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認知意味論

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認知意味論
認知意味論
松本 曜(神戸大学)
http://www.lit.kobe-u.ac.jp/linguistics
http://www.lit.kobe-u.ac.jp/~yomatsum/kakikooza1.ppt
認知意味論
• 1970年代から発展した意味研究
• 意味の問題を人間の一般的認知能力と
の関連で考察する
• Fillmore, Lakoff, Langacker, Talmy,
Sweetser, Geeraerts, Taylor, Fauconnierら
トピック
1. 認知意味論の意味観
2. 認知意味論的な語の意味論
(プロトタイプ)
3. 主体的移動(虚構移動)表現
I 認知意味論の意味観
1. 意味に関する様々な考え方
意味=記号が伝えるもの
cf. ソシュール
「表すもの」能記(signifiant)=聴覚映像
「表されるもの」所記(signifié)=概念
1. 意味とは指示物の集合である。
外延(extension, denotatum)
vs.内包(intension)
「駒大苫小牧高校」
「2004年夏の高校野球優勝校」
2. 意味とは使用の条件である。
The meaning of a sign S is conditions
to be satisfied by something in order that
it may correctly be said to be denoted by S
Sørensen 1970:75
多くの場合、外延が満たす条件と
考えられてきた
3. 意味とは、語と語の対立から
定義されるもの
。
意義(sense) vs. 指示義(reference)
By the sense of a word we mean
its place in a system of relationships
which it contracts with other words
in the vocabulary. Lyons 1968: 427.
他のアプローチの特徴
• 「概念」などの心的なものを避けよう
としている
• 世界を認識して表現する認識主体の存
在が無視されている
2. 認知意味論の意味観:
●意味とは概念である
• I embrace a form of “conceptual” or
“ideational” theory of meaning that
semantic theorists so commonly feel
obliged to challenge. … there is nothing
inherently mysterious about its basic
character, nor is cognition beyond the realm
of scientific inquiry Langacker 1988:50
認識主体の存在
• 表現の意味とは、表された状況を客体
的(objective)に特徴づけることに還元す
ることはできない。言語学的意味論に
とって同等に重要なのは、認識主体が、
表現のための選択の中で、どのように
状況を解釈(construe)し、描き出すかで
ある。 (Langacker 1991:316)
言語における主体的解釈
(subjective construal)
言語表現の中に、認識主体が関与する
主体的変化(subjective change)
主体的移動(subjective motion)
主体的変化(痕跡的表現)
角が落ちた四角
真ん中が切れた線
主体的移動
(4) a
The highway runs from Los
Angeles to New York.
b. The highway runs from
New York to Los Angeles.
移動の存在の言語的証拠
• The road runs along the shore for a while.
• その{道/*送電線}は川沿いを進む。
終結性(telicity)
Vendler1967, Dowty 1979など
(1)
a.
b.
John ran.
John ran two miles.
(2)
a.
John ran
{for two hours/*in two hours}.
John ran two miles
{*for two hours/in two hours}.
b.
atelic
telic
終結性:概念化の問題
Telicity は、現実世界においてある事象が
終結点を持っているかどうかではなく、
現実世界の事象をどのように認識して
表現するかの問題。Cf. Krifka 1998
言語の選択的性質
言語はすべてを表現しない。
文法的に必要な情報、話者が伝え
たい情報を選択して伝える。
●「百科事典的」知識の重視
意味の知識と物の知識との境界線は
明確に引くことはできない
(5)
a.
John is in the phone book. (ジョンは電話帳に載っている)
b.
The insect is in the phone book.
(虫が電話帳の中にいる)
frame, domain
語の背後には世界に関する知識がある。語の使
用は、その知識を喚起する。
Fillmore
Langacker
frame
domain
weekend
arc
FrameNet project
http://www.icsi.berkeley.edu/~framenet
フレームの存在
• 山田は、修士論文の指導を得るために、
先生の研究室に入っていった。その先
生は、山田の説明を聞いた後、一冊の
本を本棚から取って、山田に渡した。
●言語の意味には動機付けがある。
• 非言語的な領域との関連性
環境的動機付け
生理的動機付け
認知的動機付け
経験の身体性(embodiment)
対立する考え方
言語は現実世界を恣意的に分割する
• 鈴木 1973
私 の立場を、一口で言えば、「始めに
ことばありき」ということにつきる。...
ことばがものをあらしめるということは、
世界の断片を、私たちが、ものとか性質
として認識できるのは、ことばによって
であり、ことばがなければ、犬も猫も区
別できない筈だというのである。30-31
鈴木 1973
• このようにことばというものは、渾
沌とした、連続的で切れ目のない素
材の世界に、人間の見地から、人間
に取って有意義と思われる仕方で、
虚構の分節を与え、そして分類する
働きを担っている。 33-34
例:色彩空間の分割
構造意味論:
色彩空間の分割の恣意性を主張
cf. 虹の色の数
普遍性と生理的基礎
Berlin & Kay (1969)
世界の諸言語における色彩語の焦
点はかなりの確率で一致する。
Kay & McDaniel (1978)
それには生理的動機付けがある。
マンセル色票
英語の色彩語とその焦点
諸言語における焦点の一致 Berlin & Kay 1969
焦点の生理的基礎
• へリンクの反対色理論
yellow/blue, red/green
• 4色の焦点色の波長に最も反応する
反対色細胞の存在
視覚系
環境的要因 Wierzbicka 1992
• 色彩語彙は物体名詞からのメトニミー
によって生じる場合がある。
例: orange, gold
茶色、空色、黄土色
BLUE<--空、RED <--血
語の意味拡張にみる動機付け
• 方向メタファー表現 (Lakoff & Johnson 1980)
(4) a.
Bill is already up today. b.
I'm feeling down.
起きる 1. 身を起こす
2. 目をさます 経験の身体性(embodiment)
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