...

欧州における太陽エネルギー利用について

by user

on
Category: Documents
8

views

Report

Comments

Transcript

欧州における太陽エネルギー利用について
調
査
報
告
__________________________________ ウィーン
●欧州における太陽エネルギー利用について(その1)
現在、再生可能エネルギーの中で最も注目されているのは太陽エネルギーであろう。日本でも
2008年7月に出された「低炭素社会づくり行動計画」において、太陽光発電利用を2020年に現状
の10倍、2030年には40倍に大幅拡大する方針が盛り込まれている。今回、太陽光発電および太陽
熱利用という2種類の太陽エネルギー利用について取り上げ、太陽光発電については欧州太陽光
産業協会の発行レポート「Solar Generation Ⅴ-2008」と2008年9月に開催された「第23回欧州
太陽光発電エネルギー会議」に参加して資料を得た「Status of Photovoltaics 2007 in the
European Union New Member States」を参考に、太陽熱利用については2008年10月に開催された
「EUROSUN2008」の会議に参加して得た知見を参考にする。
1.太陽光発電について
1.1 世界の太陽光発電市場
1.1.1 市場概要
太陽光市場は、現在世界で急拡大しており1998年からの太陽光発電用セルとモジュールの導入容量
の年平均成長率は35%以上となっている。2000年末に約1,400MWであった累積導入容量は2007年末に
約9,200MWまで達しており6倍増となった。図1に世界の太陽光発電累積導入容量を示し、図2に世界
の太陽光発電新規導入容量を示す。市場規模については、2007年末で130億ユーロに達するといわれ
ており、最近の傾向としては新規企業が参入することで企業間競争は激しくなってきている。
国別に見た場合、ドイツが圧倒的なシェアを誇っており、累積導入容量、年間導入容量ともに
首位となっている。ただ、スペインが累積導入容量で前年比5倍の632MWとなっており、急激に市
場が拡大している。日本は、累積市場では第2位ではあるものの上位国の中で唯一新規導入容量
が減少しており、異なる傾向を示している(図3、表1参照)。
図1
世界における太陽光発電の累積導入容量(単位:MW、1995-2007)
-1-
調査報告 ウイーン
図2
世界における年間の太陽光発電新規導入容量(単位:MW、1995-2007)
図3
太陽光発電市場の上位5ヵ国シェア(単位:%)
累積導入容量
国名
2006
新規導入容量
2007
国名
ドイツ
2,700
3,800 ドイツ
日本
1,708
1,938 スペイン
米国
620
スペイン
120
イタリア
50
表1
2006
2007
750(推定)
1,100
63
512
814 日本
290
230
632 米国
141
190
-
50
100 イタリア
上位5ヵ国の太陽光発電累積容量と新規導入容量(単位:MWp、2006-2007)
-2-
調査報告 ウイーン
1.1.2 需要側からみた市場
太陽光発電の利用方法について、①製品への利用、②オングリッド利用、③オフグリッド利用、
④オフグリッド産業利用の4種類に分け、それぞれの利用方法について市場動向について記す。
製品利用については、時計や計算機、玩具等への利用が挙げられる。最近では、車の屋根に設
置され、発電電力はエアコン用として利用される。ただ、年間導入量としては小さく2007年時点
ではおおよそ1%程度である。
オングリッド市場は、最も大きくそして成長が著しい部門である。昨今の太陽光市場の急拡大
は同部門による影響が大きい。家や事務所、公共機関の建築物の屋根や表面に設置してグリッド
接続するものや1MW以上の大規模な太陽光発電所のグリッド接続もまた市場が拡大している(欧
州の太陽光市場では10%がこれである)。主に、OECD諸国で開発が進んでおり今後も市場は拡
大すると予想される。1994年時点での新規太陽光発電に占めるオングリッド部門の割合は、わず
か20%はあったが、2007年では約90%が同部門によって占められている。
オフグリッドでの太陽光発電利用は、無電力農村部での電力供給という非常に大きな市場とな
る可能性がある。地方開発には、電灯や通信、水供給用ポンプといったインフラ設備開発が重要
であるがそれらに電力を供給することができる。グリッドまでの接続コストが大きい場合や化石
燃料コストが増大していることを考慮すると、太陽光発電は経済面でも利点がある。現在、年間
導入量の割合は約4%となっている。
