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清水港ビジョン概要版(PDF 3290KB)

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清水港ビジョン概要版(PDF 3290KB)
は
じ
め
に
政令指定都市 静岡市は県都として、また、人口 100 万人を超える静岡都市圏の中心として
の役割を果たし、
“活発に交流し価値を創りあう自立都市”として“世界に誇れるまち”を目
指している。
そのため、静岡都心、清水都心、東静岡都心の3つの都市核が特性に応じた機能分担を図
り、それらを交通や情報通信ネットワークで結んだ連携型の都市形成を行う方針である。
清水都心の中核である“特定重要港湾 清水港”は、開港 108 年を迎え、主に静岡県立地企
業の海上貿易拠点としての役割を果たしており、国際海上コンテナ取扱個数(TEU)は全国第
7位(平成 18 年)に位置するなど、今後の静岡市経済の核になることは十分予想される。
一方、高齢化社会の到来や人口減尐社会への移行において、人々のニーズは多様化してお
り、地域の持続的発展のためには、魅力的で質の高いまちづくりを行う必要がある。
清水港はこれまでも国際交流拠点として賑わいを創出してきたが、地域ポテンシャルを活
かした新たな施策を展開し、さらに多くの人々による交流を拡大させることが、静岡市の持
続的発展を実現するために効果的である。
特に、中山間地が多く平坦地が尐ない静岡市にとって、清水港の土地利用は重大な鍵であ
り、港全体での新たな機能分担を踏まえた再整備計画が必要になっている。
そのため、①JR清水駅前の江尻地区、②現在でも国際交流拠点として賑わう日の出地区、
③静穏で広い貴重な水域がある折戸地区 の3地区の“みなとまち”としての望ましいあり方
について、市民の意見を踏まえながら重点的に検討した。
清水港の港湾管理者は静岡県であるが、“港湾所在市”として静岡市の発展を 支えるため、
今後 20~30 年先を展望した清水港のあるべき姿を、将来ビジョンとして策定することは大い
に意義があり、また、その実現に必要な施策については静岡県と協議しながら、新たな“港
湾計画”に反映できるよう努めていくものとする。
なお、本ビジョンの策定にあたって、民間事業者をはじめ多くの方々のご協力を頂いてお
り、ここに深く感謝の意を表するものである。
平成 20 年3月
静岡市
目
次
1
ビジョンを策定するうえで認識した主な地域ポテンシャル ······································· 1
2
清水港ビジョンの基本理念と機能強化の具体的方向性 ············································ 2
3
4
2-1
基本理念の設定 ····················································································· 2
2-2
機能強化の具体的方向性 ·········································································· 4
2-3
望ましい機能配置 ·················································································· 8
主要プロジェクトの展開方向··········································································· 11
3-1
江尻地区 ···························································································· 12
3-2
日の出地区 ························································································· 16
3-3
折戸地区 ···························································································· 20
3-4
その他地区 ························································································· 24
3-5
総括 ·································································································· 26
実現に向けた課題 ························································································· 28
1
ビジョンを策定する上で認識した主な地域ポテンシャル
清水港背後地域で進められている新東名高速道路(第二東海自動車道)や中部横断自動車
道、平成 21 年3月開港予定の富士山静岡空港など、広域高速交通基盤から見た国土構造上
