようにしてください。また足下が悪い(歩道も積雪状態)ので、 気をつけてご来札ください。 参加費(懇親会費込み)は1万円でございます。会場前の受付でお支払い願います。 2. 宿泊について 宿泊につきましては、各自ご予約をお願い致します。 尚、当会場ホテル様のご計らいにより、「ルネッサンスサッポロホテル」にご宿 泊の場合、電話予約時に「第5回IgG4研究会参加のため」と申し出て頂けま したら、数に限りがございますが、特別割引料金(ツイン/シングルユース 1万 円(朝食付き、サービス料、税込み))、またはツイン/ツインユース 1万5千 円(2名様1室/朝食付き、サービス料、税金別))でご宿泊頂けます。 ー5ー 3. その他のご宿泊先 宿泊につきましては、各自ご予約をお願い致します。 アートホテルズ札幌 札幌市中央区南9条西2丁目2-10 【最寄り駅 地下鉄東豊線豊水すすきの駅】 TEL 011-511-0101 札幌東急イン 札幌市中央区南4条西5丁目1 【最寄り駅 地下鉄南北線すすきの駅】 TEL 011-531-0109 ノボテル札幌 札幌市中央区南10条西6丁目1-21 【最寄り駅 地下鉄南北線中島公園駅】 TEL 011-561-1000 札幌プリンスホテル 札幌市中央区南2条西11丁目 【最寄り駅 地下鉄東西線西11丁目駅/市電中央区役所前駅】 TEL 011-241-1111 ロイトン札幌 札幌市中央区北1条西11丁目1 【最寄り駅 地下鉄東西線西11丁目駅】 TEL 011-271-2711 札幌グランドホテル 札幌市中央区北1条西4丁目 【最寄り駅 地下鉄南北線・東西線大通駅】 TEL 011-261-3311 ー6ー 京王プラザホテル札幌 札幌市中央区北5条西7丁目2-1 【最寄り駅 JR札幌駅】 TEL 011-271-0111 JRタワーホテル日航札幌 札幌市中央区北5条西2丁目5 【最寄り駅 JR札幌駅/地下鉄東豊線さっぽろ駅】 TEL 011-251-2222 ホテルモントレ札幌 札幌市中央区北4条東1丁目3 【最寄り駅 JR札幌駅/地下鉄東豊線さっぽろ駅】 TEL 011-232-7111 ー7ー 4. 発表についてのご案内 発表者の先生方は、参加登録とともに、前のセッション終了30分前までにPC 受 付もお願い致します。一般演題Ⅰでご発表の先生方は12時30分までにPC 受付を 済ませて下さい。 発表データは、Windows Powerpoint(2007)にて作成し、CD-R または USB メモリに保存してお持ちください。動画は基本的には、ご使用になれません。 スライド作成に利用するPowerpoint のバージョンが異なる場合には、動作保証 できません。あらかじめ、Windows Powerpoint(2007)で開けるかどうか ご確認ください。またウイルスチェックを実施してください。 会場には、Windows 7のみを準備しております。 発表後のデータは、こちらで責任を持って消去させて頂きます。PC の不具合に より、発表順番が入れ替わることがございますので、ご承知おき下さい。 発表時間につきまして、教育講演は発表 12分・討論 3分、一般演題Ⅰ Ⅲは発 表時間 5分・討論 3分です。進行の都合上、時間厳守でお願い致します。 5. その他のご案内 世話人会は、3月13日土曜日11時から、会場ホテルの地下1階「ローマの間」に て予定しております。世話人の先生方は、どうぞよろしくお願い致します。 また懇親会後に2次会を近くの『居酒屋 親不孝』(豊平区豊平3条2丁目 011-811-0825)にて行います。参加費は3,000円前後を予定しております。 ー8ー ー9ー プログラム ー10ー 全体のプログラム 13:05 13:58 座長 長岡赤十字病院 内科 佐伯 敬子 先生 01. 喘息症状、全身リンパ節腫脹、蛋白尿、血清IgG4高値で、リンパ節生検 でEBVの関与が疑われた1例ミクリッツ病 新潟大学 和田庸子 02. 右顎下腺腫大を契機に受診し、後腹膜線維症、多発性結節性腎病変、中枢 性尿崩症で発症し、治療中に自己免疫性膵炎を続発したIgG4関連硬化性 疾患の1例 NTT東日本札幌病院 笠原英樹 03. 消退傾向の強い1型自己免疫性膵炎(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis)の1例 倉敷中央病院 能登原憲司 04. 特異疹と考えられる皮疹を呈したIgG4関連疾患の2例 神剛病院 辻 剛 05. IgG4関連疾患の皮膚病変の2例 金沢大学 伊藤直子 06. IgG4高値を呈した硬化性縦隔炎の一例 市立釧路総合病院 高橋文彦 14:00 15:03 座長 神戸海星病院 眼科/角膜センター 安積 淳 先生 07. IgG4関連涙腺炎の臨床病理像 北海道大学 加瀬 諭 08. 結膜に生じたIgG4陽性形質細胞浸潤症例 癌研究会有明病院 辻 英貴 09. IgG4陽性を呈した涙腺炎と陰性涙腺炎との臨床学的検討 杏林アイセンター 今野公士 10. IgG4関連眼窩病変を含む眼付属器リンパ増殖疾患の検討 金沢大学 高比良雅之 11. 結膜組織におけるIgG4陽性形質細胞の意義 金沢医科大学 北川和子 12. IgG4関連疾患における鼻副鼻腔病変の検討 信州大学 茂木英明 13. ミクリッツ病に伴う嗅覚障害に関する検討 札幌医科大学 高野 賢一 15:06 16:00 座長 富山大学 保健センター 松井 祥子 先生 14. 肺生検にてIgG4陽性形質細胞浸潤が顕著な間質性肺病変を呈し Castleman病との鑑別を要した一例 虎の門病院 三瀬広記 15. IgG4関連疾患の肺病変におけるステロイド治療の効果 金沢大学 早稲田優子 16. IgG4関連疾患における胸部CT画像の検討 金沢大学 高戸葉月 17. IgG4関連疾患 天理よろづ相談所病院 八田和大 18. IgG4関連腎症の病理学的研究ーIgG1 についてー 19. IgG4関連疾患におけるアレルギー反応に関する一考察 16:15 非典型像の検討 18:20 4の陽性細胞出現頻度と線維化 山口病理組織研究所 山口 裕 久藤総合病院 菅井 進 座長 金沢大学 リウマチ膠原病内科 川野 充弘 先生 金沢大学 眼科 高比良雅之 先生 E1. IgG4関連疾患 オーバービュー E2. IgG4関連疾患の病態 筑波大学 臨床免疫学 坪井洋人 E3. IgG4関連疾患の病理 岡山大学 病理学 佐藤康晴 E4. 眼部のIgG4関連疾患 神戸海星病院 眼科 安積 淳 E5. ミクリッツ病 札幌医科大学 第一内科 山本元久 E6. 