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2007 年 9 月 /10 月号
Japan Translation Journal No.231 Japan Translation Federation − CONTENTS − 社団法人日本翻訳連盟機関誌 2007 年 9 月 /10 月号 第 17 回 JTF 翻訳祭の開催にあたり 東 郁男 JTF 会長、(株)翻訳センター代表取締役社長 Report 第 17 回 JTF 翻訳祭の開催にあたり............ 1 第 17 回 JTF 翻訳祭予告.............................. 2 新薬開発のグローバル化で求められる 翻訳とは ...................................................... 3 Honrenso ほんれんそう No.126 ................................. 4 ほんれんそう No.127 ................................. 6 Information 翻訳環境研究会報告 .................................... 8 支援ツール説明会報告............................... 10 Take Five (10) ............................................ 11 法人会員プロフィール............................... 12 個人会員プロフィール............................... 13 図書紹介 .................................................... 14 JTF ニューフェイス ..................................... 15 理事会だより ............................................. 16 第 18 回世界翻訳大会 ................................ 16 ほんやく検定ロンドン会場だより............. 16 社団法人日本翻訳連盟 〒 104-0032 東京都中央区八丁堀 2-8-1 牧野ビル 3F TEL ■ 03-3555-6365 FAX ■ 03-3552-1784 発行人■東 郁男(会長) 編集人■野上 員生 印刷■創栄印刷工業株式会社 E-mail ■ [email protected] URL ■ http://www.jtf.jp/ 日本経済新聞社が先日実施した「研究 開発活動に関する調査」によれば、主要 企業の研究開発投資は 8 年連続増額と なったそうです。自動車産業や医薬品業 界では、国際化競争を勝ち抜くために従 来にも増して研究開発に重点を置いてい ること、また、開発型企業では、知的財 産権をめぐる国際特許紛争などの増加を 背景に、海外特許出願数が増加傾向にあ るとのことです。この調査結果からだけ でも、翻訳の需要は従来にも増して高 まっていくと思われ、われわれ翻訳業界 が担う責任も重くなっていることを実感 せざるを得ません。 しかしながら、日本経済は、他国、他 経済圏との係わりなくしては成長できま せん。いわゆる「グローバリゼーション」 という波の中で翻訳業界はどう進んでい くべきか、また、どうあるべきか?日本 国内市場だけでなく、世界市場も視野に 含めて考える時期に来ているのではない でしょうか。 来る 10 月 17 日(水)に東京・八丁堀 のマツダホールにて恒例の JTF 翻訳祭を 開催します。17 回目を迎える今年は、 「グ ローバリゼーションと翻訳業界」∼世界 市場へ、正確に、素早く、情報発信をす るために∼ と題して、講演・パネルディ スカッションを行ないます。 ひとつめの講演では、トヨタテクニカ ルディベロップメント(株)情報解析部 理事/部長の竹中弘氏に「自動車製品の 翻訳∼トヨタが求める品質と翻訳者の育 成∼」というタイトルでお話いただきま す。世界のトップメーカーであるトヨタ グループの一員としてだけでなく、ソー スクライアントまた翻訳会社としての立 場・ご経験をふまえて、日本から海外へ 発信する日英翻訳の品質や社内での品質 管理方法・教育手法について講演いただ きます。 パネルディスカッションでは、 「ツー ル活用で品質と効率の向上を両立する∼ MT / TM ワークフローの現状と未来∼」 というタイトルで、MT / TM に携わっ ておられる様々な立場のパネリスト 7 人 の方々に、MT / TM の効果的な使用方 法やワークフローの未来など、激論を交 わしていただきます。司会は翻訳環境研 究会でもおなじみの秋桜舎代表の山本ゆ うじ氏が担当されます。翻訳者、翻訳会 社だけではなくソースクライアントに とっても、翻訳ツールは身近で興味深い 話題かと思います。ぜひ闊達な議論を期 待しております。 そして、パネルディスカッション後の 講演では、外資系大手経営コンサルティ ング会社で翻訳者としてご活躍中の岩田 ヘレン氏に「グローバル時代の日英翻訳」 というタイトルでお話いただきます。迅 速な情報の発信が求められるグローバル 時代において、日本人が日英翻訳を行な う場合の注意点や、ソースクライアント ではどのような日英翻訳が求められてい るのかを講演いただきます。 加えて、例年通り、展示コーナー・交 流パーティーも開催します。詳細はパン フレットならびに JTF の HP をご覧くだ さい。最後になりますが、会員の皆様方 のご参加はもちろんのこと、この JTF 翻 訳祭を一般の方々へもご紹介いただき、 是非ご一緒にご参加ください。翻訳祭企 画実行委員一同、心よりお待ち申し上げ ております。 1 Report Japan Translation Journal No.231 第 17 回 JTF 翻訳祭「グローバリゼーションと翻訳業界」 予告 ∼世界市場へ、正確に、素早く、情報発信をするために∼ 八代 登志江 翻訳祭実行委員 『通訳・翻訳ジャーナル』編集長 日時: 2007 年 10 月 17 日(水) 12:30 ∼ 19:30(開場 11:30 ∼) 場所: マツダホール(東京・八丁堀) 翻訳は企業の国際的な経済活動を言 語サービスによって支援する産業であ る。経済のグローバリゼーション化が進 んでいる現在、企業は世界に向けてす ばやく自社の情報を発信する必要性に 迫られている。その現状を踏まえて翻 訳業界はどのようにサービスを提供し ていくべきか、業界全体の問題として 検討する必要がある。IT 翻訳の申し子 であった TM(Translation Memory) や MT(Machine Translation)を翻訳現場 にもっと適切に活用していく方法や日本 発の情報提供の要となる日英翻訳のあり 方を検討する。 つ課題についても披露していただく。 ■パネルディスカッション 「ツール活用で品質と効率の向上を両立 する」∼ MT / TM ワークフローの現状 と未来∼ 会社、コンサルタント、ツール開発メー カーの業界最強のメンバーによって、合 理的な発想に基づく「翻訳工学」をどの ように作っていけるか、また MT / TM ワークフローの現状と未来について討論 を交わす。 <コーディネーター> ■講演2 山本ゆうじ氏 「グローバル時代の日英翻訳」 (秋桜舎代表、言語・翻訳コンサルティング) 外資系大手経営コンサルティング会社 <パネリスト> 翻訳通訳者 岩田ヘレン氏 脇田早紀子氏 (日本アイ・ビー・エム(株)ナショナル・ ターゲット言語を母語としない日本人 ランゲージ・サポート) 翻訳者が英訳を行う際の問題点と外資系 塩津誠氏 企業で求める日英翻訳とは何かなどにつ (富士通(株)ソフトウェア事業本部ミ いて、お話いただく。 ドルウェアコンポーネント事業部プロ ジェクト部長) ■翻訳プラザ 永島和暢氏 最新の翻訳支援ツールや翻訳ソフトを ■講演 ( ラ イ オ ン ブ リ ッ ジ ジ ャ パ ン( 株 ) 実際に体験したりできる「展示・デモコー 「自動車製品の翻訳」∼トヨタが求める ソリューションズアーキテクト) ナー」、翻訳に役立つ書籍や辞書などを 品質と翻訳者の育成∼ 岡野徹氏 閲覧・購入できる「書籍・翻訳相談コー トヨタテクニカルディベロップメント (SDL トラドスジャパン LSP Business ナー」があるほか、翻訳会社の採用担当 ( 株 ) 情 報 解 析 部 理 事 / 部 長 弁 理 士 Manager) 者との直接相談コーナーもある。