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連続スペクトル発生源の情報エントロピーと構造の測度 :
小宇宙系、物質系、生体系(研究会「複雑系」,研究会報
告)
谷塚, 昇
物性研究 (1992), 59(3): 310-316
1992-12-20
http://hdl.handle.net/2433/95010
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
研究会報告
連 続 ス ペ ク トル発 生 源 の 情 報 エ ン トロ ピー と構 造 の 測 度
- 小 宇 宙 系 、物 質 系 、生 休 系 一
大 阪府 立 大学 総 合 科 学 部
谷塚
昇
(〒5
93 堺 市 学 園 町 1- 1)
1. は じめ に
複雑 な シス テ ム を理 解 す る ため に は、 そ め シス テ ムか ら発 生 す る情 報 に着 目 し、 そ の情
報 か ら定量 化 す る事 の出来 る、 "測度 " を探 し求 め な けれ ばな らな い。 その測 度 に よ って、
システ ム の性 質 を知 る 。例 えば 、 シス テ ムが英 文 ア ル フ ァベ ッ ト文 字 空 間 Rに あ る場 合 、
そ の シ ス テ ム は記号 の 二次 元 列 び で あ るが 、平 均 情 報 量 H (エ ン トロ ピー ) とい う制 度 で
定量 化 す る こ とが 出来 る。空 間 Rが無 法 則 な らば H=- ∑ plogp(
p-1
/27)-4.
75
bi
t、
03bi
t、単 純 マ ル コフ確 率 に従 うな らば H =3.
32
無 記憶 記 号 出現 確 率 に従 うな らば H =4.
bi
tとい うふ うに変 化 し/1
/、エ ン トロ ピー の 減 少 と ともに 、 シス テ ム は英 文 様 構 造 に近 ず
く。 この場 合L
注 意 しな けれ ば な らな い こ とは 」人 間 が "構 造 '
'を認 め得 る ため に は 、す で
に人 間 の悩 に空 間 Rに 関 す る知識 ・法 則 が川PUTされ て いな けれ ば な らな い。
さて シス テ ムが物 理 空 間 N に あ る場 合 、 そ の複 雑 な シス テ ムが発 生 す る情 報 とは 、物 理
量 の ゆ らぎ とか単純 でな い変動 で あ る。変 化 の大 きさ (数 値 )は空 間 Rの記号 に相 当す る。
そ の時 系 列 (サ ンプ リング値 ) を
X :x l.x 2,X 。,・ ・ ・,X m
と し、時 系 列 X のエ ン
トロ ピー H を考 え る。 列 び Ⅹお よび X の 同時 確 率 分 布 p (X)は 、空 間 N にあ る シス テ ムの
法 則 ・現 象 に支 配 され る。 X のエ ン トロ ピー は、
Hニ
ー
)
;
p (Ⅹ)logp (Ⅹ)d v
(
1)
で与 え られ る。複雑 な シス テ ムの時 系列 の 変 化 は予 測 し難 く、 そ の ま まで は扱 い難 い 。
時 系列 をパ ワー スペ ク トル密 度 関数 P (f)、又 は そ の対 数 N (f)-10logP (f)に変 換 す
れ ば 、扱 い易 い。 fは周 波 数 で あ る。 P(f)は ウイ ナー ・キ ンチ ンの定 理 に よ り、 自己相
関 関数 C rで)と等価 で あ りタイ ム ラグ Tとい った記 憶 減 衰 に関 す る情 報 を含 む 。 f は雑 音
発生 源 にお け るエ ネル ギー の大 きさ と関係 し、 Tは衝 突 時 間 に関係 す る。 この報 告 書 で は
P (f)の一 般 化 関数 を求 め た後 、エ ン トロ ピー H との 関係 を導 く。 P (f) と して 、小 宇
宙 (ク ェー サ ー )、抵 抗 体 、半導 体 、神 経 系 の連 続 スペ ク トル を扱 い 、測度 を計 算 し、発
生 源 の構 造 との 関係 につ い て 、考 察 す る。
2・連 続 ス ペ ク トル密 度 の一 般 化 関数 とエ ン トロ ピー密 度 関数
連 続 ス ペ ク トル の周 波数 領 域 fn- 1 < f≦ f n での スペ ク トル指 数
a n
を定 義 し Pn
c
<fIAh
とす る。次 に単 位 関数 un (
f)= 1(