自己免疫性膵炎 信州大学 消化器内科 濱野英明 E7. IgG4関連腎病変 長岡赤十字病院 内科 佐伯敬子 E8. IgG4関連肺病変 富山大学 保健管理センター 松井祥子 金沢医科大学 血液免疫内科 正木康史 ー11ー 教育講演(E1 16:15 E8) 18:20 ー 今回のテーマ ー IgG4関連疾患について知っておきたいこと 座長 金沢大学 リウマチ膠原病内科 川野 充弘 先生 金沢大学 眼科 高比良雅之 先生 E1. IgG4関連疾患 オーバービュー 金沢医科大学 血液免疫内科 正木康史 E2. IgG4関連疾患の病態 筑波大学 臨床免疫学 坪井洋人 E3. IgG4関連疾患の病理 岡山大学 病理学 佐藤康晴 E4. 眼部のIgG4関連疾患 神戸海星病院 眼科 安積 淳 E5. ミクリッツ病 札幌医科大学 第一内科 山本元久 E6. 自己免疫性膵炎 信州大学 消化器内科 濱野英明 E7. IgG4関連腎病変 長岡赤十字病院 内科 佐伯敬子 E8. IgG4関連肺病変 富山大学 保健管理センター 松井祥子 ー12ー 教育講演 E1 IgG4関連疾患 オーバービュー 金沢医科大学 血液免疫内科 正木 康史 IgG4関連疾患の時代変遷を「Before IgG4-era」「IgG4-era」「Post IgG4era」に総括してみる。 1, Before IgG4-era 1)涙腺・唾液腺病変では、Mikulicz J(1888年)、Küttner(1896年)、 Sjögren H(1933年)の各々の疾患概念の発見。Morgan WS ら(1953年)によ るMikulicz 病はSjögren 症候群の一部との論文。一方本邦では耳鼻科今野らによる Mikulicz 病はSjögren 症候群とは異なるとの主張があった混迷の時代。2)自己免疫 性膵炎では、Sarles H(1961年)最初のAIP 報告、Nakano S(1978年)ステロ イド治療奏効例、Kawaguchi K(1991年)病理組織所見LPSP、Toki F(1992年) 画像の主膵管狭細像、Yoshida K(1995年)AIP の概念の提唱。3)全身疾患とし てComings DE(1967年)Multifocal fibrosclerosis の提唱。 2, IgG4-era 2001年Hamano H らによるAIP における高IgG4 血症、組織IgG4 産生形質細胞増 多の発見、その後相次いで様々な臓器疾患での同様の病態の解明、Yamamoto M (2004年)Mikulicz 病もIgG4 関連疾患と報告。全身疾患としてはKamisawa T (2003年)IgG4-related autoimmune disease、同(2006年)IgG4-related sclerosing disease、Masaki Y(2009年)IgG4+MOLPS、Yamamoto M (2009年)SIPS と同義語が混在。2010年2月の厚労省班会議「IgG4 関連疾患; IgG4-related disease」を共通病名に決定。過去の偉人達の業績を、"IgG4"という 鏡で見直し再評価し、病態生理を再構築する時代。 3, Post IgG4-era "IgG4"より上流の異常/原因が発見され、それが診断および治療の指標として用いる 事ができる時代(20XX年) ー13ー E2 IgG4関連疾患の病態 IgG4関連疾患におけるIgG4クラス スイッチ関連分子の解析 坪井 洋人、松尾 直美、飯塚 麻菜、中村 友美、田中 昭彦、 森山 雅文、松本 功、中村 誠司、住田 孝之 筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻 臨床免疫学 日本学術振興会 特別研究員 九州大学大学院歯学研究院 顎顔面病態学講座 【目的】IgG4 関連疾患は血清IgG4 の上昇と病変組織へのIgG4 陽性形質細胞の 浸潤を特徴とする慢性疾患である。近年注目されている疾患であり、臨床像につい ては解析がすすんでいるが、病因・病態に関する基礎的研究は不十分である。最近 になり、本症患者の末梢血中および病変局所における、Th2 細胞およびTreg 細胞 の増加、それらの細胞が産生するサイトカインの上昇が報告され、IgG4 クラスス イッチとの関連が注目されている。今回我々は、本症におけるIgG4 クラススイッ チ亢進の分子メカニズムを明らかにするため、PBMC および唾液腺におけるIgG4 特異的ならびに非特異的クラススイッチ関連分子の発現を定量PCRで検討した。 【方法】IgG4 関連疾患、シェーグレン症候群(SS)、健常人(HC)のPBMC (それぞれN=3)、およびIgG4 関連疾患(N=11)、SS(N=10)の口唇唾液腺 よりRNA を抽出した。IgG4 特異的クラススイッチ関連分子として、Th2 サイト カイン(IL-4、IL-13)、Treg サイトカイン(IL-10、TGFβ)、および転写因子 (GATA3、Foxp3)の発現を、非特異的クラススイッチ関連分子として、AID、 CD40/CD154、IRF4、BAFF、APRIL の発現を定量PCR で比較した。 【結果】SS と比較して、IgG4 関連疾患のPBMC ではBAFF、CD40 の発現が有 意に低下、口唇唾液腺ではIL-10、AID の発現が有意に上昇していた。 【考察】IgG4 関連疾患では、PBMC と口唇唾液腺局所において、クラススイッチ 関連分子の発現は異なる傾向を示していた。本症において、PBMC と病変局所では、 異なる分子メカニズムが病態形成に関与している可能性が考えられた。 【結論】クラススイッチに関連するこれらの分子が、本症の病因・病態に関与して いる可能性が示唆された。 ー14ー E3 IgG4関連疾患の病理 岡山大学大学院医歯薬総合研究科 病理学分野 佐藤 康晴、吉野 正 IgG4 関連疾患は、近年確立されてきた新しい疾患概念で、日本を中心としたア ジア諸国からの報告が多く、全身諸臓器に病変形成が認められる。今回は眼付属器 とリンパ節病変について、その臨床病理学的特徴ならびに診断上の問題点について 述べる。 眼付属器領域においては、その多くが両側性の涙腺腫脹を特徴とし、しばしば唾 液腺病変も合併する。IgG4 関連疾患はステロイド反応性の炎症性疾患であるが、 我々は眼付属器IgG4 関連疾患を背景にMALT リンパ腫が発生し、さらにはIgG4 を産生するリンパ腫が存在することを見出した。 リンパ節病変においては、その組織像は多彩で、現時点では5つの組織型に分類さ れる。全身性にリンパ節腫脹を来す例では、臨床的および組織学的に多中心性 キャッスルマン病との鑑別が必要となるが、抗IgG4 抗体をもちいた免疫染色のみ では鑑別できない例が存在する。