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都市イメージと都市活性化 - NPO法人 洞窟環境NET学会
都市イメージと都市活性化 ― 「小 京 都 」から「ゆるキャラ」まで ― 上野 裕 City image and revitalization ― Symbol of ‘Little Kyoto’ and ‘Character loose ’― UENO Hiroshi ABSTRACT Local cities are looking to revitalize with a hierarchical structure in the metropolis center. Under such circumstances, the direction in Osaka/Kyoto model and its own character has shown. It’s easy to understand as a symbol, just to understand the appeal of the city entrance. The issue should be attached to city image and symbol. It is characteristic of the city, it also means you how to take advantage of diversity. Key ward:city image, Kyoto/Osaka model, character loose, revitalization [洞 窟 環 境 NET学 会 紀 要 1号 ][Cave Environmental NET Society(CENS) 、Vol.1(2010), 18-21pp] 1. はじめに 東 京 への一 極 集 中 が言 われて久 しい。この流 れの中 にあって、近 年 地 方 にスポットを当 てた「ご当 地 もの」が取 り上 げられている。 「富 士 宮 焼 きそば」「宇 都 宮 餃 子 」など地 域 に根 ざしたローカルフードがB級 グルメとして定 着 し、日 本 一 を決 めるB1―グランプリなど イベントが全 国 に発 信 され、地 方 に活 力 を呼 び込 んでいる。また、2009年 10月 には全 国 の「ご当 地 キャラ」が彦 根 市 に集 結 し第 二 回 目 の「ゆるキャラまつり」が開 催 され2日 間 で7万 人 以 上 の観 光 客 を集 めた。こうした動 きはまさに地 方 ブームの観 を呈 する。戦 前 に おける「北 陸 の大 阪 」や「四 国 の大 阪 」そして今 日 の「小 京 都 」や「小 江 戸 」を名 乗 る都 市 が多 く存 在 し、これもまた個 性 的 な大 都 市 を発 展 モデルとして活 性 化 を図 ってきた一 例 といえよう。このことは、都 市 を発 展 させる政 策 の推 進 役 としての都 市 イメージやシンボ ルは重 要 な意 味 をもつことを示 す。 経 済 ・情 報 が集 中 する東 京 を代 表 とする大 都 市 とその影 響 下 のある地 方 都 市 という階 層 構 造 の中 で、地 方 都 市 再 生 や活 性 化 が 模 索 される現 代 社 会 にあって、都 市 政 策 のイメージやシンボルの果 たす役 割 について再 考 することも必 要 であろう。小 論 では、とくに 「小 京 都 」を柱 にこの間 ブームをなった「ゆるキャラ」そして戦 前 の「大 阪 」についてそのもつ意 味 を検 討 し、地 方 都 市 と大 都 市 との関 わ りと地 方 都 市 のあり方 の一 端 を明 らかにしたい。 2. 地 方 都 市 の活 力 とシンボル 2-1. 「ゆるキャラ」のもつ意 味 「ゆるキャラ」ブームは、彦 根 築 城 400年 記 念 のイベントキャラクター「ひこにゃん」が火 付 け役 となり全 国 に広 がり、ゆるキャラサミット 協 会 も結 成 され、2009年 の「ゆるキャラまつり」には138体 が集 まった。