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苦痛を伴わない科学

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苦痛を伴わない科学
苦痛を伴わない科学
日本において、21世紀の毒性学と
生命科学研究を促進させる
約1世紀に渡り、医薬品や化学物質の安全性評価は、げっ歯類、
ウサギ、イヌ、その他の動物を用いた試験に基づいてきました。動
物実験は、動物にとって多大な苦痛を伴うだけではなく、時間と資
源がかかり、試験が実施できる化学物質の数も限られています。
ま
た、ヒトの体内で化学物質がどのように作用するかに関する理解
にもつながりにくく、多くの場合、実生活における人間への影響を
適切に予測することができません。
現在の薬剤損耗率では、動物実験によって安全で効果があると
評価された医薬品の9割は、人間では安全ではないか、効果がな
いことが判明しています。人の健康に関するニーズに効果的に対
応できず、莫大な額の貴重な健康関連の予算と何百万匹もの動物
の命を無駄にする行為です。人間以外の動物で、人工的にヒトの
疾患を「モデリング」することを目的とした研究の妥当性は、科学者
により疑問視され始めています。
同時に、生命科学研究や安全性試験の状況を変化させるポテン
シャルを持った空前の科学技術の進歩が遂げられつつあります。
ヒトゲノムの配列の解析、機能ゲノム科学、
コンピューターの技術
の爆発的発展、計算生物学、自動高速ロボットによる細胞ベース(
HSIは、
世界中で
動物を用いない
安全性試験と
生命科学研究を
促進させるための
取り組みを
リードしている
国際NGOです
インビトロ)のスクリーニングシステム等が、生物学において革命
を引き起こしています。
これらのイノベーションは、細胞や分子レベルで人体において
化学物質がどのように通常のプロセスを阻害するかを正確に解明
するための新たなツールや方法論を生み出しました。
このような
方法で予測された人間の安全性やリスクの方が、ラット、イヌ、サ
ル等を使った試験よりも、
より適切に、実生活における人間への影
響を評価できる可能性が高いと言われています。
HSIの研究及び毒性学の専門家チームでは世界の主要な経済
圏に現地スタッフを配置し、科学、産業、規制及び教育に渡る、意
欲的かつ多面的な取り組みにより発展を促しています。HSIは経済
協力開発機構(OECD)のテストガイドラインプログラムに専門家と
して招かれて貢献しており、化粧品規制協力国際会議(ICCR)でも
定期的に発表しています。欧州連合(EU)においては、HSIは欧州
化学機関(ECHA)の認証団体であり、ECHAの加盟国委員会及び欧
州委員会のREACHと分類表示当局の会議でのオブザーバーです。
さらにHSIはECVAM(欧州代替法評価センター)の関係者フォーラ
ム(ESTAF)のメンバーであり、動物を使わない代替法の開発や普
HSIの活動については
こちらから
hsi.org/bcfjapan
及のモニタリングに貢献しています。
日本でも、安全性科学や保健・医療関連分野で、動物を用いな
い最新の技術に対する官民の予算を増加させるために働きかけ
ており、
日本動物代替法学会が開催予定の国際会議において主要
なスポンサーを務める予定です。また、HSIは、国際的に認められ
たインビトロの安全性試験の受け入れや活用を支援するために、
中国その他の地域において、規制当局や科学者を対象とした実践
トレーニングのためのワークショップに10万ドル以上の資金提供
をしてきました。
#BeCrueltyFree
思いやりのある美しさ
規制上求められる毒性試験
動物実験は化粧品産業の醜い秘密であり、
日本
日本の法規制においても、工業用化学物質、医
でも9割近くの消費者が、化粧品企業に動物実験
薬品及びその他の製品の安全性試験で動物実験
を必要とする原料を使ってほしくないと考えてい
が義務付けられています。
このような試験は、何百
ます。欧州連合、イスラエル、インド、ニュージーラ
もしくは何千ものウサギ、げっ歯類、鳥類、魚類や
ンドは、法律で定められた日付以降の化粧品の動
さらにはイヌまでもが苦痛を味わい、犠牲になるこ
物実験の実施をいち早く禁止し、
これらのほとんど