そのため血中IL-6 やCRP など血中データが診断 上重要となる。免疫芽球と形質細胞増生による濾胞間拡張(ALPIBP)類似型は、 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫との鑑別がしばしば問題となる。限局性病変としては、 胚中心進展性異形性(PTGC)類似型や炎症性偽腫瘍類似型などがあり、とくに PTGC 類似型は非常に均一な疾患単位を形成することが明らかとなった。 ー15ー E4 眼部のIgG4関連疾患 神戸海星病院 眼科・角膜センター 安積 淳 目的:眼科領域のIgG4 関連病変を検証する。 対象:神戸大学病院および神戸海星病院で経験された眼部IgG4 関連病変。 結果:病理組織検討された205例中42例が血中IgG4 濃度もしくは病巣のIgG4 陽性細胞からIgG4 関連疾患と診断された。また、臨床所見と血中IgG4 濃度/眼 部以外の病理所見から診断されたものも7例あった。涙腺腫脹はほぼ全例にみられた が、両側性が確認できたのは25例であり、顎下腺/耳下腺も含めてIgG4 関連 Mikulicz 病と診断できたのは11例であった。神経障害によると考えられる視力障 害は5例にみられた。なおサザンブロット法で免疫グロブリン遺伝子再構成が陽性で あった症例で血中IgG4 ≧135mg/dlであった症例は8例であった。 結論:眼部に発生するIgG4 関連病変には、典型的なIgG4 関連Mikulicz 病型を とらないものも多い。視神経に沿った病変は重篤な視力障害の原因となる場合もあ る。MALT リンパ腫との鑑別が重要で、可能なぎり生検を行い、遺伝子再構成を含 めた検討が必要である。 ー16ー E5 ミクリッツ病 札幌医科大学 第一内科 山本 元久 ミクリッツ病は、両側性、持続性に涙腺・唾液腺腫脹を呈する原因不明の病態であ る。1880年代の症例報告から疾患概念が形成されていくが、1950年代以降は、病理 組織学的類似性より、シェーグレン症候群と同一であるという認識が定着していった。 しかし21世紀に入り、ミクリッツ病では高IgG4 血症と涙腺・唾液腺組織に著明な IgG4 陽性形質細胞浸潤といった特徴的な血清・病理学的所見を認めることが判明し、 ミクリッツ病の疾患独立性が認知されつつある。現在、ミクリッツ病は共通する病態 基盤を有するIgG4関連疾患の一部分症(IgG4 関連疾患の涙腺・唾液腺炎)として位 置づけられている。 ミクリッツ病は、涙腺・唾液腺腫脹以外に、シェーグレン症候群と同様に乾燥症状 を呈することがある。しかしその程度はシェーグレン症候群に比較し、軽度であるこ とが多い。 治療はステロイド投与が基本となる。涙腺・唾液腺病変のみの場合には、プレドニ ゾロン0.6 mg/kg/日から開始することが多いが、その他の臓器病変(自己免疫性膵 炎や間質性腎炎など)を合併している場合には、プレドニゾロン0.8 mg/kg/日以上 で開始することが多い。治療開始後、腺腫脹は速やかに改善する。また腺分泌能も改 善することがある(腺分泌能の可逆性)。いったんは、臨床的に寛解に導くことがで きるが、ステロイドの減量とともに再燃することも多いのが実情である。 今回、当科の症例データベース(SMART)から、ミクリッツ病の典型例を提示し、 日常診療のポイント(診断、治療、合併症、予後)について概説したい。 ー17ー E6 自己免疫性膵炎 信州大学 消化器内科 濱野 英明 2010年春から本邦では自己免疫性膵炎と膵癌との鑑別において血清IgG4 測定が保 険収載された。自己免疫性膵炎で血清IgG4 上昇を高頻度に認めるとの報告から10年 目にして獲得された成果である。 血清IgG4 上昇と病変組織中の著明なIgG4 陽性形質細胞浸潤を特徴とするIgG4 関 連疾患は自己免疫性膵炎とMikulicz 病に代表されるが、膵臓・涙腺・唾液腺以外にも 下垂体・肺・肝臓・胆道・腎臓・後腹膜・前立腺・リンパ節など多数の部位・臓器で も認められることが報告されている。各領域の臨床家の努力もあり、ここ数年IgG4 関 連疾患について広く認知されるようになったことは誠に喜ばしい。しかし、一方で血 清IgG4 の上昇のみやIgG4 陽性形質細胞の多数浸潤のみをもって、簡単にIgG4 関連 疾患としてステロイド治療に踏み切る例も散見され、臨床家は診断に際してはより慎 重な態度が望まれる。 最近ではAIP がIgG4 関連疾患でlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis (LPSP)を特徴とするtype 1 AIP と非IgG4 関連疾患でidiopathic duct-centric chronic pancreatitis(IDCP)を特徴とするtype 2 AIP に大別されるということ もかなり知れ渡るようになった。しかし、LPSP とIDCP の鑑別に関して病理医相互 の一致率がH-E 染色のみの場合はそれほど高くはないことや、画像所見上において type1 AIP とtype2 AIP とを鑑別するのは極めて困難であるということについては 未だほとんど知られていない。 両者の鑑別がIgG4 というKey word を除くと必ずしも容易ではないということは 一体何を意味しているのか。IgG4 関連疾患が急速に市民権を得ようとしている今、あ らためて問い直す段階にきているのかも知れない。 ー18ー E7 IgG4関連腎病変 長岡赤十字病院 内科 佐伯 敬子 IgG4 関連疾患における腎病変は自覚症状に乏しく腎機能異常や画像異常で偶然発 見されることが多い。高齢者に多い病態であるがたとえ腎不全で発見されてもステ ロイド治療で改善が期待できる。一方診断が遅れると末期腎不全に陥る場合もあり、 正しく診断することは日常診療上重要である。 【臨床像】中高年男性に好発する。自覚症状に乏しく今までは自己免疫性膵炎やミ クリッツ病など腎外病変の全身検索の過程で画像異常、腎機能異常から発見される ことが多かった。しかし最近腎機能低下、検尿異常などから腎病変が先に気づかれ、 血液検査や組織所見から診断される例が増加しており腎病変単独の報告もみられる。 【検査所見】間質性腎炎が主体のため血尿、蛋白尿は軽度のものが多いが糸球体病 変合併例では顕性化する。腎機能は正常から腎不全まで様々である。血清IgG、 IgG4 高値が特徴的で、低補体血症、末梢血好酸球増多、高IgE 血症をしばしば認 める。抗核抗体陽性は多いが特異抗体は通常陰性でCRP は低値、ANCA は陰性であ る。 