まつりの様 子 は中 央 メディアによって取 り上 げられ、宣 伝 費 をほ とんど使 わずに全 国 に発 信 された。これは、中 央 の発 信 力 を活 用 することによって地 方 に活 力 を呼 び寄 せられる一 例 ともいえよう。 大 阪 経 済 法 科 大 学 地 域 総 合 研 究 所 客 員 研 究 員 ・大 阪 経 済 法 科 大 学 講 師 ・洞 窟 環 境 NET学 会 理 事 「ゆるキャラ」は「ひこにゃん」のようにイベントにとどまらず都 市 シンボルとして使 われる場 合 も多 い。わかりやすさ、インパクトの強 さは メディアを通 してそのシンボルやイメージを短 時 間 で広 範 囲 に多 くの人 々に伝 えることができる。しかし、そのことは必 ずしも人 々のその 都 市 への興 味 に繋 がるとは限 らない。都 市 イメージと現 実 の都 市 空 間 は一 致 しないことが多 い。同 様 にローカルフードの場 合 も、ネッ トで取 り寄 せることができ、その意 味 では都 市 の名 称 はブランドとしての意 味 をもつが、生 産 地 たる都 市 の実 像 に強 い関 心 をもたせる までにはいたっていない。 とすれば、このブームはTVなどメディアとネットによって生 まれたといえよう。この中 で、地 方 都 市 は個 性 ある地 域 として扱 われるが、 わかりやすく切 り取 られた情 報 によって語 られる従 順 な存 在 として単 純 化 されやすく、むしろメディアやネットを通 して大 都 市 の階 層 化 に組 み込 まれつつある。中 央 との関 係 が固 定 化 されるともいえよう。シンボルは都 市 の魅 力 を発 信 する役 割 を担 うことは間 違 いない。 しかし、わかりやすさやインパクトのみでは都 市 のもつ多 様 性 、魅 力 を語 ることは難 しい。キャラクターが担 うのは、それに至 るまでの入 口 としての役 割 である。 2-2. 「大 阪 」とよばれたまち 現 在 「大 阪 」を名 乗 る地 方 都 市 はない。しかし明 治 から昭 和 初 期 にかけて全 国 に存 在 し、大 阪 イメージは都 市 発 展 のシンボルとして 扱 われていた。東 北 の大 阪 ・郡 山 市 (福 島 県 )、北 陸 の大 阪 ・高 岡 市 (富 山 県 )、山 陰 の大 阪 ・米 子 市 (鳥 取 県 )、四 国 の大 阪 ・今 治 市 (愛 媛 県 )、伊 予 の大 阪 ・八 幡 浜 氏 (愛 媛 県 )、西 の浪 花 ・牛 津 町 (現 、佐 賀 県 小 城 市 )、関 東 の大 阪 ・下 館 市 (現 、茨 城 県 筑 西 市 )など である。 郡 山 市 は戦 前 から製 糸 、紡 績 、安 積 疏 水 を活 用 した化 学 工 業 が発 展 し、大 正 13年 には市 制 を施 行 した。その際 の記 念 として建 て たのが大 阪 の中 之 島 公 会 堂 を模 した郡 山 市 公 会 堂 (写 真 1)で現 在 も当 時 のままの状 態 で活 用 されている。米 子 市 は古 くから山 陰 の 陸 海 交 通 の要 地 で早 くから鉄 道 も開 通 し(山 陰 線 ・明 治 45年 、伯 備 線 ・昭 和 3年 開 通 )、物 資 の集 散 地 として発 展 した。加 えて製 糸 ・ 鉄 工 ・醸 造 などの工 業 も盛 んで、明 治 ・大 正 期 の地 元 発 行 のガイドブックにも「山 陰 の大 阪 」「山 陰 の浪 華 」と紹 介 されていた。今 治 市 は瀬 戸 内 海 運 の中 心 で四 国 最 初 の貿 易 港 でタオルや造 船 業 で知 られた都 市 である。大 正 9年 の市 制 施 行 記 念 の市 勢 案 内 には、 商 業 地 から綿 織 物 業 の勃 興 による商 工 業 地 へ、さらに機 業 地 として発 展 し、煙 突 濛 々たる黒 煙 が発 展 の象 徴 で「四 国 の大 阪 」と称 さ れるようになったとある。 写 真 1.郡 山 市 公 会 堂 図 1. 