地下1 竹中弘氏 柳英夫氏 階の会場にお立ち寄りください。 ((株)サン・フレア GMS ソリューショ 同社は、昨年 4 月トヨタ自動車の車両 ン事業部チーフコンサルタント) ■交流パーティー 開発の大半を担うエンジニアリング会社 川原勝氏 翻訳者やこれから翻訳者を目指す人 として設立された。社内に翻訳者を抱え、 ((株)十印サポートセンター兼エンジニ と、翻訳会社の経営陣をはじめ、業界関 係者が多数参加し、情報交換を行う。ま 自動車技術、特許分野を中心としたトヨ アリング部シニアマネージャ) た、「ほんやく検定1級合格者の表彰式」 タ自動車の翻訳ニーズに対応、翻訳会社 久徳省三氏 としての役割も果たしている。 (実務翻訳者、JTF 翻訳支援ツール委員長) も実施。人脈作りや最新の業界情報の把 握を目的として是非ご参加ください。 日本を代表するグローバル企業に対 し、どのような体制を組み、翻訳サービ TM(翻訳メモリ)と MT(機械翻訳) スを提供しているのか、事例を紹介しつ を活用した翻訳に取り組む翻訳者、翻訳 2 Report Japan Translation Journal No.231 新薬開発のグローバル化で求められる翻訳とは 内田 たけみ ファイザー株式会社 開発薬事統括部 開発薬事申請部 近年、医薬品開発におけるグローバル 化は益々その速度を速めています。これ わって参りました。定年後の現在もファ イザー株式会社で翻訳を続けておりま まで各国政府は ICH を開催し、それに伴 す。今回これまでの私の経験を、同じよ う種々ガイドライン、更に GCP、GLP、 うな翻訳に携わる方々に引き継ぐことが GMP を始めとする様々な共通の法規制 できるよう願いを込めて「医薬品開発部 を確立してきました。また日本の規制当 員のための和英/英和・翻訳辞典」を「金 局も「世界同時申請・承認」に向けた「CTD 芳堂」から出版させていただくことが出 ベースの承認申請」を制定、そして今日 来ました。こうした長い経験を踏まえて 「国際共同治験への日本からの参画」を 私が社内外の後輩の翻訳者の方々にアド 推進するに至りました。製薬企業にとっ バイスできることは、上で述べましたよ ても新薬の早急な開発は生き残りをかけ うに、今翻訳に求められるものは「スピー た「宿命」と言えます。特に特許切れ間 ド」と「質」であること、そして正にそ 近の大型製品を持つ会社はそれに代わる れを支えるのは、バックグラウンドとし ブロックバスター、あるいは複数の新薬 ての ICH、GCP、GLP、GMP 等の規制、 を大至急開発しなければなりません。し 「世界同時申請・承認」 、CTD、そして「国 かも競合会社よりも一日も早く上市する 際共同治験への日本からの参画」に関す 必要に迫られ、新薬開発競争はますます る「通知」や「ガイドライン」のついて 激化しています。 の「知識」であると確信しております。 こうした状況の中で新薬の発見から申 しっかりした知識に支えられていれば 請・承認までの期間に必要とされるド こそ、原稿の内容を素早く把握すること キュメントには当然「スピード」と「質」 が出来、翻訳のスピードは上がり、確か が重要なポイントとなります。とりわけ な「質」となって表れてくるはずです。 グローバル企業ではそれが「翻訳」にも たとえネイティブの翻訳者でもそうした 求められます。実際、医薬品医療機器総 知識がなければよい翻訳はできません。 合機構 (PMDA) での「治験相談」、「承認 そこで今回医薬品開発関係の翻訳に携わ 審査」のプロセスにおいて出される「照 る方々の知識向上の一助となることを願 会事項」やその回答、そして厚生労働省 い、私の知識の一部を成し、大いに参考 および総合機構からの様々な「通知」や としてきた規制当局や業界団体で公表し 「ガイドライン」は、大至急翻訳して直 ている情報と本 (CTD) を以下にお知らせ ちに海外のカウンターパートと情報を します。是非活用していただきたいと思 シェアする必要があります。 います。 私は、1981 年 4 月に外資系製薬会社 1) 厚生労働省 (MHLW): アップジョン社に入社して以来 26 年以 http://www.mhlw.go.jp/index.html 上にわたり主に上記のような新薬の申請 2) 医薬品医療機器総合機構 (PMDA): や承認に係る薬事関係の翻訳の仕事に携 http://www.pmda.go.jp/ ⇒ PMDA の業務 : http://www.pmda. go.jp/operations.html a) 審査関連業務 : http://www.pmda. go.jp/operations/syonin.html ・審査関連業務の概要 : http://www. pmda.go.jp/operations/shonin/ outline.html 対面助言業務、信頼性保証業務、医 薬品等承認審査業務、医療機器承認 審査業務、GMP/QMS 適合性調査業 務、許可・認定関連調査業務 b) 安全対策業務 : http://www.pmda. go.jp/operations/anzen.html ・安全対策業務の概要 : http://www. pmda.go.jp/operations/anzen/ outline.html ⇒ 医薬品医療機器情報提供ホームペー ジ : http://www.info.pmda.go.jp/ a) 医療用医薬品添付文書情報 : http://www.info.pmda.go.jp/info/ iyaku_index.html ・医療用医薬品添付文書情報 ( 検索 ページ ): 3) 日本製薬工業協会 http://www.jpma. or.jp/index.html ⇒製薬協の刊行物:無償の刊行物 a) 日本の薬事行政 : http://www.jpma. or.jp/about_issue/index.html b) 医療用医薬品製品情報 : http://www. e-search.ne.jp/~jpr/ 4) コモン・テクニカル・ドキュメント (CTD) 日本公定書協会編集 3 Honrenso Japan Translation Journal No.231 No.126 冠詞の意味と用法(1)冠詞の本質と機能 田原 利継 ●冠詞の本質 冠詞ほど日英翻訳者にとって悩ましいものはありません。名 詞が出てくるたびに、その名詞が単数か複数か、不定冠詞をつ けるのか、定冠詞をつけるのか、無冠詞でよいのか、迷ってし まいます。英日翻訳の場合でも、冠詞のあるなしで、同じ名詞 であっても意味が異なることが生じます。 冠詞の用法がわれわれ日本人にとって、難しく感じられるの は、冠詞が日本語にはなく、馴染みにくい品詞であるという以 外に、学校英文法で教授される冠詞についての説明が「非現実 的」であるためです。その用法について、いくつかのルールを 教えられますが、あまりにも例外事項が多く、現実の言語運用 に混乱を持ち込むものばかりです。例えば、「唯一の存在であ る sun(太陽)には、定冠詞は付くが、不定冠詞(a/an)は付 けません。同様に固有名詞は、唯一のものであるから不定冠詞 (a/an)を付けない」というルールは、次の例のように、現実に は、不定冠詞が付く sun や地名がかなり用いられています。 【例文 1】 A tropical sun shone in through the window. 【例文 2】 Every year scam artists reportedly create some 700,000 false identities ― enough to fill a virtual San Francisco. 筆者が英訳者として活動し始めた 70 年代には、冠詞の意味 と用法についての包括的な文法解説書が出版されておらず、随 分と英訳作業に難渋した経験があります。2000 年代に入って、 包括的な冠詞の解説書が、下掲のように連続して出版されまし た。本稿では、これらの解説書に拠りながら、英訳翻訳者に役 立つ、冠詞の意味と用法についてまとめてみたいと思います。 日本人の冠詞についての蒙を啓してくれたのは、1988 年に 出版された『日本人の英語』 (マーク・ピーターセン著、岩波 新書)です。日本人の英語理解の弱点とその克服を提起した本 書の冒頭に、「冠詞の意味と用法」が取り上げられました。こ こで同氏は、従来の学校英文法による冠詞の説明は、 「非現実的」 であると断じ、英語ネイティブスピーカーが、冠詞と名詞をど のように発想して使っているかを解明しながら、日本人の冠詞 4 についての理解を正しく方向づけてくれました。 