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I know『Shall we ダンス?』
1 9 9 8年5月発行 ISSN 1343-2524 第3 1号 国際交流基金 日本語国際センター 編 集 協 力 国際文化交流推進協会 発行・編集 http://www.jpf.go.jp/j/learn_j/jedu_j/tsushin/tsushin-index.html ― 国際交流基金 The Japan Foundation アメリカのマスコミはこの映画のテーマは「ミッ I know『Shall we ダンス?』 えい が 周防正行 ドライフ・クライシス(midlife crisis)であると言 19 9 6年1月に日本で公開された映画 『Shall we ダ いました。日本語にすれば「中年の精神的危機」と ンス?』は日本国内で日本映画としては珍しく大 いったところでしょうか。映画が成功した理由の一 ヒットしました。そして、アメリカでの公開もすぐ つは日米のテーマの共通性だったのです。 い す おうまさゆき ねん がつ に ほん こうかい に ほん こく ない えい が に ほん えい が めずら だい こうかい に ほん ご ちゅうねん えい が にちべい せいしんてき き せいこう き り ゆう ひと きょうつうせい に決まったのですが、それも日本映画にとっては異 そしてもう一つ、大きな理由がありました。 例のことでした。 「暴力とセックスのない映画をありがとう」 き に ほんえい が い ひと れい おお ぼうりょく アメリカで公開され成功した日本映画は黒澤明監 こうかい せいこう に ほんえい が くろさわあきらかん り ゆう えい が 私はアメリカで試写会に立ち会う度に、そう観客 わたし し しゃかい た あ たび かんきゃく 督作品や伊丹十三監督作品などほんの数本しかあり に感謝されました。新聞や雑誌にも必ずといってい ません。 いほど、「誰でもが安心して楽しめる映画」と書か とくさくひん い たみじゅうぞうかんとくさくひん すうほん かんしゃ しんぶん だれ あんしん ざっ し かなら たの えい が か 日本の特殊なサラリーマンや社交ダンスを扱った れました。それは今、アメリカで作られている数多 私の映画がアメリカでどのような評価を受けるのか、 くの映画が「暴力とセックス」に溢れているという とても楽しみでしたし、不安でもありました。 ことを示しています。私は監督として、必ずしも暴 に ほん わたし とくしゅ しゃこう えい が あつか ひょう か たの う ふ あん いま えい が つく ぼうりょく かずおお あふ しめ わたし かんとく かなら ぼう 結果は、日本映画としては過去最高の大ヒットを 力やセックスを扱うことが悪いことだとは考えてい 記録し、たくさんの賞もいただくという、大成功で ません。むしろその二つは人間にとってとても大き した。 なテーマであると考えています。ただ、あまりにも けっ か に ほんえい が き ろく か こ さいこう だい しょう だいせいこう いちばんおどろ かんきゃく はんのう に 本の観客の反応とほとんど変わらなかったことです。 ほん あつか わる ふた かんが にんげん おお かんが 私が一番驚いたのは、アメリカの観客の反応が日 わたし りょく かんきゃく はんのう か つまり、主人公の中年ビジネスマンに感情移入し、 しゅじんこう ちゅうねん かんじょう い にゅう 安易に「暴力とセックス」が扱われていることは確 あん い ぼうりょく あつか たし かでしょう。 私はアメリカでの成功を通じて、確実に世界が狭 わたし せいこう つう かくじつ せ かい せま その生き方に共感を覚えてくれたのです。笑うとこ くなっていることを実感しました。日本の問題は、 ろが一緒なら、泣くところも一緒です。日本の文化 もはや世界の問題なのです。同じように世界のどの の特殊性がアメリカ人の興味をひいたのではありま 国の問題も、日本の問題なのです。今、国境は地図 せんでした。現代の日本人が抱えている問題が、そ の上だけの存在になりつつあるのかもしれません。 い いっしょ かた きょうかん おぼ わら な とくしゅせい いっしょ じん げんだい に ほん ぶん か きょう み に ほんじん かか もんだい のままアメリカ人の問題でもあったということです。 じん もんだい じっかん せ かい くに もんだい うえ もんだい に ほん に ほん おな もんだい もんだい せ かい いま こっきょう ち ず そんざい (映画監督) えい が かんとく 1