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日・カタール産官学宇宙ワークショップ - 一般社団法人 日本航空宇宙
工業会活動 日・カタール産官学宇宙ワークショップ 山口俊一 内閣府特命担当大臣(宇宙政策など御担当)の外遊に合わせ、カタール国の 首都ドーハで、5月3日(日)に日・カタール産官学宇宙ワークショップが開催されたので、 概要を報告する。日本からの参加者は、山口大臣に加え、内閣府宇宙戦略室、東京大学、 JAXA、産業界からは三菱電機(MELCO)、日本電気(NEC)、IHI、IHIエアロスペース(IA)、 三菱重工業(MHI)、富士通、宇宙システム開発利用推進機構(JSS)、三菱商事、当工 業会(SJAC)からの参加で、総勢32名となった。 1.カタール国 カタール国はサウジアラビアの東に接し、 されたものである。 カタールには宇宙機関が存在せず、ユーザ ペルシャ湾に突き出た形の半島の国であり、 の視点からのアイデア(ソリューション提供) 国土面積は約1.1万平方キロ、人口は約200万 が求められており、宇宙技術の利用による社 人である。国土の大部分は乾燥した砂漠であ 会インフラの拡充が期待されている。 り(年間降水量約40㎜)、水道水は海水を淡 水化して使用している。石油と天然ガスを産 3.カタール財団とのWS 出し(天然ガスの埋蔵量は世界第3位) 、日本 カタール財団は、タミーム首長の母親であ の原油の約1割、LNGの2割弱がカタールから るモーザ妃殿下が代表を務める財団である。 の輸入となっている。このため、中東随一の カタール財団側からは傘下の環境エネルギー 親日国である。2014年にはMELCOが中東諸 研究所理事長のムハンマド・ハリール氏、カ 国から初めての通信衛星を受注している。 タールコンピュータ研究所のバドラン氏等が 宗教はイスラム教で、休日は金曜日と土曜 日であり、稼働日は日曜日から木曜日となっ ているため、ワークショップ(WS)は日曜 日に開催された。 出席し、カタール財団会議室でWSが行われ た。 山口大臣からは、東日本大震災の復興に向 けてカタールからの支援に対する謝辞の後、 モーザ妃殿下が希望する日カタール間の人材 2.ワークショップ(WS)開催の背景 2015年2月にタミーム首長が来日し、両陛 下とご会見された。また、安倍総理と会談し 安全保障、災害対策(国土強靭化) 、インフ 交流や共同研究を加速に関し、日本側として も交流を推進してゆきたいとの発言があっ た。 その後、柴崎亮介東京大学教授(空間情報 ラ(通信衛星を含む)分野の更なる協力推進 科学研究センター)よりBIG DATA活用によ を確認している。 るスマートシティ事例紹介、JAXAや各企業 また、2015年1月に決定された新・宇宙基 における活動概要やソリューション提供に関 本計画において掲げられる「宇宙システムの しての発表、意見交換を行った。具体的な協 海外展開タスクフォース」推進の一環として 力に向け、今後も継続的な協議を行うことで 産官学連携による取り組みを先行的に実施す 一致した。 るため、今回は日本側からの要請により開催 54 平成27年6月 第738号 山口大臣のご挨拶の様子(前列左から小宮室長、通訳、山口大臣、津田大使) カタール財団でのワークショップ会場の様子 4.内務省常設緊急対応委員会(PEC:Permanent Emergency Committee)とのWS 会場を内務省に移し、フレイフィ常設緊急 対応委員会議長(内務省公安安全総局長 兼 警察長官)に加え、カタール環境省、気象庁、 カタール大学リモートセンシングユニット、 等から参加を得てWSを行った。 PECにおいても、山口大臣のご挨拶の後、 参加者より各社の活動内容(ソリューション 提供)の発表が行われた。カタール側からは フレイフィPEC議長(前列左から3人目) 55 工業会活動 内務省でのワークショップの会場の様子 気象観測(特に砂嵐)、水資源管理、衛星の 観測精度(解像度)、超小型衛星の打上げな どに関する質問が発せられた。 5.所感 カタールは5月に入ったばかりで最高気温 が40℃になり、夏には50℃に達する砂漠の国 ここでも、具体的な協力に向け、今後も継 であるが、石油、天然ガスの輸出により首都 続的な協議を行うことで一致した。情報交換 ドーハでは建設ラッシュである。2022年の や意見交換を進めるWSを今年度中にもう1度 サッカーワールドカップまではこの天然資源 開催する方向である。 による経済発展、建設ラッシュも継続される と予測されている。しかし、その先を見据え、 科学技術を通じて天然資源依存からの脱却を 目標としていることが感じられた。 〔(一社)日本航空宇宙工業会 技術部(宇宙担当) 宇治 勝〕 56