【画像所見】びまん性腎腫大、腎実質の多発造影不良域、腎腫瘤、腎盂壁肥厚など の異常を認めやすい。この画像異常は他の間質性腎炎ではみられない所見であり特 徴的である。 【腎組織所見】多数のIgG4 陽性形質細胞浸潤と線維化を伴う間質性腎炎が主体であ るが糸球体性病変(膜性腎症が多い)合併例もある。病変分布に偏りがみられやす く尿細管炎は軽微で典型例は独特の線維化を示す。 【診断】血清IgG4 高値とIgG4 陽性形質細胞浸潤を伴う間質性腎炎という所見だけ からでは診断できず、臨床、画像、腎組織所見を合わせた総合的な判断が必要であ る。 【治療】0.6-1.0 mg/Kg/日程度のステロイド治療有効例が多く、腎不全で発見さ れても回復は期待できる。しかし自然軽快例、治療無効の腎不全例も存在し、治療 の適応、方法は今後の課題である。 ー19ー E8 IgG4関連疾患における呼吸器病変 富山大学 保健管理センター 松井 祥子 IgG4 関連疾患は、臓器局所における炎症細胞浸潤と線維化の程度によって多彩 な病態を呈するが、「呼吸器」という臓器内においても同様であることが次第に明 らかになってきた。IgG4 関連疾患における呼吸器病変は、現在までのところ国内 外において数十例の報告がある。その大半は外科病理学の領域からのものであるが、 肺炎症性偽腫瘍、間質性肺炎、縦隔線維腫、胸膜炎など、多彩な病態が報告されて いる。 しかし臨床の現場では、どの程度の頻度で呼吸器病変が生じるのか、どのような 症状が認められるのか、呼吸器病変をどう診断するか、などについては、依然とし て課題のまま残っている。 厚労科研梅原班呼吸器疾患ワーキンググループ(WG)では、富山大学・金沢大 学・信州大学にて経験した呼吸器病変をもつIgG4 疾患35例を後方視的に検討し、 「IgG4 関連呼吸器疾患」の診断への手がかりとなる所見を抽出することを試みた。 その結果、肺炎症性偽腫瘍などの代表的な呼吸器病変以外に、胸部CT 上、1)気 管支・気管支血管束周囲の陰影が多い 2)その結果として、粒状影・すりガラス 影から気管支壁の肥厚や周囲の強い浸潤影に至るまで、強弱のある多彩な陰影が認 められることが明らかになった。 呼吸器病変では、充実性の臓器病変とは異なり、その診断は容易ではない。正確 な診断と治療のためには、できるだけ多くのIgG4 関連疾患症例を集積した上で、 呼吸器病変の症状・画像所見・病理所見についての検討が早急に必要である。当 WG では後方視的調査を行っており、多くの施設のご協力をお願いしたい。 ー20ー ー21ー 一般演題(01 13:05 19) 13:58 座長 長岡赤十字病院 内科 佐伯 敬子 先生 01. 喘息症状、全身リンパ節腫脹、蛋白尿、血清IgG4高値で、リンパ節生検 でEBVの関与が疑われた1例ミクリッツ病 新潟大学 和田庸子 02. 右顎下腺腫大を契機に受診し、後腹膜線維症、多発性結節性腎病変、中枢 性尿崩症で発症し、治療中に自己免疫性膵炎を続発したIgG4関連硬化性 疾患の1例 NTT東日本札幌病院 笠原英樹 03. 消退傾向の強い1型自己免疫性膵炎(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis)の1例 倉敷中央病院 能登原憲司 04. 特異疹と考えられる皮疹を呈したIgG4関連疾患の2例 神剛病院 辻 剛 05. IgG4関連疾患の皮膚病変の2例 金沢大学 伊藤直子 06. IgG4高値を呈した硬化性縦隔炎の一例 市立釧路総合病院 高橋文彦 14:00 15:03 座長 神戸海星病院 眼科/角膜センター 安積 淳 先生 07. IgG4関連涙腺炎の臨床病理像 北海道大学 加瀬 諭 08. 結膜に生じたIgG4陽性形質細胞浸潤症例 癌研究会有明病院 辻 英貴 09. IgG4陽性を呈した涙腺炎と陰性涙腺炎との臨床学的検討 杏林アイセンター 今野公士 10. IgG4関連眼窩病変を含む眼付属器リンパ増殖疾患の検討 金沢大学 高比良雅之 11. 結膜組織におけるIgG4陽性形質細胞の意義 金沢医科大学 北川和子 12. IgG4関連疾患における鼻副鼻腔病変の検討 信州大学 茂木英明 13. ミクリッツ病に伴う嗅覚障害に関する検討 札幌医科大学 高野 賢一 15:06 16:00 座長 富山大学 保健センター 松井 祥子 先生 14. 肺生検にてIgG4陽性形質細胞浸潤が顕著な間質性肺病変を呈し Castleman病との鑑別を要した一例 虎の門病院 呼吸器科 三瀬広記 15. IgG4関連疾患の肺病変におけるステロイド治療の効果 金沢大学 呼吸器内科 早稲田優子 16. IgG4関連疾患における胸部CT画像の検討 金沢大学 呼吸器内科 高戸葉月 17. IgG4関連疾患 天理よろづ相談所病院 八田和大 18. IgG4関連腎症の病理学的研究ーIgG1 についてー 19. IgG4関連疾患におけるアレルギー反応に関する一考察 非典型像の検討 4の陽性細胞出現頻度と線維化 ー22ー 山口病理組織研究所 山口 裕 久藤総合病院 菅井 進 一般演題Ⅰ 13:05 13:58 01 喘息症状、全身リンパ節腫脹、蛋白尿、血清IgG4高値で、リ ンパ節生検でEBVの関与が疑われた1例 ○和田 庸子、小島 勝、小林 大介、村上 修一、黒田 毅、 西 慎一、中野 正明、成田 一衛 新潟大学大学院医歯学総合研究科 内部環境医学 獨協医科大学医学部 形態病理学 新潟大学 保健管理センター 神戸大学大学院医学研究科 腎臓内科学分野 新潟大学医学部保健学科 検査技術学専攻 72歳女性。2008年夏より喘息症状が出現、前医で全身のリンパ節腫脹を認め腋窩 リンパ節生検を施行、反応性リンパ節炎と診断。抗核抗体陽性より膠原病を疑われ当 院紹介受診。この時蛋白尿を認め、精査目的に2009年1月当科入院。各種自己抗体 陰性、血清補体値及びCRP 値は正常で、IgG 2155mg/dl、IgG4 415mg/dl (17.2%)と高値。腎機能は正常で尿蛋白 2.7g/日、腎生検では足突起の広範な消 失と共に、一部上皮下に沈着物を認めた。前医でのリンパ節生検で、HE は濾胞過形 成で濾胞間に巣状の形質細胞浸潤を認め、IgG4 はごく少数が陽性、また胚中心に EBER 陽性細胞を多数認めた。血清EBV 抗体価測定は既感染パターン。その後の外 来経過観察で、喘息症状は吸入ステロイドで軽快、蛋白尿はARB 内服のみで陰性化 し、全身リンパ節腫脹も無治療で縮小傾向となった。本例はIgG4 関連疾患類似の臨 床症状出現にEBV の関与が示唆された、興味深い症例と考えられた。 