Comments
Description
Transcript
Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title Author(s) Citation Issue Date URL 2次元セルオートマトン交通量モデルにおける渋滞相の安 定性(基研長期研究会「複雑系2」∼物理から生物・進化 ・ゲームへ∼,研究会報告) 只木, 進一; 菊池, 誠 物性研究 (1994), 61(5): 453-457 1994-02-20 http://hdl.handle.net/2433/95239 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 「 複雑系 2 - 物理か ら生物 ・進化 ・ゲームノ \∼」 2次元セルオートマ トン交通量モデ) りこおける 渋滞相 の安定性 佐賀大学理工学部情報科学教室:只木進一' 大阪大学理学部物理学教室:菊池 誠I 1 序論 従来、交通量の問題は流体力学的な取 り扱い ( Bur ge r s方程式など)が なされて きた。離散化 によって、計算機 シ ミュ レーシ ョンを実行 しやす くなるため、近年、セルオー トマ トン ( CA)を摩 ったモデル化が幾つかな l f r ?m の分額上 1 8 4番 と名付け られ されている。最 も簡単なモデルは Wo た ものである1)。このモデルは、その簡単 さに も関わ らず、高密度側 で 相転移 を示す。車の速度の変イ ヒを考慮 したモデルや、障害物の効果が こ れませ 1次元モデルで研究 されて きている2,1 3・4 ,5)0 2次元モデルは都市などのある領域内の交通網 に発生する渋滞のモチ ル と考 えられる.Bi ham たちは、簡単な 2次元のモデルで相転移が起 こ ることを示 した6)○本報告では、彼 らのモデルに串ける渋滞相の性質 に っいて議論する7)。 2 モデル ここで扱 うのは Bi ha m らの mode l Ⅰである。草 は周期境界条件 の課 せ られた Ⅳ ×Ⅳの格子上に分布 している。各 s i t eの状態 は nOC ar ー-: 右向 きの車 ∪ : (1) I : 上向 きの車 である。つ ま り、このモデルは 2D 3 s t at eCA である。右向 きの車の数 ( 〃二 -NT )とし、密度 を を 〃二、 ・ 上向 きの車の数 を NT P= Ⅳー +Ⅳ † Ⅳ2 ' E一 ma i1 . ・ t adaki ◎a i・ i 8 . S aga u・ aC JP I Ema u・ . ki nc k hi ◎g od2 i ma. ke kjp - 4 5 3 - ( 2 ) 研究会報告 で定義す る. 。右向 きの車は右隣の s i t eが空いている時、上向きの車は上 隣の s i t eが空いている時、それぞれ 1s i t eだけ動 くことが出来去.系全 体 に交通膚号があ り、偶数時間は上向 きの車だけが、杏数時間は右向 き の車だけが動 くことが出来る。 十分時間が経過 した後の平均の速度旬を調べることによって相転移 を 壬丁 喝 酢甘 ⋮ T I T T T T ● ▲ ▲ ⊥ T Ⅰ T▲ T 柵 盛 定義することが出来る。低密度価では車は自由に動 き ( i i-1 ) 、高密度側 では渋滞で停止する ( 匂-0 ) 。渋滞 i . =よって車が完全 に停止 して しまう原 因は、右向 き上向 きのそれぞれの車が相互に相手の進路 を妨害する羊と による。自由走行相かち渋滞相への転移ははっきりと起 こるが ( p- 0. 35 付近) 、転移点の s i t e数への依存はあま り明かではない。一万 1次元の場 合 には、V -は転移点からなめらかに減少する. ( a ) I a Wc o≡( 3 2 , 3 2 ) p=0. 4 0 ( b ) ( a t t i c e=( 3 2 , 3 2 ) p三0 . 9 0 :( a)低密度での渋滞及び ( b)高密度での渋滞 図1 3 渋滞相の性質 Bi ha m らし の mode l 1で、渋滞相み性質を調べる。低密度で起 とる渋滞 ( p巴0・ 35- 0. 6)では、450 の右上が りの線上 に渋滞の核が並び、水平方 向及び垂直方向に渋滞の枚が伸びている ( 図1 ( a ) ) 。つま り、対角的な方 向に空間的長距離相関 ( 同 じ方向の車同士の相関)があることが分かる。 また低密度の場合、ランダムな初期条件か ら開始 した場合、渋滞が起 こ るまでの時間が長い.この ような渋滞は、郊外の道路で、工事や事故や 幹線道路 に渋滞が生 じ、その幹線道路へ流入する道路 にも渋滞が広がっ た状態 に対応 していると考 えられる。 -45 4- 「 複雑系 2 - 物理か ら生物 ・進化 ・ゲーム- ∼」 'l a t dc e =( 1 28, 1 28) , p= 0. 40 P( t ) 図2 ・ .低密度での分布 p( i ) 一方、高密度 ( pと0. 