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特集1 - 資生堂

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特集1 - 資生堂
特集1
特別寄稿
「にきび治療におけるスキンケアの重要性」
札幌皮膚科クリニック院長 根本 治
はじめに
にきびの治療方法としては、従来の抗生剤の外用・内服によるものに加え、2000年代に入り、ケミカルピーリ
ングや光線による治療法が確立されています。さらに2008年には「尋常性
瘡治療ガイドライン1)」が制定され、
また、エビデンスレベルの高いアダパレンが認可されてから、にきびの治療方法は劇的に変化しました。
しかしながら、にきび治療の基本的考え方については、アダパレン登場後も変わっていません。それは
すなわち、①皮脂分泌、②アクネ菌、③面皰、④炎症のコントロールです。ここでは、にきび治療の基本から、
わたしが日常診療のなかで、気をつけて行っていること、特にアダパレンを使用する際のスキンケアの重要性
について、お話させていただき、それが先生方の治療、患者指導の一助となればと思います。
1. 医師と患者が一体となって治療に歩む
積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に
わたしは「病識」
という概念を大切にしています。
したがって治療を受けるというアドヒアランスの
病識には「知識」と「認識」の2つの識があると
概念、それぞれの概念を融合させることを、わたし
考えています。前者は患者さんが病気の知識を
は重視しています。
持つこと、後者は患者さん自身が自らの病気を
それを実現するためのひとつの方法として、
認識することです。病気に対する知識を持って
患者さん個々に対して、病状(にきび以外も含む)
もらうだけでなく、認識してもらってはじめて治療
に合わせて、病気の原因と治療法を図解*し、診療
がスタートできると考えています。
しています。その結果、多くの患者さんに「病識」
すなわち、医師が患者に十分説明して指示を
を持っていただき、医師と患者が一体となって治療
守らせるというコンプライアンスの概念と、患者が
に専念することができています。
*診療時に患者さんに渡している「病識」ツール(イメージ)。
実際には、カラーペンを用いてフリーハンドで描いている。
−1−
2. にきびを克服する4つのポイント
さんも多いのですが、短期間で炎症を叩く目的
上述のように、①皮脂分泌、②アクネ菌、③面皰、
であり、前述の絵で「病識」を持っていただいて
④炎症の4点をコントロールすることが、にきび
いるので、多くの患者さんに納得していただいて
治療における基本であると考えています。
います。
①皮脂分泌については、まず、洗顔・食事の指
一方、にきび症状の外観で、赤い症状(炎症)、
導や、ビタミンB2・ビタミンB6 で分泌を抑えます。
茶色の症状(にきび跡の色素沈着)、凹凸(にきび
それでも難しいときには、ホルモンの影響を考え
瘢痕)のうち、前2者はレーザーやビタミンC、
ます。女性の場合は生理周期の影響を受ける
ハイドロキノンで治療可能です。しかしながら、
ので、患者さんにその状況を聞いて、婦人科系
にきび瘢痕だけは、YAGレーザーなどで対応する
漢方の処方を行うこともよくあります。それでも
ものの、困難を極めます。
コントロ ー ル で きな いときに は 、
「 にきび 用
したがって、にきび治療において瘢痕をつくらせ
低用量ピル(保険適用外)」を用いることもあり
ないようにすることが、われわれ皮膚科医の責務
ま す 。 食 事 指 導 に つ いては 、当 院 のコラム
であると考えています。
http://kojinkai.seesaa.net/ で紹介しています
が、特別な食物をとることをお奨めしているので
はなく、不摂生な食生活習慣を送っている患者
さんに対して、通常の食生活・規則正しいライフ
スタイルに戻っていただくこと、を基本として伝え
ています。
②アクネ菌には、抗生物質が良く効きますが、
耐性菌の発生を防ぐ為にも早い段階で内服から
外用に切り替えます。ときに、ステロイドと同様に、
長期間投与すると膣カンジダ症になることもある
にきび治療におけるスキンケアの重要性について
熱く語られる根本先生
ので、保険適用外ではありますが光線治療も行う
ことがあります。先生方もご存知の通り、アクネ菌
3. 正しいスキンケアが治療をサポートする
はポルフィリンを代謝物として産生しているため、
光線照射をすることで、その光線がポルフィリン
前述のように、アダパレンの登場により、にきび
に吸収され、活性酸素の一重項酸素が発生し、
の治療方法は劇的に変化しました。アダパレンは
これがアクネ菌を破壊します。この光線治療は
表皮の顆粒細胞から角質細胞への分化を抑制
非常に有効であると、わたしも感じています。
