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Kobe University Repository: Kernel

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Kobe University Repository: Kernel
Kobe University Repository : Kernel
Title
若令肥育牛の発育に関する統計学的研究 (I) : 体重および
体高の発育について(Statistical Studies on the Growth
of Fattening Steers)
Author(s)
井上, 良 / 花崎, 長登 / 住田, 昭男
Citation
兵庫農科大學研究報告. 畜産学編,5(2):56-61
Issue date
1962
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81006359
Create Date: 2017-03-29
若令肥育牛の発育に関する統計学的研究
I 休重および休高の発育について
井上
良・花崎長登・住田昭男
S
t
a
t
i
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i
c
a
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fF
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n
i
n
gS
t
e
e
r
s
RyoINouE,NagatoHANASAKI,and AkioSUMITA
席県多紀郡を選び,この地域で昭和34,35
年度に肥育さ
I 緒 言
れた若令牛のうち
近年わが国の食肉需要は急滋な増加を示し,なかでも
1カ月の増体が 10kg以上のもの,
それぞれ1
0
6
頭および98頭の測定成績を用いた.
2 方法
いわゆる大衆肉に対する要求が年々高まってきている.
この時代の要求に最も適合する肥育法のーっとして,去
1)測定値の修正
若令肥育牛の発育は生後月令に
勢牛の若令肥育が全国各地で盛んに行なわれるようにな
対する体重,体高で表わすこととしたが,数例について
った.
体重と月令の関係を図で表わしてみたところ,第 1図の
去勢牛の若令肥育とは上坂 1) によれば,生後 6ヵ月ぐ
ように,少数の例外を除いてはほとんど直線的な発育を
2ヶ月間育成肥育し,体重
らいで離乳された去勢牛を約 1
していることがわかった.そこで,整数月令時における
4
5
0kg 前後の肉牛にして出荷する方法であるが,
若い
体重を推定し,同時に測定誤差を補正する意味で,体重
牛の E盛な発育力を利用して能率のよい肥育ができるこ
の月令に対する直線回帰式的を求め,以後の計算にはこ
と,素牛の入手が容易なこと,省力管理が可能なことな
の式で修正された体重を用いた.
ど多くの利点をもっており,現在では年間約 7万頭の若
体高については発育が直線状でないので
令肥育牛が生産されているといわれている.
2測定値の
補間法によって整数月令に対する体高を求めた.
2
) 平均発育ならびに正常発育範囲の推定
かように,若令肥育の普及が進んできたのにもかかわ
各月令
らず,発育について未だ明らかな標準が示されておらず,
について,平均値と標準偏差を計算し,熊崎ら 2)が用い
一般に,黒毛和種牡牛の正常発育範囲めの上限に近い発
たのと同様の方法に従って推定を行なった.すなわち,
育をすればよいと推測される程度である.
各月令における平均値からは平均発育の式.平均値+標
そこで,われわれは大学,種畜場など各地の試験研究
準備差の値からは正常発育上限の式,平均値一標準偏差
機関で行なわれた若令肥育に関する試験結果をもとにし
の値から正常発育
て,若令肥育牛の正常発育範囲を推定し,また,実際の
あるいは
F
限の式をそれぞれ直線回帰式(体重)
BRODY の式(体高)に当てはめて推定した.
3)繋牛の大きさの影響
農家における肥育成績と比較して,その妥当性を検討し,
大部分の材料について測
あわせて,これらの成績か区若令肥育の問題点を究明す
定値のある生後 8カ月を基準として,この時期の体重,
るためにこの研究を行なった.
あるいは体高が
限と平均の間にあるもの, ][:平均と下限の聞に為るも
E 材料および方法
1 材料
1 正常発育上限以上のもの, 1
1 上
の
, I
V
:下限以下のものの 4群に分類し,各群の平均発
育の式を上記と同様に計算し,比較した.
正常発育範囲を推定するための材料とし
て,京都大学,中園長試畜産部,富山県畜産試験場,岐
また,各個体の回帰係数によって示される 1カ月増体,
阜県種畜場,愛知県肉畜試験場,島根県種畜場,兵庫県
および,肥育末期に近い生後1
6ヵ月の体重に対する生後
立篠山農高で行なわれた若令肥育の試験牛のうち,生後
8ヵ月体重,体高の影響を単相関,重回帰のによって検
1
8ヵ月の体重が約 400kg以上のもの 6
5
頭 η測定成績を
討した.
用いた.