上 記 領 域 内),=0(
領 域 外 )を定 義 す る と、 す べ て の連
2
/
続 スペ ク トル は 、 (2)式 の 関数 で表 示 す る こ とが で きる 。/
-3
1
0-
「
複雑系」
図1
ス ペ ク トル形 とエ ン トロ ピー密 度
k
P(f)- ∩ p
n=0
n
n(
f)
u n(f)
(
2)
=0, kはそ れ ぞれ 、スペ ク トル の始 ま りの最 小 周 波 数 、終 りの 最 大 周 波 数 に対 応 す
る。時 系 列 X の 同時確 率 分 布 p (Ⅹ)を正 規 分 布 とす る と、 エ ン トロ ピー密 度 h す な わ ち
h =1im H/ m
m→
∞
が計算 で き、収 束 し (3)式 の よ うに 、時 系 列 のパ ワー ス ペ ク トル か ら求 め られ る 。/3
/
h=
4fk 二
gP( f )d f・i
f : lo
log 2
f
(3)
k
(3)式 に (2)式 を代 入 して計 算 す る と、 す っ き りと した関数 hを得 る 。/2
/
一
室,
E
!。
(a n・1- αn)・(
l
ogfn
h-0・
5{l
ogPo(fo
,+n
+l
og2fkI , た だ し α。
=0
(4)
(4 )式 か ら部 分 エ ン トロ ピー (
一 部 の周 波 数 帯 域 の値 , f k- ∞ )
△h- ∑ (α。+1- α 。) l
o
gfn
n
(5)
に着 目す る。 (5)式 は、特 定 周 波数 帯 域 に お け る時 系列 の エ ン トロ ピー密 度 を与 え 、 ス
ペ ク トル指数 が変 化 す る点 の周 波 数 値 の対 数 と、 これ を は さむ ス ペ ク トル の指 数 差 との 積
か ら計 算 で きる。 1H z以 上 の変 動 の系 を考 え る と、 (5)式 は 、上 に 凸 の ス ペ ク トル 形
を持 つ 情 報 源 は に対 して △ h> 0を与 え 、下 に凸 の スペ ク トル 形 を持 つ もの に対 して △ h
< 0を与 える (図 1) 。 これ は、 シス テ ム に お ける特 定 周 波 数 領 域 の変 動 が 、情 報 (ま た
は構造 ) を捨 て て い る 、 あ る い は生成 して い るの に対 応 す る と考 え る 。 実 際 の観 潮 デ ー
タを対 象 に して考 察 す る。
-
3
11-
研究会報告
3.宇 宙 電 波 とエ ン トロ ピー
特 定 周 波数 領 域 0.01< f < 100GH z にお け る ク ェー サ ー (Q S 0) か らの連 続 スペ ク
トル雑 音 電 波 (宇 宙 雑 音 ) を我 々は持 って い る (図 2)。/4
/ Q S Oは 、宇 宙 の最 外 郭
に あ る (数 十 億 光 年 以 遠 )銀 河様 天 体 で 、強 い電 波 を放 出 して い る もの が あ る。 プ ラズ マ
ジ ェ ッ トと磁 場 との相 互 作 用 に よる シ ンク ロ トロ ン放 射 と考 え られ て い るが 、電 波 源 は構
造 を持 つ こ とが VLBIの観 測 で知 られ始 め て きて い る。 この電 波 は数 十 億 年 前 の宇 宙 の
情 報 を持 つ の で興 味 深 い。式 (5) に赤 方 偏 移
Z
に よる補 正
f= F (1+Z) [F :餐
信 値 周 波 数 】を必 要 とす る。 QSO電 波 の フ ラ ックス密 度 (J y ) 、 周 波 数 (0.01くFく100G
Hz)は、 国立 天文 台 ・野 辺 山で 多数 の文 献 か ら収 集 ・編 集 され たデ ー タベ ー ス を使 い 、赤
方 偏移 は文 献 5を参 考 に した。表 1に 8個 の QSO とそ の赤 方 偏 移 、図 2の よ うな ス ペ ク
トル か ら計 算 で きる △ h、 QSOの特 徴 を掲 げ る。 図 3 に QSOの赤 方 偏 移
Z
と情 報 の測
度 △ h の 関係 をプ ロ ッ トした。
Ah=-12.7bit
a=.63 I
\
ト
loo
0
F
コ
I 1
ug:I
-.i
1;
5
「、
7
・
\L
〓
S H )0
ト
\
㌢o
珊
X
1
コ
)
Ah:-I.1
9bit
3C48
△h=H lbit
3
C
2
7
3
△h三一8・7bit
α…O
\l
l
\
〇
rArJL
I
.