下 の小 京 都 の分 布 これらの都 市 に共 通 するのは、県 庁 所 在 地 とはなっていないが、交 通 の要 地 として商 業 が栄 え、次 いで工 業 を積 極 的 に導 入 し地 域 中 心 として発 展 したことである。「東 洋 のマンチェスター」といわれた大 阪 は東 京 と比 肩 する大 都 市 として、それら地 方 都 市 の発 展 モ デルとなっていた。人 々の行 き交 う物 資 の集 散 地 そして煙 突 の林 立 する景 観 は、戦 前 とりわけ大 正 、昭 和 始 めにおいては肯 定 的 に 捉 えられていたことがわかる。しかし、戦 後 の高 度 成 長 期 を通 してその名 称 はほとんど使 われなくなった。工 業 化 は確 かに都 市 を発 展 させたのであるが、反 面 公 害 というマイナスイメージを強 めていき、それと比 例 するように「大 阪 」は消 えていくこととなる。今 日 、郡 山 市 は「音 楽 都 市 」、今 治 市 は「タオルのいまばり」、高 岡 市 は「万 葉 のふるさと」など新 たなシンボルのもとで独 自 の町 おこしを展 開 してい る。工 業 化 という一 元 的 なイメージで都 市 発 展 が語 られた時 代 を経 て多 様 な価 値 観 をもつ都 市 、個 性 のある都 市 への転 換 が求 めら れているといえよう。このことは、かつて持 っていた圧 倒 的 な個 性 、発 信 力 が弱 くなった大 阪 のあり方 を問 う現 象 でもある。 3. 「小 京 都 」都 市 は何 を発 信 するのか 「小 京 都 」といわれる都 市 は、自 称 も含 めれば100以 上 にもなる。「小 京 都 」ということばが一 般 的 に使 われるようになったのはいつ頃 からかといえば、第 2次 大 戦 後 それも高 度 成 長 期 に入 ってからのことである。経 済 的 展 発 とともに拡 大 してきた旅 行 ブームと対 応 しつ つ「小 京 都 」都 市 が増 えてきた。故 郷 性 の再 発 見 ともいうべき「ディスカバージャパン」のスローガン、さらに観 光 雑 誌 などでの小 京 都 特 集 の発 行 などの下 で、古 い町 並 みの残 る、ひなびた都 市 へ多 くの人 々が訪 れるようになった。1970年 代 の後 半 には「小 京 都 連 合 」 という組 織 が生 まれ、20 数 都 市 がこれに加 わった。そして、1985年 には、京 都 市 の観 光 協 会 主 催 下 で第 1回 全 国 京 都 会 議 が京 都 を含 め26都 市 の参 加 をえて開 かれた。以 後 、毎 年 、参 加 都 市 持 ち回 りで会 議 が開 催 され、1997年 には52市 町 が参 加 するまでにな った。現 在 は金 沢 市 、盛 岡 市 、松 本 市 などが不 参 加 で46市 町 とわずかながら減 少 傾 向 にある。 全 国 京 都 会 議 への加 盟 基 準 は、①京 都 に似 た自 然 景 観 、町 並 み、たたずまい、②京 都 と歴 史 的 なつながり、③伝 統 的 な産 業 、芸 能 のうち最 低 一 つの条 件 を満 たすことで、歴 史 の古 い都 市 には決 して厳 しいものではない。これは結 成 の主 な目 的 が観 光 の振 興 に あることと関 わろう。歴 史 学 でいう「小 京 都 」は中 世 後 期 の領 国 文 化 の拠 点 で京 都 との関 係 が深 い都 市 、山 口 、土 佐 中 村 、一 乗 谷 な どを指 すが、それよりは明 らかに観 光 概 念 あるいは情 緒 的 な概 念 でとらえられる。したがって、今 日 「小 京 都 」ということばは、歴 史 的 都 市 にとってその歴 史 性 を認 知 されるシンボルとして、またそれらの都 市 の本 山 としての京 都 の中 心 性 を高 める点 で、双 方 にプラスの影 響 が大 きく働 いているといえよう。寺 社 、華 道 、茶 道 などの本 末 制 度 における京 都 と地 方 都 市 の関 係 に類 似 する。 