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分子免疫制御分野(菊谷 仁 研究室)

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分子免疫制御分野(菊谷 仁 研究室)
分子免疫制御分野(菊谷 仁 研究室) 所 在 地:吹 田 市 山 田 丘 3 - 1 大 阪 大 学 微 生 物 病 研 究 所 融 合 棟 7 階 ℡ :06-6879-8363 HP URL→ http://www.biken.osaka-u.ac.jp/biken/mol-imm/index.htm
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菊谷研究室
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研究テーマ
・リンパ球を舞台とした免疫応答制御分子の機能と病態におけるリンパ球異常活性化機構の解
明
・アレルギー・自己免疫疾患・がん等、免疫病制圧を目指した分子基盤の構築
(キーワード:リンパ球、セマフォリン、EB ウイルス、ノックアウトマウス、がん、リンパ腫、自己免
疫疾患)
リンパ球の分化過程には T 細胞・抗原提示細胞間の直接的な相互作用が必須であり、これら相互作用は抗原レセプタ
ーと共に CD40、CD40 リガンド、B7、CD28 等の補助刺激分子によって担われています。私たちの研究室では、これまで
に CD23 や CD40 などの分子機能を解明してきましたが、最近、セマフォリンファミリーに属する分子が、種々の免疫応答
において重要な役割を果たしていることを明らかにしています。さらに、ヒト B 細胞指向性の EB ウイルスによるがん、自
己免疫疾患といった病態発症に注目し、ノックアウト・ノックインマウスを使った斬新なアプローチで解析することによって、
免疫機能異常活性化機構を追究しています。このようにリンパ球を舞台として繰り広げられる様々な免疫制御分子によ
る免疫反応調節機構をノックアウトマウスやトランスジェニックマウスを駆使した個体レベルとともに、分子レベルでも解
明し、アレルギーや自己免疫疾患等の免疫病に対する治療戦略を提供できるような分子基盤の構築を目指しています。
剤の投与及び HIV 感染等によって、免疫低下状態が惹起
1) 免 疫 セマフォリンによる免 疫 制 御 機 構 :
されると EBV の恒常的な活性化が誘導されます。その活
セマフォリンファミリー分子は神経軸索の伸長方向を決定
性化はバーキットリンパ腫やホジキンリンパ腫等の悪性
するガイダンス因子として知られていますが、当分野の研
リンパ球増殖疾患や全身性エリテマトーデスや多発性硬
究から、種々のセマフォリン分子が免疫反応の様々なス
化症等の自己免疫疾患に関与することが示唆されていま
テップで機能していることが明らかになっており、新たな
す。一方、ガンマヘルペスウイルスのマウス感染モデルと
免疫制御分子ファミリー(免疫セマフォリン)が形成されつ
して、Murine g-herpesvirus 68 (MHV68)を用いたがん・免
つあります。例えば、Sema4D の B 細胞活性化や恒常性
疫病発症機構の解明を試みています。最終的にこれらの
維持、Sema4A のヘルパーT 細胞分化、Sema6D とその受
研究を通じて、ウイルス感染成立における宿主免疫監視
容体 Plexin-A1 の樹状細胞活性化や破骨細胞の分化誘
を回避する分子メカニズムを解明することによって、宿主
導などです。さらに最近、活性化 T 細胞上の Sema7A が
免疫の脆弱性を理解するとともに、EBV を通じてヒトがん
α1β1 integrin を介してマクロファージを刺激し、炎症反応
化や自己免疫疾患の発症メカニズムを解明することによ
の引き金を引くことも明らかにしています(図 1)。 って、効果的な EBV 関連疾患の治療薬開発を目指してい
Sema7A
α1 integrin
ます(図3)。
図 1.T 細胞‐マクロファージ間直接相互作用における
Sema7A とα1 integrin の免疫シナプスへの凝集
2.