.
I
:
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.
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,
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、
αコ.41
'
一
、
、
1
0
上..
.
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.
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J
T
.
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S
NUO
a=-.16
qP
:
三・
c
E=0
\I.
Xr
I13
、,
巨、
Ol
O1
図2
1
. 1,
F
A
【
O
U
E
N
C
T
t
G
H
Z
J
F・
一・
0.I
0
1
000
1
〇・l●.
t
・
l
・
FReOUENCTt
CMZ)
F-
t
O
・
l
O¢
,
01
0・l
1
0.
l
.
FAEOU帥 CTt
GHZ)
F-
ク ェー サ ー の電 波 フラ ックス密 度 (
Jy)と戟 潮 周 波 数 (
0.01くFく100GHz)
-
31
2-
1
00
「
複雑系」
表I
Q S Oの電 波 源 に関 す る情 報 の 測 度 と発生 渡 の構 造
aS03C446
特徴
l
3C454.3
3C380
3C216
3C345
3C279
3C48
3C273
1.40
0.86
0.692
0.595
0.54
0.37
0.16
-13
-6.5
0
0.67
-7.5
-7.7
-1.2
+11
-8.7
* 1
*2
*3
*4
*5
*6
1等 級 / 1日)
*1 激 変 光 天 体 (
。
*4 構 造 が観 測 され て い な い。
*2 変 動 の大 きい天 体 。 *3 無 視 出 来 る程 度 の変 動 。
*5 安 定 。
*6 7
.ラス●
マシーェヴトが 片方 だ け しか観 測 さ れ
6
/(普 通 の Q SO で は、対 の ジ ェ ッ トを観 測)。
な い/
図 3で は、表 Ⅰの Q S O以外 に電 波 銀 河 (
3C84:
セイブアート,Z=0.017,△h--20bit,3C274:
M87,
Z=0.0043,△h-0)の計 算 結果 も示 した。 この うちセ イ フ アー ト銀 河 は 、活 動 の激 しい極 め
て特 異 な 天体 で あ る (△h=-20と低 い値 で あ る こ とに注 意 )。 図 3 で 、 Q S Oの 内 、
ジ ェ ッ トが 片方 しか な い3C273以 外 は 、右 下 が りの傾 向 を持 って い る 。 す な わ ち 、 Z が増
す と △ hが減 じる。 これ は、古 い宇宙 は ど活動 が激 しく構造生 成 が激 しい こと を意 味 す る、
と考 え られ る。 図 の傾 斜 (右 点 線 ) か ら、測 度 と赤 方 偏 移 の 関係 式
△ h=-7.0-32logl。Z
(6)
が得 られ る。参 考 まで に電 波 銀 河 の傾 斜 (左 点 線 ) は 、式 (6) の -32と同 じで あ る が 、
左 の群 の性 質 を知 る た め に は 、 も う少 しデー タが必 要 で あ る 。
ヽ●
\3C48
\
\-
図3
\
\
3
C
2
7
lIl l
,
O
ーl
-t
4
皿
\
6
』
l
0
8
D
l
1.
0
I
2 血.
d
6
D
8'
.