本書は、英語と日本語では、名詞についての理解が根本的に 異なることを明示し、英語ネイティブは「名詞に冠詞を付ける」 というように、冠詞を「名詞のアクセサリー(付属品) 」のよ うには発想しないことを指摘しました。「冠詞は名詞の意味的 カテゴリーを決める」という意味で、むしろ逆に、「冠詞に名 詞が付く」と発想したほうが現実的であるとしました。したがっ て、冠詞の意味と用法を理解するには、英語と日本語とでは、 名詞の理解が根本的に異なることをまず理解することが前提と なることを示唆してくれました。 同氏が例示したように、I ate a chicken. と I ate chicken. と では、まったく異なるメッセージを伝えることになります。前 者は「鶏を丸ごと一匹食べた」であり、「後者は鶏肉を食べた」 となります。このように、名詞 chicken は、ある場合には、 鶏になり、またある場合には鶏肉となる多義性をもちます。こ の多義性をもつ名詞から特定の意味を限定するマーカー(指標) の役割をするのが冠詞です。これが冠詞の本質です。 日本語の場合、名詞はこのように発想しません。冠詞を用い て明示的に意味を限定するようなことはしません。コンテキス ト(文脈)で、受け手に理解をまかせるか、単語の意味を限定 する必要がある場合は、別の単語を用います。上の例では、鶏 と鶏肉(かしわ)のように。結論として、英語の名詞は、意味 的に多重な構造をもち、この多重意味構造から特定の意味を限 定するマーカーの役割をするのが冠詞である、と理解すればよ いでしょう。日本語の名詞は、粘土の塊みたいなもので、定形 をもたない塊をそのまま受け手に提示するが、英語は粘土の塊 を冠詞により定型化して用いる、とイメージできます。 ●冠詞の機能 学校英文法の欠点は、英語と日本語との名詞概念の違いを教 えてこなかったことにあります。もしこの違いを教えていたら、 日本人の冠詞の理解と使用は、もっと楽になっていたに違いあ りません。この意味で、 マーク・ピーターセンの『日本人の英語』 は、学校英文法の最良の教科書として、教育現場で使われるべ Japan Translation Journal No.231 Honrenso きです。まして、本書には、「冠詞」だけではなく、日本人の 名詞がつくと考えた方が、英語本来の発想である、と指摘した 英語理解の弱点とその克服法ついて、懇切に解説してくれてい ことが、当然のこととして理解できます。「また、冠詞の使用・ るからなおさらです。 不使用に関して普遍的に適用できるルールはたった一つしかな 次に、名詞の意味的カテゴリーを決めるマーカーとしての冠 い。それは、『文脈がすべて』 、ということである」といってい 詞が、実際、どのように機能するのかについて、具体的に見て ます。まさに至言です。冠詞の用法は、単語(名詞)を文脈か みることにします。 ら取り出して決めることはできないわけです。発話者が名詞で たとえば、日本の学校英語教育では、慣用的用法として、I 指し示す物や事柄をどのように認識しているかによって決まっ go to school. という用例を取り上げて、名詞 school に冠詞を てくるからです。日本人にとって冠詞の用法が理解困難なのは、 用いない表現を教えます。しかし、I go to the school も I go to 英語を母国語としている人たちが名詞を通じてしているこのよ a school も、I go to schools という表現も当然ありえるわけで うな物事に対するきめ細かな認知活動を日本人はしていないこ すが、双方の用法の使い分けについて、また、名詞の意味の変 とによります。したがって、冠詞の意味と用法を正しく理解す 化について合理的な説明が行われていません。 るには、英語を母国語としている人たちの物事に対する認知作 肝心なことは、発話者が "school" をどのようにイメージして 用の中に分け入らなければなりません。日本人の冠詞の理解に いるかです。I go to school と無冠詞で発話した場合は、発話者 ついての混乱は、このような認知的アプローチを採らずに、人 には、何々小学校、何々中学校、何々高校といった現実に存在 の認知活動から切り離された文法ルールをアプリオリに暗記さ する具象的な学校のイメージはありません。ただ教育をする場 せようとした学校英語教育に起因しているところが大きいとい 所としての抽象的な学校概念がイメージされているにすぎませ えます。 ん。したがって、対応する日本語表現としては「通学する」と なるわけです。実際にこの表現が用いられるのは、たとえば、 【参考図書】 I go to school by school bus every morning. というような場面 1.『日本人の英語』マーク・ピーターセン著 岩波新書(1988) でしょう。 2.『英語冠詞の世界』織田稔著 研究社(2002) I go to the school の場合は、発話者と聞き手の間で共通認識 3.『英語冠詞講義』石田秀雄著 大修館書店(2002) されている、何々学校と名称のある特定の現存学校がイメージ 4.『現代英語冠詞事典』樋口昌幸著 マイケル・ゴーマン協力 されています。たとえば、the school が用いられるのは、My 大修館書店(2003) mother will go to the elementary school to attend the PTA 5.『理化学英語の冠詞の用法』友清理士著 研究社(2004) annual meeting this Sunday. というような場面に相当します。 6.『謎解きの英文法・冠詞と名詞』久野暲・高見健一著 くろ お母さんは、レッスンを受けに学校に行くわけではなく、この しお出版(2004) 場合の学校は、行き先場所としての私が通学している何々小学 7.『英語の冠詞ドリル』椎名照雄著 Kenneth William Cook, 校という現存する学校です。 Ph.D. 監修 Japan Times(2007) I go to a school という表現も可能です。この場合は、いろ いろ複数存在しえる現実の学校の中のある一つの学校というイ メージで話者は用いています。たとえば、I will go to a school 【田原利継氏略歴】 1938 年大阪生れ、1967 年大阪市立大学文学部哲学科卒、広告 to talk with school teachers for the coming Christmas charity 会社国際部勤務をへて、フリーランス翻訳者。専門分野は画像 campaign. という場面が想定できます。 診断。現職は、堺市広報課嘱託、ILC 実務翻訳コース専任講師。 I go to schools はいろいろある複数の不特定多数の現存学校 著書『英日実務翻訳の方法』(大修館書店刊 2001)。 がイメージされています。 このように、同じ school という名詞ですが、発話者は場面々々 により、各々異なる学校イメージをもって使っています。英語 はその差異を冠詞の有無と複数の "s" できめ細かく表現する言 語なのです。冠詞は、このように、名詞によって指し示される 対象物や事柄を発話者がどのように認識しているかを示す標識 の役割を果たしていることがはっきりします。日本語の場合も、 実を言うと、話者はこの名詞「学校」のイメージの違いは、無 意識的であれ、意識しているに違いありません。しかし、日本 語の場合、英語と違って、この差異を言語表現として、明示し ない、という特質があります。したがって、英語のように冠詞 という品詞が必要でなく、存在しないのです。 この意味で、冠詞は英語発話者の認知作用(物事の理解作用) の反映です。マーク・ピーターセンがこのことを、冠詞は名詞 につくアクセサリーのようなものではなく、名詞に先行して、 「名詞の意味的カテゴリーを表す標識」として理解すべきであ り、名詞に冠詞がつくという発想は非現実的で、むしろ冠詞に 5 Honrenso Japan Translation Journal No.231 No.127 英語漫筆(15)白馬の節会、酒 山崎 義昭(株)アドレム代表取締役 白馬の節会 「白馬」と書いて「あをうま」と読む「白馬の節会」は、上代の宮 廷行事で、もともと青馬(青黒い毛色の馬)を用いたことから、 白馬を用いるようになった後代でも「あをうまのせちゑ」と呼ぶ ならわしであったと伝えられています。このように歴史的背景か ら、一見おかしいと思われても、もとのままの読み方や意味を持 ち続ける言葉があります。 