ー23ー 02 右顎下腺腫大を契機に受診し、後腹膜線維症、多発性結節性腎 病変、中枢性尿崩症で発症し、治療中に自己免疫性膵炎を続発 したIgG4関連硬化性疾患の1例 ○笠原 英樹、横田 美紀、竹内 淳、吉岡 成人、篠原 正英 NTT東日本札幌病院 リウマチ膠原病内科 同 糖尿病内分泌内科 症例 70歳 男性 主訴 口渇、多飲、多尿、右顎下腺腫大 既往歴 高血圧、不整脈にてペースメーカー挿入 現病歴 平成20年11月頃から口渇、多飲・多尿、夜間尿を自覚していた。平成21 年1月上旬右顎下部の腫大に気づき近医を受診。PET-CT にて右顎下腺と腹部大動脈 周囲の軟部組織の腫脹、両腎に多発性結節性病変を認め、同部位にPET の集積を認 めた。同年2月に当科紹介入院。顎下腺生検でリンパ球とIgG4 陽性の形質細胞の浸 潤を認め、IgG4 は187 mg/dlに上昇しておりIgG4 関連硬化性疾患と診断。多飲 多尿の原因は中枢性尿崩症と診断。PSL 30 mg/dayで治療を開始し後腹膜線維症 と腎の多発結節性病変は改善。治療経過良好で平成22年6月よりPSL 5 mg/dayへ 減量した。同年10月に高血糖となり入院。膵体部から尾部にかけて動脈相で造影効 果の低下、静脈相で造影効果の増強するびまん性の腫大を認め、IgG 1805 mg/dl への上昇傾向(IgG4 93.7 mg/dl)もあり自己免疫膵炎と診断。PSL 40 mg/day へ増量し膵の腫大や血糖コントロールも改善を認めた。多彩な病態を呈した症例とし て貴重であり報告する。 ー24ー 03 消退傾向の強い1型自己免疫性膵炎(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis)の1例 ○能登原 憲司、和仁 洋治、内野 かおり、藤澤 真義 倉敷中央病院 病理検査科 姫路赤十字病院 病理診断科 IgG 関連疾患の炎症消退後の変化は経験する機会が乏しく、議論がないのが実情 である。私たちは、消退性変化の強い1型自己免疫性膵炎(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis; LPSP)と考えられる1例を経験したので、報告する。 【症例】60歳台、男性。既往歴に特記すべきことなし。健診の超音波検査にて膵腫 瘤を指摘され受診。自覚症状はなく、血液生化学、血清学的検査もほとんど正常 (IgG4: 48 mg/dl)。膵癌が疑われ、手術が施行された。 【病理所見】線維芽細胞の増生と線維化を主体とする炎症で、リンパ球・形質細胞浸 潤が疎らにみられた。一部にstoriform fibrosis の名残を思わせる像があり、膵管 上皮周囲の炎症、静脈の閉塞像が認められ、形質細胞は小数ながらも、その多くは IgG4 陽性であった。 【結語】炎症の消退したIgG4 関連疾患は病理学的にも診断は困難であるが、多数の 標本から手がかりとなる所見を探すことが診断の上で重要であると思われる。 ー25ー 04 特異疹と考えられる皮疹を呈したIgG4関連疾患の2例 ○辻 剛、千藤 荘、熊谷 俊一、関向 大介、安積 淳、 池田 哲也、清水 秀樹、船坂 陽子、錦織 千佳子 神剛病院 膠原病リウマチセンター 神戸海星病院 眼科 神戸大学附属病院 皮膚科 症例1:56歳女性。1997年頃より両眼瞼腫脹を自覚していた。次第に両顎下腺・ 耳下腺腫脹が出現。2007年には高IgG4 血症と自己免疫性膵炎の合併を認め、 IgG4 関連疾患と診断された。プレドニゾロンで改善も、減量により血中IgG4 が上 昇するためシクロスポリン併用で加療中、左耳垂・左下顎から頚部にかけて浸潤性紅 斑が出現した。 症例2:54歳女性。2008年より右眼の視野障害・眼窩内病変を認め、高IgG4 血 症を認めIgG4 関連疾患と診断。プレドニゾロン内服で加療も、ステロイド減量下 IgG4 は上昇していた。2009年8月頃よりに左頬部・右下顎に浸潤を触れる淡紅色 紅斑が出現した。その後に外見から発見できなかった眼窩内病変の増大により急激な 視力障害を生じステロイドパルスを要した。両患者の皮疹は病理組織学的検討で付属 器周囲の密なリンパ球とIgG4 陽性形質細胞の浸潤が認められ、IgG4 関連病変と考 えた。 ー26ー 05 IgG4関連疾患の皮膚病変の2例 ○伊藤 直子、覚知 泰志、原 怜史、川村 由佳、水島 伊知郎、 濱野 良子、藤井 博、山田 和徳、松村 正巳、川野 充弘、 長谷川 稔、竹原 和彦 金沢大学附属病院 代謝内科 同 リウマチ膠原病内科 同 皮膚科 症例1:60代男性。高IgE 血症、高IgG4 血症を伴う左眼球突出と後頸部の皮下腫 瘤を認め、涙腺生検にてIgG4 関連疾患と診断。皮膚生検では多数のIgG4 陽性形質 細胞(IgG4+PC)の浸潤を認めた。ステロイド投与にて軽快したが、減量中に涙腺 腫脹と皮下腫瘤の再燃を認めた。 症例2:60代男性。右涙腺・両側顎下腺腫脹を認め、高IgG4 血症の存在と涙腺生 検および唾液腺生検にて線維化を伴う多数のIgG4+PC の浸潤を認めたことから IgG4 関連疾患と診断した。ステロイドが著効したが、減量中に左耳介後面 耳後部 に掻痒感を伴う皮下腫瘤が出現した。皮膚生検では、皮下組織を中心に好酸球浸潤を 伴う著しいリンパ形質細胞浸潤をみとめ、形質細胞の多くはIgG4 陽性であった。ど ちらの症例もステロイド減量とともに再燃しており、皮膚もIgG4 関連疾患の標的臓 器として注意が必要と考えられた。 ー27ー 06 IgG4高値を呈した硬化性縦隔炎の一例 ○高橋 文彦、阿部 敬、牛島 慶子、松永 康隆、若杉 英樹、 伊藤 美樹、藤井 健一、鈴木 一也、後藤 啓、米澤 和彦、 吉田 豊、篠村 恭久 市立釧路総合病院病院 消化器内科 同 病理部 札幌医科大学 第一内科 症例は、71歳男性。近医での採血でTP 高値のため精査目的に当科血液外来を紹介 受診。IgG 4675 mg/dl と高値であり、多発性骨髄腫疑われたが、M 蛋白は陰性。 IgG4 は3870 mg/dl であった。CT、PET にて縦隔に腫瘤性病変を認めたため、 当院外科にて胸腔鏡下生検を施行。硬化性縦隔炎の診断となった。5 mg/kg でプレ ドニゾロンを開始。IgG4 値は徐々に低下し、縦隔の腫瘤影は縮小しPET 検査でも 集積は認めていない。 硬化性縦隔炎は比較的稀な疾患であり、本邦の統計では全縦隔炎症症例302例中 12例と報告されている。IgG4 関連疾患では背景に種々の腫瘍性病変が存在するが、 本疾患との関連については報告が少なく、貴重な症例と考えられ、若干の文献的考察 を加えて報告する。 