1
Z-
∴
Q S Oの構 造 の測 度 △ h と
赤方 偏 移 Z (電波 銀 河 2例 含 む )
8
.
_,
C3
:
2 .
1
3
C
?
,
i
:
1
.
8
1
(△ h と Z に相 関 が あれ ば 、小 宇
宙く
Q
SO等 の銀 河 様 天 休 〉の 年 齢
と構 造 に相 関 関係 が あ る と推 定
\\
\
\
ふ
\
.
1
3
C
\
….
3
i
3
C
HS
\
3… 5
1 C
之l
ふ
\
\
\
.
\
も
C
8
4
- 31 3
-
で きる事 にな る )
研究会報告
ス ペ ク トル 図 2で 、周 波 数 が高 い程 、電 波 源 の電子 エ ネ ル ギ ー が高 い 。図 の 凹 凸 は 、異
な る電 波 源 の電 波 の重 ね合 わせ で あ り、 Q S O か ら数 珠 つ な ぎの よ うに して 、連 続 して 出
て い る と考 え られ る 。エ ネル ギー は 、 Q S O の 重 力エ ネ ル ギー か ら供 給 され る と考 え られ
て お り.
、図 の右 に位 置 す る電 波程 Q S O の深 い と ころか らエ ネ ル ギー を得 て い る と考 え ら
れ る。 以 上 の事 か ら∴ △ h の値 が 負側 に深 くな る ほ ど、構 造 の は っ き りした活 動 の激 しい
電波源 ジ ェ ッ トか らの宇宙雑音 で ある との措 像 が得 られ、既 に知 られて いる Q S O 描像 と、
定性 的 に合 う。
4.物 質 系 ・生 体 系 の ゆ らぎ とエ ン トロ ピー密 度
物 理 量 の 変 動 のパ ワー ス ペ ク トル が f αの形 を した ス ペ ク トル を出 す ゆ ら ぎ は、物 質
系 や生 体 系 に存 在 す る。表 ⅠⅠに 、抵 抗 体 の低 周 波 数側 の 雑 音 /
7
/、MOSFETの テ レグ ラ フ雑
8
/、 Q プ ラズ マ装 置 の ラ ング ミ ュア短 針 にお け る電 位 ゆ ら ぎ/
9
/、有 髄神 経 軸 索 の膜 電
音/
位 の静 電 位 ゆ ち ぎ/
1
0
/、 巨大 神 経 細 胞 の 自励 発 振 電位 パ ル ス列 の ゆ ち ぎ/
l
l
/ につ い て 、
周 波 数 領 域 ・α ・スペ ク トル形状 ・△ h を示 す 。
表 ⅠⅠ 物 質 系 ・生 休 系 の ゆ らぎの スペ ク トル
MOSFET
Q7'ラス
●マ
神経 軸 索
神経 細胞
fく1000
周 波 数 領 域 暮 1Hz 1く
10-3くfく10+5
10kくfく100
k
16くfく3.
2X
O.0005くfく0.5
特 徴 周 波 数 暮2
Hz 200
0.
3
20k
1.
3k
無し
凸
0,2
-2.
0
凸
0,4.
8
+37
凹
1,d
-5.3
線分
l
系
#uF'r3
a+4
A h bi
t+5
抵抗体
凹
1,0
-3.