することにより面皰の生成を抑制する反面、皮膚
③面皰については、保険適用ではイオウカンフル
乾燥、皮膚不快感、落屑、紅斑、そう痒などを引き
ローションの外用剤を処方、適用外ではケミカル
起こすことがあります。
ピーリングを行ってきましたが、エビデンスレベル
これらをそのままにしておくと、患者さんがアダ
の高いアダパレンが登場後は、それがファースト
パレンを使用した有効な治療法を続けられなく
チョイスとなっています。ただ、面皰をおさえる、
なる可能性があるので、その対応策として「保湿」
という目的は同じです。
が重要となります。具体的には、本剤塗布前に
④炎症は、基本的にはアクネ菌を抑えることで
低刺激性の保湿化粧品(洗顔、化粧水、乳液など
軽快します。しかし、特に強い炎症(膿疱)に対し
ノンコメドジェニックの表示のあるもの)や保湿
ては、7∼10日間という短期間に、ピンポイントで
外用薬の使用が推奨されています。これらにより、
ステロイドを使用します。ステロイドを怖がる患者
バリア機能が正常に導かれ、乾燥、刺激などの
−2−
副反応を抑えることができます。
に使用することができるという結果を得ました。
瘡治療
さらにアンケート結果から、ナビジョン®スキンケア
ガイドラインでも“C1”
( 選択肢の一つとして推奨
化粧品は、使用感に優れ、患者さんが使いやすい
する)
として、1日2回の洗顔が奨められています。
製品であることを確認しました。
洗顔については、もともと洗顔は尋常性
わたしはナビジョン ® クレンジングオイルを使用
以上から、患者さん自身が日常生活の中で適切な
2)
した洗顔についても検証 しています。一般に、
スキンケアを行うことができれば、アダパレンの
にきび患者には油分の少ない化粧品の適用が
使用が中止されることなく、確実にその効果を
推奨されます。クレンジングオイルは、文字通り組成
発揮することを確認しました。本評価結果につき
として油分が大部分ですので、にきびに悪影響を
ましては、2009年10月に開催された第60回日本
及ぼす可能性も考えられます。しかし、使用試験2)
皮膚科学会中部支部学術大会にて研究発表 3 )
により、クレンジングオイルできちんとメークを
し、現在は論文投稿中です。
落とすことで、にきびを悪化させることなく、安全に
このように、メーク落としから洗顔、保湿まで、
使用できることを確認しました。
エビデンスを備えたスキンケア製品が開発され、
スキンケア全般に関しては、診療室で処置を
われわれ皮膚科医は、それらを上手に使うことが
行うことよりも、その後の患者さんによる日常の
求められています。
セルフケアが治療効果を大きく左右します。患者
4.「化粧品」の治療への参画
さんの心理的負担を軽減するためにも使用感が
よいスキンケア化粧品の存在が重要です。使用感
わたしは、にきび治療における「スキンケア」と
については、保湿外用剤よりもスキンケア化粧品
いう点では、治療の選択肢として「医薬品、医薬
の方が優れていると思われますが、スキンケア
部外品、化粧品の壁はない」と考えています。
瘡に及ぼす
今回、安全性評価を行ったナビジョン ®スキン
影響を検討したデータはありませんでした。そこで
ケア化粧品のように、エビデンスを備えた化粧品
わたしは、にきび患者さんにご協力いただき、
を選択・推奨していくことは、患者さんのセルフ
アダパレンで治療中の患者さんにもナビジョン ®
ケアに貢献でき、治療成績の向上にも繋がります。
スキンケア化粧品を用いて「洗顔→保湿→アダパ
医師が奨める保湿剤(医薬品)に限った選択肢
レン塗布」
という一連の流れを実施していただいた
を提供するのではなく、患者さん自らが「これ
際の安全性と 瘡への影響、アンケートによる患者
なら使い続けられる」と思ったエビデンスを備え
さんの満足度、を評価しました。
たスキンケア化粧品を選択できることが、治療を
化粧品がアダパレンで治療中の
その結果、ナビジョン®スキンケア化粧品は、
アダパレンによる
進めていく上でも有効であると思います。
瘡治療を妨げることなく、安全
最後に
アダパレン使用時の副反応と上手に付き合っていくためにも、
「スキンケア」による保湿は重要です。
「なぜ、
徹底した保湿管理が必要なのか」
ということを、われわれ皮膚科医と患者は、相互理解をする必要があります。
そうすることで、われわれは、治療の有効性を損なうことなく患者さんのQOL向上に期待を持つことができます。
是非、先生方にも「病識」という概念を大切にしていただき、患者さんと一体となって、にきび治療を全うして
もらいたいと思います。
これからスキンケア指導を取り入れようとお考えの先生方に、これらの知見がご参考になればと思います。
−3−
参考文献
1)林 伸和,赤松 浩彦ら,尋常性
2)川島 眞,根本 治ら,尋常性
根本 治,浅沼 廣幸ら,尋常性
3)
瘡治療ガイドライン,日本皮膚科学会誌,118(10)
,1893-1923,2008.
