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JBICのエネルギー・鉱物資源における業務活動

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JBICのエネルギー・鉱物資源における業務活動
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40 日本貿易会月報
小 川 晃(おがわ あきら)
国際協力銀行
資源金融部長
1.エネルギー・鉱物資源の安定供給確保
資源の乏しい日本にとって、経済、社会、そして日常生活
を持続的に発展させる基盤となる原料資源の安定供給確保は
極めて重要な問題です。現在、中国やインド等経済の急速な
発展および世界的な景気回復に伴うエネルギー・鉱物資源の
需要増加、中東情勢の先行きに対する不透明感などにより、
エネルギーおよび鉱物資源等の価格は高騰し、需給は逼迫し
ています。日本経済にとって、このようなエネルギー・鉱物
資源の需給の逼迫、価格の高騰に対して耐久力を備えること
は極めて重要であり、そのためにはこれらエネルギー・鉱物
資源を安定的に確保することは必要不可欠です。
一般に資源開発プロジェクトは期間が長期にわたり、巨額
な投資が必要とされ、さらに埋蔵量リスクや価格変動リスク
などの不安定性が伴うため、事業化が困難であるのが特徴で
す。また、資源産出国政府やその関係機関、資源メジャー等
がこれら資源の権益を一括して保有しているケースが多く、
日本企業が資源を確保するには彼らとの継続的な交渉や連携
が必要不可欠です。このように資源開発プロジェクトを民間
企業が全て単独で行うのには様々な困難があります。
国際協力銀行(JBIC)はこれまで、商社をはじめとする民
間企業が日本の経済・社会にとって重要なエネルギー・鉱物
資源の安定供給確保に資する事業を行う場合に、資源金融を
通じて様々な支援をしてきました。権益取得や開発輸入、さ
らには周辺インフラストラクチャーの整備等、資源開発プロ
ジェクトを実施する民間企業に対して金融面での協力を行っ
てきました。前述の通り、資源開発プロジェクトは事業が長
期間にわたり、またハイリスクであることから、JBICはこれ
らの案件に対して早くからプロジェクト・ファイナンスやストラ
クチャード・ファイナンス等の金融手法も取り入れてきました。
また、長年の経験から資源産出国政府や関係機関、また資源
メジャーと呼ばれる企業とも良好な関係を構築してきました。
ここでは、これまでJBICの資源金融が日本のエネルギー・鉱
物資源開発に対して果たしてきた役割につい
れるようになり、現在では日本に供給される
て簡単にご紹介させていただきます。
一次エネルギーの約13%を占めるまでその割
合を伸ばしています。天然ガスは石油に比べ
2.エネルギー資源
1973年末の第1次オイルショックを機に、
政府はエネルギー資源における石油依存度と
地域的偏在が少ないことに加え、石油や石炭
に比べて二酸化炭素・窒素化合物・硫黄酸化
物の排出量が少なく、環境に優しいエネルギ
ーとしても注目されています。
中東依存度を抑え、石油に代わるエネルギー
JBICはLNGが日本に本格的に輸入されるよ
の利用を促進するなど、エネルギー資源の多
うになった1970年代から、日本のLNGプロジェ
様化をめざしてきました。JBICの資源金融は
クトを支えてきました。LNGの安定供給には、
このエネルギー資源の安定供給と多様化に重
ガス田の権益取得や開発以外に、輸送用パイ
点的に取り組んできました。
プライン、LNG液化プラント、LNG搬出・搬
資源を安定的に確保するために、JBICでは
入用港湾施設、貯蔵施設、そして専用のLNG
日本企業による鉱区の権益取得や開発を推進
船など様々な設備を構築する必要があります。
してきました。企業が資源産出国において資
JBICはこれらのいわゆる「LNGチェーン」に
源の長期採掘権やそれに準ずる権利を取得し、
対して包括的な融資を実施し、日本企業のガ
開発や生産を行い、そのリスクやコスト分担
ス田開発・LNG製造販売プロジェクトに大き
に応じて生産したエネルギー資源の権利を取
く貢献してきました。2002年度の日本のLNG
得することで、通常の引取契約に比べ、安定
輸入量は5,442万トンでしたが、この総輸入量
的に資源を調達できます。さらに本邦企業が
の98.7%にJBIC融資がかかわっています。
このような資源産出国やその関係機関と共同
で油田開発事業や生産事業に携わることで、
両者の関係強化にもつながります。
現在も中東が日本の石油輸入先として重要
3.鉱物資源
鉱物資源につきましては、これまで商社や
であることに変わりはありませんが、世界的
原料メーカーの権益取得や引取事業等を通じ、
な石油需要が増大している現在、国際的な協
鉄鉱石・銅鉱石・アルミニウム・ニッケル等、
調関係に配慮しつつ輸入先の分散化をはかる
日本の経済活動に欠かせない鉱物資源の安定
ことは非常に重要です。JBICはこれまで中東
供給に努めてきました。また、その他にも日