8
0
*2 スペ ク トル線 が折 れ 曲 が る点 の周 波 数 。
*3 凹 は下 に 凸の こ と。 *4 例 え ば抵 抗 体 の α-1,0は 、周波 数 200Hzでフリッカノイス
■か ら
白色 雑 音 に変 化 す る事 を表 す 。 *5MOSFETの形 状 が 凸 で △ hく0とな るの は特 徴 周 波 数
が 1Hz以 下 で あ る ため 。 神 経 細 胞 の △ h=0は 、観 測 周 波 数 領 域 内 で α=1
以外 の ゆ らぎ
*1 測 定 ま た は観 測 周 波 数 領 域 。
が現 れ な い ため であ る。
表 ⅠⅠに列 挙 した もの は 、種 類 の異 な った物 質 ・生 体 の系 で あ る。観 測 周 波数 帯 域 もそ れ ぞ
れ異 な り、 △ hの値 の 直接 的 な比 較 は意 味 が な い。 同- の種 類 の系 、周 波数 帯 域 で の △ h
に は物 理 的 な意 味 (現 象 を支 配 す る物 理 的 な構 造 )が含 まれ て くる。表 は 白色 雑 音 か ら α
が1,2等 の ゆ ち ぎに変 化 す る例 が示 さ れて い る。 αの連 いは 、現象 の物 理 的性 質 の違 いで 、
(5)式 右 辺 の差 の項 はゆ らぎ発 生 源 の物 理 的構 造 を数 量 化 した もの と考 え られ る。 αの
変化 す る点 の周 波数 値 は、例 えば衝 突 が ドミナ ン トに き いて くる現 象 (衝 突 周 波 数 )へ の
-
31 4
-
「
複雑系」
入 口で あれ ば、密度 や温度 、エ ネ ルギー とい う大 きさを示 し、 そ の対 数 値 は系 の活 性 (発 )
度 の数 量 化 で あ る。従 って 、 (5)式 △hは 、系 の物 理 的構 造 、活 性 を表 す測 度 と考 え る
こ とが 出来 る 。MOSFETと Q プ ラズ マ の指 数 差 (αの差 ) を見 る と、 一 方 は+2、他 方 は+4.8
と異 な り、現 象 の物 理 的構 造 の違 いが数 値 に現 れ て い る 。抵 抗 体 と神 経 軸 索 とは 、指 数 差
が いず れ も-1と等 し く、更 に 同様 な周 波数 帯 域 で のエ ン トロ ピー △ h は 、 そ れ ぞ れ -3.
8、
-5.
8と近 い値 で 、 同周 波 数 帯 域帯 域 に お け る現 象 の物 理 構 造 が似 て い る こ とが示 唆 さ れ て
い る。神 経細 胞 の △ h は0で、3桁 にわ た る低周 波 数 の広 帯 域 で ゆ ら ぎ の 構 造 が無 い こ とが
示 され て い る。 これ は神 経 系情 報 処 理 の場 に お いて 、数 秒 か ら数 10分 に か けて ゆ ちぎ に構
造 が あ れ ば不 利 で 奉 る こ とが示 され て い る。
凸 (△h〉0) と凹 (△hく0)の意 味 につ いて 、輝 線 ・吸 収 線 ス ペ ク トル の意 味 す る と ころ
か ら考 え る。輝 線 ス ペ ク トル は a D一 一∞ かつ
吸収線 ス ペ ク トル は a n- +∞ かつ
a n.1
- +∞
α D.1- -∞ に相
に相 当 し 、凸 形 の極 限 で あ る .
当 し、 凹形 の極 限 で あ る。 前 者 は原 子
ま たは分 子 のエ ネル ギ ー場 (不 連 続 ) の電 子 に関 して励 起 状 態 か らエ ネ ル ギー の低 い レベ
ル に遷 移 す る時 に生 じる (系 か らエ ネ ル ギー を放 出 、系 のエ ネル ギ ー の 減 衰 ) 。輝 線 ス ペ
ク トル のエ ン トロ ピー は △h- (
+∞ -く-∞ 〉
)l
o
gん/
27
こ(九:スペ ク トル波 長 )で あ るo これ
は 、2エ ネ ル ギー レベ ル を もつ構 造 (レベ ル 間 に壁 が あ る。 これ が構 造 の存 在 の証 拠 。係
数 の∞ は不 連 続 構 造 に対 応 す る。 ) の存在 を示 し、エ ネ ル ギ ー放 出 の系 で あ る。 吸収 線 ス
ペ ク トル の場 合 △hニ ト∞-く+∞ 〉
)l
o
gん/
27
tで 、逆 符 号 、上 記 と同 じ く構 造 存 在 (係 数 に
∞ が入 る ため不 連続 構 造 ) を示 す が 、エ ネル ギ ー 吸収 の 系 で あ る 。 △ h の係 数 に∞ が 入 ら
な い一般 の場 合 、構 造 は存在 す るが隔 ての壁 が連 続 的 に変化 す る よ うな系 で あ る と考 え る.