最後に、オフグリッドの産業利用であるが、同部門の年間導入量の割合は約4%である。具体
的には、遠隔地方との接続のための通信部門や海水淡水化施設、信号等で利用されている。太陽
光発電の利用により、特にアクセスが困難な場所において大幅な運営・メンテナンスコスト低減
を実現している。
1.1.3 供給側からみた市場
現在、太陽電池の9割が結晶シリコン技術を利用しておりシリコンは同電池の基本材料である。
そのため、シリコンの低価格での供給が太陽光発電産業の発展の前提条件となっている。もとも
と、電子グレードシリコンはもっぱら半導体産業で利用されていたが太陽光発電市場拡大によっ
て、2007年ではその半分が太陽電池製造に利用されている。太陽電池利用のシリコンは、半導体
利用のそれよりも品質が低いものも問題ないため、新たにソーラーグレードシリコンの開発が進
んでいる。2008~2010年の間にシリコン製造施設に対して41億ユーロが投資されると予想されて
いるものの、施設稼動には時間がかかるためもうしばらくシリコンの不足状況は継続される見込
みである。
太陽電池およびモジュール製造については、2008年に16億ユーロ超が投資される見込みである。
これは、太陽電池産業が世界の需要を十分に満足させるペースで拡大していることを示している。
今までは、欧州、日本、米国の3地域が主要地域であったが、中国が急速に発展している。以前
は、BPソーラーが支配的であったものが、日本のシャープ(2007年シェア8%)が台頭し、現在
ではドイツのQセル(同9%)とソーラーワールド(同4%)、中国のサンテック(同8%)の躍進が
著しい。2006年では上位10社で75%を占めていたのが、2007年では53%まで低下し企業間競争が
激化していることが分かる。図4に2007年における太陽電池製造の地域および国別シェア、図5
に2007年の太陽電池製造メーカ上位10社を示す。
-3-
調査報告 ウイーン
図4
太陽電池製造の地域および国別シェア
図5 太陽電池製造の上位10社
1.1.4 将来予測
太陽光発電市場における将来予測について、
「進歩的シナリオ」と「中程度シナリオ」の2つに
ついて検討を行った。
「進歩的シナリオ」は、今後も追加政策や支援が継続的に実施されて世界で
太陽光発電施設が拡大するとともに太陽光発電製造・販売コストも低下して、さらに市場推進力
が高まるというシナリオであり、「中程度シナリオ」については、
「進歩的シナリオ」よりは各種
支援が実施されず、製造コスト・販売コストも穏やかに低下するというシナリオである。両シナ
リオは、表2に示す年間平均成長率に基づいており、太陽光発電に関する主要パラメータの結果
が表3に示している。
「進歩的シナリオ」結果によれば、2030年までに1,864GWの太陽光発電施設が導入される見込み
である。このうちの約74%が、主に先進国を中心にグリッド接続されていると予想されている。
家の屋根やビル、大規模発電所といったグリッド接続した太陽光発電からの電力を利用する人々
の数は約12億8,000万人になると予想され、そのうちの約2億8,000万人が欧州で占められると予
想されている。ただし、家庭平均人数が2.5人で電力使用量が3,800kWhであるという前提に基づい
ている。発展途上国においても、320GW(約17%)が地方の電化に利用される予定である。この場
合は、1住居あたり3人が暮らす場合に必要な電力が100Wという前提に基づいている。
進歩的シナリオ
年間平均成長率(2007-2010)
40%
年間平均成長率(2011-2020)
28%
年間平均成長率(2021-2030)
18%
表2 各シナリオにおける年間成長率(%)
-4-
中程度シナリオ
30%
21%
12%
調査報告 ウイーン
現状
2007
2.4
9.2
10
進歩的シナリオ
2010
2020
2030
6.9
56
281
25.4
278 1,864
29
362 2,646
中程度シナリオ
2010
2020
2030
5.3
35
105
21.6
211
912
24
283 1,291
年間導入容量(GW)
累積導入容量(GW)
発電量(TWh)
電力消費量における太陽光発電量
0.07% 0.16% 2.05% 8.90% 0.14% 1.20% 4.34%
IEA 参照シナリオ
電力消費量における太陽光発電量
0.07% 0.20% 2.18% 13.79% 0.17% 1.70% 6.73%
IEA 代替シナリオ
オングリッド接続の人々(100万人)
5.5
18
198 1,280
14
136
564
オフグリッド接続の人々(100万人)
14
32
757 3,216
59