の地理的優位性をはじめ、観光・歴史資源、地域の人々と清水港との結びつき 、及び新産業
立地における優位性等、本ビジョンを策定する上で認識すべき主なポテンシャルを整理した。
【静岡県の都市・産業活動等、社会基盤から見たポテンシャル】
1
政令指定都市“静岡市”のまちづくりに期待されている清水港
○人口 100 万人を超える静岡都市圏のなかで、海洋文化機能を活かした“清水都心”の核として期待
2
富士山静岡空港等の整備により海・陸・空の国内外ネットワークが飛躍的に向上
○駿河湾海上交通の要衝
○新東名高速道路(第二東海自動車道)や中部横断自動車道により、国内各地からのアク
セスが飛躍的に向上する
○富士山静岡空港の開港(平成 21 年3月予定)により、海・陸・空のネットワークが構
築される
3
生産活動が活発で、企業立地も進む静岡県
○ 製造品出荷額、工場の新規立地件数で全国第3位を誇る静岡県
【清水港の利用、施設整備状況から見たポテンシャル 】
4
中核国際港湾として欧米コンテナ航路も開設(週 4.5 便)されている清水港
○高付加価値製品の輸出拠点である清水港
○欧米航路が開設(週 4.5 便)され、外貿コンテナ取扱量は全国第7位 (TEU ベース)
○5大港以外では初の水深 15m岸壁を有する高規格コンテナターミナル“新興津CT”
5
世界の豪華客船が寄港する魅力的な清水港
○国内三大美港の一つで、背後には有名な観光・歴史資源が集積している
○官民協働による積極的な客船誘致活動が展開されている
6
市民生活のステージとして、多くの人々が訪れる“清水みなと”
○多様なアメニティ施設とイベントの開催により、人々の賑わいと憩いの場となっている
○海洋性レクリエーション拠点として、多くのプレジャーボートを収容している
○定期水上バスや魅力的な港内クルーズが運航され、多くの利用者が訪れている
7
マグロ輸入量日本一を誇る清水港
○日本に輸入されるマグロ(生鮮・冷凍)の約 65%が清水港で扱われている
8
清水港のエントランス部、JR清水駅周辺の再開発事業が順調に進捗している
○JR清水駅から清水港へのエントランスにふさわしい空間が整いつつある
9
臨海部防災拠点として耐震強化岸壁等の整備が進捗している
【清水港の空間的なポテンシャル】
10
利用の自由度が高く、静岡市の発展を支える空間を有している
1
2
清水港ビジョンの基本理念と機能強化の具体的方向性
2-1
基本理念の設定
本ビジョンでは“静岡市が目指すまちの姿”の実現に清水港が寄与することを念頭に置き、
20~30 年後を展望した清水港のあるべき姿(=将来像)を描くものである。
その目指すべき将来像(キャッチフレーズ)は、清水港が果たすべき役割を本ビジョンの
基本理念としてまとめ、それらを踏まえて設定した。
清水港ビジョンの基本理念
政令指定都市 静岡市は県都として、また、人口 100 万人を超える静岡都市圏の中心として
の役割を果たし、“世界に誇れるまち”を目指している。そのため、静岡都心、清水都心、東
静岡都心の3つの都市核が特性に応じた機能分担を図り、それらを交通や情報通信ネットワ
ークで結んだ連携型の都市形成を行う方針である。
清水都心の中核である清水港は、日本でも有数の国際海上コンテナ取扱機能を有する国際
貿易港として、地域企業の世界市場への展開を支援し、地域経済の活性化に貢献する。
また、産業の発展は雇用機会の創出を通じて都市の活力を産みだすとともに、豊かな市民
生活を実現する。よって、清水港は地域にある豊富な資源を有効に活用する産業を育み、世
界市場に“静岡ブランド”の最先端製品を供給する重要な場所として、世界に誇れるまちづ
くりに貢献する。
一方、高齢化社会の到来や人口減尐への移行において、人々のニーズは多様化している。
清水港はこれまでも国際交流拠点として賑わいを創出してきたが、地域ポテンシャルを活
かした新たな施策を展開することで、人々の多様なニーズに応え、交流を通じて地域活力の
向上に貢献する。
さらに、清水港は大規模地震対策や自然環境問題などにも積極的に取り組むことで、
“世界
に誇れる安全・安心なまち”として地域の資産価値の向上にも貢献する。
このように“世界”を意識し、“世界”に通用するまちづくりにおいて、清水港が有する機
能を高める方針として、本ビジョンの将来像キャッチフレーズを以下のように設定した。
清水港ビジョンの将来像キャッチフレーズ
“世界を見つめ、安全・安心、憩いと活力を提供する海洋交流拠点
2
しみず”
機能強化の方針
機能
物流
内
容
 静岡県地域が国内での生産活動の最適地として企業に選択されるよう、清水港の
世界ネットワークをさらに充実するとともに、環境への負荷が小さく、規模の経
済(スケールメリット)が発揮され、低廉で高度なコンテナ輸送サービスを提供
できるコンテナターミナルを構築する。
 “東アジア域内物流の準国内化”の進展を踏まえ、海上輸送と陸上輸送の連結性
が高い国際RORO船(トレーラーが乗船でき る貨物専用フェリー)に対応する。
 企業の生産・販売戦略に応えられる港湾として物流機能の強化を図る。
産業
 清水港周辺に集積している様々なポテンシャル(資源、技術力、社会基盤等)を
最大限活用して、新たな需要を喚起する製品や、世界に誇れる環境創造型や海洋
資源関連製品を産みだす産業立地に対応できるよう空間を確保する。
 世界人口の増加により食料問題が顕在化するなかで、マグロ等の水産物を中心と
した食料供給拠点として、世界の人々に“安全・安心”を提供する。
交流