英 語 の "Dutch" も 場 合 に よ り「 オ ラ ン ダ( 人 ) の 」 で は な く て「ドイツ人の」 、「ドイツ風の」という意味を持つ場合があり、 "German" もある時期「突飛な」の意味で使われました。これは英 国人がドイツ文学やドイツ理想主義哲学をそのようにみなしてい たことによるものと言われています。一方、時代とともに全く原 義をとどめないほどの変化をとげる言葉も数多くあります。たと えば、school の語源であるギリシャ語 schole は、"leisure" を意味 したものですが、とくに現在の日本の教育制度下では考えられな い原義です。school といえば、イギリスの public schools も現在で は private(私立)化し、grammar schools でもとくに grammar に重 きを置いている訳ではありません。また、grammar school をドイ ツでは gymnasium といっていますが、これはギリシャ語 gymnos (= naked) に由来し、かって裸で格闘技を競って体を鍛えたことにち なんでいます。現在では裸で体育をするようなことは少なくとも 学校ではないでしょう。 "Alicia," said Robert Audley imploringly, "don't be German!" 「アリシア、そんな突拍子もないことを言ってはいけないよ」 There is no love lost between them. という表現では、意味が原義と全 く逆になってます。この文が由来する以下の ballad では文章の文 字面通り、"They loved each other." を意味していました。 The Babes in the Wood No love between this two was lost Each was to other kind: In love they lived, in love they died, And left two babes behind. 6 ところが、いつの間にか以下の文章に見るように、There is no love lost between は逆の「憎みあっている」の意味に変わってしまい、 現在ではもっぱら変化した意味で用いられています。 A few orthodox Americans straggled in from California, but no love was lost between the two classes of colonists. Between Fanny and Mrs Goodall, his mother, there was naturally no love lost. What is the calendar date of the first day of the 21st century? これはアメ リカで新聞投書欄に寄せられた質問ですが、これに対し回答者は 次のように答えています。 I called six very bright people and guess what? Three said Jan.1, the year 2000, and an equal number said Jan.1, the year 2001. Each person went back to the year Christ was born and from then on it became unbeliebably complicated. I am not touching this one. It's one of those thick questions that can make you crazy. アメリカでも、一般の解釈に統一を欠く話題のようですが、2000 年はまだ 20 世紀です。21 世紀は 2001 年から 2100 年までとする のが正しいとされています。また、紀元前 3 世紀は BC300-BC201 までです。 なお、年といいますと、西暦紀元二千年を the year of 2,000 とした 表記を見かけることがありますが、これには 2 つの誤りがありま す。第一に、カンマを付した 2,000 は数値であり、 「西暦二千年」 を表わすことにはなりません。第二に、この種の同格表現には of を用いません。この同格表現の誤り例をも併せて示してみましょ う。 西暦紀元二千年 記号 kx 数式 y = x(a+b) 誤った表記 the year of 2,000 the symbol of kx the equation of y = x(a+b) 正しい表記 the year 2000 the symbol kx the equation y = x(a+b) 以下も新聞投書欄の記事ですが、日常の極めて卑近な表現で解釈 に意見の分かれることがあるようです。 Honrenso Japan Translation Journal No.231 I have a problem that is not life threatening nor does it involve counseling, but it has been bothering me for some time. I often hear the expression "I could care less!" I also hear people say, "I couldn't care less!" Why are these two totally different phrases used with the same connotation? "couldn't care less" は「私にはどうでもよいことだ」、「私の知った ことか」 、「どうにでもなれ」などの意味で頻繁に用いられている 表現ですが、not の有無にかかわらず同じ意味で用いられている のも不思議です。しかし、日本でも「松の木ばかりが松じゃなし、 松に違いがないじゃなし」という歌謡が流行った時がありました。 酒 たっぷりと注ぐ He poured her out a stiff dose of whisky, added a drop of soda, and made her drink it. 生で飲む He drank Bourbon neat from a shot glass. 飲んでいる Mr Barnett, we were all in similar states of intoxication, but Jack had become as maudlin as only an Irishman in liquor can. ほろ酔い 'You know what happened to Burt?' 'No, I don't.' 'Upset into a ditch one night when he'd had one over the eight.' Dead men(酒の空き瓶) a dead man は「酒の空き瓶」、 「ビールの空き缶」を意味しますが、 これは死人に spirit(生気)がないのと空瓶に spirit(酒)がないこ とをひっかけたシャレです。中世アラブ人が蒸留技術をヨーロッ パに伝えた頃、アルコールは「百薬の長」(elixir of life) と考えられ、 ウイスキーもスコッチの本場スコットランドのゲール語では「不 老不死の水」usquebaugh (water of life) を意味していました。a dead man になるほど乱用するのは酒の楽しみ方とは言えませんが、a drunk tank(トラ箱)の世話になる人が絶えないほどアルコールは 世界中で愛飲されています。これを反映して「酒」に関する表現 は多彩を極めています。さて、酒の注ぐ量や勧めるときの表現を いくつか見てみましょう。 しこたま飲んでいる Uncle Oscar wouldn't have backed down from a fight, especially not with drink on board. なにを飲む? Give it a name. Back from the office, with one too many on board to escape her vigilant nose. 「注ぎますよ。どのくらいでいいか言って下さい。」 'Say when,' said Evesham, hospitably, as he held up the whisky decanter. When everybody had said when, the talk reverted to the subject which had been tabooed before. 