837 2,023
雇用数(1,000人)
119
333 2,343 9,967
252 1,462 3,718
市場規模(10億ユーロ)
13
30
139
454
24
94
170
年間CO2排出削減量(100万トン)
6
17
217 1,588
15
170
775
累積CO2排出削減量(100万トン)
27
65
976 8,953
61
839 5,333
表3 各シナリオにおける世界の太陽光発電市場の主要パラメータ結果(2010,2020,2030)
図6には、2030年までの両シナリオにおける世界の太陽光発電導入・累積容量の推移について
グラフにしたものであるが、特に「進歩的シナリオ」のためには2007-2015年までに積極的な開
発支援、つまり将来の太陽光発電支援のための政治的決断が不可欠である。
図6
各シナリオにおける2030年までの太陽光発電年間導入量と累積導入容量
(上:進歩的シナリオ、下:中程度シナリオ)(単位:GW)
太陽光発電市場の市場動向について、両シナリオに基づいて地域別に見ると、表4、5のよう
になる。「進歩的シナリオ」によれば、市場規模は2030年には4,523億ユーロとなり2007年比で30
倍以上拡大する。欧州や日本を含む太平洋OECD諸国ではせいぜい5~15倍程度であるものの、
それ以外の地域は50~数100倍となり、最も成長率が高いのが中国で700倍以上となり地域最大の
818億ユーロになると予想されている。
-5-
調査報告 ウイーン
年
欧 州
北 米
太平洋
移行
中南米 東アジア 中 国 南アジア 中 東 アフリカ
OECD諸国
経済国
合計
2007
9,655
1,115
1,661
131
143
112
124
50
143
50
13,184
2010
11,610
6,199
4,582
338
370
432
1,762
129
370
129
25,919
2015
22,834
13,159
9,363
1,739
1,504
2,602
4,867
545
1,900
662
59,175
2020
40,342
26,612
17,425
7,831
6,069
12,434
14,580
2,246
8,547
2,894 138,980
2025
53,399
44,009
25,370
22,791
16,942
36,920
34,916
6,324
24,867
8,333 273,870
2030
45,433
59,062
27,260
49,976
36,346
81,779
68,149
13,630
54,519
18,173 454,325
備考:製品利用については除く
表4
年
2030年までの「進歩的シナリオ」による太陽光市場規模(単位:100万ユーロ)
欧 州
北 米
太平洋
移行
中南米 東アジア 中 国 南アジア 中 東 アフリカ
OECD諸国
経済国
合計
2007
9,655
1,115
1,661
131
143
112
124
50
143
50
13,184
2010
12,355
4,924
3,640
268
294
344
1,400
102
294
102
23,723
2015
20,721
11,941
8,496
1,578
1,364
2,361
4,417
494
1,724
601
53,697
2020
27,189
17,936
11,744
5,278
4,090
8,380
9,826
1,202
5,761
1,950
93,355
2025
28,424
23,426
13,504
12,131
9,018
19,652
18,585
2,850
13,237
4,435 145,262
2030
17,008
22,111
10,205
18,709
13,607
30,615
25,512
5,102
20,410
6,803 170,081
備考:製品利用については除く
表5
2030年までの「中程度シナリオ」による太陽光市場規模(単位:100万ユーロ)
1.2 欧州における太陽光発電市場
1.2.1 EU-27
前章でも述べたように、2007年における太陽光発電導入容量の27%は欧州が占めており、市場
規模については7割以上を占めて地域別に見れば最大の市場となっている。特に、ドイツは世界
第1位の導入量を誇り、累積導入容量でも世界の42%、年間の導入容量でも46%であり、世界の
約半分がドイツで導入されているといって過言ではない。ただ、欧州市場におけるドイツが占め
る割合は2007年減少した。それは、ドイツ以上の割合で市場拡大を示したスペインとイタリアで
ある。スペインは年間導入容量が前年比4倍増で、イタリアもまた累積導入容量が倍増した。前