ー28ー 一般演題Ⅱ 14:00 15:03 07 IgG4関連涙腺炎の臨床病理像 ○加瀬 諭、石嶋 漢、野田 実香、石田 晋 北海道大学 眼科 目的:IgG4関連疾患は多臓器疾患であり、眼部では涙腺炎を来すことが特徴である。 本研究では、IgG4関連涙腺炎の臨床像を明らかにすることを目的とする。 方法:平成17年から21年までに北海道大学眼科を初診し、IgG4 関連硬化性涙腺炎 と診断された7例12眼を対象とし、眼科的所見、診断、治療内容を調査した。 結果:男性1例、女性6例、発症年齢は52 72歳(平均61.3歳)、両眼性5例、左眼 発症2例であった。主訴は上眼瞼腫脹であった。眼科的所見は、軽度の角膜上皮障害 3例6眼、涙液分泌機能低下2例3眼、眼球突出2例2眼であった。MRI では涙腺部に 腫瘤が検出された。血清IgG4 値は201~1370 mg/dl (平均:513 mg/dl)で、全 例で上昇していた。涙腺の病理組織像はリンパ形質細胞浸潤、線維化であり、IgH 遺伝子再構成はなかった。形質細胞におけるIgG4/IgG は全例で50%以上であった。 全身合併症はリンパ節腫脹が2例、両側性唾液腺炎3例、自己免疫性膵炎1例であった。 治療はステロイドパルス療法1例、ステロイド薬内服4例、経過観察2例であった。ス テロイド治療を行った症例では、涙腺腫瘤は縮小し、血清IgG4 値が低下した。 結論:IgG4 関連涙腺炎は、血清IgG4 値の上昇、涙腺組織でのIgG4 陽性形質細胞 浸潤を示し、ステロイド薬に反応する疾患である。IgG4 関連多臓器障害がない症例 が混在することから、IgG4 関連疾患は涙腺炎で初発し得ることが判明した。 ー29ー 08 結膜に生じたIgG4陽性形質細胞浸潤症例 ○辻 英貴、照井 康仁、小林 めぐみ、竹内 賢吾、斉藤 瞳、 蕪城 俊克 癌研究会有明病院 眼科 癌研究会有明病院 化学療法科 癌研究会癌研究所 分子標的病理プロジェクト 東京大学医学部付属病院 眼科 緒言 眼科におけるIgG4 関連硬化性疾患は主に涙腺を中心に生じるのに対し、MALT リン パ腫を筆頭とする悪性リンパ腫は眼窩内や結膜にも生じる。今回筆者らは結膜に生じ たIgG4 陽性形質細胞浸潤症例を経験したので報告する。 症例 84歳の女性で、近医にて左右)結膜充血にて点眼治療するも増悪し紹介された。生 検にてκ、λ の偏りはなくIgG4 陽性形質細胞浸潤を認めたが、悪性所見は見られな かった。全身検索では血清IgGκM 蛋白陽性で、FDG-PET にて右)結膜のみならず 直腸にも集積が見られたが、本人から精査は拒否された。両眼にぶどう膜炎も併発し ていたが、ステロイドの局所投与治によって眼部症状は全て軽快し、眼部の経過は良 好である。今後も全身を含めて経過観察を行っていく予定である。 結論 IgG4 陽性形質細胞が結膜に浸潤し、IgG4 関連硬化性疾患と考えられたが、他の所 見からは結膜に好発するMALT リンパ腫や、形質細胞腫などの可能性が高い症例を経 験した。病理像のみならず全身状態の検索を十分に行うことにより各疾患の鑑別を 行っていくことが重要と思われた。 ー30ー 09 IgG4陽性を呈した涙腺炎と陰性涙腺炎との臨床学的検討 ○今野 公士、平形 明人、寺戸 雄一 杏林アイセンター/杏林大学 眼科学教室 杏林大学 病理学教室 【目的】眼科領域におけるIgG4 関連疾患は主にMikulicz 病であるが、実際の診療 では涙腺炎単独が多い。今回、眼瞼腫脹を認める涙腺炎疾患に対して血清IgG4 を測 定し臨床所見を検討した。 【対象と方法】対象は眼瞼腫脹かつ画像所見にて涙腺腫脹を認めた9例。方法は、血 清IgG4 値が135 mg/dl 以上かつ血清IgG4/IgG 比5%以上をA 群5例(男性4例 女性1例、平均57歳)、それ以外の涙腺炎をB 群4例(女性4例、平均32歳)とし、 採血(IgG4、C3、C4、CH50、他)、プレドニゾロン内服、涙腺組織所見を各群で 検討した。 【結果】A 群の平均IgG4 値は624.8 mg/dl、B 群32.4 mg/dl、A 群のC3、C4、 CH50 は全て高値を示し、全身の硬化性病変は認めなかった。プレドニゾロン漸減療 法にて、A 群全例は低用量が継続した一方、B 群では全例離脱し完治した。組織学的 には、形質細胞中心であり、IgG4/IgG 比50%以上を8割に認めた。 【結論】IgG4 疾患は低補体血症を認める報告があるが、今回は全例でCH50 が高値 であり、また涙腺炎の完治にステロイド離脱が難しかった。 ー31ー 10 IgG4関連眼窩病変を含む眼付属器リンパ増殖疾患の検討 ○高比良 雅之、小澤 由明、濱岡 祥子、杉山 和久 金沢大学医学部 眼科 【目的】IgG4 関連疾患と鑑別を要する眼付属器リンパ増殖疾患の当院での内訳を提 示する。 【症例】金沢大学病院にて1997年から2010年8月の期間に、眼付属器切除標本から 病理診断されたリンパ増殖疾患の97症例を後ろ向きに調べた。 【結果】内訳は、MALT リンパ腫が44例、びまん性大細胞型B 細胞性リンパ腫が14 例、濾胞性リンパ腫、マントルリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫がそれぞれ1例、反 応性リンパ過形成・リンパ浸潤(以下RLH )が36例であった。IgG4 染色は2004 年11月以降に実施され、病理でIgG4 関連RLH と診断された症例は13例であり、同 期間の結膜を除く眼窩原発リンパ増殖疾患52症例の25%を占めた。ただし、この13 例中1症例では血清IgG4 値は正常であった。 【考察・結語】眼窩のリンパ増殖疾患ではリンパ腫の頻度が高く、その治療に際して は、病理による確定診断が重要である。 ー32ー 11 結膜組織におけるIgG4陽性形質細胞の意義 ○北川 和子、黒瀬 望、正木 康史、梅原 久範、佐々木 洋、 菅井 進 金沢医科大学 眼科 同 臨床病理学 同 血液免疫内科学 久藤総合病院 【目的】全身的あるいは眼科的にIgG4 関連疾患と診断された症例を含め、結膜にお けるIgG4 陽性形質細胞浸潤の有無および程度について検討した。 【対象と方法】IgG4 関連疾患あるいは疑い例、結膜炎症を伴うとされるシェーグレ ン症候群等について、従来より行われているサルコイドーシスにおける結膜生検法に 準じて結膜生検を行い、HE 染色、免疫染色(IgG、IgG4、IL-6等)を施行した。 【結果】 IgG4 関連涙腺炎では、ステロイド投与中の症例を除きいずれも陽性細胞 が確認され、後腹膜線維症疑い例でも結膜に陽性細胞が観察された。