はもちろんのこと、中央アジアやロシア、東
本の技術によって低品位や不純物が多い鉱石
南アジア、北海、中南米など世界各地の有望
の精錬を行う事業や、鉱物資源開発プロジェ
な油田開発事業に参画する日本企業に対して
クトに欠かせない周辺インフラストラクチャー
融資をし、輸入先の地域リスク分散に貢献し
整備に対して、JBICの持つ様々な金融手法を
てきました。
用いて支援してきました。特にインフラストラ
このように、JBICは石油資源の安定供給と、
クチャー事業については、鉄道や港湾設備と
その調達地域の多様化に貢献してきました。
いった各鉱山からの輸送設備の整備に対して
さらに、JBICはエネルギー・ソースの多様化
本行融資を活用し、日本がこれら鉱物資源を
にも貢献してきました。特にJBICは石油に代
安定的に輸入できるように貢献しています。
わるエネルギー資源として注目されている天
ここ1年ほど、中国の急速な経済成長に伴
然ガスに対して、積極的に支援してきました。
い、鉄鉱石・銅鉱石・石炭といった鉱物資源
日本では欧米諸国に比べ天然ガスの利用は遅
の需給が世界的に逼迫し、価格が高止まりし
れていましたが、LNG(液化天然ガス)の技
ており、これら原料資源価格の高騰が続けば、
術が導入されて以降、日本でもLNGが輸入さ
日本経済の牽引車たる製造業全体の収益に影
2004年10月号 №618
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開
発
響を及ぼし、長い不況から抜け出し始めた日
産出国等における資源開発周辺インフラスト
本経済に対して大きな悪影響を与える可能性
ラクチャーの整備に対する支援」、三つ目は
があります。こうした中で日本企業がメジャ
「資源メジャーと言われるサプライヤーとの
ー(BHPビリトン、リオティント、アングロ
関係強化」で、資源産出国や資源メジャーと
アメリカン、リオドセ等)と呼ばれる原料資
いったサプライヤーサイドとの関係をさらに
源のサプライヤーと連携関係を強化し、資源
強化することでそのニーズを把握し、資源開
産出国の鉱山開発や鉱山運営会社への出資に
発プロジェクトに興味のある日本企業に対し
より鉱物資源を安定的に確保するためにも
て金融面のみならず総合的な橋渡し役として
JBICが果たしうる役割はますます重要なもの
貢献したいと考えています。そして最後に四
になっています。
つ目として「資源生産・消費の効率化に対す
以上のように、JBICは日本のエネルギー・
る支援」であり、これはエネルギー・鉱物資
鉱物資源の安定的確保に対して様々な形で貢
源の需要が急増する中で、日本企業がこれま
献してきました。
で培った効率的に資源を利用する技術の輸出
などを重点的に支援したいと考えています。
これまで、商社は日本への資源の安定供給
4.JBICの今後の重点分野
に関して重要な役割を果たしてこられました。
昨年来の世界的な資源需給の逼迫や価格の
特にオイルショック後は、それまで中心的だっ
高騰を受けて、日本政府も「経済財政運営と
た輸入引取に加え、権益取得や開発引取等、
構造改革に関する基本方針2004」(「骨太の方
様々な形でより積極的にエネルギー・鉱物資源
針2004」)や「新産業創造戦略」において原料
を日本に供給し続けてきました。JBICも、この
資源安定供給確保の重要性を謳っています。
ように日本経済にとって必要不可欠な資源の
JBICも政策金融機関として、これらエネルギ
安定的供給に資する、商社の資源開発プロジ
ー・鉱物資源の安定供給を実現すべく、資源
ェクトを支援して参りました。最近のエネルギ
開発プロジェクトに関わる企業に対し、具体
ー・鉱物資源の需要増加と価格高騰を受けて、
的には以下の4点について重点的に実施して
商社の事業に占める資源開発プロジェクトの重
いきたいと考えています。一つ目は「山元開
要性は従来以上に増しており、JBICとしても
発・権益取得等への支援」、二つ目は「資源
今後ともご協力させていただく所存です。 TC
JF
【参考】1990年代半以降のJBICの主な資源金融案件
=石油
=天然ガス
=石炭・鉱物資源等
ノルウェー領北海油田開発
カナダ・オイルサンド開発
BTCパイプライン
ACG油田開発
サハリンⅠプロジェクト
サハリンⅡプロジェクト
カフジ・フート油田開発
サウジアラビア・メタノール増設プロジェクト
オハネット
油ガス田開発
マレーシア・ガス田開発
オマーン油ガス田開発
マレーシア・第3次LNGプロジェクト
カタールLNGプロジェクト
インドネシア・ボンタンLNGプロジェクト
ソロアコ・ニッケルプロジェクト
バツヒジャウ銅鉱山開発
モザール・アルミニウム
製錬プロジェクト
ウェストアンジェラス
鉄鉱山開発
メキシコ・カンタレル油田
コロンビア・クシアナ油田
アンタミナ銅鉱山開発
セニブラ・パルププロジェクト
鉄鉱山開発関連ロジスティクス
オーキークリーク・NCA
炭鉱開発
ロスペランブレス銅鉱山開発
エスコンディーダ
銅鉱山開発
42 日本貿易会月報
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