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SRモータのトルク理論 ―可能性と限界の根拠
短期集中連載 モータ新潮流 SR モータが拓く脱レアアース化への道 第2回 SR モータのトルク理論 ―可能性と限界の根拠 日本電産モーター基礎研究所 見城 尚志* けんじょう たかし:名誉所長 * 1964 年東北大学修士課程終了後ティアック入社,IT 用精密モータの設計に従事。65 年から職業能力開発総合大学校,81 年教授。 2005 年日本電産モーター研究所所長に就任。08 年から現職。職業能力開発総合大学校で筆者の最初の講義を聴いた 22 歳の学生永守重信氏 は世界一の小型モータメーカー(日本電産)の創業を決意した。著書に Stepping motors and their microprocessor controls など 6 点を Oxford University Press から出版。近著にモータの根本原理を探る研究の副産物『ピタゴラスの定理でわかる相対性理論』などがある。 初回は SR モータの誕生から実用化の過程で重 ロータの鉄心の両方に突極構造(ポール)を備え, 要な役割を演じた人物を挙げながら SR モータの ステータのポールには励磁用巻線を巻く。図 1 は 意味を解説した。今回は磁気抵抗(reluctance)の この構造によってトルクが発生する様子を示す。 性質によって大きなトルクが発生するメカニズム (a)はステータの突極構造が励磁されたときの磁 と計算原理を解説する。そしてネオジム磁石を使 力線の様子を示している。磁力線にはロータやス うモータとの比較の一例を展開する。 テータ鉄心の面にゴムひものように張力がはたら くと考えると,励磁によってステータの突極(ポ ール) とロータの突極が整列する向きにトルク (回 SR モータの原理と特徴 転力)がはたらくことがわかる。 電磁石が鉄片をひきつける。SR モータはまさ リラクタンス(reluctance)とは磁気抵抗 つま にこの現象を利用したモータである。ステータと り磁束の通りにくさ のことである。磁束を発生 端子 + θ i ポール ステータ ポール 電流 トルク ロータ 外部 電源 磁束φ 端子 負トルク シャフトに は負荷があ るとする 回転 − ψ=Nφ,N:巻数 (a)ステータのポールが励磁されて突極型ロータ にCW方向のトルクが発生する様子を磁力線の 曲がりで解釈する (b)整列状態では磁気抵抗が 最小でトルク=0 (c)慣性で回り続けて負トル ク(制動力)が発生する 図 1 ステッピングモータや SR モータの基本原理;(a)の状態でステータの突極が励磁されると空隙周辺に磁 力線の曲がりが発生して CW 方向のトルクがロータにはたらき,(b)のように整列しようとする。慣性で回 り続けて(c)のようになったときに電流が残っていると制動力が発生する 58 機 械 設 計