しかし診断基準 の比率を超えたのは1例のみであった。対照として施行したシェーグレン症候群確定 例ではすべて陰性であった。 【結論】結膜は生検が容易な組織であり、術後合併症もまったくなかった。IgG4 陽 性細胞の比率は低率であることが多かったが、シェーグレン症候群では陰性であるこ とより何らかの診断的意義があることが推測された。 ー33ー 12 IgG4関連疾患における鼻副鼻腔病変の検討 ○茂木 英明、工 穣、宇佐美 真一、安尾 将法、濱野 英明、 上原 剛、川崎 健治 信州大学医学部 耳鼻咽喉科 同 呼吸器内科 同 消化器内科 同 臨床検査部 近年、耳鼻咽喉科領域においてはミクリッツ病における硬化性唾液腺炎がIgG4 関 連疾患のひとつと考えられるようになっている。これ以外に、我々はこれらIgG4 関 連疾患に鼻副鼻腔病変が合併することを耳鼻咽喉科関連学会にて報告した。また他施 設からも嗅覚障害を来すことが報告されており本疾患と鼻副鼻腔には何らかの関連が 示唆される。 今回我々はIgG4 関連疾患として認知されている自己免疫性膵炎、硬化性唾液腺炎 の患者について、それらの病状と副鼻腔病変の関連について検討した。全症例におい て血清中のIgG4 が高値を示し、自己免疫性膵炎に対するステロイド治療により、関 連するその他の症状とともに鼻副鼻腔病変が改善する傾向がみられた。IgG4 関連疾 患における副鼻腔病変は通常の副鼻腔炎とは病態が異なる可能性が考えられる。 (Moteki et al. Acta Otolaryngol. in press) ー34ー 13 ミクリッツ病に伴う嗅覚障害に関する検討 ○高野 賢一、氷見 徹夫、山本 元久 札幌医科大学医学部 耳鼻咽喉科 同 第一内科 ミクリッツ病は唾液腺の両側性腫脹をきたす疾患であり、近年IgG4 血症を呈し、 組織学的にもIgG4 陽性細胞浸潤を認めることが報告されている。自験例の検討でも、 ミクリッツ病38例の血清IgG の平均は2848.7 1788.7( SD)mg/dl で、高 IgG 血症(IgG>1800 mg/dl)を呈したのは29例(76%)であり、総IgG 量に 占める血清IgG4 の割合は26.7 10.4% と高値であった。摘出顎下腺標本を検討し た結果、IgG4 陽性形質細胞浸潤が認められた。 今回われわれはミクリッツ病患者において嗅覚障害を訴える症例が多いことに着目 した。ミクリッツ病患者38例中16例(42%)に嗅覚障害を認めた。CT上、慢性副 鼻腔炎を認めない、あるいは認めても軽度でありながら嗅覚障害を自覚し、ステロイ ドによる治療で改善する症例がミクリッツ病患者に認められ、鼻粘膜生検を行うと著 明なIgG4 陽性形質細胞浸潤が認められた。一方、嗅覚障害を伴わない症例では、鼻 粘膜組織でもIgG4 は陰性であった。ミクリッツ病に合併する嗅覚障害について考察 を加え報告する。 ー35ー 一般演題Ⅲ 15:06 16:00 14 肺生検にてIgG4陽性形質細胞浸潤が顕著な間質性肺病変を呈 しCastleman病との鑑別を要した一例 ○三瀬 広記、宮本 篤、諸川 納早、宇留賀 公記、花田 豪康 杉本 栄康、岸 一馬、乳原 善文、諏訪部 達也、藤井 丈士 虎の門病院 呼吸器科 同 腎センターリウマチ膠原病科 同 病理部 症例は41歳女性。2002年に間質性肺炎を指摘されるも経過観察のみ。2008年貧 血が指摘され子宮筋腫がその原因とされリュープリンによる治療を受けるも効果が乏 しく手術目的にて当院入院したが肺病変が高度で、多クローナル性高γ グロブリン血 症(IgG 6170 mg/dL、IgG4 971 mg/dL、IgA 1508 mg/dL、IgM 444 mg/dL、IgE 212 mg/dL、M蛋白(—))を認め、TP 14.4 g/dL、Alb 2.8 g/ dL、RBC 3.69 106 /μl、Hb 10.7 g/dl、Ht 34.1 %、Plt 395 103 /μL、 KL-6 955 U/mL、SP-D 68.8 μg/L、IL-6 10.2 ng/Lであった。表在リンパ節 腫大や大唾液腺腫大は明らかでなく、Ga シンチでは異常集積像が明らかではなかっ た。CT では小粒状陰影が全肺野にび漫性にみられ、気管支血管壁肥厚像、一部に結 節性病変をも認めVATS 下肺生検を施行。形質細胞やリンパ球の浸潤が高度でIgG4 陽性細胞がIgG 陽性細胞に占める割合が約50%を占めた。同時期に行われた口唇生 検でもIgG4 陽性細胞が30%にみられた。IgG4 関連疾患を第一に考えPSL 20 mg より開始した所、徐々に改善傾向を見せているが免疫グロブリンの正常化には至って いない。リンパ節の組織像が確認されていないがCastleman 病との異同も考慮しつ つ加療中である。 ー36ー 15 IgG4関連疾患の肺病変におけるステロイド治療の効果の検討 ○早稲田 優子、犬塚 賀奈子、高戸 葉月、市川 由加里、 西澤 依小、片山 伸幸、安井 正英、川野 充弘、藤村 政樹 金沢大学附属病院 呼吸器内科 金沢市立病院 呼吸器科 金沢大学附属病院 リウマチ膠原病内科 【目的】IgG4 関連疾患はステロイド治療が有効である。 【対象】当科にて病理学的に肺の組織よりIgG4 関連肺疾患と診断された5例 (IgG4 中央値 1720 mg/dL)。胸部CT において、結節影(0/5例)、GGO (1/5)、間質影(3/5)、気管支壁肥厚(4/5)、粒状影(5/5)、肺門縦隔リン パ節腫脹(5/5)に分類し治療前後のIgG、IgE 値、画像の変化について検討した。 【結果】IgG、IgE 値は治療前がそれぞれ2330-3695(中央値 3070)mg/dL、 302-2591(中央値 1226)IU/mLであり、治療後がそれぞれ1140-1960(中央 値 1310)、147-2014(中央値 375)であった。肺病変のみの1例を除き、残り4 例はすべて比較他臓器(顎下腺腫大2例、膵腫大2例)がステロイド治療により改善 した。肺病変の変化に関してはGGO 1/1例、間質影 2/3例、気管支壁肥厚 0/4例、 粒状影 1/5例の改善を認めた。 【結語】IgG4 関連肺疾患において、GGO や間質影などの肺病変、リンパ節病変は その他の臓器と同様軽快する傾向にあるが、気管支壁肥厚や粒状影などの気道病変は 治療反応性が悪い可能性がある。 ー37ー 16 IgG4関連疾患における胸部CT画像の検討 ○高戸 葉月、早稲田 優子、犬塚 賀奈子、市川 由加里、 片山 伸幸、安井 正英、川野 充弘、藤村 政樹 金沢大学附属病院 呼吸器内科 金沢市立病院 呼吸器科 金沢大学附属病院 リウマチ膠原病内科 【目的】IgG4 関連疾患における肺病変としては偽腫瘍、肺門縦隔リンパ節腫脹、間 質性肺炎、気管支壁肥厚などが報告されている。 