今夜は羽目をはずそうか? Will you indulge tonight? なみなみと注ぐ He poured a fair measure of whiskey into a glass and one of his clearest images of Broderick that night was of the little quivering figure sitting up in bed with a strange grin on its face in the glow of the night-light. 酔っている時の話はあてにしてはだめだ You shouldn't believe everything Trojan says. Especially in his cups. だいぶ飲んでいる He was already a bit on when we saw him. He had a sheet in the wind. Eventually, when I was sure those occupants of nearly tables who were not deaf as posts were at least drunk as lords, I mentioned the war. ぐでんぐでんに酔っている He is drunk to the world. 大酒飲み 'I don't know what he said,' replied Barbara, 'but absolutely everyone in the family knows that dear old Great-Uncle Algernon had the reputation of being a three-bottle man.' 迎え酒 'Hair of the dog, Martin,' Ambrose said. 'That's what you need. I just need a bloody drink.' 7 Information JTF 翻訳環境研究会報告 ************************************** 平成 19 年度第 2 回 JTF 翻訳環境研究会 平成 19 年 7 月 10 日(火)14:00 ∼ 16:40 【開催場所】翻訳会館 【テーマ】品質管理:発注企業のワークフ ロー管理とツールの活用 【講師】】並木 英之氏(株式会社シマンテッ ク ローカリゼーション ランゲージサービ ス シニアマネージャ) ************************************** Japan Translation Journal No.231 用意する必要がある。 見直しをするにあたり、まず、全体の流 れを、1.Contents、2.Writing、3.Translating、 4.Assembly、5.Quality and Business Environment の 5 つに分けた。それぞれの 内容について、以下で説明する。 1. Contents テクニカルドキュメントの種類、構造、 表示形式、文体、用語などを細かく定義し、 「コンテンツモデル」を構築する。特定の説 明項目についての情報を記述した TOPIC と 呼ばれるドキュメントの基本単位を作成し、 TOPIC を組み合わせて各ドキュメントを生 成する。 2. Writing 翻訳者と翻訳会社の聴講者が多数を占め ドキュメントは、基本的に全世界に分散 る翻訳環境研究会で、翻訳発注側のメーカー しているライターが自由に書き起こす。ラ サイドからの話が聞けることは珍しいが、 イターが書いたドキュメントを、ツールを 第 2 回研究会は、ソフトウェアメーカーと 使用して文法や文体を検証し TOPIC や用語 して IT 業界の代表的存在であるシマンテッ を抽出する。XML を利用した CMS による ク社ローカライズ部門に所属する並木氏が、 文書管理を行うことにより、すばやい改訂 発注企業のワークフロー管理とツールの活 管理を可能にし、最終的なドキュメントの 用について、品質管理という観点で語った。 生成を自動化する。 さらに、翻訳会社に求める役割について率 3. Translating 直な意見を伺ったので報告する。 翻訳は、 翻訳メモリ (TM) と機械翻訳 (MT) [シマンテック社のローカライズへの取り 組み] シマンテック社では、年々増加する自社 ソフトウェアのマニュアル、ヘルプ、さら には最近では動画を含んだ操作説明文等の 管理業務が肥大化しており、経費削減の一 環として、全体のワークフローの見直しを 行った。さらに、最近トレンドとなりつつ ある SaaS(Software as a Service) にもいち 早く対応するために、ドキュメント翻訳の 時間短縮および効率化について、詳しい検 討を行った。SaaS とは、ユーザが必要なソ フトウェアを必要なときにインターネット 経由で入手できるサービスのことで、メー カー側からは常に最新のソフトウェアを、 ドキュメントも含めてインターネット上に 8 を使用して行う。MT では、用語の整備を 適切に行い、入力ソースの品質を上げるこ とで、作業時間の短縮およびコスト削減が 可能である。MT 後は、Post-editor がドキュ メントを完成させるが、現在は Post-editor が不足している。この作業はこれまで、翻 訳者やチェッカー、編集者が行ってきた作 業を組み合わせたようなものであり、新し い発想の翻訳者 ( または編集者 ) の行う作業 である。Post-editor が完成させたドキュメ ントは TM に反映させる。 翻訳会社に求める役割として、並木氏は、 翻訳にかかわるエラーチェックはもちろん のこと、ドキュメントを高品質で完成させ てほしいとの要望をあげている。また、ド キュメント作成の効率化に対して、一緒に 取り組んでほしい、翻訳プロフェッショナ ルとしてのアドバイスや新しい提案をもら えると非常に有益であるとのことであった。 4. Assembly 翻訳済みドキュメントから、印刷用 PDF、 Online PDF、オンラインヘルプ、Web 用の データなど、それぞれの目的の形式の文書 を生成する作業。翻訳済みドキュメントを XML ファイル形式で作成し、XSLT を使っ て目的の形式のドキュメントを生成する。 5. Quality and Business Environment ド キ ュ メ ン ト の 品 質 確 認 作 業。 ま ず、 Program Code、Syntax が正しく転記され ているか、コンテンツがすべて翻訳されて いるか、ドキュメントの生成は適切か、な ど基本的なことを確認する。その後、検収 作業を必ず行い、ドキュメントの品質を確 認する。 最後にビジネス環境を確認、改善する。 作業プロセスの自動化や、効率的なコンテ ンツの再利用方法、品質、コスト、作業時 間の連動性、などについて検討する。 コスト削減を念頭においた、メーカー側 からの翻訳を含んだドキュメント作成につ いての大規模な取り組みということで、多く の翻訳会社関連の聴講者が、翻訳会社の役割 について危機感を抱いて聞き入った。発注者 あっての翻訳会社のあり方について、翻訳者 Information Japan Translation Journal No.231 として考えさせられた研究会であった。 報告者:早舩 由紀見(個人翻訳者) ************************************** 平成 19 年度第 3 回 JTF 翻訳環境研究会 平成 19 年 8 月 7 日(火)14:00 ∼ 16:40 【開催場所】翻訳会館 【テーマ】 「メディカル業界の実情を憂う」 ∼治験翻訳者の明るい未来を模索する∼ 【講師】有馬 貫志氏(アルパ・リエゾン株 式会社 代表取締役、イカロス・アカデミー 治験翻訳講座 コーディネーター) ************************************** 用する IT 翻訳のレートの低さや、 安価なレー トで翻訳を引き受けるアマチュア翻訳者の 増加も治験翻訳のレートに影響していると 彙と表現、文法と構文、英語文書の様式と 慣習と文化の知識)である。情報の再生に 必要な技術は、1. 語彙(意味の範疇論的知 いえる。 2. 翻訳の質が低い これは、日本社会ではライティングスキ ルが重要視されていないために翻訳者が十 分な教育を受けられる場がないこと、コネ による受発注の悪弊、翻訳にかけられる予 算が低いために品質よりも安さが追求され てしまうことが原因と考えられる。 