章でも利用した「進歩的シナリオ」におけるEU-27の太陽光発電市場状況について表6に示す。
2007
2010
2020
年間導入容量(GW)
1.7
3.6
16
累積導入容量(GW)
4.6
13.5
100
発電量(TWh)
4.7
14
120
オングリッド接続の人々(100万人)
3
9
80
表6 EU-27における太陽光発電市場状況(進歩的シナリオ)
2030
28
360
430
280
ドイツは、2007年に約1,100MWの太陽光発電を導入して累積導入容量は3.8GWになり、電力消費
の0.6%を同電力に依存している。2007年に導入された太陽光発電について、容量別に見ると家屋
向けに利用される小規模(1-10kW)のものが30%で、アパートや農家、公共施設や商業発電施設
で使用される中規模(10-100kW)のものが53%、大規模(100kW以上)のものが7%となっている。
残りの10%は、広大な敷地を利用した発電施設となっている。今後の見通しについては、2012年
-6-
調査報告 ウイーン
までに年間導入容量は2,400MWになると予想され、継続して市場は拡大すると思われる。現在、同
産業での売上げは57億ユーロで輸出額は25億ユーロ、約4万2,000人の雇用が確保されている。た
だ、固定価格買取制度における電力買取価格は徐々に低減する予定であるため、産業界はより競
争力のある製品を流通させるためにコスト削減を伴う努力を続ける必要がある。
スペインは、2007年に512MW分の太陽光発電を導入して累積導入容量は655MWとなった。2008年
においても、既に9月までに1,000MWを導入している。ただ、これ以上の導入および正確な将来予
測は難しい。その理由は、現在太陽光発電の年間導入容量を義務付ける新法制定に向けて産業側
と国側で調整が続いており、そして数年以内に再生可能エネルギー法や再生可能エネルギープラ
ン(2011-2020)が制定される予定もあるためである。
産業界については、2007年に発電技術、蓄電技術、製造施設に合計50億ユーロが投資され、年々
市場規模は拡大している。同国のセルは360MWの施設容量から145MW製造され、モジュールは同じ
く700MWの製造施設容量から195MWが製造されている。雇用については、2万6,800人が直接的、間
接的に雇用されており、25%が製造部門、65%が設置部門、10%がその他部門となっている。
イタリアは、2007年に累積導入量が100MWで前年比倍増し、2008年もさらに倍増して200MWにな
ると予想されている。政府は、2016年までの目標として3,000MW導入を目指しているものの、現在
の固定価格買取制度では累積容量1,200MWまでを想定している。産業部門では、2007年での売上げ
は4億3,000万ユーロで2005年の2,500万ユーロと比較すると急成長している。雇用人数もまた、
1999年の220人から2007年には1,700人まで増加している。イタリアは、太陽光発電市場にとって
地理的条件、利用可能な土地が多いため非常に有望な市場である。
フランスは、同国の2007年における設置容量は35.5MWでありその内の16.5MWが海外県で設置さ
れた。将来予測として、2011年までには1.1GW、2020年までには5.4GWに拡大し、2012年には太陽
光発電電力が1TWhを超えると予想されている。産業部門では、2012年までに市場規模が24億ユー
ロで雇用人数も、直接雇用が現在の3,000人から1万3,000人、間接雇用も500人から6,000人まで
増加すると予想されている。
1.2.2 新加盟諸国(EU-12)
欧州のドイツやスペイン、イタリアといった国々と比較すると、新規加盟諸国の太陽光発電は
まだ整備がされていない状況である。下表に各諸国の太陽光発電の導入状況を示す。2004年から
安定して増加しており、2007年末には約9.5MWとなっており、そのうちの8割がオングリッド接続
システムとなっている。ただ、着実に増加の傾向を見せているのはいくつかの国々のみであり、
オングリッドシステムを拡大させている。例えば、チェコでは固定価格買取制度といった法制度
を整備することで太陽光発電への投資が増大し、程度は小さいもののキプロスやスロベニアも投
資が拡大している。チェコは、商業用のオングリッド太陽光発電施設が稼動を開始した影響によ
り、オングリッドシステムは7倍増となっている。上位3ヵ国以外で見ると、それほど累積容量
は拡大していないものの、マルタについては、前年と比較して倍増している。ひとえに新規加盟
諸国といっても、特にバルト三国地域は太陽エネルギー資源が小さいために、研究開発に集中し