 日本政府は、観光・地域活性化事業等に関わっている各省庁がその枠を超え、統
一的な観光振興施策のもとに、効果的・効率的な事業を展開できるよう“観光庁”
の設置を決定した。このような動きも踏まえ、清水港背後地域にある観光資源へ
のエントランスとして、また、清水港が魅力ある観光地となるよう集客・交流機
能を強化する。
 さらに、海に開かれた資産価値が高い“みなとまち”を創造し、静岡市地域の定
住・交流人口の増加と経済の活性化に資するものとする。特に、国際条約SOL
ASへの対応により、市民が気軽に訪れられる水際線が減尐したことも踏まえ、
港湾空間における国際交流拠点の充実や都市的利用の拡大、新たな親水空間の創
出を図るとともに、JR清水駅や静岡鉄道 新清水駅からの人々の誘導、および
港内回遊性の向上を図る。
環境
 清水港でのあらゆる経済活動において、地球温暖化防止策として二酸化炭素排出
量を削減する取り組みや、廃棄物処理対策にも貢献する。
 快適な港湾空間形成の一環としての景観形成をさらに充実するとともに、豊かな
海と緑を保全し、次世代の人々に継承する。
安全
 大規模地震や津波・高潮対策を強化することで、人々の暮らしの安心と安全を提
供するとともに、地域の産業活動の維持に貢献する。
 国際物流拠点、交流拠点として、世界各国と歩調を合わせて、国際港湾施設にお
いて適切な保安対策に取り組むものとする。
交通
 新東名高速道路(第二東海自動車道)や中部横断自動車道といった新たな広域高
ネット
速道路との良好なアクセスの強化と、三保地区の半島性解消のためのアクセスの
ワーク
充実を図る。
 JR清水駅や静岡鉄道 新清水駅からの人々の誘導、および港内回遊性の向上を図
る。
3
2-2
機能強化の具体的方向性
2-2-1
物流(国際海上コンテナ)
平成 20 年代後半を目標年次とした清水港の港湾計画では、将来の外貿コンテナ取扱量を
544 千 TEU と想定し、その貨物を適切に扱うために水深 15m岸壁2バース、水深 12m岸壁
2バースの連続4バースを有する新興津コンテナターミナル計画を位置づけている。
バブル経済崩壊後、日本の製造業は、より安い製品を製造するため中国を中心としたアジ
ア諸国への工場移転を行っていたが、近年の日本経済の回復傾向と、デジタル家電メーカー
等での最先端技術の海外流出の防止を目的とした工場の国内回帰も見られ、国内生産量が増
加に転じ始めている業界もある。しかしながら、より低価格の汎用品を生産するために、今
後とも日本と海外での分業体制は続くものと考えられる。
このような中で、新東名高速道路(第二東海自動車道)や中部横断自動車道、富士山静岡
空港の整備により、国内外ネットワークが充実する静岡県での工場立地は進展し、静岡県か
ら世界市場への製品供給拠点としての清水港の役割がさらに高まることを期待できる。
一方、コンテナターミナルでの貨物の取扱は、欧米航路への超大型コンテナ船の投入で、
1寄港当たりの積卸し個数が増加するが、運航スケジュールを遵守するために限られた時間
での荷役作業を迫られることになる。よって、迅速かつ効率的な荷役を行うため に、高能率
の荷役機械の導入や、ターミナルでのコンテナ積み段数の低減も必要になると考えられる。
本ビジョンでは超長期的な視点により、港湾計画で位置づけられているコンテナターミナ
ルの能力を越える施設需要が発生した場合に対応する新たな開発空間を想定した。
また、地球温暖化防止対策が十分に行われたコンテナターミナルを目指し、以下のような
取り組みを行うことを静岡市として提案する。
 岸壁接岸中の船舶からの排気ガスをなくす為、埠頭の陸上施設から電源 供給の検討
 燃料消費量と二酸化炭素排出量が尐なく、エネルギー効率が高い 荷役機械の導入
 電気自動車など、省エネルギータイプのコンテナ搬送車両の導入
 省電力タイプの冷凍コンテナ保管施設の導入
 上屋施設への太陽光発電施設の設置など、自然エネルギーの活用
さらに、
“ 東アジア域内物流の準国内化”においては、海上輸送と陸上輸送の連結性が高く、
スピーディーな貨物輸送が求められており、これらの要請に応えるには国際フェリーやRO
RO(トレーラーが乗船できる貨物専用フェリー)の導入が適している。広域高速道路網の
結節点に位置する清水港では、このようなタイプの船舶にふさわしいため、本ビジョンでは
貨物輸送専用の国際ROROターミナルを提案する。
また、加工組み立てや在庫管理など、高度な流通加工を行える物流センターを配置できる
空間も確保し、企業の生産・販売戦略に的確に応える港湾として機能を果たすものとする。
4
2-2-2
産業
第1次静岡市総合計画でも示されているように、静岡市の豊富な資源を活用した産業を創
出し、雇用機会を増加することが静岡市の持続的発展に必要不可欠である。
新産業としては、清水港周辺地区に集積している産学官の海洋関連研究機関との連携を図
りつつ、駿河湾が有する質の高い海洋深層水を 活用した食品や環境関連製品に関する先端産
業が挙げられる。
また、清水ならではの“マグロ等の水産業”の事業活動の拡大を促し、国内外市場での“静
岡ブランド”の地位向上によって、地域経済の活性化を図ることが考えられる。
特にマグロは国際的な漁獲規制や世界各地での消費拡大により、日本の漁獲量は減尐し、
ひいては国内市場での流通量が減尐することが想定されている。
このような情勢において、マグロを獲るだけでなく清水の地で育て、国内外市場に安定的