3. 無駄が多い 翻訳者と開発担当者の間の距離があり過 ぎるために情報共有がなされず、大きな無 駄が生じている。これは、ビジネスの構造 的な問題といえる。 識→多義性の排除と表現の統一) 、2. 文(文 法と意味構造の知識→主述と修飾関係、態 と時制の管理) 、3. 段落(テクスト論と論理 学の知識→視点と主題の統一、論理展開の 一貫性) 、4. 文書(様式とフォーマットの知 識→英語文書作成に関する慣習、文化の習 熟)である。 [新しいビジネスモデルの考え方] レート低迷の本質的な要因は翻訳の質の 低下である。業界内での人的交流を活性化 させ、優秀な翻訳者の不足という問題を解 決する基盤を作る必要がある。また、高品 治験とは医薬品の承認申請を前提として 質な翻訳を実現するためには、高い翻訳能 行われる臨床試験であり、治験翻訳はその これらは業界全体で取り組むべき課題で 力の他にクライアントとの情報共有も重要 過程で発生する文書を扱う産業翻訳の一分 あり、新しいビジネスモデルが必要である。 である。翻訳者が早い段階からドキュメン 野である。また、治験翻訳者は医療情報の 以下に、翻訳技術を向上させるための取り ト作成チームの一員として参加すること、 担い手としてメディカルコミュニケーショ 組みと新しいビジネスモデルの考え方につ バリデーションを付加した翻訳を提供する ンの一分野を担う情報発信者でもある。治 いて述べる。 こと、およびメディカルライティングとの 験専門の翻訳レビュアーとしての経験から 融合を深めることにより、リライトが不要 専門性の高い翻訳者の育成の必要性を痛感 で付加価値の高い翻訳が実現され、レート し、イカロス・アカデミー治験翻訳講座を [翻訳理論確立と翻訳技術の体系化] 翻訳技術の向上には、翻訳理論の確立と の向上につながる。 立ち上げた有馬貫志氏が、 翻訳業界(翻訳者・ 翻訳技術の体系化が重要である。 翻訳会社・ソースクライアント)の抱えて 翻訳理論は、翻訳業務に伴って生ずる様々 報告者:金本 亜矢子(個人翻訳者) いる問題とその解決方法について語った。 な問題を解決するための基本的な指針であ る。翻訳とは、ある言語で書かれた情報の [翻訳業界の抱える問題とその原因] 意味内容を正しく把握し、別の言語を用い 翻訳業界の抱える問題として、以下の 3 てその情報を再生する創造的行為である。 つが挙げられる。 理想的な翻訳の条件は、優先度の高い順に、 1. 移行された情報が等価であること、2. 意 1. 翻訳のレートが低い 図された機能が発揮されること、3. 表現さ 新薬の開発は多大な予算を必要とする大 れた意味が明快であること、4. 再生された きなプロジェクトであるため、治験翻訳者 表現が自然であることである。 のソースクライアントは外資系の巨大企業 翻訳技術を体系化する目的は、翻訳者の であることが多い。この外資系トップがイ 個人的な経験値から生まれた個々の技術を、 ンド・ヨーロッパ系言語の話者であった場 翻訳理論から導き出された指針に従って統 合、ヨーロッパ系言語から非ヨーロッパ系 一することである。情報の読解に必要な技 言語である日本語への翻訳の難しさを理解 術は、1. 背景知識(治験翻訳でいえば、臨 せず、翻訳にそれほどの予算をかけないこ 床、基礎、製剤、薬理、統計などの知識と、 とがレートの低さの原因となっていること 法規制および薬事の知識)と 2. 英文読解(語 が考えられる。また、翻訳支援ソフトを多 「第17回 JTF翻訳祭」翻訳プラザに出展します 9 Information 翻訳支援ツール委員会 支援ツール説明会報告 ************************************* 平成 19 年度第 1 回翻訳支援ツール説明会 平成 19 年 6 月 21 日(木)14:00 ∼ 16:00 【開催場所】(株)知財翻訳研究所 【テーマ】AnalyzeAssist 【講師】岡野 信之氏((株)インターメディ ア 代表取締役)、堀井 みどり氏(同社 マー ケティング コミュケーション) ************************************* Japan Translation Journal No.231 翻訳会社は、翻訳者に翻訳する必要があ る差分箇所だけの原稿を支給して、翻訳を 依頼しなければならなくなった。 差分箇所を調べるには Microsoft Word の[ 文 書 の 比 較 と 反 映 ] や、Adobe Acrobat の[文書を比較]機能で調べるこ とはできるが、差分箇所の抽出は手作業に なる。 多くの翻訳会社は差分箇所の効率的な抽 出を課題としているが、AnalyzeAssist で 解析と抽出を同時に行えば、社内作業時間 と費用を節減することができる。 実際のプロジェクトでは、差分箇所の訳 文を旧版の訳文に整合させる工夫も必要で ある。 ● AnalyzeAssist の製品概要 ・ 翻訳手配時間の短縮 翻訳必要箇所を短時間で割り出し、翻訳 者に迅速に手配 は平成 16 年 5 月 TransAssist を発売した。 同社では、現在の TransAssist 1.5 ま ・ 翻訳コストの節減 翻訳必要箇所を最小限に絞って、無駄を で、翻訳メモリ (TM) を利用した Word・ 排除 Excel・PowerPoint 上 書 き 翻 訳 機 能 の TransAssist に加え、HTML などのタグ付 ・ 翻訳メモリをベースとした翻訳ワークフ ローの推進 きファイル上書き翻訳ができる TagAssist や旧版の原文と訳文から翻訳メモリを作成 ・ 新しいワークフローの提案による新規顧 ● AnalyzeAssist 1986 年に設立され翻訳業務を中心に業 績を伸ばしてきた ( 株 ) インターメディア する AlignAssist などのバンドルソフトを 追加してきた。この度、解析時にファジー マッチ文節を自動的に抽出する機能を備え た AnalyzeAssist 1.6 のβ版を発表した。 このバンドルソフトは、早ければ 10 月 に開催される日本翻訳連盟「翻訳祭」にて TransAssist 1.6(予定)と併せてリリース される予定である。 今回は、AnalyzeAssist の基本操作、考 えうるワークフローについて説明し、聴講 者からの改善提案があれば製品化に反映し たいとの目的で説明会を開催した。 ● AnalyzeAssist の開発目的 客の獲得 ● AnalyzeAssist ができること 既存の翻訳メモリにより、翻訳するファ イルを解析する。 対 象 フ ァ イ ル 形 式 は、Word、Excel、 PowerPoint、HTML、XML である。 Word、Excel の テ キ ス ト ボ ッ ク ス 内、 PowerPoint のノート部も解析対象に含め ることができる。 マッチ率のゾーン指定ができ、解析に当 たっては複数のメモリを指定できる。 翻訳メモリがなくても、旧版原文と旧版 この数年、工業分野の翻訳では従来の全 文翻訳から旧版の訳文を利用し、新版で新 訳文を AlignAssist で整合して翻訳メモリ を作成し、新版原文とのマッチ率を解析す ることができる。 たに変更・追加された箇所のみを翻訳する 部分(差分)翻訳の需要が増えている。 旧版訳文がなくても、旧版原文どうしを AlignAssist で整合して「仮の」翻訳メモ 10 リを作成し、新版原文とのマッチ率を解析 することができる。 解析の結果判明した差分箇所は、テキス トで抽出することができる。 翻訳メモリの作成作業に要した費用を顧 客に請求できる。 また、翻訳メモリを使用して差分箇所を 翻訳すれば、旧版を訳した翻訳者と別の翻 訳者が訳しても用語や言いまわしなどの整 合性が保てる。 ●翻訳メモリの互換性 TransAssist で作成した翻訳メモリは XML 形式だが、TMX 形式やテキスト形式 を介して Trados をはじめとする各社の翻 訳メモリとの互換性がある。 (それぞれの 翻訳メモリ機能ソフトでインポート・エク スポートすることができる。 ) ● TransAssist 1.5 の使用環境 Windows 2000 および XP メモリ (RAM):64MB(128MB 推奨) Microsoft Office 連携:Office 2000 およ び XP ● TransAssist 1.5 の入手方法 TransAssist はダウンロード販売のみ。 最初に無料体験版を以下の URL からダウ ンロードしてテスト可能(容量約 5MB) 。 http://www.transassist.com/ 問い合わせ:[email protected] 以下のサイトで各ツールのデモが公開さ れている。 