E
農家における成績としては,測定成績がよく保存され
1 体震の発育
ていた 2地域,すなわち,愛媛県温泉郡(小野村)と兵
5
6
結果ならびに考察
XII, 1
9
6
2
畜 産 学 編
•
1
目盛 l
h月
第 1図体重と生後月令の関係
1)正常育範囲の推定
試験研究機関の材料 6
5頭を
あるが,
8ヵ月で約 4
0
0kg以上という
これは材料牛に 1
用いて,平均発育ならびに正常発育範囲を推定した結果
制限をつけたこと,試験牛には飼料の調節によって最終
は第 1表および第 2図の通りである.この図から,目標
体重を目標に近付けるための努力がなされていることな
とされる 450kgに達する月令をみると 17-21カ月,ま
~9
500
た回帰係数を 1日当りの増体に換算すると上限で 0
.
8
0
.
7
4kg,平均発育では 0
.
7
7kgとなり,若
kg,下限で 0
令肥育に関する一般常識からいって,完全とはいえない
までも,ほぼ満足できる発育といえよう.また,この発
4
0
0
育を熊崎ら 2) の示した黒毛和種社牛の正常発育(図中の
黒点)と比較すると,両者の上限がほとんど一致し,下
限は肥育牛の方がはるかによい発育を示している.ただ,
素牛導入時に当る生後 5-7ヵ月では下限の値も大差な
し素牛としてはごく普通の大きさのものが選ばれてい
3
0
0
ることを示す,また,従来若令肥育牛は黒毛和種牡牛の上
••
限に近い発育をさせればよいといわれて来たが, 'ilf~2図を
みると,この説は至極妥当なものということができる.
正常発育範囲の幅が肥育の初期と末期ではほとんど変
2
0
0
らず上限と下限が平行線に近くなっているのは不自然で
•.
••
•
..
第 1表体重の平均発育ならびに正常発育範囲
平均発育
W=23.18M+ 9
.
8
2
正常発育上限
W=24.11M+31
.0
6
同
W=22.06M-ll.51
W:体重
下限
(
k
g
)
1005-101520bH
第 2図体重の平均発育ならびに正常発育上限,
下限(黒点は黒毛和種牡牛の正常発育
上限および下限)
M:生後月令
5
7
兵庫農科大学研究報告
どの理由によるものと思われる.
第 5巻
第 2号
非常にすぐれており,正常発育上限はもう少し高くした
2
)農家の牛に対するE常発育範囲の適用
実際の
方が妥当ではないかという考えが生れる.しかし,ここ
農家で肥育された牛に上述の正常発育範囲と同じ程度の
には経済性の問題がからんでおり,発育のよい牛を限度
発育が期待できるかどうかをみるために,愛媛県温泉郡,
一杯に肥育して早期に出荷するか,飼料(とくに濃厚飼
兵庫県多紀郡の農家における成績を試験研究機関と同様
料)を制限して正常発育程度に留めるかは,現地の立地
に処理し,比較してみた.その結果は,第 2表および第
条件から考えて経済的に有利な方をとるべきであって,
3, 4図のごとくである.第 3図の愛媛県温泉郡をみる
今後検討を要する所であろう.
と,全体として正常発育上限を上回るものが相当多く,
つぎに第 4図によって兵庫県多紀郡の成績をみると,
.
9
1kg, 生後 1
8カ月で 5
0
0
分布の上限は 1日増体が約 0
愛媛県の場合と全く逆で,平均発育以上のものは正常発
kgに達している.また分布の下限は 1日増体が約 0
.
6
9
育範囲に入るが,残り約半数は正常以下の発育を示して
kgでやや悪いが, 導入時に当る生後 5-7ヵ月の体重
いる.正常発育範囲の推定に用いた試験研究機関の材料
が大きいために,肥育末期でも正常発育範囲内に留まっ
8ヵ月で約 400kg以上という制限を設け,
牛には生後1
ている.かように愛媛県温泉郡では若令肥育牛の発育が
このために除外された試験牛が相当数あったので,ある
いはこの正常発育下限が高過ぎたのではないかとも考え
第 2表
地
域│
平均発育
られるが,
農家における肥育牛の体重
│ 兵庫県多紀郡
愛媛県温泉郡
1年以上に延長することは飼料効率その他各種の理由な
I
W=23.88M+17.65I
W=1~.43M+30.53
どから好ましくない.従って,正常発育下限は拡げるべ
発育上限 I
W=27.21M+12.60I
W=22.98M+34.54
きではないと考えられる.