宿主-病原体間相互作用による免疫病態発症
の分子機構
Epstein-Barr ウイルス(EBV)は全世界で広範に潜伏感染
している B 細胞指向性ヒトがんヘルペスウイルスです。生
体内では常にウイルス複製とその排除を繰り返して感染
平衡を保っていますが、加齢、臓器移植に伴う免疫抑制
1)
EBV Latent membrane protein による細胞増殖・
分化機構と EBV 病態への関与の解明
EBV 感染はヒト B 細胞や上皮細胞に対して強い細胞形質
転換活性と不死化をもたらすことが知られています。近年、
EBV は B 細胞や上皮細胞のみならず、T 細胞や NK 細胞
に感染し、慢性活動性 EBV 症候群や血球貪食症候群を
伴った鼻性リンパ腫の発症に関与することが示唆されて
います。EBV 感染による潜伏感染遺伝子産物の中で
LMP1 と LMP2a といった膜タンパクはこれらの腫瘍に強い
発現を示しており、その腫瘍発生過程において何らか役
割を果たしている可能性が示唆されています。B 細胞に
おいて LMP1 は CD40 シグナルを一部模倣し、一方
LMP2a は B 細胞抗原レセプターシグナルを恒常的活性化
させることで B 細胞腫瘍形成、B 細胞分化障害を誘導す
ることが知られています。しかし、その他細胞種における
腫瘍形成能、細胞増殖・分化障害による免疫システム破
綻機構にどのように関与しているかは明らかにされてい
ません。したがって、当研究分野では LMP1,LMP2a に着
目し、細胞種または細胞分化段階特異的に LMP を発現
するマウスを作成し、その免疫学的解析を試みています。
(図4)。
進めています。その一つに、我々は全身性エリテマトーデ
ス(SLE)に着目し、EBV との関連が古くから示唆されてい
ますが、その発症機序は不明であります。興味深いこと
に、近交系マウスにおいて MHV68 感染で自己抗体が誘
導され、これは、B 細胞指向性ウイルスが自己反応性 B
細胞の出現を誘発する可能性を示唆しています。現在、
MHV68 感染マウス由来 B 細胞における自己反応性とウ
イルス感染との相関を検討しています。その他、組換えウ
イルスの作製を行ない、トリ卵白アルブミンや蛍光タンパ
ク質を組込んだウイルスなどを既に作製しています。これ
らのウイルスを用いることによってウイルス−宿主相互作
用、特に、免疫システムに異常を有するノックマウス等で
の感染実験による免疫応答、MHV 感染動態の可視化、さ
らに抗原特異的なリンパ球の増殖・分化における評価シ
ステム等、in vivo における宿主免疫応答制御機構の理解
に貢献すると考えています。
図3.EBV と宿主免疫システム
EBV の形質転換機構と感染成立機構は免疫シス
テムの脆弱性と密接に関連している。1.B 細胞分
化修飾(宿主免疫細胞生存シグナルの模倣)2.
染色体の不安定化3.免疫監視からの回避(潜伏
感染遺伝子の完全不活性化)
Fig.5. MHV68 を用いた免疫制御機構の解明−遺伝
子改変マウスやリコンビナント MHV68 を用いること
によって、宿主免疫応答、感染動態可視化及び個
体レベルにおける抗原特異的リンパ球増殖・分化
の検討が可能となる。
図 4.EBV LMP1,LMP2a の構造−LMP1 は 6 回膜
貫通型タンパクで細胞内領域に CD40 と同様に
TRAF 結合領域を有し、NF-kB を活性化する。一
方、LMP2a は 12 回膜貫通型タンパクで、N−末端
細胞内領域に Src ファミリー及び Syk チロシンキナ
ーゼとの会合活性を有し、Akt を活性化する。
2)
Murine g-herpesvirus 68 (MHV68)を用いたウイ
ルス‐宿主間相互作用
EBV の近縁のウイルスである MHV68 をマウスに経鼻感
染させると、咽頭や呼吸器での増殖後、B 細胞において
娘ウイルスの産生を伴わない潜伏感染状態に移行しま
す。その後、MHV68 は、宿主の体内にその生涯にわたっ
て持続感染します。これは、EBV のヒトへの感染と類似し
た動態であり、マウスに感染しない EBV のモデルとして、
MHV68 は有用であると考えられます。当研究分野では、
MHV68 感染に応答する宿主の様々な免疫反応や免疫病
態発症を分子レベルで理解することを目的として研究を
最近の代表的な論文
1.
Mizui M, Kumanogoh A, Kikutani H. Immune semaphorins:
novel features of neural guidance molecules. J Clin Immunol. 2009
Jan;29(1):1-11.
2.
Mizui M, Shikina T, Arase H, Suzuki K, Yasui T, Rennert
PD, Kumanogoh A, Kikutani H. Bimodal regulation of T
cell-mediated immune responses by TIM-4.Int Immunol. 2008
May;20(5):695-708.
3.
Suzuki K, Okuno T, Yamamoto M, Pasterkamp RJ,
Takegahara N, Takamatsu H, Kitao T, Takagi J, Rennert PD,
Kolodkin AL, Kumanogoh A, Kikutani H. Semaphorin 7A initiates
T-cell-mediated inflammatory responses through alpha1beta1
integrin. Nature. 2007 Apr 5;446(7136):680-4.
4.
Mizui M, Kikutani H.Neuropilin-1: the glue between
regulatory T cells and dendritic cells? Immunity. 2008
Mar;28(3):302-3.
5.
Takegahara N, Takamatsu H, Toyofuku T, Tsujimura T,
Okuno T, Yukawa K, Mizui M, Yamamoto M, Prasad DV, Suzuki K,
Ishii M, Terai K, Moriya M, Nakatsuji Y, Sakoda S, Sato S, Akira S,
Takeda K, Inui M, Takai T, Ikawa M, Okabe M, Kumanogoh A,
Kikutani H. Plexin-A1 and its interaction with DAP12 in immune
responses and bone homeostasis. Nat Cell Biol. 2006
Jun;8(6):615-22.
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