http://www.transassist.com/demo/index. html ■次回の説明会 JTF 翻訳支援ツール委員会は、次回の説 明会を9月にライオンブリッジ ジャパン株 式会社にお願いする予定。 報告者: 久徳 省三 (JTF 翻訳支援ツール委員会 委員長) Information Japan Translation Journal No.231 Take Five (10) 松田 勝 JTF 会員 coup de grace and failure to level with victim families フランス語が語源。grace(情け、哀れみ) exacerbated their anguish.(彼ののらり の(de)、coup(一撃)とは、「とどめの くらりした態度に加え、犠牲者の家族に 一撃、決定的な出来事・行動」。The coup 率直に対応しなかったことが、家族の苦 de grace of the international financial 痛に輪をかけた)。She didn't level with crisis came when Russia defaulted on her doctors about what her symptoms a portion of its debt.( 国 際 金 融 危 機 were.(彼女は自分の症状を、医師達に正 は、ロシアが一部債務の不履行に追い 直に話そうとしなかった) 。今はやりの 込まれるに至り、最悪となった)。The 「目線で ...」の表現に使えそうだ。 recession of the early 1980s applied the coup de grace to much of the industry chutzpah that remained.(生き延びた同業界だっ 厚かましさ 、 ずうずうしさ 。 発音とも たが、80 年代初頭の景気後退で、ほぼ完 一見 、 英語らしくないが 、 それもその 全に息の根を止められてしまった) 。同 はず 、 イディッシュ語の khutspa が語 義表現に last straw。 源 。 The 67-year-old man who sued the sting operation FBI( 米 連 邦 捜 査 局 ) な ど に よ る 、 お と り 捜 査 。 The politician fell prey to a sting operation by the FBI and agreed to purchase cocaine from an undercover officer.( そ の 政 治 家 は FBI の お と り 捜 査 に ひ っ か か り 、 覆 面捜査官とのコカイン取引に応じて し ま っ た )。 sting( 蜂 な ど が 刺 す ) は、同時に 、 それだけで 、 おとり捜査・ 詐欺の意味もある 。 まんまとやられたほ うが 、 なんとも痛い思いをするというこ とか ?! 同名の映画は 、 テーマ曲とともに 余りにも有名 。 level with ここでの level は動詞で with とともに 使い、 「(・・・に)、真摯に対応する、真 実を隠さない」。His evasive behavior university demanding admission to its law school was even proud of the fact that he had the chutzpah to challenge a law school.(入学許可を求めてその大学 を訴えた 67 歳の男性は 、 法律大学院と 係争を構えるという自分の厚顔さを誇り にすら思っていた)。 同義語に audacity や gall など 。 passenger traffic.(新規参入の航空会社 は過小資本のうえ、乗客数が減った場合 に抵抗力が弱い) 。policymakers' pain thresholds on the yen といえば「政策当 局の円レートの容認限度」。 when push comes to shove 「正面から物事にあたらねばならないと き、いよいよの決断が迫られたとき」 。 押し(push)だけではらちがあかず、もっ と荒っぽい、突き(shove)が必要にな るときというわけだ。When push comes to shove even some of the industry's closest allies are now distancing themselves.(いよいよとなると、同業 界に最も近い味方さえも距離を置き始め ている)。When push comes to shove, specifics don't matter much.(乾坤一擲 のときには、各論は、さして重要でない)。 shenanigan 一見英語でない印象を受けるが、「(ハロ ウイーンなどの)悪ふざけ」のほかに、 「(複雑に仕組んだ)ごまかし、不正」の pain threshold こと。accounting shenanigans(不正 痛み(pain)の敷居・境目(threshold) 経理)、election shenanigans(不正選 とは、専門用語で、苦痛閾[いき]。要 挙)のように複数で使う。Investors are するに「耐えられる限度、容認限度」の concerned that some other companies こ と で、 応 用 表 現 が 見 ら れ る。Only may also be pulling shenanigans.(ほ investors with high pain thresholds かにもごまかしをしている企業があるの should buy these IT stocks.(損失にか ではないかと投資家は懸念している)。 なりの程度耐えられる投資家だけが、こ crime(犯罪)とは言い切れない問題行 うした IT 銘柄を購入すべきだ)。New 為を形容するのに便利なようだ。語源は upstart airlines are less capitalized and アイルランド語、ドイツ語、スペイン語 have a lower pain threshold for falling と諸説があるようだ。 11 Information Japan Translation Journal No.231 法人会員プロフィール 株式会社 オーランド 〒 102-0073 東京都千代田区九段北 1-1-5 第2中央ビル5F TEL : 03-3288-0868 FAX : 03-3288-9889 E-mail: [email protected] URL: http://japan.olandcorp.com オ ー ラ ン ド は 設 立 か ら 10 年、 翻 訳 と DTP 業務のスペシャリストとして業容を 拡大してまいりました。 現在、アジア言語、欧米言語、中東言語 など 29 の翻訳言語に対応し、さらに 39 ヶ 国語の DTP 業務を展開しています。 翻訳分野はコンピュータ・IT、電子・電 気・機械・製造といった各産業分野をはじ め、会社案内、アニュアルレポート、CSR などのビジネス文書から法律、政治、経済 まで、お客様が必要とされる幅広い分野を カバーしています。 ∼ オーランドのビジョン ∼ オーランドは、世界のマーケットを目指 す全ての企業に、より便利で、より信頼性 の高い、より迅速な『多言語コミュニケー ション・サービス』と『ローカリゼーショ ン・サービス』を提供することを目標に掲 げています。 ■特徴その1:オンライン翻訳センター 「オンライン翻訳センター」は、翻訳者 の作業空間であり、データやツールの共有 空間です。翻訳原文や訳文のデータは、全 て安全なサーバー内に保存しており、イン ターネットの接続環境さえ整っていれば、世 界中のどこからでもアクセスでき、作業が可 能です。 ★安全とセキュリティ管理 データ、ファイルのやり取りが一切発生 せず、VPN、アクセス制限、ファイアウォー ルなど、最新の安全対策を実施したサー バーからは、ローカル PC にファイルを持 ち出せない。 ★均一な翻訳品質 個々の環境に左右されず、常に共通の作 業環境と作業方法で翻訳ができる。各種の 翻訳ツール、翻訳資源、翻訳支援システム が無償で活用できる。さらに Trados, SDL の利用で、均一な仕上げ効果が生まれる。 ★リアルタイム進行管理 リアルタイムの進行管理ができ、お客様 自身で進行状況を把握することも可能。進 行中の翻訳や過去にお納めした業務データ などにも簡単にアクセス。 