同下限I
W=20.55M+22.74I
W=15.90M+36.53
W:体重 (
k
g
)
枝肉の大きさからいって最終体重が 400kg
以下では市場取引に不利であるし,といって肥育期間を
かように同じ農家でも地域によって肥育牛の発育に大
きな差のあることは岡地域の肥育条件がかなり異なるこ
M:生後月令
とを想像させる.参考のためにこの問題を検討してみる
と,まず素牛の産地の違いがあげられる。愛媛県温泉郡
匹9
の場合,素牛はすべて広島県産,兵庫県多紀郡の場合は
帆E
5
0
0
5
0
0
∞
v
,
に,
九
万
4
0
0
広
,
白
7
4
,
a
'
,,
,
,,
,
,
,,
,
,
,
,,
,
,
,
,
3
0
0
,,
,
,
,,
,
∞
2
;
0
0
∞
2
,
100ι-
2
0b.
E
j
5
布)
分限
重下
体び
るよ
家宵
農発
郡常
泉正
問温は
1 県線
媛点
愛(
5 けお
引お限
に上
,
,
,
,
,
,
,
U
内
U
︽
b-ph園
第 3図
,
m
1
5
第 4図 兵庫県多紀郡農家における体重分布
(点線は正常発育上限および下限)
5
8
W鳩
XII, 1
9
6
2
苔 産 学 編
兵庫県産であって,あるいはこの両県産牛に遺伝的な素
を索牛として売る方法は,販売価格と飼料費の関係から
質の違いもあるかも知れない.第 2に素牛の大きさが岡
みれば決して有利とはいえず,今後次第にすたれて行く
地域でかなり異なっている.第 3, 4図を比較すると愛
ものと思われる.
媛県温泉郡の場合,索牛に当る生後 5-7ヵ月の体重が
2 体高の発育
高い所に集中し,月令の割に大きいものばかりが集めら
1)正常発育範囲の推定
肥育の場合,体重以外の
れていることがわかる.後述のごとし大きい素牛はそ
要素はほとんど問題にされないが,骨格の発育を代表さ
の後の発育もよい傾向があるので,愛媛県温泉都で肥育
せる意味で体高についても正常発育範囲を計算してみた.
牛の発育がよい大きな原因の一つはここにあると思われ
その結果は第 3表および第 5図の通りでゐる.図上の黒
る.第 3~乙出荷条件の差があげられる.両地域とも出荷
点は熊崎ら 2) の示した黒毛和種牡牛の E常発育上限およ
先は主として阪神方面であるが,愛媛県では長路の海上
び下限を表わすが,体重の場合と同様に若令肥育牛の正
輸送による体重減少をカバーするために充分な肥育が要
常発育上限は牡牛の上限に近く,下限は牡牛よりかなり
求されるが,兵庫県ではその必要が少なく,さらに,兵
高くなっている.すなわち,体高においても牡牛の正常
庫県の場合,若令肥育としては充分な体重がなくても
発育上限に近い発育をさせることが望ましいことになる。
4ヵ月型若令肥育の索牛として有利な
壮令肥育または. 2
2
)農家の牛に対する E常発育範囲の適用
取引が可能という特殊条件があり,農家の心構とか技術
材料の
関係、で体重の場合のような検討を行なわなかったが,兵
者の指導の面にもこれらの特殊条件が自然に反映されて
0頭,愛媛県温泉郡から 1
1頭を無作為的
庫県多紀郡から 1
きたものと思われる.なお,若令肥育の充分でないもの
に拍出し,その体高を図上にプロットしてみると,第 6図
のように正常発育範囲内あるいはその近くに比較的一様
第 3表体高の平均発育ならびに正常発育範囲
な分布を示している.従って,この正常発育範囲は農家
平均発育
l
o
g
.(
1
51
.2-H)=0.023M+1.8
3
6
正常発育上限
l
o
g
. (148.5-H)=-0.028M十1.8
1
6
回るものが兵庫県の牛に多し下限を下回るものに愛媛
下限
l
o
g
.(
154.7-H)=-0.020M+1
.8
6
9
県の牛が多いが,例数が少ないので,この図から両地域
同
H:体高
の牛にも充分適用できることがわかる.図では上限を上
の差を論ずることはできない.ただ次に示す第 4表で各
(cm) ,M:生後月令
群の境界となる 8カ月の体高をみると兵庫県の方が幾分
高いようである.
t
l
1
1
1
3
0
C胤
1
3
0
1
1
0
•
•
•
.
1
1
0
•
••
•
1
2
0
1
1
0
。t.紘4iI:晶弘t~
.