に流通させることが、“マグロのまち静岡”を目指すうえでの役割として考えられ る。
あわせて、畜養・養殖に関する研究所の設置や、それらの姿を見学できる観光の場として、
また観光客等が畜養・養殖魚等を味わえる飲食施設などを一体的に整備することが効果的と
考えられる。
2-2-3
交流
世界のグローバリズムの進展により、観光を通じた国際交流人口はさらに拡大する方向に
ある。観光は幅広い裾野産業を有しており、その経済波及効果は非常に大きいため、我が国
では観光振興政策“ビジット・ジャパン・キャンペーン”を掲げ、世界各国から観光客を誘
致する取り組みを行っており、さらにその動きに弾みをつける観光庁の 設置が決定した。
清水港背後地域は、世界に名高い“富士山”や静岡県特産の農水産物をはじめ、人々を魅
了する多彩な観光アメニティがあること、また 新東名高速道路(第二東海自動車道)や中部
横断自動車道の広域高速道路の整備により、国内各地とのアクセスが飛躍的に向上すること、
さらに富士山静岡空港の開港により、清水港と連携した Sea&Air ツアーの開催も可能にな
ることなど、大きな集客ポテンシャルを有している。
よって、国内外から清水港背後地域に訪れる観光客のエントランスとして、また 清水港が
新たな観光地となるよう、清水港の集客・交流機能を強化し、地域の人々との交流による賑
わいの創出、および経済の活性化を図ることを目指すものとする。
そのため、国際旅客船バースがある日の出地区での国際交流拠点にふさわしい空間づくり
のほか、JR清水駅に近接し、西伊豆を結ぶフェリーの発着場にも 適した江尻地区周辺での
都市的利用の拡大、親水空間としての新たな利用を図れる折戸地区など、各地区が有するポ
テンシャルを最大限活用し、地域の人々の日常生活における憩いの場を創出することも念頭
に取り組むものとする。特に、国際条約SOLASの対応により、市民が気軽に訪 れること
ができる水際線が減尐していることを踏まえて検討する。
5
また、各地区での取り組みの相乗効果を最大限発現させるために、港内における陸上と海
上が連携した回遊性の向上と、JR清水駅や静鉄新清水駅から人々を導く 交通軸の強化の調
査・研究も提案する。
これらの取り組みは静岡市臨海部における“職・住・遊”の魅力と資産価値を高めること
になり、交流人口の増加、ひいては定住人口の増加を期待できるものとなる。
【江尻地区】
▲多くの人が訪れる“河岸の市”
▲清水駅東口イベント広場での清水港マグロまつり
【日の出地区】
▲地域の憩いの場“マリンパーク”
▲世界の豪華客船が着岸する国際交流拠点
【折戸地区】
▲プレジャーボートの利用が増加している折戸湾
6
2-2-4
環境
人類の生存をも脅かす地球温暖化防止対策には積極的に取り組むよう、関係各所に働きか
けるものとする。例えば、コンテナターミナルにおける燃料消費量や二酸化炭素排出量が尐
ない荷役機械やトレーラーの導入や、トラック輸送から海上輸送への転換(モーダルシフト)
を促すことなどが挙げられる。廃棄物対策については、廃棄物の発生を抑制する経済活動の
実現とともに、廃棄物の最終処分場を適切に確保することも必要である。清水港には港内浚
渫土砂と静岡市の一般廃棄物の最終処分を行う廃棄物処理用地( 26ha)が一体的に確保され
ているが、静岡市の最終処分場( 2.6ha)は残余容量の限界に近づいているため、静岡市で
数尐ない最終処分場の候補地として、引き続き清水港内での対応を図るものとする。
さらに、清水港が全国の港湾のなかでも積極的に取り組んでいる“景観形成”については、
現在は日の出地区を中心に展開しているが、今後は対象範囲を拡大するなど、民間事業者を
はじめ関係機関の理解と協力を得ながら充実を図るものとする。
港内および周辺水域においては、水質の悪化を防ぎ、良好な水辺環境を次世代の人々に継
承することを念頭に各施策を展開するものとする。
2-2-5
安全
東海地震の発生が懸念されているが、地震発生後においても様々な経済活動や日常生活を
維持でき、人々が安心して生活を営める地として地域の資産価値を高めることを念頭に置き、
ソフト、ハードの施策に取り組むことが必要である。
例えば、コンテナターミナルにおいては、生活関連の緊急物資や企業の生産活動の維持に
貢献する耐震強化岸壁の整備を推進するほか、ターミナルに蔵置しているコンテナの積み段
数を低くすることにより、地震発生時のコンテナ倒壊による作業員や施設等への被害を最小
限にとどめるものとする。
また、津波・高潮対策として、港湾緑地において高台等の避難場所の拡充も必要である。
これらの対策の実施には、港湾管理者である静岡県、さらに民間事業者の協力を必要とす
るため、各関係者の理解を得て行うものとする。
さらに、国際物流拠点、国際交流拠点である清水港は、これらの機能を拡充していく中で、
国際条約遵守の観点からも適切な保安対策の実施を行うものとする。
2-2-6
交通ネットワーク
新東名高速道路(第二東海自動車道)や中部横断自動車道といった新たな広域高速道路の
結節点に位置する大きなポテンシャルを最大限発揮 できるよう、良好なアクセスの強化と、
三保地区の半島性解消のためのアクセスの充実を図る。さらに、JR清水駅や静岡鉄道 新清
水駅から多くの人々を誘導し、陸上、海上双方で魅力ある港内回遊性を高めることで、清水
港全体に人が流れ、賑わいが広がる取り組みを行うものとする。
7
2-3
望ましい機能配置
将来像実現のための機能配置の検討を行う上での前提条件等を以下に示した。