瘡を対象としたクレンジングオイルの使用経験,臨床皮膚科,61,654-659,2007.
瘡患者におけるスキンケア化粧品NAVISION®(ナビジョン®)
の安全性評価,
第60回日本皮膚科学会中部支部学術大会抄録集,138,2009.
根本 治 先生 -略歴1977年 北海道大学医学部卒業
1979年 マイアミ大学医学部皮膚科にて研究
1981年 文部教官北海道大学助手となる
1985年 医学博士号を取得
1986年 皮膚科専門医を取得
国家公務員共済組合連合会斗南病院に勤務 1992年 北海道大学医学部非常勤講師となる
1998年 廣仁会札幌皮膚科クリニックに勤務(院長)
、現在に至る。
現在、北海道大学皮膚科同門会会長、
日本臨床皮膚科医会理事・北海道支部長、
日本乾癬学会評議員を務める。
−4−
特集2
技術情報
「毛穴収縮成分グリシルグリシンの作用機序」
資生堂スキンケア研究開発センター 飯田 年以
はじめに
毛穴の目立ちは、近年、若年層を中心とした女性の肌悩みの上位に挙げられる。以前本誌2004年9月号
にて、
「ヒト頬部毛穴の目立ちと肌状態」について概説を行った1)。今回、毛穴の目立ちについて再度触れた後、
新たに明らかとなった皮脂中の悪成分の肌への影響、およびそれを改善する成分の開発について取り上げたい。
1. 目立つ毛穴の構造と特徴
その結果、毛穴の目立つ人は経皮水分蒸散量が
毛穴は皮溝の交点に位置し、うぶ毛と皮脂腺を
高めであること、また皮脂量が多いことが明らか
伴い、皮脂の通り道となっていることは良く知ら
となった。さらに、皮脂組成を詳しく調べた結果、
れている。研究の第一段階として、まず目立つ毛穴
毛穴の目立つ人は遊離の不飽和脂肪酸組成比が
の特徴とは何か、実際に頬や鼻の毛穴を精査に
高いことも判明した。
観察した。その結果、目立つ毛穴は肌表面に近い
皮脂中に存在する不飽和脂肪酸の代表例と
出入り口付近がすり鉢状に開いていて、そこが
を腕や額に閉塞塗布
して、オレイン酸(C18, cis-9)
外観上影となり、あたかも大きな穴が存在する
したところ、肌荒れが生じ水分蒸散量の上昇
ように見えていることが判明した。さらに、この
ならびに不全角化が惹起されていた。また、この
すり鉢状部分の角層は本来消失しているはずの
オレイン酸はキメを悪化させることも見出した。
核が多数観察され、毛穴の目立つ人は不全角化
キメの悪化が毛穴の目立ちにつながることを以前
状態が亢進していることも明らかにした。
見出しており、遊離の不飽和脂肪酸が毛穴の
目立ちと大きく関係していることが想定された2)。
この原因は何なのか、日本人および日本在住の
欧米人計94名を用いたヒト試験を実施し、頬部の
2. 表皮細胞への不飽和脂肪酸の影響
毛穴の目立ちから被験者を3群に分け(図1)、
このような知見をもとに、目立つ毛穴構造その
それぞれの肌状態を比較した。
ものを小さくし、目立ちを抑制する成分の開発を
目指した。ヒトの組織学的検討から、正常皮膚
ではCa 2+ が角層直下に高濃度に分布している 3)
のに対し、毛穴周りではそのような濃度勾配が
見られず表皮も肥厚していることを認めた。これ
より、Ca2+に着目して実験を行った。蛍光色素と
してfura-2を用い、ヒト正常角化細胞内のCa2+の
動態を調べた。培地にオレイン酸を添加したところ
蛍光強度の上昇が観察されたことから、細胞内の
Ca2+濃度が上昇することが明らかになった。Ca2+
図1. 毛穴の目立ちによる分類
は細胞の分化増殖に関与すると共に、本来は負に
保たれている細胞内の膜電位を変化させることが
−5−
知られている。このことから、皮脂中の不飽和
脂肪酸がCa2+の濃度変化を引き起こし4)、これが
引き金となって毛穴周りの肌状態の悪化に結び
ついていると考えられた。
次に、このCa2+濃度変化の詳細な機構を探る
こととした。これを解明することで制御が可能と
なり、皮脂の悪影響を抑える新たな方法を開発
できるのではないかと考えた。細胞内へのCa 2 +の
流入には、種々のイオンチャネル内蔵型、あるいは
