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ADAMTS13
V7A2 平成27年度赤十字血液シンポジウム 東北 時:2015年11月14日(土) 所:山形テルサ ADAMTS13 Update: ADAMTS13 Update: TTP診断と血小板輸血の重要指標 TTP診断と血小板輸血の重要指標 日本赤十字社近畿ブロック血液センター 藤村吉博 FFPの適正使用 使用指針 1)凝固因子 (やVWF) の補充 2)凝固阻害因子や線溶因子の補充 3)血漿因子 (ADAMTS13) の補充 1. 出血時 → 止血 = 傷口を塞ぐ VWF 血小板血栓(一次止血) = 血小板 + VWF(糊) 2. 血栓を強固に! 凝固血栓(二次止血) = フィブリン糸(クモ糸様) 3. 血管修復後 → 不要血栓を除く! 線溶 = フィブリン分解(酵素プラスミンの働き) 血漿VWFの電子顕微鏡像 (Ohmori K, et al. 1982) (SS) n (SS)n (SS) n ADAMTS13 (VWF切断酵素) (SS) m (SS) m ADAMTS13によるVWFの切断 ADAM meets EVE アダムはイブに出会った ADAMTS13 meets VWF ADAMTS13はVWFに出会った a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13 血液難病 TTP (血栓性血小板減少性紫斑病) 血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) 古典的5徴候 • • • • • 冠 動 脈 内 細血管障害性溶血性貧血 血小板減少 腎機能障害 発熱 動揺性精神神経症状 腎 心 新鮮な血小板血栓 脳 脾 腎 血栓 出血 1985年 (宮崎医大病理 浅田祐士郎先生) TTP: •ADAMTS13 活性 <10% •先天性(遺伝子異常) •後天性(中和抗体) ADAMTS13 構造 星細胞 (ADAMTS13) 血管内皮細胞 (VWF) (Rockey DR. Sem Liver Dis, 2001) 先天性TTP (Upshaw-Schulman syndrome) 山形県酒田市 日本海病院 小児科 本邦USSのADAMTS13遺伝子変異の特徴 東北に多い変異 p.Q449X Geographical distribution of ADAMTS13 gene mutations ② HOKKAIDO HONSHU p.R193W ⑥ AOMORI IWATE YAMAGATA ⑩⑪ p.C908Y HYOGO GUNMA FUKUI KYUSHU YAMAGUCHI SAGA NAGANO p.Q449X FUKUSHIMA SAITAMA ⑳ KAGAWA ①④ c.2259 del A ③ SHIMANE FUKUOKA MIYAGI EHIME ⑤ ⑭⑮ ⑧ KOCHI OHITA KUMAMOTO MIYAZAKI p.R193W SHIKOKU SHIZUOKA TOKYO MIE OSAKA ⑱⑲ ⑳ ⑦⑨ ⑫⑬ ⑯⑰ 大船渡(札幌) 酒田 仙台 血中半減期とUL-VWFMに対する効果 超巨大 VWF 多重体 24hrs 10d−2w 初めて血小板減少を指摘された時期 女性(妊娠) 男性(加齢) 後天性TTP 一般的 ADAMTS13 活性 ADAMTS13 インヒビター 力価 血小板数 難治例 併用 CD20抗体 リツキサン 抗体産生を 抑制 TTP患者への血小板輸血 • Scylla and Charybdis • 症例 ❻ • ADAMTS13 活性測定法迅速化の効果 ギリシャ神話 症例 ❻ (原発性・後天性TTP) 2003年3月 20 62才 男性 視野欠損 21 One day 22 血小板減少 (6,000/ul) 凝固検査正常 破砕赤血球 (±) ITP を疑診 23 貧血進行 TTP を疑診 FFP 輸血 24 神経症状出現 PC (15U)輸血 25 突然 心停止にて 死亡 【病理解剖】 死亡3年後に検査依頼 検査依頼 2006年1月19日 結果報告 2006年1月20日 2003年5月23日の血漿 ADAMTS13:AC < 0.5% ADAMTS13: INH 1.7 BU/ml 1.心臓: 心筋内出血、冠動脈内血栓、弁膜に血栓性疣贅 2.肺: 肺うっ血が主体、強い炭粉沈着 3.腎臓: 血栓、出血性梗塞、急性尿細管壊死 4.副腎: うつ血、出血、梗塞、血栓の多発 5.胃: 血栓(+) 6.脾臓膵臓肝臓: うつ血 7.骨髄: 未熟巨核球の増加 8.