機能配置の考え方
①スケールメリットを発揮して、環境への負荷が小さく、高度なサービスを提供する外貿コ
ンテナ貨物取扱機能と関連産業の集約
 荷主企業からの清水港でのコンテナ取扱の要請は、静岡県立地企業のさらなる成長と、
中部横断自動車道等の高規格道路の開通による背後圏の拡大等が相まって、ますます増
加することを期待できる。このような要請を確実に受け止めるには、ターミナル等の基
盤施設の整備とともに、荷主が望むニーズを的確に捉え、低廉で室の高いサービスを提
供することが必要不可欠である。
 特に、コンテナ貨物の取扱には、船舶荷役やターミナル荷役での大型クレーンや、流通
加工を行う高機能の物流支援施設など、大規模の設備投資を必要とする。そのため、集
約して施設整備を行うことが投資費用を抑えられ、また荷主の利便性も高まることにな
る。すなわち、スケールメリットによる低廉で高度なサービスを荷主は享受できること
になる。
 このようなことを踏まえ、新興津・興津地区でのコンテナ貨物取扱機能を中心として、
当地区地先での新たなコンテナターミナルの展開、および高度な物流支援施設を配置す
るものとする。
 なお、新興津・興津地区でのコンテナターミナルと一体的に、国際RORO貨物の取扱
も行うものとする。
②既存空間の活用による産業立地用地の確保
 本市では、本年度に静岡市企業立地戦略指針を作成し、臨港地区だけでなく市全体の重
点立地産業を定めているが、具体的な誘導エリアは平成 20 年度以降に引き続き検討す
る方針である。よって、その方向性と歩調をあわせ企業立地を促すものとする。
 なお、企業の新規立地に対する要請が寄せられた場合や企業誘致を行う場合には、企業
の進出スケジュールに合致するよう、迅速に基盤整備を行うことが不可欠である。その
ためには、既存用地の活用が最も効果的であるが、清水港には利用の自由度が高い廃棄
物処理用地(跡地)や企業の未利用地を有しているため、これら の活用も念頭に置いて
企業立地を促すものとする。
 清水港に立地している既存産業において、事業活動の拡大のために新たな空間への移転
が望ましいと考えられる場合には、清水港全体での機能再編も視野に入れ、新たに創出
される空間への誘導を行うものとする。
 木材の取扱がなくなった折戸湾においては、貴重な 静穏水面を活かせる清水港ならでは
の産業展開の場として活用する。
8
③性格が異なる多様な緑地レクリエーション・交流機能を分散配置するとともに、海陸 の回
遊性を高めることで“清水みなとまち”の魅力向上を図る。
【日の出地区】
清水港の交流拠点として賑わ いを創出している日の出地区では、“国際交流の促進”、
“しみずみなとまち を世界に発信する場”という視点で都市的機能を高め、静岡市臨海
部の活力を向上させる。
【江尻地区】
清水港への鉄道駅からのエントランスであり、 西伊豆を結ぶフェリーの発着場にもふ
さわしく、多くの人々が行き交う海陸の結節点としてのポテンシャルを有しているため、
既存の漁港機能も活用しつつ、JR清水駅東側での再開発事業との連携を図った交流機
能を配置する。
さらに、JR清水駅北東部における企業の再編により創出される跡地については、都
市的利用を行い、一体的な賑わい空間を創出するものとする。
【折戸地区】
貯木場としての利用が無くなった貴重な静穏水域を活用し、すでに利用が始まってい
るプレジャーボートを核とした海洋性レクリエーション拠点、および新たに導入を考え
る産業と連携を図った文化交流拠点を創出する。
上記3地区(日の出地区、江尻地区、折戸地区)を“みなとまちづくり”の拠点と位置
づけ、JR清水駅や静岡鉄道 新清水駅から多くの人々を臨海部に導く交通軸の強化の調
査・研究をはじめ、清水港全体を回遊できる魅力ある海陸ネットワークの構築を図るもの
とする。
④新東名高速道路(第二東海自動車道)や中部横断自動車道がもたらす整備効果を、清水港
が最大限受け止められるよう円滑なアクセスを確保するとともに、三保半島の閉鎖性の解
消と産業の新規立地を促進するアクセスを確保する。
 上記の高速道路は、内陸部と清水港を結ぶ新たなアクセスとしてコンテナ貨物や観光客
によって、大いに利用されるものと期待できる。
 このような貨物や人を清水港の目的地に円滑に導くことができるよう、尾羽JCT(仮
称)からのアクセス、および新興津地区から三保半島を結ぶアクセスを確保する。
9
3
主要プロジェクトの展開方向
機能配置構想を踏まえ、地区ごとに主要プロジェクトの具体的な展開方向と、その実現に
向けた段階的な整備構想もあわせて検討を行った。
整備構想の実現には、多様な関係者との調整が必要であるが、ここでは技術的観点から対
応が可能である方法を段階的に示したものである。
なお、江尻地区、日の出地区、折戸地区について重点的に検討し、新興津地区、貝島地区、
三保地区はその他の地区として取りまとめた。
11
3-1
江尻地区
当地区は旧清水市経済の発展に貢献した“水産業”を活かした清水魚市場“河岸の市”の
事業展開や、冷蔵庫団地地先に海釣り公園の整備が行われ、また、港内海上バスが発着する
ことになり、多くの人々が集い賑わう、交流拠点に転換されつつある。
この背景には、JR清水駅東口の再開発事業によって、人々が集うにふさわしい空間が形
成され、また人々をJR清水駅および駅西側から清水港にスムーズに誘導することが可能に
なったことも要因に挙げられる。
このように、当地区のポテンシャルは、