とを意味しています。
の地域では、
この日以降に動物実験が実施された
HSIは、動物を使わない最先端の試験法やその
化粧品とその原料の販売も禁止されています。
他の最良の方法を採用するような働きかけをリー
これらの法律の根底には「責任あるイノベーショ
ドしており、
これらの方法は、人間の安全や環境を
ン」
という理念があります。
この理念に基づき、化粧
損なうことなく使う動物の数を劇的に削減するこ
品企業は、既に安全に使用されている実績があり、
とができます。例えば、
日本は未だにビーグル犬を
新たに動物実験を実施する必要がない原料を使
使用する試験期間が1年間の農薬の毒性試験が
い、安全かつ効果的で利益になる新製品を作り出
義務付けられている数少ない国のひとつです。HSI
すことができると考えます。
は、
この時代遅れの試験を、アメリカ、欧州連合及
HSIの#BeCrueltyFree思いやりのある美しさキャ
びその他の国々の同様の規制からはずすことに成
ンペーンは、化粧品の新たな動物実験の実施と、
功しています。
新たに動物実験が実施された美容製品の商取引
HSIが提案している規制改正は、異なる規制体
を終わらせる取り組みを世界中でリードしていま
制の要件を満たすための試験の無駄かつコスト
す。
日本でも化粧品の動物実験の禁止に向けて政
がかさむような重複を避け、日本と海外の市場の
府との交渉に取り組んでおり、国会議員向けの勉
貿易の円滑化に貢献するものです。
強会やイベントを開催しています。
生命科学研究
人道的な科学を促進する
生命科学研究はヒトの疾患の原因を究明し、予
2007年、全米科学アカデミー(NAS)は、
「ヒト生
防や治療方法を開発することを目的としています
物学を基盤とした一連のインビトロ試験と、計算
が、今日の保健・医療関連の研究の成果は見えに
生物学における新たな手法により、鍵となる毒性
くくなってきています。
「動物モデル」
で安全かつ効
経路における生物学的に重要な影響を評価する
果的と評価された新規医薬品の候補の実に9割
ための新たな毒性学試験の体制」に向けて、
ラット
が、臨床試験において予期しない毒性が認められ
やイヌに実施される試験から離れる必要があると
たり効果が得られないことで失敗に終わります。不
し、安全性試験が実施される方法について根本的
適切であったり、誤解を招くような動物モデルのた
な変化が必要であると指摘しました。
め実を結ばない研究は、医療における進歩を遅ら
同様に、戦略の焦点を人工的な動物モデルから
せ、臨床試験に臨むボランティアの安全性もリスク
ヒト生物学や発病経路を真に理解する方向に持っ
にさらすことになりかねません。
て行くために、概念的なパラダイム・シフトが必要
HSIは、既存モデルの価値や限界を批判的に評
です。毒性経路のような発病経路は、遺伝子、
タン
価し、新たなヒト生物学ベースのツールや概念を
パク質、細胞や臓器等における通常の生物学的プ
活用できる機会を模索するため、外部の専門家に
ロセスが阻害された状態であり、ヒトの疾患がな
よるヒト疾患に関する研究のレビューを助成して
ぜ発生するかを理解するための鍵となります。
います。さらに、HSIの科学者らは日本の特定非営
2010年から2014年にかけて、HSIはヨーロッパ
利活動法人システム・バイオロジー研究機構やそ
における研究間の協力・調整を図るプロジェクトで
の他世界各国の主要な研究者と協働し、保健・医
ある「AXLR8」(www.axlr8.eu)を設立し、共同管理
療研究においてよりヒト生物学を基盤としたアプ
者を務めました。
このプロジェクトでは、
このような
ローチに移行するよう呼びかける出版物を手掛け
課題を扱う一連の国際ワークショップが開催され、
ています。
これらのワークショップの成果が、EUの研究プロ
グラムである「Horizon2020」のもと、資金提供の
動物に畏敬の念を示し、動物虐待に立ち向かう
優先順位を形づけることになりました。
日本の第5
期科学技術基本計画のもとでも、現代のヒト生物
学を基盤とした技術への同様の投資が、生命科学
研究や創薬の進歩に大きく貢献すると考えます。
hsi.org/bcfjapan
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