5
A1; 1革\II~民lJ
1
0
1
5
2
0州
5
第 5図体高の平均発育ならびに正常発育上限,
下限(黒点は黒毛和種牡牛の正常発育
上限および下限)
1
0
1
5
第 6図 農 家 に お け る 体 高 の 分 布
(実線は正常発育上限および下限)
5
9
20T
月
第 5巻 第 2号
兵庫農科大学研究報告
3 索牛の大きさとその後の発育との関係
1)
8カ月体重体高群別発育
生後 8カ月の体重 (W.),体高 (
H
.
) と 1カ月当りの増
'体 (
G
),生後 1
6ヵ月の体重 (W16) の聞の単相関を比較
素牛の大きさは発育
に大きな影響をもつことが惣像されたので,生後 8カ月
すると,第 5表ごとくで
の体重,あるいは体高によって材料牛を各 4群に分け,
閣の相関は農家の場合はすべて 0
.
3以上を示し,索牛の
G と W.あるいは H
. との
各群の平均発育を比較した結果は第 4表および第 7図の
大きいものほど増体もよく,能率のよい肥育ができるこ
とを表わすのに反し,試験研究機関では相関係数が Oに
ごとくである.
まず試験研究機関の成績をみると,体重群別では肥育
近く,索牛の大きさが増体とほとんど関係のないことを
末期に近付くほど各群の差が小さくなり,また体高群別
表わすものである.この傾向は群別発育で述べた通り,
では各群がほとんど平行線になっている.この傾向は農
試験研究機関の特殊事情が表われたものと思われ,一般
家の場合と全く異なるもので,肥育試験と L、う特殊事情
のために飼料を規制して目標体重に近付ける努力がなさ
れていること,この研究の材料牛を選ぶ際に体重制限を
設けたことなどの理由によって,かような不自然な結果
を得たものと思われる.
農家の場合には明らかに索牛の大きいものほど発育が
よいという傾向を示しており,とくに I群の発育は良好
である.兵庫県の場合,体重,体高のいずれで群分けを
しても N群の発育が非常に悪いが,境界となった 8カ月
の体重が愛媛県の場合にくらべて 1段階程度低いことを
考えると
8カ月で 160kg 程度の小さい牛では良好な
1
0
1
5
1
0
1
5
発育が期待できないことを示すものでゐろう.
2
) 8カ月体重,体高と増体, 1
6カ月体重との関係
素牛の大きさと発育の関係をさらに詳しくみるために
第 4表 生 後 8カ月の体重,体高によって分類
した各群における体重の発育
体高群別
発育直線式
労 w=219M+583i109??w=234M+286
10
II222
I
I
I_
_
__ W=23.0M+25.71 ___ _ W=23.2M+22.0
J106.3
11
9
5
.
3
]
[
1W=23.6M- 4
.
7
1
W=23.4M+ 0
.
0
I1
6
8
.
4 W
•••=24
n.
,0
n
.
.
~"nl
0
3
.
3 W =払 7Mー 比 4
│
M
-36
.8i 1
"VV.V
愛媛県温泉郡農家
II230芳 W=27.5M+ 払 01108~T
W =2
8
.1M+1
0
.6
I
I
I_
_
__ W=22.9M+34.01 ___ . W=25.4M+16.3
"VU.V
s
兵庫県多紀郡農家
I
I初
/
1W=24.0M+26.11 1l0~T W=21.2M+
札
1
0
2
I
I
I_
_
__ W=18.8M+46.41 ____ W=18.8M+39.0
11
8
6
.
0
11
0
6
.
8
.9
1
W=19.7M+27.1
]
[
1
W=19.2M+21
0
3.
3 W =1
1
.
7
11
6
.5M+23.2
N1
163.7 W =1
6
.3M+15
"VV..
" V V .V
6
0
1
5
Am4m
1208.7 .
11
0
5
.
4
]
[
1-- W=22.4M+20.0i
W=22.2M+22.5
I1
8
7
.
12•••2 .
n
n
.
.
• -6
"
n
l
0
2
.3 W=20.4M+24.8
│
W
=
5
M
.
0
11
第 7図 生 後 8カ月の体重群別ならびに体高群
別発育
(
1
)
(
3
)
(
5
)体重群別, (
2
)
(
4
)
刷体高群別
(
1
)
(
2
)試験研究機関 (
3
)
(
4
)愛媛県温泉都
(
5
)
(
6
)兵庫県多紀郡
XII, 1
9
6
2
第 5表
区分
畜 産 学 編
8カ月体重,体高と 1力月増体, 1
6ヵ
月体重の聞の単相関
分な仕上げ体重を望むならば,素牛は体重の大きいもの
を選ぶ方が,体重は小さくても体高の大きいものを選ぶ
より有利であることを示している.ただ,愛媛県温泉郡
試験研究機関│愛媛県温泉郡│兵庫県多紀郡
一一一│
G
W16 I G
W16 I G
W16
の場合,体高の偏回帰帰係数も相当大きいが,この地区
では素牛の体重が非常によく揃っていたことを考えると,
6
4
8i .