“中心市街地に近接し、海陸の結節点として多くの
人々が集えること”と捉え、静岡市の主要な地 場産業である水産業の活性化に資する流通機
能の強化を図るとともに、その水産業を活用した賑わいをより一層拡大し、日の出地区など
各地区との連携を深めることで、清水港全体に賑わいを波及する取り組みを行うものとする。
さらに、市街地に近接した交流拠点として、津波・高潮対策も念頭に置いた安全な空間づ
くりを行うものとする。
○水産流通機能
 老朽 化 が 著し い 静 岡市 魚 舎 の改 築 にあ
わせ、衛生管理対策も充実させる
中心市街地に近接した交流・親水空間と
して、賑わいと憩いの場の創出
 冷凍船の大型化への対応と、分散してい
る冷蔵庫団地の利便性を向上するため、
冷蔵庫団地の他地区への誘導
○商業・サービス機能
 漁業を“核”として、観光と商業が結び
ついた水産複合施設の整備
水産業の活性化を図る流通機能の強化
○親水アメニティ、都市的機能
 港に訪れる人々に、憩いと安らぎを提供
する親水空間の創出
 清水港のランドマークとして、清水港来
海陸の結節点として、海上交通ネットワ
ーク拠点の形成
訪者、およびJR東海道線の乗客にもア
ピールするポートタワーの設置
 眺望の確保と、津波・高潮発生時でも安
全な親水空間として、高台、築山を有す
る緑地等の整備
 企業未利用地を活用した、都市的利用の
津波・高潮対策も念頭にした安全な空間
拡大
○海上交通機能
 港内 回 遊 性を 高 め る海 上 バ ス乗 り 場の
充実
 西伊 豆 と 連携 し た 観光 ル ー トを 充 実す
の創出
るための西伊豆フェリー発着場の整備
江尻地区機能強化の方針
12
3-2
日の出地区
日の出地区においては、平成5年に策定された“日の出地区再開発計画”をもとに進めて
きた再開発事業は完了し、清水港の国際交流拠点として、地元市民はもとより観光客等、多
くの人々が訪れている。また、災害発生時における緊急物資を扱う耐震強化岸壁が整備され
ており、人々に安全と安心を提供する基盤が整っている。
一方で、平成 16 年7月に発効された“改正ソーラス条約”により、日の出4号、5号岸
壁は国際旅客船が寄港する国際埠頭施設としてソーラス対策が実施され、水際線に人々が気
軽に訪れることができない状況もある。
また、この日の出ふ頭岸壁は、プレジャーボート施設や商業施設などが集積している清水
マリンパークに近接しているが、その間には港湾会館 清水日の出センター(マリンビル)や
港湾合同庁舎、税関など、港湾関連の官公庁施設が分散して立地しており、地区全体での交
流空間の一体性に欠けている状況もある。
さらに、清水港の港湾計画では、外貿貨物の取扱は袖師地区等へシフトするものの、内貿
貨物の取扱は将来とも行うことが位置づけられており、貨物関連車両と一般車両の輻輳が生
じるなど、国際交流拠点にふさわしい安全性と快適性が十分に確保された空 間とは言い難い。
上記を踏まえ、静岡市臨海部における質の高い国際交流空間の創造を目指し、日の出地区
全体での一体性の確保、および江尻地区から日の出地区等への海上と陸上による回遊性の向
上とJR清水駅や静岡鉄道 新清水駅から人々を導く魅力的な動線について、交通軸の強化を
検討するものとする。
○国際交流機能
 世界 に 誇 れる 清 水 港の エ ン トラ ン スと
して、交流施設や宿泊・商業施設の整備
のほか、客船誘致、国際的なイベントや
会議等の開催
国際交流拠点にふさわしい、
魅力ある賑わい空間の創出
○親水アメニティ、都市的機能
 日の 出 地 区が 一 体 とな っ て 賑わ い 空間
を創出できるよう、港湾関連官公庁施設
の集約や物流・産業機能の他地区へ移転
地域の人々の生活の場としての魅力向上
港内回遊性の向上
○海上交通機能
 海上バス乗り場の充実
大 規模 地 震 発 生時 の 臨 海 部防 災 拠 点と
○防災機能
 緊急 時 に 耐震 強 化 岸壁 が 機 能を 十 分に
しての機能充実
発揮できるよう、支援機能の充実
日の出地区機能強化の方針
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3-3
折戸地区
折戸地区には関東大震災で被災した首都圏等の復興に利用する輸入木材 の供給拠点として
水面貯木場が整備され、その後も袖師地区の陸上木材ヤードとともに多くの木材を扱ってき
た。
しかし、木材需要の低下のほか、木材産出国での高付加価値製品化の進展による丸太輸入
から製材(コンテナ)への転換、さらに水分を多く含む木材の使用回避等が相俟って、平成
18 年には水面貯木場を利用する木材がなくなった。
企業ヒアリングによれば、今後の人口減尐に伴う住宅着工戸数の減尐、ひいてはさらなる
木材需要の低下等により、今後とも水面貯木場利用が復活する可能性は考えられないとのこ
とである。
一方、平成 14 年に供用開始した民間マリーナに保管しているプレジャーボート所有者は、
県内のみならず首都圏などの県外在住者も多く、広域的な背後圏を有するプレジャーボート
活動の拠点になりつつある。
上記を踏まえ、折戸湾水域では木材の取扱は行わないことを想定する。
よって、木材の取扱がなくなり、すでに水質の向上も見られる広い静穏水域のほか、海洋
関連の研究機関が立地していること等を折戸地区の大きなポテンシャルとして、静岡市経済
の活性化に資する新たな利活用方策について検討するものとする。
○海洋性レクリエーション機能
