...

関口 なほ子 - 日本大学文理学部

by user

on
Category: Documents
35

views

Report

Comments

Transcript

関口 なほ子 - 日本大学文理学部
平成 21 年度 日本大学文理学部個人研究費研究実績報告書
ドイツ文学科・専任講師・関口
研
究
課
題 20 世紀ユダヤ人女性作家・作品研究
研究目的
および
研究概要
報
告
研 究
の
の
概
結 果
なほ子
要
本研究ではナチ時代を生き、故国ドイツを追われたドイツ・ユダヤ人女性作家や亡命作家と
呼ばれる人々(とりわけ我が国においてあまり知られていない作家たち)の生と作品を考察
し、彼女らの生の足跡を今日的な意味と連関のもとに再構成することを目的とする。研究対
象として、強制収容所で生を終えた詩人ゲルトルート・コルマー、戦後亡命(潜伏)先であ
るオランダからドイツに帰国した作家グレーテ・ヴァイル他が検討される。前掲の女性たちは
いずれも自己ならびに他者の過去、とりわけナチによるユダヤ人迫害の体験を「書く」とい
う行為を通して、いかに再生していくかという問題と対峙している。そこには「犠牲者」と
して、「作家」として、「ユダヤ人」として、あるいは「女性」としてのさまざまな視点から
生じる心的葛藤や個人的見解、外的状況があると考えられる。今回これらの問題点を、作品
解釈・時代考察・作品受容とともに、作品における語りの技法や特徴を通して考察する。
上記の目的と概要に従って、今年度は前掲の作家ゲルトルート・コルマーの小説とグレーテ・
ヴァイルの伝記的小説を題材に取り上げた。特に重点を置くことになった、グレーテ・ヴァイ
ル研究については、4つの伝記的小説作品を通時的・共時的に考察し、かつそれぞれの作品
を作家の発展段階に応じて位置づけていくことを最終目標に据えたが、第二次世界大戦中オ
ランダへ亡命した作家グレーテ・ヴァイルは、日本ではほとんど知られておらず、また入手可
能な文献も少ないため、限定的かつ断続的に作品を検討することを余儀なくされた。その範
囲において、グレーテ・ヴァイルの伝記的小説作品群を個別に考察しながら、作家の文学的営
為における各作品の有機的な連関を俯瞰的に理解することに努め、その伝記的小説作品群の
第一作品に位置づけられる小説『トラムの停留所ベートーベン通り』を中心に、作品分析と
作品に内在する諸問題について論文にまとめた。当該作品以降の作品研究については継続研
究課題とするつもりである。次に、当初研究計画には挙げていなかったエディット・シュタ
インを研究対象に取り上げた。ユダヤ人にして、カトリック系宗教哲学家として知られ、ま
た教育者としての顔も持つエディット・シュタインについては、初めて取り上げる研究対象
ということもあり、その伝記的理解と同時に膨大な作品群の中から、本研究のテーマに関わ
る著作、特に 1930 年代に彼女によって提起された女性論を取り上げ、当時の女子教育の現状
と問題との関連において考察を進め、この課題研究は現在も継続中である。
研 究
の
考 察
・
反 省
研究計画書を提出した際に推察した通り、ゲルトルート・コルマー、グレーテ・ヴァイル、エ
ディット・シュタインともに、国内における一次文献並びに二次文献を入手することが困難
であり、文献の中には相互利用不可能なものもあった。そのため、海外研究機関での文献収
集を計画していたが、それは物理的な制約や諸般の事情から実施されず、研究課題の修正・
縮小が考慮されねばならなかった。
※
この欄は,本報告書提出時点で判明している事項についてご記入ください
研究発表
学会名
発表テーマ
年月日/場所
研究成果物
テーマ
誌名
巻・号
発行年月日
発行所・者
「ドイツ・ユダヤ人女性作家グレーテ・ヴァイルにおける<記憶>と<自己同一性>の問題
について-小説『トラムの停留所ベートーベン通り』を中心に」 人文科学研究所 『研究
紀要』 第78号 2009 年9月
Fly UP