4
0
8 .
7
4
1I .
4
3
6 .
7
5
7
W. I-.021 .
体重に大差のないときは体高によって選訳することが相
H. I .
0
4
8 .
5
6
0I .
5
5
3 .
7
1
0I .
3
4
9 .
5
9
4
当有利であることを示すものであろう.
W.:生後 8カ月の体重
H.:向上体高
町要
G: 1カ月当り増体
W16:生後1
6カ月の体重
約
若令肥育牛の発育をしらべるために,試験研究機関で
第 6表
肥育された試験牛6
5
頭
, 愛媛県温泉郡農家の肥育牛 1
0
6
1カ月増体あるいは 1
6ヵ月体重に対する
8力月体重および体高の標準偏回帰係数
1カ月増体
区 分
│体重
試験研究機関
愛媛県温泉郡
兵庫県多紀郡
体高
頭,兵庫県多紀郡農家の肥育牛9
8頭について,体重.体
高の測定値を統計学的に処理した結果は次の通りである.
I 16ヵ月体重
l体重
1.試験研究機関の成績から,体重,体高について正
体高
常発育範囲を求めたところ,その上限は黒毛和種牡牛発
I-.408
.
3
1
3 I.
4
9
1 .
2
4
2
│
一.
0
1
0 .
5
6
0 I .
4
7
5 .
3
5
5
.
4
1
3 .
0
3
0 I .
7
3
9 .
0
2
2
育上限と大体一致し,下限のかなり高くなったものが得
られた.
2. 農家の成績をこれに適用してみると,愛媛県温泉
郡では体重が正常発育上限を上回るものが多く,兵庫県
には体重,体高の大きな素牛の方が増体がよいという傾
多紀郡では下限を下回るものが多いが,全体としてはほ
向があると考えられる.
ぼ満足できる範囲であることが認められた.
W" H
. との関
3
. 増体あるいは最終体重に対して素牛の大きさが影
係は例外なく大きな相関を示しおり,短い飼育期聞に充
響を及ぼし,大きな索牛を選ぶのが非常に有利であるこ
分な体重まで肥育するには大きな素牛を選ばねばならぬ
とが認められた.
仕上げ時に近い生後 1
6ヵ月の体重と
ことがわかる.
報告を終るに当り,終始御指導を賜り,御校闘をいた
素牛の体重と体高の聞にも当然大きな正の相関があっ
て,体重の大きなものを選ぶことは体高も大きいものを
ごいた京都大学
だいた福島教授,快く資料の提供をいた T
選ぶ結果になるのであるが,骨組が大きくてやせた牛と
上坂教授,中国農試熊崎畜産部長.富山県畜産試験場木
骨粗は小さいが肥った牛のいずれを選ぶのが有利かをみ
下前場長,岐阜県種畜場上回場長,愛知県肉畜試験場山
るために,重回帰の考えをとり入れて,標準備回帰係数
本場長,島根県種畜場堀場長,篠山鹿高内山教諭,資料
を比較してみると第 6表の通りである.まず
収集に御協力をいただいた前愛媛県温泉郡畜連安野参事,
1カ月増
体に対する影響をみると,区分によって全く違った結果
同杉野技師,兵庫県畜連森山課長,兵庫県多紀郡畜連市
となり,試験研究機関では体重が小さくて体高の大きい
来技師の各位に対し深甚なる謝意を表する次第である.
7
. 8. 3
1
. 受理)
(家畜繁植学講座,昭和3
牛,愛媛県温泉郡では体重と無関係に体高の大きい牛,
文 献
兵庫県多紀郡では体高を無視して体重の大きい牛を選ぶ
のがそれぞれ有利となるのである
この矛盾した結果は
1)上坂章次畜産の研究, 16:121-9,1
9
6
2
各区分の特殊な条件によって生れたものと思われるので,
2) 熊崎一雄・田中英治・木原靖博:中国農試報告, B
一般論としては,増体の大きいことを期待するには索牛
の体重,体高のいずれを重視して選ぶべきかという結論
は下せない.しかし, 1
6ヵ月体重に対する影響ををみる
4号:73-108,1
9
5
5
3)畑村又好・津村善郎・奥野忠一・田中祐輔(訳)
スキデカー統計的方法,岩波書庖, 1
9
5
4
と,例外なく,体重の方が影響が大きいことを示し,充
6
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