【対象】当科にて病理学的にIgG4 関連疾患と診断され、胸部異常陰影に対して当科 紹介となった11例。当科初診時胸部CT において、結節影、GGO、間質影、浸潤影、 気管支壁肥厚、粒状影、肺門縦隔リンパ節腫脹に分類し検討した。 【結果】初診時IgG 値は1130-8370(中央値2990)mg/dL、IgG4 値は 105-3440(中央値 791)mg/dL、IgE 値は86-1606(中央値 1033)IU/mL であった。胸部CT における肺病変は結節影 0/11例(0%)、GGO 7/11例 (63.6%)、間質影 9/11例(81.8%)、浸潤影 3/11例(27.3%)、気管支壁 肥厚 10/11例(90.9%)、粒状影 11/11例(100%)、肺門縦隔リンパ節腫脹 11/11例(100%)であった。 【結語】IgG4 関連疾患の肺病変として粒状影や気管支壁肥厚などの気道病変に着目 し、今後病理も含めた症例を蓄積することがIgG4関連肺疾患を検討する上で重要だ と考えられた。 ー38ー 17 IgG4関連疾患 非典型像の検討 ○八田 和大 天理よろづ相談所病院 膠原病センター IgG4 関連疾患の典型例の診断は問題ない。臨床像、IgG4 関連疾患の合併(ミク リッツ症候群、自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症、一部の間質性腎炎)、 組織所見で独特の線維化 とIgG4 陽性形質細胞の浸潤(IgG4/IgG>0.5)があり、 IgG4 高値であれば診断可能である。典型的な臨床像は明確になったが、一方で非定 型例もみられる。 IgG 値に関しては、疾患別では、自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、ミクリッツ症 候群、眼窩腫瘍などではIgG4 値は高値が多く、後腹膜線維症は(IgG4 関連疾患と よく知られているが)、単独ではそう高値でもないことも多い。一部の膠原病、血管 炎、肉下種性疾患(結核など)、悪性腫瘍の一部でも高値になるといわれる。しかし 特に保険収載され多くの疾患で測定されやすくなり、さらに非典型像を呈するものも 多くなった。そこで、 ①IgG4 高値であるが、病像が典型的ではないもの。 ②典型的な病像であるが、IgG4 が低値なもの、または組織が異なるもの。 を検討した。 自験例では、①では、慢性EBV 感染症、形質細胞関連疾患での一部など、また、 ②としては自己免疫性膵炎様病態、炎症性偽腫瘍に合併する病態、大動脈炎、後腹膜 線維症などを呈してもIgG4 値は低値のものなど例外的な例を主に検討してみた。 ー39ー 18 IgG4関連腎症の病理学的研究 ーIgG1 度と線維化についてー 4の陽性細胞出現頻 ○山口 裕、長田 道夫、山中 宣昭、IgG4関連腎症研究グループ 山口病理組織研究所 目的)我々は多施設共同で20例を集め、その中AIP のある8症例とない例8例を対 象にIgG4 関連腎症についてIgG1-4 の陽性細胞出現頻度を検討し、硬化性線維化に ついてその中対象はAIP の5例とない8例で、主に電顕で検索した。 結果)AIP の8例で平均IgG1-4 陽性細胞出現頻度は26.6%、5.7%、23.4%、 44.3%で、ない8例平均は22.0%、4.1%、21.1%、52.2%であった。血中濃度と 比較し、IgG1、IgG2 は著明に減少し、IgG3、IgG4 陽性細胞出現頻度は高度に増 加している。対照したANCA 関連腎炎で症例によるその出現頻度がかなり区々であ るが、組織学的Stage A、B、C であってもその出現頻度に大きな差違はなかった。 電顕では、Stage A でも線維芽細胞或いは筋線維芽細胞がリンパ球や形質細胞浸潤 巢に随伴して出現し、更にStage が進む共にそれらの細胞が増加し、硬化性線維化 が進展する。線維芽細胞や筋線維芽細胞の増生が線維沈着部位に一致して見られた。 考察)間質浸潤細胞はIgG1、3、4 陽性細胞が主であり、免疫学的に偏った反応 と思われる。通常の炎症後線維化と異なり、早期に硬化性線維化が進展し変異した現 象と考えられる。 ー40ー 19 IgG4関連疾患におけるアレルギー反応に関する一考察 ○菅井 進、黒瀬 望 久藤総合病院 金沢医科大学 臨床病理 IgG4 関連疾患の所見:MALT を首座とした疾患である。アレルギー疾患の先行な いし合併がある。組織はPatchy な病変分布がありBasophile(Ba)、Mast cell (MC)、Eosinophile(Eo)が見られる。血清所見はIgG4 高値とIgE 高値がある。 考察:1.TSLP は炎症性Th2 の活性化によりBa、MC、Eo とIgE を増加させる。 2.IL‐18 により炎症性Th1 が活性化する。スーパーTh1 の誘導によるIL-13 の 産生でBa、MC、Eo が増加する。Th1 サイトカインにより PCV 内皮細胞が活性化 しhoming が亢進する。3.活性化Ba、MC はMHC クラスI、II と共刺激分子を発 現し抗原提示細胞となって免疫のInitiator として働く。4.腸管内の抗原による未 熟DC の活性化がTr1、Treg を活性化する。腸管Tr1、Treg はIL-10 産生により IgE 産生を抑制してIgG4 産生を増加させ、TGF‐β の産生によりMC とともに線維 化を促進する。 結語:アレルギー反応がMALT の炎症を増強し、その抑制機序としてTr1、Treg の増強とIgG4 の高値が説明しうる。 ー41ー おわりに このたびは、第5回IgG4研究会の案内および演題募集などについて、 IgG4研究会事務局 金沢大学 川野充弘先生に大変お世話になり、ありが とうございました。 本研究会の内容が、ご参加頂ける先生方のご診療およびご研究にお役に立 てるようにスタッフ一同、全力を尽くして参りたいと思います。どうぞよろ しくお願い申し上げます。 なお、本会におきましては、平成22年度学術振興事業助成金、および平 成22年度財団法人伊藤医歯薬学術交流財団の助成を受けております。 第5回IgG4研究会事務局 (札幌医科大学医学部内科学第一講座) 山本 元久、菅谷 壽晃、苗代 康可、鈴木知佐子 小原美琴子、田邉谷徹也、矢島 秀教、五十嵐哲祥 伊東 文子、菅野 伸一、三橋 慧、 山本 至 石上 敬介、片平 理絵、糸井 杏子、吉田 理恵 花田明日香 ー42ー