「小 京 都 」都 市 の多 くは、城 下 町 を起 源 とし、かつては地 域 中 心 としての役 割 を担 っていた。しかし、明 治 以 降 、政 治 ・交 通 におけ る中 心 性 を喪 失 し、それにともない経 済 力 をも低 下 させていった。それは人 口 面 にもみてとれる。5万 人 未 満 の都 市 が55%(28都 市 )、 10万 人 未 満 のそれは80%(41都 市 )を占 めることとなる。これ市 町 の多 くは、その立 地 から資 本 主 義 経 済 の空 間 的 なネットワークの中 で結 節 性 をもつ都 市 とはなりにくかったことによるといえよう。逆 にそのことが、古 い町 並 みなどの景 観 、伝 統 的 な祭 事 や産 業 を残 して きた。こうした伝 統 的 要 素 は過 去 の遺 産 として残 っているだけではなく、観 光 や伝 統 産 業 などそれぞれの都 市 の存 立 基 盤 の一 つとな る有 利 な条 件 でもある。そして何 よりも、歴 史 ・文 化 が生 きづくあるいは故 郷 性 のある都 市 は、これまで経 済 性 、効 率 性 を追 求 し発 展 し てきた近 代 以 降 の東 京 型 都 市 (東 京 とその支 社 経 済 都 市 、企 業 城 下 町 、コンビナート都 市 など)に対 峙 するシンボルともなっている。 4. おわりに 都 市 とりわけ地 方 都 市 のシンボルは発 展 、活 性 化 のための政 策 やイベントを進 めるうえで重 要 な役 割 を果 たし、戦 前 の「大 阪 」都 市 、高 度 成 長 期 以 降 の「小 京 都 」都 市 、今 日 の「ゆるキャラ」ブームと繋 がってきた。以 下 「小 京 都 」の要 約 から地 方 都 市 のあり方 を考 えてみたい。 何 故 「小 京 都 」、あるいは京 都 型 都 市 なのか。明 治 以 降 とくに高 度 成 長 期 以 降 、都 市 は生 産 と消 費 の拡 大 再 生 産 の場 となりその 規 模 を大 きくしていく中 で、土 地 問 題 、交 通 渋 滞 、公 害 など自 己 矛 盾 を生 み、そのあり方 が問 われてきた。都 市 がもつ本 質 の一 つで あるが、これまで二 次 的 な位 置 にあった「都 市 は快 適 な生 活 の場 」という観 点 の再 認 識 が、人 間 的 スケールの都 市 「小 京 都 」へ私 達 を 向 かわせているように思 える。さらに「小 京 都 」の伝 統 的 な要 素 を、残 されたという消 極 的 ではなく創 造 の源 とすることが、今 求 められて いる個 性 的 で魅 力 ある都 市 更 新 につながる。 「大 阪 」都 市 は商 工 業 の経 済 発 展 が都 市 発 展 に繋 がる という 一 元 的 な価 値 観 の中 で生 まれ、 戦 前 の都 市 のあり方 をよく 示 すと 同 時 にそこで培 ってきたも のをどのよう に生 かす か課 題 ともい えよう。 そして「ゆるキャラ」 は都 市 魅 力 のわか り易 い シンボルとし て 全 国 メディア とネットによ って広 域 的 に発 信 され る が、 それは都 市 のもつ奥 行 きへ の入 口 に過 ぎない ことを認 識 す べき である。そ れを契 機 に人 々の創 り上 げてきた 歴 史 性 、社 会 性 など 都 市 のもつ 多 様 な魅 力 にど う繋 げてい くのかが課 題 となる。 (2010年 1月 30日 受 稿 、2010年 2月 5日 掲 載 決 定 ) 参考文献 1) 黒 田 勇 編 『送 り手 のメディアリテラシー』 世 界 思 想 社 教 学 社 、2005年 。 2) 船 越 幹 央 「「大 阪 」と呼 ばれた街 」橋 爪 節 也 編 著 『大 大 阪 イメージ』創 元 社 、2007年 。 3) 二 場 邦 彦 「京 都 と小 京 都 都 市 」二 場 邦 彦 編 著 『京 が甦 る』淡 交 社 、1996年 。 4) 全 国 京 都 会 議 監 修 『小 京 都 を訪 ねる旅 』講 談 社 、1991年 。