大脳: 脳梗塞(右側頭葉、両後頭葉)、脳浮腫 ADAMTS13活性測定法の進歩の影響 TTP患者への血小板輸血の評価 TTP (ADAMTS13活性 <10%) (奈良医大輸血部1998−2014) 依頼者 血漿サンプルの送付 結果報告 (4−7日) 遅速法 サンプルの受け取りと ADAMTS13活性とインヒビター測定 2000.3 ~ 2005.3 2005.4 ~ 2013.12 VWFM 測定 ELISA 測定 結果報告 (1−2日) 迅速法 血小板輸血 2000− 2014年 1.0 血小板輸血(ー) 0.8 Probability 生 存 率 p=0.481 p=0.481 0.6 血小板輸血(+) PC 0.4 0 1 No Yes 0.2 0.0 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 7 2 3 0 0 0 day Number at risk 0 1 215 48 40 7 21 3 12 3 未発表データにより非公開 血小板輸血 Before 2005 (遅速法) After 2005 (迅速法) PC 1.0 血小板輸血(ー) 0.8 0.8 0.6 0.6 Probability Probability 1.0 0 1 血小板輸血(+) 0.4 PC 0 No 1 Yes 0.4 0.2 0.2 p=0.051 p=0.52 0.0 0.0 0 500 1000 day 1500 2000 0 500 1000 1500 day 2000 2500 3000 解釈 未発表データにより非公開 • ADAMTS13活性が著減していると、原則として、予防的血小板 輸 血はしない。 • 仮に、著明な出血症状があり、血小板輸血をやむなく行った場合も 、その後の積極的な血漿交換療法の実施で救命できた。 • 血小板輸血前のADAMTS13活性測定は安全輸血につながる。 血漿交換療法について FFP、クリオ沈殿とクリオ上清 Pool & Shannon • 1964年 • クリオ沈殿法の確立 • FVIII因子活性を多く含む クリオの背景 • 1970年代、 日赤クリオ作製(シングルドナー) • 凝固第VIII因子、血友病A治療 • ABO型別製剤 • 同時期、旧ミドリ十字社製 「乾燥AHFクリオ」 • ABO血型、不問 • 大量使用によりフィブリノーゲンが蓄積 • 「過粘度症候群(hyperviscosity syndrome)」 ー 胸内苦悶 • その後、プール血漿を用いた濃縮第VIII因子製剤が開発 • 後年、薬害エイズ騒動 クリオ再評価 • 心臓や肝臓の外科手術時に、「術早期からクリオを併用すると 出血量が減じる」 との報告は数多い。 • これは、「大量出血に伴う血中フィブリノーゲン低下がクリオで 補充されることによる凝固補正効果」 と信じられてきた。 • 現在、病原体不活化処理をした「精製フィブリノーゲン製剤」 があり、心臓外科手術における治験が実施中。しかし、その 中間成績は? クリオの特徴 • フィブリノーゲン、第VIII因子、VWFなどの「止血因子」の他、 フィブロネクチンなどの「接着因子」、そしてa 2-マクログロブリン などが含まれている。 • それ故、クリオは「止血効果」の他に、フィ ブロネクチンによる 「創傷治癒促進効果」も期待される。 • 第VIII因子、 VWF、a2-マクログロブリンの3種はいずれも 糖蛋白質で、糖鎖部分に個人固有のABO血液型物質を持つ。 • AB-型クリオでは、製剤中のABO型物質の濃縮を理解すべき。 病原体不活化(低減化)処理の導入 • クリオについては、近年、血漿の病原体不活化処理工程が 大きく進展したことから再考すべき時に来ている。 • 具体的な不活化処理とは、ミラソル (リボフラビンとUV光)と インターセプト (アムトサレンとUV光) である。 • この両者のFFP止血機能に及ぼす比較論文が最近示された。 • ミラソルは止血因子の低下度がインターセプトよりも著しい。 UV照射 吸着 Amotosalen クリオ作製 FFPの有効利用? 細菌とウイルス の不活化処理 FFP 4℃でゆっくり解凍 (12-18時間) 遠心分離 クリオ上清 TTPの血漿交換に最適 ADAMTS13製剤? クリオ沈殿 止血因子関連 創傷治癒関連 フィブリノーゲン VWF VIII因子 a2-マクログロブリン フィブロネクチン (ラミニン?) ABO血液型 糖鎖を持つ 大量出血の外科出血時に使用 まとめ • FFPの病原体不活化処理をする際に、「止血機能がより良く保 持されることは必須である」。 • クリオ上清は、その特徴として血栓惹起性の高分子VWFが欠損 し 、一方、血栓分解性のADAMTS13が原血漿の約93% (活性比)残存している。 • それ故にクリオ上清は、 ① TTPの血漿交換には最適の製剤 ② アルブミン等の原料血漿としてJBに譲渡可能 ③ 将来的に血漿由来ADAMTS13製剤の開発の可能性もある。