G蛋白質結合型の受容体が関与していることが
図2. ヒト表皮角化細胞へのオレイン酸添加による
1L-1α産生への影響と抑制剤の効果
知られている。そこで、それぞれの受容体に対応
するアンタゴニストを用いて、どの受容体が関与
これらより、皮脂中の不飽和脂肪酸が角化細胞の
しているのかを調べた。N-methyl-D-aspartate
Ca 2+ 濃度を高めて膜電位を消失させると共に、
(NMDA)型グルタミン酸受容体の特異的アンタゴ
炎症性サイトカインの産生を亢進して分化増殖に
ニストであるMK801により、Ca2+の上昇が抑制
影響を及ぼすことで、表皮肥厚や不全角化を
された。同じNMDA受容体特異的アンタゴニスト
誘導し、毛穴周りの開いた構造の発達を促進して
であるD-AP5などでも抑制されたが、異なる
いると推定された。
受容体、例えばATP受容体、TRPV1受容体、
AMPA型グルタミン酸受容体などの特異的アンタゴ
3. グリシルグリシンの効果
ニストでは抑えられなかったことから、不飽和
3-1. in vitro
上述の検討結果をもとに、不飽和脂肪酸の
脂肪酸のシグナルはNMDA受容体を特異的に介
5)
していることが判明した 。NMDA受容体は表皮に
シグナルを抑えることができれば、毛穴を小さく
存在し機能していることが知られている6 )ことから、
する(開き構造の発達を抑える)成分の開発が
この受容体が肌で、特に皮脂の影響を受ける
可能だと考えた。Ca2+の流入で陽イオンが過剰
毛穴周りで働いていると考えられた。
となった表皮角化細胞内を正常な状態に戻す
さらに、毛穴周りでは表皮肥厚が観察される
には、陰イオンの流入を促すことが必要である。
ことから、分化増殖に関係する炎症性サイトカイン
産生への影響を調べた。角化細胞にオレイン酸を
グリシン受容体やγ-aminobutyric acid(GABA)
受容体といった塩化物イオン(Cl-)輸送に関わる
添加すると、IL-1αの産生が転写レベルおよび
受容体のアゴニストの塗布で、バリア機能が回復
蛋白質レベルで増加した。そして、この増加は
することが知られている8)ことから、これらの
MK801の添加によって抑えられることが判明した。
関連化合物を探索した結果、グリシンの二量体で
蛋白質レベルの結果を図2に示す。TNF-αも
あるグリシルグリシンに高い効果を見出した。
同様の抑制が見られた。
図3に構造を示す。
以上のように、オレイン酸は既に指摘されている
膜構造そのものへの影響 7)の他、NMDA受容体を
介して細胞に働き炎症性サイトカインの産生も惹起
していることを明らかにした。またオレイン酸以外に、
パルミトレイン酸(C16, cis-9)やペトロセリン酸
といった皮脂中に存在する遊離の
(C18, cis-6)
図3. グリシルグリシンの構造式
不飽和脂肪酸でも同様の作用が認められた。
−6−
グリシルグリシンを培地に添加することで、オレ
イン酸による角化細胞でのIL-1αの増加を抑制
した(図4)
。すなわち、これら受容体を介して
不飽和脂肪酸による細胞内イオンバランスの乱れを
整え、ひいては炎症性サイトカイン産生を抑えると
いう機構が働くことが想定された。
図5. グリシルグリシンのヒト毛穴面積縮小効果
(a) 1ヶ月連用試験,
(b) 2ヶ月連用試験での毛穴相対面積値の変化
個人別で見ても、いずれの試験においても約
2/3の被験者で配合側に毛穴の収縮効果が見ら
れた。レプリカ解析の一例を図6に示すが、配合側
で3割程度毛穴面積の減少が見られるのに対し、
無配合側ではやや拡大している。このような毛穴
図4. ヒト表皮角化細胞へのグリシルグリシン添加に
よるオレイン酸惹起1L-1α産生への抑制効果
面積の減少に伴い、見た目の毛穴の目立ちも改善
されていた。2ヶ月間の試験では、毛穴周りの開き
3-2. in vivo
構造の改善と共に、経皮水分蒸散量や角層水分量
次に、本化合物がヒト毛穴に対してどのような
の他、不全角化といった肌状態の指標も良好と