符 号 の 区別 は 、エ ネ ル ギ ー放 出系 、吸 収 系 に対 応 す る と考 え る。放 出 、 吸 収 に よ って 系 に
構 造 変 化 が生 じる と、 スペ ク トル形 状 や △ h の値 に変化 が生 じる 。 以 上 の 見 方 を す る と、
表 ⅠⅠの抵 抗 体 、神 経 軸 索 は壁 が連 続 的 に変化 す る構 造 を も っ たエ ネ ル ギ ー 吸収 系 、 そ して
MOSFET、 Q プ ラズ マ は壁 が連 続 的 に変 化 す る構 造 を もったエ ネ ル ギ ー放 出 系 と見 る こ とが
出来 る 。 Q プ ラズ マ の場 合 の △ hの係 数 は他 よ り高 いが 、変 化 の割 合 が高 い と思 わ れ 、壁
はプ ラズ マ ・シー ス に相 当す る 。/
1
2
/
5.結
論
は じめ に文 字 空 間 に お ける記 号 系 列 (時 系 列 を意 識 して呼 ぶ ) に 対 して 、 そ の構 造 を測
る測 度 、情 報 エ ン トロ ピー H が存 在 す る こ と を示 した。 H は文 字 空 間 (記 号 系 列 が 発 生 す
る空 間 ) を作 った法 則 (統 計 的 、無 記 憶 、記 憶 等 ) に支 配 さ れ 、法 則 が 精 密 な ほ ど H の 値
は減少 し、構 造 が現 れ て くる。 これ でエ ン トロ ピー H が 、文 字 空 間 の構 造 の測 度 で あ る と
理 解 した。つ ぎ に物 理 空 間 にお け る時 系 列 は 、 そ れ を発 生 す る シス テ ム の現 象 の物 理 法 則
に支配 さ れ て いな けれ ば な らず 、時 系 列 のパ ワー スペ ク トル密 度 関 数 か らエ ン トロ ピー 密
度 hを導 き、 そ の部 分 関数 △ hが シス テ ムの 物 理 構 造 の測 度 で あ る こ とを 、小 宇 宙 系 、物
質 系 、生 体 系 よ り観 測 さ れ る連 続 スペ ク トル の デ ー タを取 り上 げ 、 例 証 した。
ク ェー サー の電 波 の デ ー タ と貴 重 な コメ ン トを頂 い た 、川 口別 事 氏 、井 上 允氏 、 森 本
雅 樹教 授 (国立 天文 台 ・野 辺 山 )、亀 野 誠 二 氏 (東 大 ・理 )、加 藤 龍 二 氏 、 田原 博 人 教 授
-
3 15
-
研 究会報告
(宇 都 宮 大 ・教 育 ) 、 ま たMOSFETの テ レグ ラ フ ・ノ イ ズ に 関 して 教 示 頂 い たM.Schulz教 授
(
univ.
Erlangen) に感 謝 します 。
文
献
/1/ N.Abramson著 ,宮 川
洋 訳 :情 報 理 論 入 門 (
InformationTheory and Co°ing),1986,
好学社.
p39.
/2/ N.Ta
・
nizuka:
Proc.I
nt.
Cons.
OnNoise in Physical Systemsand i
/iFluctuations.
1991,Ohmsha Ltd‥p401.
/3/ 日野 幹 雄 :ス ペ ク トル 解 析 ,1986,朝 倉 書 店 ,p83.
/4/ 谷 塚 昇 ,川 口別 事 .御 子 柴 鹿 ,井 上 允 :VLBI国内わ ト
ワークシンポ シ
ナウム収 録 , 1
992. 国 立 天
文台 ・
野辺 山.
p136.
/5/ R.A.
Preston,etal.:
Astronm.
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vol.30.p.171.
-3
16
-
Fly UP