ている国(エストニアやリトアニア)もある。
-7-
調査報告 ウイーン
2004
国
オング オフグ
リッド リッド
2005
合計
2006
オング オフグ
リッド リッド
合計
オング オフグ
リッド リッド
2007
合計
オング オフグ
リッド リッド
合計
チェコ
147
216
363
178
292
470
194
546
740
197
5,269
5,466
キプロス
318
22
340
363
118
481
450
526
976
560
890
1,450
スロベニア
90
6
96
90
110
200
95
310
405
100
925
1,025
ポーランド
165
69
234
220
71
291
337
101
438
488
152
640
ハンガリー
83
55
138
90
65
155
100
150
250
130
220
350
ルーマニア
41
45
86
46
55
101
95
95
190
175
125
300
マルタ
0
9
9
0
15
15
0
48
48
0
100
100
ブルガリア
10
23
33
10
33
43
13
53
66
20
55
75
リトアニア
17
0
17
19
0
19
40
0
40
55
0
55
スロバキア
15
0
15
20
0
20
20
0
20
20
26
46
エストニア
2
0
2
2
0
2
5
0
5
12
0
12
ラトビア
3
0
3
3
0
3
3
0
3
4
0
4
891
445
1,336
1,041
759
1,800
1,352
1,829
3,181
1,761
7,762
9,523
合計
表7
新規加盟国の太陽光発電累積容量(2003-2007、単位:kW)
1.3 太陽光発電技術について
現在、太陽光発電モジュールの9割は結晶シリコ
ン型であり、現在では発電効率が20%を超えるもの
も大量生産されている。シリコン型は技術開発が進
むにつれて、ウエハーの厚さはますます薄く、そし
て 効率が 高くな ってきて いる。 2003 年には 厚さ
0.32mmで効率が14%程度であったが、2008年には厚
さ 0.17mm で 効 率 が 16 % と な り 、 2010 年 に は 厚 さ
0.15mmで効率が17.5%を目標としている。図7に結
晶シリコン型セルの平均発電効率開発状況を、図8
にウエハー厚さとシリコン利用開発状況ということ
で、1ワットあたりの発電に使用されるシリコン利
用量の変化について示す。
図7 結晶シリコン型の平均発電効率
開発状況(2004-2010、%)
-8-
調査報告 ウイーン
図8
ウエハー厚さ(棒グラフ、単位:左軸、マイクロメートル)とシリコン利用開発状況
(発電あたりのシリコン利用量)(折れ線グラフ、単位:右軸、グラム/ワット)
一時的なシリコン不足の中で注目されているのが、
薄膜型と呼ばれる太陽電池である。薄膜型とは、ガラ
スやステンレス鋼、プラスチックといった基板の上に
極薄(数ミクロン以下)の光電性物質を沈着させたも
ので、シリコン型と比較して発電効率は劣るものの製
造コストが安く、アモルフォス型の場合はシリコン使
用量も少ない。そのため、低発電効率であっても現在
は価格競争力のある技術である。現在、商業的にはア
モルフォス型(a-Si)、銅・インジウム・セレン型(CIS、
CIGS)、カドミウム・テルル型(CdTe)の3種類の薄膜
型が製造されている。2007年での市場規模は、アモル
フォス型で5.2%であるが2010年にはモジュールの
20%が薄膜型になるとEPIAの専門家は予想してい
る。図9に2007年における太陽電池技術シェア、表8
にセルおよびモジュールの発電効率を示す。
技術
図9 太陽電池技術シェア(2007)
薄膜型
結晶ウエハー
アモルフォス カドミウム・ 銅・インジウ アモルフォス 単結晶型
シリコン
テ ル ル 型 ム・セレン型 シリコン/微
(CdTe)
(CI(G)S)
結晶シリコン
(a-Si/m-Si)
セル発電効率※1
5-7%
8-11%
7-11%
8%
16-19%
モジュール発電効率
13-15%
11m3
10m3
12m3
約7m3
1kW発電あたり必要 15m3
なモジュール面積
※1 標準試験状況(25℃、日射強度が 1,000W/m2、エアマス1が 1.5)での数値
表8
他結晶型
14-15%
12-14%
約8m3
セルとモジュールにおける発電効率
1
エアマスとは、地球大気に入射する直達太陽光が通過する路程の、標準状態の大気(標準気圧 1013hPa)に垂直に入射
した場合の路程に対する比を示す(出典:日本工業標準調査会ホームページ)
。
-9-
Fly UP