 高齢者、障害者もセーリングを楽しめる
セーラビリティや、子供達を対象にした
教育マリーナの導入
誰もが“海”で楽しめる
海洋性レクリエーション拠点の形成
 プレジャーボート収容施設の充実
○産業機能等
折戸地区のポテンシャルを活かした
 折戸 湾 水 域を 活 用 した マ グ ロ等 水 産物
の畜養・養殖機能の導入
 海洋関連の新産業開発拠点の形成
 一般廃棄物最終処分場候補地の検討
静岡市経済活性化への貢献
○展示・交流機能
 畜養・養殖技術や海洋関連技術を子供達
に伝承する機会の提供
新産業拠点と一体となった展示・交流拠
点の形成
 上記 展 示 施設 を 観 光資 源 と して も 活用
し、多くの人々が交流する空間の創出
港内回遊性の向上
○海上交通機能
 港内 回 遊 性を 高 め る海 上 バ ス乗 り 場の
整備
折戸地区機能強化の方針
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3-4
その他地区
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新興津地区
清水港は閉鎖された海域に位置し中山間地が背後に迫っているため、海陸ともに開発空
間が尐ない立地条件にあるが、唯一新興津地区は外海に面し、利用の自由度が高い空間を
創出できるポテンシャルを有している。
現在、静岡県は製造品出荷額や工場の新規立地件数が全国第3位であるが、 新東名高速
道路(第二東海自動車道)や中部横断自動車道のほか、富士山静岡空港の整備により、国
内外各地とのアクセスが飛躍的に向上するため、今後とも企業の新たな 展開場所として選
択され、活発な事業活動が行われることを期待できる。
すなわち、清水港は超長期的な視点によって、海上貿易の中枢基盤として企業の生産活
動を支えるコンテナ貨物取扱機能の強化方策のほか、荷主企業のニーズ等を鑑みた新たな
物流機能の導入、および新たな企業進出要請が生じた場合の対応場所についても想定して
おく必要があり、新興津地区の既存用地と新興津地区地先も視野に入れて検討した。
なお、これらの施策については、地球温暖化対策としてCO 2 排出量を抑制できる環境
に配慮した物流拠点の形成を念頭に検討した。
また、新興津地区ではかつての風光明媚な海岸の復元を目指した海岸整備が進められて
いるほか、背後地域に旧東海道(興津宿)の風情が残されているため、これらを活用して、
新たな親水レクリエーション・交流拠点の形成の方向性も検討した。さらに、改正SOL
AS条約により、外航船舶が入港する岸壁付近にはフェンスが設置され、釣り等で楽しめ
る空間が減尐したとの意見が多くあるため、失われた市民の憩いの場を創出する視点でも
検討した。
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4
実現に向けた課題
本ビジョンで描いた施策を実現するには、多大な時間と施設整備等に伴う投資が必要であ
るとともに、各関係者の理解と協力を得ながら段階的かつ戦略的に取り組むことが不可欠で
ある。ここでは本ビジョンの重点検討地区である、江尻地区、日の出地区、折戸地区におい
て、今後取り組むべき主な課題を再整理した。
【江尻地区】
○清水駅北側 工業用地の都市的利用への転換について
当地の立地企業では事業体制の見直しによって、臨港道路より陸側に余剰用地が発生
する。この用地はJR清水駅東口に近接しているため、清水駅周辺と一体的に活用でき
ることが望ましい。また、土地所有者も都市的利用ができるよう、臨港地区 分区の変更
等を希望していることから、早期に対応し、清水駅北東地区の賑わいを創出することが
必要である。なお、当企業の大規模な海側用地は、今後の事業活動の動向を踏まえつつ、
適宜柔軟な対応を行うことが必要である。
○水産複合施設“観光魚市場”の整備・運営主体について
江尻地区の集客拠点施設であるとともに、静岡市の水産業の活性化に繋がる拠点施設
でもあるため、ここで事業活動を行っている水産関連事業者が中心になって、実現に向
けた検討を行う必要がある。
○冷蔵庫団地の他地区への誘導について
飛島地区冷蔵庫団地を他地区に誘導するには、その誘導先で効率的な事業活動を行え
ることが不可欠である。本ビジョンでは、袖師地区第1埠頭を候補地として検討したが、
その埠頭で扱っている貨物動向等を追跡調査し、その可能性を精査する必要がある。
また、飛島地区冷蔵庫団地を他地区へ誘導することに対し、関連事業者間での合意形
成を図る必要がある。
○西伊豆フェリーの導入について
西伊豆フェリーを導入するには、水域における船舶航行や、陸域での車両通行におけ
る安全性を十分に確保する必要がある。
特に、西伊豆フェリーについては、一定期間、江尻地区に就航させる社会実験を行っ
て、問題点や課題等を明確にし、その対応策を講じることが必要である。
また、車両に対しては臨港道路の拡幅をフェリーターミナルやシンボル緑地等の整備
とともに行うことが必要である。
○漁港区南側用地について
人が集い賑わう、また憩いを与える空間として活用不可欠な場所であるが、当地では
民間企業所有地が多くあるため、所有者の理解と協力を得ながら段階的に取り組 むこと
が必要である。
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【日の出地区】
○物流機能の他地区への移転について
新興津地区では水深 15mコンテナターミナルが供用し、関連する物流倉庫等の充実と