6- 1 )では、小 さな渋滞が系 を被 い尽 くす ( 図 1 ( b) ) oランダムな初期状態か ら渋滞が起 こるまでの野間は短 く、同 じ向 きの車同士の空間的相関は現れず、初期状態の持 ってい・ たランダムさが 残 っていると考 えられる。このような渋滞 は大都市での渋滞 に対応 して いると考 えられる。つま り、一つの渋滞か らの脱出は、単 に次の渋滞の 最後尾へ追いつ くことしか意味 しないような場合である。 渋滞の中心 には右向 きの車の前に上向 きの車が、逆 に上向きの車の前 oc k a depa irと呼ぶことにする。 に右向 きの車が停止 している。これを bl この bl oc k a depai rを取 り除 き、渋滞の最後尾 に移動す るような摂動 を渋 滞 に対 して加 え、 ・ 渋滞の安定性 を調べ ることにする。上の摂動 を加えた 後、次の渋滞が起 こるまでの時間 tを交通信号の周期 を単位 として計る. その分布を P( i )主 7 申) ∑t c o 呈。 n( i ) ( 3 ) で定義する。ここで、坤) は、摂動の効果 によって車が動 くことの出来 た時間が 王であるようなイベン トの数である。 低密度における渋滞 に摂動を加 えると、比較的長い時 間、車両が動 く - 45 5 - 研究会報告 ことが可能である。 これは、対角方向への空間的長距離相関の効果であ る. これに対応 して P ( f )にはシステムサイズに対応するピークが現れる ) 。つま り、渋滞の中心 をなす b l o c k a d ep a i rの列 に沿 って、摂動の ( 図2 効果が伝わっていることが分かる。 一方、高密度における渋滞に摂動を加えると、一つ一つの渋滞が小 さ く、渋滞 を抜けるとすぐに他 の渋滞の最後尾 に付 くので、車両が動ける ( i )は 時間は低密度 に比べると非常 に短い。摂動の影響する時間の分布 P ・ P( i )∼「A , a -3 とい う巾別 に従 う( 図3 ) 0 'l a t i t c e =(1 2 8 , 1 2 8 ) , p =0 . 6 0 , a =1 2 . 7 'l a t dc e =( 1 2 8 , 1 2 8 ) , p = 0. 7 0 , a =2 . 8 ol a t d c e =( 1 2 8 , 1 2 8 ) , p = 0. 8 0 , a =2 . 9 E ll a t d c e =(1 2 8 , 1 2 8 ) , p = 0. 9 0 , a =3 . 7 図 3: 一 高密度での分布 p ( i ) ー4 5 6- ( 4 ) 「 複雑系 2 - 物理か ら生物 ・進化 ・ゲームへ∼」 4 まとめ 本報告では、 2次元セルオー トマ トン交通量モデルにおける渋滞相の 性質 について議論 した。低密度の渋滞は、空間的長距柾相関があ り、そ れを反映 して、摂動の影響が残 る時間の分布 p( i )に系のサイズ に対応 し たピークが現れた。一方高密度での渋滞は、小 さな渋滞が系全体 を被 う 形で現れる。P( i )は特徴的スケ一一 ルを失い巾別 に従 う。こゐ巾別の出現 l f or g n ai z e dc i it r i c li a t y( SOC)的な性質 を示唆 し は、高密度渋滞相の Se ている。同 じ方向の車同士の空間相関が失われていることは、特徴的空 i )の巾別 を 間スケールの消失 を示唆 しているが、このことから直ちに P( 説明することは出来ない。SOC 的は現象が起 こっているならば、空間相 関にも同様 な効果が現れることが期待 されるが、どの ような空間相関に 巾別が現れるのかが現在の ところ不明であ り、今後 に明かに してい きた い。なお詳細 については文献 7 )を参照 されたい。 Re e fr enc es 1 )S.Wo l f r a m, Re v .Mod.Ph ys .551 ( 1 983) ,601. 2)K.Na ge la ndM.Sc hr e c ke nbe r g, J ・Ph ys ・IF r anc e2,( 1 992) ,2221. 3)K.Na ge landH.I.He r r ma n n, De t e r mi ni s t i cmo de l ' sf ort r a bi cjam, HLRZpr e pr int4 6/ 93( 1 993) . 4)A・ Sc hads c hne i de ra ndM.Sc hr e c ke nbe r g, Ce l l ul ara ut o mat onmo de l s a ndt r a ni cPo w,∫.Phys.A (1993)i npr e s s . 5)M.Ki kuc hi ,S.Yuk nwaa ndS.Tadaki ,i npr e pa r a . t i on. A・A・Mi ddl e t onand・ D・Le vi ne, Phys ・Rや V・A46( 1 992) , 6)0・Bi ha m, 61 2 4. 7)S・Ta da kia ndM.Ki kuc hi ,i npr e par a t i on. - 4 57 -