3E の事業コンセプト。 Everywhere Everytime Everylanguage ! ■特徴その2: TRADOS・SDL" の習得 ★翻訳プロセスの効率化 翻訳データベースを使用した業務処理 は、弊社担当者の基本技能として習得を義 務付けており、翻訳プロセスの効率化が確 立。 世界中、何処でも、何処からでも、何時 でも、一年 365 日、一日 24 時間、全ての 言語において、サービスを提供することを 目標に置いています。 ★教育とサポート 翻訳者一人一人にも、Trados, SDL によ る翻訳方法とツールの使用方法など「教育 プログラム」でサポート。 12 ■特徴その3:翻訳者と品質の管理 翻訳会社にとっては、翻訳者こそが貴重 な 資産 です。お客様の高度な 品質要 求 を満たすために、経験豊かで専門分野 に長けた翻訳者の方に業務をお願いしてい ます。 ★品質管理 品質を保つために、翻訳者の実績、専門 性、職歴、言語資格などを重視した資格審 査を行い、常に翻訳者の専門性・言語能力・ 実績を体系的に把握。お客様のニーズを十 分理解した上で、適切な翻訳者とプロジェ クトチームを形成。 ■特徴その4:DTP 業務 オーランドでは自社だけで 20 名ほどの 編集・制作部員を持ち、簡単なレイアウト から、精密なページ組みまで、豊富なアプ リケーションで、各国の言語に対応。 ■特徴その5:多国語版 WEB 制作 「ホームページの多国語版」の作成にお いては、 『Trados』による処理で、短期間・ 低コストを実現します。画像や FLASH などの動画、Java Script/Applet、CGI/ PHP、CSS の多言語化にも対応し、更新 時の処理から中長期に亙るメンテナンスも 行っています。 ∼ 新たな取り組みに向けて ∼ 今後の新たな事業展開として、音声や動 画を含めた 多媒体翻訳制作 、海外での営 業・マーケティング活動、オンラインで「見 積り・発注・決済」のできる ネット翻訳サー ビス といった業務を準備・進行中です。 お客様にとって、何処からでも、何時で も、一日 24 時間、利便性の高いサービス をご利用頂けるよう、精力的に開発・提供 してまいります。 Information Japan Translation Journal No.231 図書紹介 ∼ JTF 会員による著書・翻訳書∼ ■特許英語翻訳ハンドブック ― 効率的な明細書翻訳のための資料とノウハウ― 著者:佐藤亜古 発行:朝日出版社 2,500 円+税 ISBN:978-4-255-00397-9 著者は知財アカデミーの講師。特許翻訳の本というと、読み込まなければ分かりにくい難解 なものが多いが、本書は、翻訳の最中に確認したい英和翻訳の基本事項や、調べたいときに すぐに参照できる必須資料の最新版(例えば、各国の特許種別コードなど)が分かりやすく まとめられている。また、さまざまな翻訳支援ソフトやウェブサイトの効率的な活用法(例 えば、明細書の対訳が探せるサイト)など、翻訳の正確さと能率アップのための諸ノウハウが、 特許翻訳歴 20 余年の著者によって惜しげもなく公開されている。本書を座右に置いて活用 することによって「使える特許翻訳者」になってほしい、との著者の願いからである。JTF 法人会員である(株)知財翻訳研究所の浜口宗武代表より「本書を PC の傍らに置きながら ナマの英文明細書の和訳に取り組むことが特許翻訳者への近道。実務の現場でも、事項の確 認や翻訳の能率アップに手放せない1冊となるだろう」との推薦の言葉が寄せられている。 ■ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ 著者:ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ 翻訳:井口耕二 発行:日経 BP 2400 円+税 ISBN:978-4-8222-4587-0 訳者は JTF 個人会員(常務理事)。ウェブが大きく変化し、最近は Web2.0 などともてはや されているが、今までは、どうすればそれを収益につなげられるのかについて語られること がなかった。本書は、その Web2.0 の経済的側面についても取りあげた初めての本である。 いや、Web2.0 的なもの、と言うべきか。ウェブとは相性が悪いと一般に考えられている製 造業などについても、マスコラボレーションが大きな収益を生んだ例を豊富に紹介するとと もに、今後は、企業・個人ともに仕事のやり方が大きく変化し、ウィキノミクスの時代が来 ると予想する。どのような状況となるのか、その中で何をどのようになすべきなのか……い ろいろと考え、議論する際の出発点となる本だ。翻訳という仕事はウェブとの親和性が高く、 ウィキノミクスの最先端を走る業界だと言える。この業界に関わる者であれば、読んでおい て損のない 1 冊だろう。 14 Information Japan Translation Journal No.231 理事会だより 平成 19 年 7 月 19 日、平成 19 年度第 2 回通常理事会が銀座ルノアールの会議室 で開催されました。 ■ 7 月 19 日現在の会員数は賛助会員 3 社、法人会員 113 社、個人会員 284 人 (合計 400)になった。 ■第 47 回 JTF <ほんやく検定>の受験 者数は会場受験 103 名、インターネッ ト受検 482 名(合計 585 名)を数えた。 昨年同期比 7% アップ。今回、スター トしたロンドン会場は 12 名であった。 ■翻訳祭企画実行委員会 講演会および展示会を 10 月 17 日(水) マツダ・ホールで行うことが決定され た。テーマは「グローバリゼーション (仮題) 」で現在、プログラムの詳細を 立案中である。 ■翻訳支援ツール委員会 当連盟のウェブサイトに「機械翻訳ソ フトQ&A」を 8 月上旬より掲載する。 (中野 善之) ●第 18 回世界翻訳大会 2008 年 8 月 2 日から 7 日、FIT(International Federation of Translation)の主要行事の一つである世界翻訳大会が中国翻訳 協会の主催で、北京オリンピックに先立って、上海国際会議センターで開催される。 その準備および協力要請の目的で、8 月 6 日姜加林常務理事、王一理事及びೊ永花委員の 3 氏が当連盟事務局に来られた。こ ちらからは東会長、星田専務理事、丸山常務理事、中野事務局長および寺田事務局員が応対した。 テーマは「翻訳と文化の多様性」で、内容は講演会・パネルディスカッション(50 ∼ 60 フォーラム、1 フォーラムは 90 分) および展示会(ブース)から成り立っている。公用語は中国語、英語およびフランス語の 3 ヶ国語であるが、各ブースはその限り ではない。すでに 40 カ国 100 人位の仮申し込みが来ているとのことである。当連盟からも講演会および出展に是非参加して欲し いとの強い要請があった。また、この席で東会長は学術委員会委員への就任を依頼され、承諾した。 今後、当連盟がどのような協力および関わりをもっていくかについては、理事会で慎重に検討を進めていきたい。 (中野 善之) ●ほんやく検定ロンドン会場だより 7 月 28 日、ここロンドンで初の「ほんやく検定試験」が開催されました。今回は基礎レベルのみの受験ということもあり、英 語を勉強中の留学生、現地法人に就職したい在英日本人など、できるだけ多くの方に受験してもらいたいと思い、6 月よりウェブ サイト、日系コミュニティ紙を中心に広告活動を開始しました。ロンドンは海外ということもあり、私たちの日々の暮らしの中で もちょっとした翻訳する機会は多々あります。そういった環境もあり、試験に対する関心も高く、準備段階から多くの問い合わせ をいただいていましたが、 「翻訳=難しい、プロがやるもの」と思う方も多く、受験しようかどうか迷っている、というご相談も 多く受けました。試験当日はお天気も良く、心配していた交通機関の混乱もなく(イギリスでは電車がよく遅れたり、止まったり します)、試験自体も順調に進みました。試験を終えた受験生からは、「決められた時間内で翻訳することは難しかったが、良い経 験になった」、 「次回は実務レベルの試験も受けてみたい」といったご意見を頂戴しています。他にも今回受験できなかった方から、 「次回はぜひ受けたい」といったご連絡をいただいています。今後はまずイギリス国内での「ほんやく検定試験」自体の認知度を 高め、実務レベルの試験も開催できるよう努力していきたいと思っています。 (津村 由紀子 Notting Hill Academy of Translation) 16