ともに、日の出地区上屋で扱っていた貨物のシフトが進められている。今後とも、貨物
のシフトがスムーズに進むよう、その受け皿として新興津地区や内陸部(清水港から 5km
圏内)での物流関連施設の充実が必要である。
○港湾関連官公庁と商業施設の複合施設、国際旅客ターミナルの整備について
日の出地区での国際交流拠点づくりの必要性を官民で共有し、複合施設を実現するこ
とが必要である。また、複合施設、および国際旅客ターミナルについては、限りある財
源を効率的に活用するため、PFI等の事業手法の活用も視野に入れて、今後検討を深
めることが必要である。
○水際線を充実する為の研究・調査について
日の出地区のSOLASについては、当地区の外貿貨物が興津・袖地地区へシフトした際に
人々に開放されることとなっているが、できる限り早期に水際線を開放する観点から、
現状のフェンスの構築形態や船舶・上屋の使用方法を調査・研究し、SOLAS条約に抵触し
ない範囲で開放に向かう手立てを官民併せて検討す る必要がある。
○日の出地区と江尻地区の一体的空間の創出について
清水港に国内外から多くの人々を迎え入れ、交流を通じて静岡市経済の活性化を図る
には、JR清水駅前の江尻地区から日の出地区が一体となり、多様な活動を行える空間
を創出することが望ましい。
現在、当地点では民間企業による事業活動が行われていることから、今後の江尻地区、
日の出地区における交流・親水空間の進捗と、企業の移転に関するメリットや移転費用
等を含め、関係者と十分かつ段階的に取り組む必要がある。
【折戸地区】
○折戸湾活用方策の継続的検討について
折戸湾は約 70ha の広い水域を有する利用の自由度が高い静穏水域であるため、本ビジ
ョンでは静岡市の観光、産業への貢献、および環境の維持の観点で、維持すべき貴重な
水面として、その利用方策の一つとして提案した。
その実現には、利用のレベルにあわせた水質の向上が不可欠であるため、今後、研究
機関の協力を得ながら、生態系等への影響を考慮した水質改善方策について検討を進め
る必要がある。
一方で、折戸湾の一部等を埋め立て、土地を創出する活用方策の提案もある。今後と
も経済社会の潮流と土地需要の動向を捉えながら、折戸湾の活用方策について継続的に
検討を進める必要がある。
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○木材流出防止杭の撤去について
かつて水面貯木場として利用されていた折戸湾には、数百本の木材流出防止杭が設置
されているため、水域で新たな利用を行うには膨大な費用を必要とする杭の撤去を強い
られる。より効率的に撤去できるよう、静岡市および港湾管理者等の関係者間で検討を
行う必要がある。また、一部の杭については、歴史的モニュメントとして活用すること
も効果的と考えられる。
○地権者との合意形成と、土地利用に合致した臨港地区(分区)指定について
折戸湾周辺には民間事業者等の所有地も多くある。折戸地区でのみなとまちづくりの
必要性を地権者等とも共有し、新たな土地利用にスムーズに移行できるよう取り組む必
要がある。
また、当地区の多くは臨港地区 工業港区であるため、その利活用にあった臨港地区(分
区)指定の変更が必要である。
【その他】
○鉄道駅とのアクセスを高める交通軸の強化の調査・研究について
清水港に多くの人々を導くとともに、港内での回遊性を高める ために、JR清水駅や
静岡鉄道 新清水駅を結ぶ交通軸の強化について調査・研究が必要である。
○三保半島とのアクセスの向上策について
清水港全体での回遊性の向上、および清水港の機能配置の再編を円滑に行うには、三
保半島地域とのアクセス向上が不可欠である。
平成 16 年に策定された清水港港湾計画では、将来構想として袖師地区第一ふ頭と貝島
地区を結ぶルートが示されている。しかし、事業費の低廉、早期の実現を図るには、ア
クセスルートを短くできる日の出地区と貝島地区を結ぶことも考えられるため、今後、
多様な観点で検討を行う必要がある。
また、橋梁や沈埋トンネルなどの構造物だけでなく、海上でのバージ等の利用も効果
的であることも踏まえ、アクセス向上策を検討することも必要である。
○国際交流拠点としての賑わいの創出に向けたイベントやクルーズ客船等の誘致について
国際交流拠点に相応しい賑わいを創出するには、ハードだけでなくソフト的な起爆剤
も必要である。例えば、清水港周辺での国際コンベンションの開催、Sea&Air クルー
ズを視野に入れ、富士山静岡空港ともタイアップした国内外クルーズの開催などが挙げ
られ、関係者に積極的に誘致活動を行うことが必要である。
○地球温暖化対策の推進について
地球温暖化は人々にとって深刻な問題であり、あらゆる経 済活動において取り組む必
要がある。清水港においては、トラック輸送から海上輸送へのモーダルシフトを促進す
ることや、自然エネルギーの活用やエネルギー効率が良い荷役機械を導入したコンテナ
ターミナルの構築などが挙げられる。
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このような取り組みによる清水港のCO 2 削減の貢献度を調査するとともに、その取
り組みや結果を全国にアピールすることで、清水港のステータスを向上することも必要
と考えられる。
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