なることが認められた10)。
作用を示すのかを検討した。20-50代の男性被験者
21名を対象として1ヶ月間、および同じく男性被験者
24名を対象として2ヶ月間、1.6%グリシルグリシン
配合または無配合のエタノール含有水溶液を、
頬部を中心とした半顔にそれぞれ連用塗布した。
連用前および連用1ヶ月、2ヶ月後に両頬のレプリカ
を採取し、毛穴周りの開き部分の面積を測定、比較
した。毛穴面積については、共焦点顕微鏡を用いて
レプリカから毛穴を自動的に抽出し、断面積を正確
図6. レプリカ解析画像(改善例)
一辺が1cmの領域内で、毛穴を緑色で示す。囲んだ領域で
大きな変化が見られる。
9)
に測定する独自のシステム を構築し活用した。
その結果、いずれの試験でも、グリシルグリシン
配合側で有意に毛穴面積が小さくなっていること
このように、不飽和脂肪酸の悪影響を抑制する
が示された(図5)。
成分として見出したグリシルグリシンは、毛穴の
開き構造を小さくすると共に、併せて毛穴周りの
肌状態も改善することが明らかとなった。
−7−
終わりに
日本人女性を中心とした毛穴悩みの増大に伴い、化粧品メーカー各社から毛穴の目立ちに関する調査
報告がなされている11, 12)一方、改善成分13, 14)
も提案されつつある。また、最近の美容医療技術の発達に伴い、
レーザーや光(主にIPL; intense pulse light)治療も報告されている15 )。今回紹介したグリシルグリシンについ
ても、イオン導入により肌に効果的に送達させて、毛穴収縮効果をより高める試みを実施しており、今後毛穴
悩みの解決にさらなる貢献をしていきたいと考えている。
参考文献
11)飯田年以, 猪股慎二, 資生堂インフォメーションレター, No.2004,001 6-9, 2004.
12)飯田年以, 勝田雄治, 猪股慎二, フレグランスジャーナル,32, 41-6, 2004.
13)傳田光洋, 皮膚は考える, 岩波科学ライブラリー112, 岩波書店, 19-24, 2005.
14)Y. Katsuta, T. Iida, S. Inomata and M. Denda, J. Invest. Dermatol., 124, 1008-13, 2005.
15)Y. Katsuta, T. Iida, K. Hasegawa, S. Inomata and M. Denda, Br. J. Dermatol., 160, 69-74, 2009.
16)S. Fuziwara, K. Inoue and M. Denda, J. Invest. Dermatol., 120, 1023-9, 2003.
17)丸山勝弘, 岡野由利, 正木 仁, 桜井 弘, 日本化粧品技術者会誌, 35, 133-40, 2001.
18)M. Denda, S. Fuziwara and K. Inoue, J. Invest. Dermatol., 121, 362-7, 2003.
19)大栗基樹, 舛田勇二, 高橋元次, 日本皮膚科学会誌, 114, 601, 2004.
10)T. Iida, M. Kaneko, E. Kawai, K. Muta-Takada and S. Inomata, J. Dermatol., 36, 112-5, 2009.
11)村上泉子, 川村亜希, 顧 潔, 丹野 修, 日本香粧品学会誌, 30, 237-44, 2006.
12)水越興治, 及川みどり, 伊藤夕子, 小林和法, 今村 仁, 松本克夫, 日本化粧品技術者会誌, 41, 262-8, 2007.
13)S. Inui and S. Itami, J. Dermatol., 34, 221-3, 2007.
14)西島 貴史 , 日本化粧品技術者会誌, 43, 3-9, 2009.
15)小西 奈津子, 日本化粧品技術者会誌, 42, 89-93, 2008.
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